ブリッジレポート
(2428) ウェルネット株式会社

プライム

ブリッジレポート:(2428)ウェルネット vol.11

(2428:東証1部) ウェルネット 企業HP
宮澤 一洋 社長
宮澤 一洋 社長

【ブリッジレポート vol.11】2018年6月期業績レポート
取材概要「減収減益とはなったが、約7%程度といわれる非対面決済市場の拡大を受け、OEM縮小などの特別案件の影響を除けば利益ベースでは約10%で拡大して・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年10月17日掲載
企業基本情報
企業名
ウェルネット株式会社
社長
宮澤 一洋
所在地
東京都千代田区内幸町1-1-7
決算期
6月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年6月 9,783 677 708 495
2017年6月 10,260 1,099 1,239 869
2016年6月 10,529 2,054 2,007 1,350
2015年6月 8,888 1,637 1,520 938
2014年6月 7,600 1,473 1,488 913
2013年6月 6,866 1,393 1,420 759
2012年6月 6,254 1,198 1,278 728
株式情報(8/22現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,002円 18,574,344株 18,611百万円 6.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
50.00円 5.0% - - 420.62円 2.4倍
※株価は8/22終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。
ROE、BPSは前期実績。19年6月期の業績予想は未確定な要素が多いため現時点では未公表。
 
ウェルネット株式会社の2018年6月期決算概要等についてご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
消費者が商品やサービスを購入した際の電子決済スキームを販売事業者に提供。
「リアルタイム」と「ワンストップ」をキーワードに、商品やサービスを購入する消費者には時間と場所の制約を受けずに、いつでもどこでも欲しいものを購入できる「利便性」を、直接の顧客である販売事業者には「販売機会の極大化」を可能とする「快適な直売プラットフォーム」を提供することを基本コンセプトに事業を展開。
主力サービスであるマルチペイメントサービスは、国内大手航空会社、大手高速バス会社、大手通販会社等豊富な導入実績を誇る。創業以来、常にチャレンジを続ける企業DNAも大きな特徴。
 
【沿革】
北海道のガス、燃料販売会社の(株)一高たかはしの、新規事業開発をミッションとした子会社として誕生。
当時すでにコンビニエンスストアの店頭での公共料金の支払い取り扱いは始まっていたが、これが通信販売に拡大するとの動きを捉えて事業化に着手した。
請求書の印刷・発送から収納情報の処理まで一貫運用する「請求書発行代行サービス」、コンビニエンスストアの店頭で24時間365日支払が可能な「コンビニ収納代行サービス」を開発。販売事業者にとって多額の開発コストが不要なパッケージソフトを無償で配布したことにより、同社システムは急速に普及した。
続いて、紙の請求書を使用せずリアルタイムで電子請求・電子決済を同社1社との接続で実現できる、現在の中心システムを開発。利便性及び様々な収納機関と接続するための開発や契約が不要な点が評価され、航空会社、バス会社等による導入が進み、業績は順調に拡大。2004年JASDAQに上場した。
その後も、amazon、ヤフーショッピング、ヤフオク!、LCC(格安航空会社)、JR西日本、九州といった大手企業への「マルチペイメントサービス」提供が進んでいる他、数多くの実績を誇る電子チケットのノウハウを生かしたソリューション提供等にも注力している。
 
 
【市場環境】
経済産業省の「平成29年度我が国情報経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(2018年4月25日発表)によれば、日本の消費者向け電子商取引市場(B to C)の市場規模は2017年で16.1兆円と前年に比べ9.1%の増加となった。2010年から2017年までのCAGR(年平均成長率)は11.3%となっている。
 
 
また、EC化率(商取引のうちどの程度がインターネットを通じて行われているか)は物販系分野5.79%とまだまだ小さいものの、着実に上昇している。
 
 
【事業内容】
「リアルタイム」と「ワンストップ」をキーワードに、サービスや商品を購入する消費者には時間と場所の制約を受けずに、いつでもどこでも欲しいものを購入できる「利便性」を、同社の直接の顧客である販売事業者には「販売機会の極大化」を可能とする快適な「直売プラットフォーム」を提供している。

報告セグメントは「決済・認証事業」の単一セグメント。以下では同社が手掛けている主要サービスを紹介する。
 
≪決済サービス≫
①マルチペイメントサービス
紙の請求書を使わず、リアルタイムの電子請求・電子決済を同社1社との接続で行うことができる。
事業者は、コンビニ、銀行、郵便局、クレジットカードなど様々な収納機関と接続するための開発や契約を個別に行う必要が無い。
 
(特長)
事業者は、購入者・利用者の決済物件確定後にウェルネットにデータを提供するだけ。購入者・利用者への支払方法の案内はウェルネットが担当する。
請求のペーパーレス化、収納情報のリアルタイム取得が可能なため、間際でも利用可能。
購入内容(金額)に変更があった場合でも、最新の金額による決済が可能。
情報授受用モジュールはウェルネットが無償提供するため、システム接続が容易。
最新の決済システムの開発、対応はウェルネットが行うので、都度のシステム開発が不要。
2000年7月から稼動開始し、国内主要航空会社の全て、主要高速バス会社、その他大手通信販売などが利用。
運用センターは24時間有人監視体制を敷いており、365日・24時間の決済サービスを提供。
ペーパーレス決済では国内最大級のインフラ網を構築している。
 
②ペーパーレス決済サービス
紙の請求書とペーパーレスの電子請求・電子決済(リアルタイム)の両方を1つのサービスで実現できる。
 
(特長)
お客様に送っている払込票(請求書)データを、ウェルネットフォーマットで管理画面にアップロードするのみ。ウェルネットが事業者に代わり払込票(請求書)を郵送する。
払込票には電子決済の申込サイトへの案内があり、お客様自身がPC・スマホでウェルネット提供の手続サイトで簡単手続。
次回からペーパーレス決済の対象のお客様として郵送の必要がなくなる。
 
③支払秘書
スマートフォンアプリ「支払秘書」を活用することで、コンビニや銀行ATMへ行く必要がなく、その場で各種支払いを完了させることができるサーバー型電子マネーサービス。
 
 
(特長)
お客様に送っている払込票のバーコードをカメラで読み取るだけで、即時に支払いが可能。
クレジットカードを持っていない層に即時性のある決済方法を提供。
提携先の銀行口座から即時引落も可能。
プリペイド式の電子マネーであることから、金銭の管理が容易。
毎月の公共料金などの支払を登録しておくと、支払期限までにアプリが通知するため、支払い忘れを防止が期待できる。
 
≪送金サービス≫
①ネットDE受取(送金)サービス
キャンセルに伴う返金など、販売事業者から消費者への振込を、インターネットを利用して、より効率的に行うサービス。
消費者は販売事業者から受け取ったIDを利用して専用サイトにアクセスし、振込みを受けるための口座情報を入力する。
2018年10月末から、振込の取扱時間を拡大し、24時間の振込処理を実施予定。
 
(特長)
消費者が入力した情報をもとに口座確認が行われ、自動的に振込処理が行われるため、販売事業者自らが口座確認を行う必要が無く、事務負担が軽減される。
返金処理の当日対応が可能なため、販売事業者にとっては顧客満足度向上につながる。
販売事業者は返金システムの開発が不要。
口座情報を保持する必要もないため、個人情報保護に関するリスクを低減できる。
 
②コンビニ現金受取(送金)サービス
「ネットDE受取サービス」同様、販売事業者から消費者へキャンセルに伴う返金などを行うサービスだが、「ネットDE受取サービス」と異なり、銀行口座が不要。
ローソンの店頭KIOSK端末「Loppi」に消費者が販売事業者から交付された現金受取番号とIDを入力し、発行された引換券を店頭レジへ持参すると現金を受け取ることができる。2018年5月からはセブンペイメントサービスと提携、セブンイレブン店舗でも現金受け取りが可能となり、大幅に受け取り拠点が増加した。
 
(特長)
販売事業者は消費者の口座情報を予め収集する必要がない。
郵便振替などと比較すると、コストメリットがあり素早く受け取ることができる。
口座情報の誤りによる差し戻しなども発生せず、スムーズに返金を受け取ることができる。
 
≪Billingサービス≫
①コンビニ収納代行サービス
同社のバーコード付払込取扱票付請求書を発行するシステムと同社が契約するコンビニなどの請求代金回収経路を通じて、売掛金の回収業務を代行するサービス。
収納情報は、支払いがあった翌営業日(郵便局からの振込は2営業日後)に配信され、入金消込処理が自動化される。現在、通信販売をはじめ主として後払い代金収納に利用されている。
 
(特長)
全国のコンビニエンスストア12チェーン、約58,000店舗(2018年8月時点)で24時間365日支払可能なので、郵便局・銀行の営業時間を気にする必要が無い。
販売事業者はわずかな期間で運用開始可能。
自社で払込取扱票を印字でき、収納データもバーコードの数字だけなので顧客情報漏洩の心配が無い。
 
②請求書発行代行サービス
同社がバーコード付払込取扱票付請求書(銀行振込の場合は払込依頼書付請求書)の印刷・封入・封緘・郵送までを代行し、かつ入金確認及び入金消込まで、トータルに請求書発行・収納業務をサポートする。
特に物流を伴わないサービス等(ガス料金、各種会費)の代金収納に利用されている。
また、事業者のペーパーレス化による郵送コストダウンを具体的に可能とするサービスも提供している。このサービスを利用することで、事業者はウェルネットに請求書発行を依頼するだけで、請求書の電子化を推進することができ、郵送費のコストダウンメリットを享受できる。また、このサービスは今後劇的に進むといわれる支払の電子化スキーム“支払秘書”へのシームレスな導線にもなっている。
 
≪バスIT化ソリューション「バスもり!」≫
同社は2001年3月、都市間高速バスの予約済みチケットを24時間コンビニで購入できるサービスを日本で初めて実用化し、以降100社を超えるバス事業者と契約、数百路線のバスチケット発券を行っている。また、電子チケット領域においては航空券用ケータイチケットを皮切りに、たとえば札幌ドームなどでチケット発券・認証の実績とノウハウを積み重ねてきた。 これらノウハウの集大成ともいえるのが「バスIT化プロジェクト“バスもり!”」である。

バス事業者・利用者双方の利便性を飛躍的に高めることができる革新的なサービスで、バス利用者は、安心・確実にいつでもどこでもスマホアプリひとつで目的地までのバス便を予約・購入でき、バス事業者も、チケットの電子化による効率的な運用を行うことができる。結果として販売機会の極大化を実現できる。

“バスもり!”はコンシューマ向けスマートフォンアプリ(商品名:バスもり!)、タブレット端末を利用したバス会社向けの「高速バス予約情報のリアルタイム管理サービス(商品名:バスもり!MONTA)」などシリーズ化が進んでいる。

2018年9月現在、「バスもり!」アプリのダウンロード数は約15万、スマホチケット路線は250路線を上回った。月一回アプリを触るアクティブユーザーは2万人を超えた。
機能追加も「スマホ定期」、「電子もぎり」、「電子回数券」、「フリーパス」の提供を開始するなど、バス会社およびユーザー双方にメリットの大きい「バスIT化プロジェクト」の推進に注力している。
 
【バスユーザー向け「都市間高速バスを便利にする高速バス検索・予約・購入・乗車スマートフォンアプリ(商品名:バスもり!)】
高速乗車券において従来は各バス会社が運営するWebサイト上にて予約購入、または電話予約での申込みが一般的だったが、サービスを利用することで、乗車したいルートの高速バス乗車券を簡単な操作だけで、乗車直前まで予約・購入(一部路線では座席指定可能)・変更・払戻ができるようになった。
チケットもコンビニ発券に加え、スマホ画面に表示される電子チケットが加わり、24時間いつでもどこでも手元のスマホでチケット購入できるため、ユーザーの利便性は飛躍的に向上した。
最新の高速バスに関するニュースや支払期限が近い予約はプッシュ通知を受け取ることができるほか、バス乗り場までの経路案内が可能である。
電子チケットの認証方法については、既に提供を開始している車載用タブレット端末「バスもり!MONTA」に加え、「認証端末」がない場合には「電子もぎり」で認証できる機能を「バスもり!」に加えたことでほとんどのバス路線に対応できるようになり「電子チケット」の対象路線が拡大している。
 
 
【バス会社向けの「高速バス予約情報のリアルタイム管理サービス:バスもり!MONTA】
モバイルデータ通信によるリアルタイム在庫管理を実現した「バスもり!MONTA」は以下のような機能が特長で、乗務員の負荷を軽減し、販売機会の極大化をもたらす。
 
① 電子座席表:現在運行しているバスの予約状況、空席状況が把握できる。
② 乗車券販売:決済が済んでないユーザーが乗車した場合 乗車区間の料金を表示できる。
③ 乗車券確認・認証:ユーザーの乗車券を認証し オンライン処理を行い、予約情報を更新する。
 
2017年10月2日から東京FMをキーステーションとするJFN38局でバスもり!のプロモーションを目的としたFM番組「バス旅スト」の放送を開始した。この番組はバスもり!導入路線を舞台としたショートストーリーで展開し、170万人の聴取者にリーチできている。
 
≪「SUPER SUB」サービス≫
チケット発行・決済・認証をワンストップで提供するオンラインチケットソリューション。
個別開発やサーバーのつなぎ込みといった複雑なステップが不要なため、企業のみならず一般個人も主催者登録が可能。
航空会社、バス会社といった既存の大口事業者に加え、低コストで効率的に利用事業者数を増大させることを狙い、2012年6月に提供を開始した。
 
(特長)
イベント等の主催者は、開催期間、会場、チケット単価など基本的情報を同社が提供する登録画面に入力するだけで、簡単にイベント受付、チケット受付・販売ページを作成することができる。(現在はPCサイトのみ)
同画面のリンクを自分のイベントページに設置するだけでチケット販売を開始できる。
参加申込者はPC、スマートフォン、携帯電話からチケットを購入できる。
チケット種類は電子チケット、コンビニで発券する紙チケット双方が利用でき、発券されたチケットにはQRコードが付き、専用のアプリで入場認証を行う。確実に認証でき、スムーズなイベント運営をサポートする。紙チケットだけを利用することもでき、その場合認証アプリは不要。
マルチペイメントサービス同様、豊富な決済手段を提供している。
申込から導入、チケット発売までおおよそ3週間程度と短期間で稼動させることができる。
初期費用、月額基本料は無料。コストはチケット発行手数料の5%のみで、運用コストは格安。
常設施設の入場券のみならず、期間限定イベント、ライブ、講演会・セミナー、地域イベント、有料パーティー、同窓会など、10~5,000人規模のイベントに適している。
 
 
前期のROEは一般的に日本企業が目標とすべきと言われている8%を下回った。
既存事業におけるコンビニ関連売上(PIN/POSA)の減少、大手事業者の価格対応、OEM縮小などトップラインの低迷と成長投資による売上高当期純利益率の低下がその要因だが、収束は近いという。
いつごろから収益性回復に伴いROEが再び上昇していくかを注目したい。
 
【特徴と強み】
①豊富な導入実績&強固な顧客基盤
同社のマルチペイメントサービスは、導入時の開発費および収納機関との個別契約が不要というハードルの低さが評価され、下記の様に業界を代表するリーディングカンパニーに導入されている。
特にリアルタイム性が求められる航空会社、バス会社からの評価の高さは同社にとって大きな財産となっている。
この強固な顧客基盤は同社を支える重要な「見えざる資産」と評価できるだろう。
 
 
②常にチャレンジを続ける企業DNA
E-Billingサービス、Billingサービス、各種送金サービス、ケータイチケットサービスなど、同社の開発した様々なシステムはほぼ全てが日本で初めて実用化されたものとなっており、加えて同システムの優秀さは、上記実績が証明している。
同社は大企業の系列であるわけではなく、ヒト・モノ・カネといった経営資源が決して豊富な状態でスタートした訳ではない。
にもかかわらず電子決済の分野で「デファクトスタンダード」とも言える地位を確立することができた大きな要因の一つには、同社が創業時から生まれ持つ、「常にチャレンジを続ける」という企業DNAがあるのだろう。

宮澤社長は、ビジネスの意味、醍醐味を「自分の可能性を信じ続け、自分があったら便利だなと思う仕組みを自らリスクをとって開発し、すぐに提供できる具体的な形として提供する事」と考えている。
また、インタビューの中でも、「自社でなければできないものを世の中に送り出す事こそが同社の存在意義であり、それが無ければ企業として存在する意味が無い」と述べていた。

社員数は100名程度と小さな所帯ではあるが、「ウェルネットアレテー」に代表される理念、心得をしっかりと掲げていることも企業DNA継承のカギとなっていると思われる。
 
 
2018年6月期決算概要および2019年6月期の業績見通し
 
 
減収・減益
売上高は前期比4.6%減収の97億83百万円。コンビニチェーンの統合に伴う売上の収斂、大口取引先の取引条件見直しに加え、OEMが縮小したため減収となったが、非対面決済市場は引き続き拡大しており、特定の要因を除くと既存事業者向け売上は堅調に伸張している。
営業利益は同38.3%減少の6億77百万円。大手事業者への価格対応などで粗利率は低下し粗利額も減少した一方、人材増強、アプリの新機能追加、コンシューマ向けプロモーションなど積極的な政策投資に加え、金融機関と提携する支払秘書の拡大に向けてより厳格な不正対策の実施が必要であるため生体認証への対応をスタートさせるなど研究開発投資も拡大した。
 
 
現預金、有価証券の減少で、流動資産は前期末に比べ62億円の減少。現預金には流動負債に計上されている回収代行業務に係る収納代行預り金(翌月には事業者へ送金される。)69億円が含まれている。資産合計は同56億円減少の168億11百万円となった。
一方負債面では、収納代行預り金の減少などで流動負債が同47億円減少。負債合計は同47億円減少の89億4百万円となった。
利益剰余金の減少で純資産は同8億円減少し79億7百万円となった。
この結果、自己資本比率は前期末の38.7%から7.8%上昇し46.5%となった。
(ただし、上記収納代行預り金を資産、負債から控除して計算すると、78.7%となる。)
 
 
税引前当期純利益の減少などで営業CFはマイナスに転じた。有価証券の取得による支出の減少などで投資CFはプラスに転じたが、フリーCFはマイナスに転じた。自己株式の取得により財務CFのマイナス幅は拡大した。
キャッシュポジションは低下した。
 
(3)2019年6月期業績見通しについて
19年6月期決算発表(2018年8月7日)時点では、「バスもり!」や「支払秘書」の機能追加・運用自動化に向けた継続開発および、認知度向上、アプリダウンロード数増大のために積極的な開発投資・プロモーション活動を展開する中で、業績に影響を与える未確定な要素が多いため19年6月期の業績予想は期初段階では公表していない。
今後、合理的に予測可能となった時点で公表する予定。
配当は前期と同じく50円/株の予定。
 
(4)トピックス
①支払秘書の進捗
◎採用事業者、接続金融機関
電力、LPG、都市ガス、水道などの公共料金の請求は、トータルの請求件数約2億2,000万件(年間)のうち約15%にあたる3,030万件が払込票の郵送によって行われている。 事業者にとってはこの郵送コストの削減は大きなメリットをもたらす。

電力会社は、関西電力(17年8月~)、九州電力(18年6月~)、北海道電力(18年7月~)の3社が採用し、他の電力会社も準備中。LPG、ガス会社にもアプローチしている。

支払秘書への電子マネーチャージを行う提携金融機関については、三井住友銀行(17年8月~)、ゆうちょ銀行(18年4月~)、第三銀行(18年1月~)、三重銀行(18年3月~)、千葉興業銀行(18年4月~)、大光銀行(18年7月~)、北海道銀行(18年7月~)、愛媛銀行(18年7月~)がスタート。この他、10行以上が準備中である。
極めて高水準のセキュリティが要求されるため、その開発にやや時間がかかったが、無事開発も終了したため今後も提携は更にスピードアップすると考えている。

この他、月間約700万件に上る既存決済手段に支払秘書を追加したほか、バスもり!との連携も開始した。
 
◎プロモーション活動
ユーザーへの認知度向上のため下記のようなプロモーション活動を展開している。

*関西圏の31大学、45キャンパスの学食で、トレイ広告を約13,000部配布。「学生生活応援キャンペーン」と題して500円分のポイントプレゼントを行った。(18年5~6月)

*18年5月から、Youtuberを起用した動画配信を行っている。

*関西電力では払込用紙の裏面で告知を行っているほか、ポイントプレゼントキャンペーン、友達紹介キャンペーン等を行っている。
 
②バスIT化プロジェクトの進捗
◎各種機能と採用状況
スマホチケット(16年8月リリース)は幹事会社36社、250路線で採用されている。
17年3月にリリースしたスマホ定期は6社、17年12月リリースのオンライン学割は11社で採用。
この他、フリーパス(18年7月リリース)、電子もぎり(18年1月リリース)などユーザー向け機能の他、バス会社の車掌機能を担う「バスもり!MONTA」(16年リリース)は4社が採用している。
 
◎バスもり!アプリ
*バスもり!アプリのダウンロードは15万DL、1月に1回以上はアプリを操作するアクティブユーザーは2万人を突破した。インバウンド対応として英語・中国語・韓国語での操作が可能となっている。(いずれも18年9月末時点)
新たな機能としては、運休となった場合のキャンセル自動処理、所有チケットの出発時刻や決済期限をリマインドさせるアシスタント機能、支払秘書アプリとの連携による銀行口座からの直接引き落としなどが追加された。
 
◎広報活動
*2017年10月より、バスの需要喚起およびバスのイメージ向上や、「バスもり!」のプロモーションを目的としたラジオ番組「バス旅(タビ)スト」がスタートした。TOKYO FMをはじめとするジャパンエフエムネットワーク系列全国38局ネットで、毎週日曜日12時00分~12時25分に放送されている

*ラッピングバス、時刻表内での広告、バス車内でのリーフレット配布など、バス利用者を中心として告知を行っている。

*同社の調査によると「スマホアプリで高速バスチケットを購入でき、乗車券がスマホ画面上に表示出来たら便利だと思いますか?」という質問には、男女全ての年齢層で約9割が「はい」と答えているが、「『バスもり!』を知っていますか?」との問いには、男女全ての年齢層でほぼ9割以上が「いいえ」と回答した。認知度の向上が大きな鍵である。
 
③ガバナンス体制、その他
同社では従来よりガバナンス体制の強化に注力しているが、経営と執行の分離によるスリムで実効性のある経営体制へ変更したほか、経営の透明性や客観性を担保するために取締役の過半数を社外取締役とした。
また、ミスの出ない体制に整備するために、品質管理チーム及び内部監査機能を強化した。
 
 
今後の注目点
減収減益とはなったが、約7%程度といわれる非対面決済市場の拡大を受け、OEM縮小などの特別案件の影響を除けば利益ベースでは約10%で拡大しているということだ。会社側ではコンビニ売上減少等の影響はあと1年程度で収束すると見ており、収益回復の確度および新規事業の収益貢献がいつごろから始まるかが大いに注目される。
 
(相対株価2年、青:同社株、赤:TOPIX)
 
 
 
<参考1:新中期経営5か年計画の概要>
 
【概要】
非対面決済およびその周辺を事業ドメインとし、その中で確立したノウハウと実績により業績を伸ばしてきたが、非対面決済市場は今後も一定の伸長を見込んでおり、引き続き現状のビジネススキームの維持発展を目指す。
この新中期経営5か年計画期間中においては、フィンテックの急速な進展、実用化が見込まれ、またIoTの利活用が始まるなど、同社を取り巻く事業環境は今後も大きな変化が見込まれる。同社ではこの変化を新たなビジネスチャンスに変えるための投資を積極的に行い、最終年度2021年6月期経常利益50億円の達成を目指している。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書
最終更新日:2018年9月28日

<コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示>
同社ウェブサイトの会社概要「コーポレートガバナンス」で「コーポレートガバナンス・コード当社取組方針」として開示を行っている。