20/2期を最終とする中期経営計画が進行中である。「従来ビジネスの拡大」、「新領域での拡大」、及び「人材マネジメントの高度化」の3つの成長戦略を柱とし、中期経営計画の事業期間を超えた22/2期までの5年間で、各取組合計100億円以上の投資を計画している。
【中期経営計画における19/2期上期の取り組み】
従来ビジネスの拡大
従来ビジネスの拡大に向け、顧客との関係性強化と伊藤忠シナジーの拡大に取り組むと共に、サービス品質の優位性を追求している。この上期は、伊藤忠商事(株)とそのグループ企業・取引先向けの売上が第1四半期25.5億円(前年同期比17%増)、第2四半期28.7億円(同19.5%増)、上期全体で54.2億円(同18%増)と順調に拡大した。
新領域での拡大
新領域での拡大に向け、事業構造改革(Advanced CRM Platform)、サービス(Advanced BPO)、マーケット(海外事業強化)、及び凸版シナジーの顕在化と拡大に取り組んでいる。凸版印刷(株)は、同社にとって、伊藤忠商事(株)に次ぐ株主であると共に、業務提携先でもある。紙を媒体にしたビジネスやWeb系ソリューションと技術、更にはデータ管理等、B2Bを事業領域としており、消費者との接点を持ちB2B2Cを事業領域とする同社と連携する事で、企業と消費者がシームレスにつながるビジネスが可能になる。同社では、昨年12月から「推進室」が進めてきた、社内の組織構築、ビジネススキームの構築、及び凸版印刷との営業連携体制等の事業基盤の構築が完了した事を受けて、この6月には、事業シナジーを追求するべくCRM事業本部内に「凸版アライアンス推進局」を新設した。AI等の新技術を活用したアライアンス事業「デジタルカスタマーサービス」が下期中にスタートする。
人材マネジメントの高度化
退職抑止、採用力強化、及び現場人材管理の精微化に取り組んでおり、この上期に、これら取り組みのベースとなる「新人事制度」のフィージビリティスタディが完了した。
新人事制度
「新人事制度」のスタートは今下期だが、昨秋に前倒しで開始した「継続雇用期間6カ月超の有期雇用社員約2.2万人を対象にした無期雇用への転換制度」が徐々に浸透しつつある他、従業員向けのAI-Chat「AI-Chat for Staff」の利用も拡大している(「AI-Chat for Staff」は、シフト、休暇、勤務時間の照会に加え、挨拶や雑談、意見や要望の収集等の充実した機能と98%の正答率を誇る)。
「SUDAchi(すだち)」の開設と「DBJ健康経営格付」に基づく資金調達
採用の拡大に向け、スキル不足の人材を採用し就業支援をすることで戦力化する「SUDAchi(すだち)」を開設した他、従業員への健康配慮の取り組みが評価され、日本政策投資銀行から「DBJ健康経営格付」に基づく融資を受けた。
「SUDAchi」は、パソコン等のスキル不足の求職者や多言語コールセンターでの勤務を希望する外国人求職者等を、採用・教育し、戦力化するための教育施設。これまでスキルが同社の採用基準に満たないために採用に至らなかった応募者にスポットを当てた取り組みであり、教育担当のトレーナーとの密なコミュニケーションにより、就労前に業務内容や企業文化に対する理解も深めてもらう(就労準備者は、準備期間中も給与の支払い対象)。毎期8,000~9,000人を新規採用している同社の場合、応募者の50%程度が面接を受け、採用に至るのは面接を受けた応募者の50%程度。毎期、採用人数と同規模の8,000~9,000人が就業を希望しながら就業できていない訳だが、「SUDAchi」を開設する事で、採用後のスキルアップを前提に、採用の間口を広げる事ができる。既に約60名が実業務を開始しており、通常の採用者よりも高い定着率を示していると言う。もっとも、採用以上に重要なのが、退職抑止であり、人員効率の向上につながる。このため、採用活動と共に、退職抑止につながる「安心して、楽しく働く事ができる職場作り」にも取り組んでいく考え。尚、退職予兆の検知で「AI」の高い有効性が確認できていると言う。AIの利活用については、社内業務での利活用を先行させ、サービス面での本格的な利活用は更なる技術革新を待ってからになるようだ。
一方、日本政策投資銀行が提供する「DBJ健康格付」融資は、従業員への健康配慮の取り組みが優れた企業を評価・選定し、融資条件を設定する「健康経営格付」の専門手法を導入した世界で初めての融資メニュー。同社は、中期経営計画における「人材マネジメントの高度化」に係る各施策等が評価され、各付けの取得に至った。
CSR活動
CSRの一環として、下川町(北海道上川郡下川町)及び久遠チョコレート(運営:一般社団法人ラ・バルカグループ 本社:愛知県豊橋市)と「SDGsの推進と持続可能な地域づくりに関する連携協定」を締結した。下川町の廃校を利用して障害者によるチョコレート製造事業を通して、官民パートナーシップによるSDGsの推進と持続可能な地域づくりのモデル事例の創出に取り組んでいく。具体的には、下川町が廃校を利用してチョコレート工場を整備し、ラ・バルカグループが久遠チョコレートの事業コンテンツや障害者雇用等のノウハウを提供し、ベルシステム24の社員(障害者雇用)がチョコレート工場に勤務し製造を行う。
【成長の方向性】
事業の拡大と業務の高度化を両輪に業容を拡大させていく。同社の強みとして、単に企業の規模が大きいというだけでなく、それぞれの業界において変革者的な位置付けの企業を中心とした優良顧客群と、こうした優良顧客群のニーズに応え得る現場力(採用・研修、退職抑止等のノウハウ、及びサービス面での分析力と実績等)を有する事。この強みを活かして従来ビジネスの拡大共に国内外の拠点を広げていく(海外展開については、拙速な行動を控えつつも、布石を打っていく)。
また、筆頭株主である伊藤忠商事(株)、第2位株主である凸版印刷(株)は、株主であると同時にビジネスパートナーでもあり、優良顧客を抱えている。両社と共に、AI・RPA等の新技術をコンタクトセンター業務に利活用する事で業務の高度化を図っていく。
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尚、海外展開については、2017年にベトナム国内で8拠点を展開する同国コンタクトセンター最大手のHoa Sao Group Joint Stock Company(本社:ハノイ)に資本参加し(49%)、社名をBellsystem24-Hoa Sao Joint Stock Companyに変更した。日系企業も含めた現地企業向けのサービスや日本国内向けのオフショアサービス等でのビジネス拡大を目指しており、AIを活用した日本国内向けの日本語eメールの問い合わせ対応を既に開始している。