ブリッジレポート:(3916)デジタル・インフォメーション・テクノロジー vol.10
(3916:東証1部) デジタル・インフォメーション・テクノロジー |
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企業名 |
デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社 |
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社長 |
市川 聡 |
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所在地 |
東京都中央区八丁堀4−5−4 FORECAST桜橋 |
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決算期 |
6月末日 |
業種 |
情報・通信 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2018年6月 | 11,076 | 787 | 790 | 531 |
2017年6月 | 10,273 | 653 | 641 | 466 |
2016年6月 | 9,341 | 524 | 553 | 351 |
2015年6月 | 8,492 | 427 | 427 | 297 |
2014年6月 | 8,052 | 330 | 339 | 209 |
2013年6月 | 7,391 | 294 | 266 | 109 |
株式情報(9/10現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【1-1 沿革】
日本電信電話公社在籍時にプログラマーの資格を取った市川 憲和氏(現:代表取締役会長)はコンピュータという今まで経験したことの無い新しい世界と出会い、その将来性に大きな魅力を感じ、チャレンジ精神を奮い起こされ独立。1996年に知人が経営していた東洋コンピュータシステム株式会社の社長として経営を任された後、業務システム開発事業を皮切りに、コンピュータ販売事業(現・システム販売事業)、組込み開発検証事業、運用サポート事業などを手掛け、多面多様のIT企業として事業領域を拡大していった。 その後、2002年にグループ企業数社を完全子会社化して、同社の前身となる東洋アイティーホールディングス株式会社を設立し、2006年に子会社4社を統合し、現社名に商号変更した。 また、2011年1月にDIT America, LLC.を米国カンザス州に設立、2015年6月に東証JASDAQ市場に上場、2016年5月に東証2部市場に上場し、2017年3月に東証1部へ市場変更。 2018年7月、変化が加速する経営環境の下、経営体制の若返りを図り、迅速な意思決定を可能にする体制作りを目的として代表取締役専務 市川 聡氏が代表取締役社長に就任した。 社員はこの理念をクレドにして携行し、常に基本に立ち返ることとしている。 【1-3 事業内容】
1.セグメント
セグメントは「ソフトウェア開発事業」と「システム販売事業」の2セグメント。「ソフトウェア開発事業」は、ビジネスソリューション事業、エンベデッドソリューション事業、自社商品事業の3事業から構成されている。
(1)ソフトウェア開発事業
金融業、医薬・製薬業、通信業、流通業、運輸業等の幅広い分野において、エンドユーザーや顧客の情報システム子会社からの受託開発が中心。その他、大手SIベンダーからの受託開発も行っている。①ビジネスソリューション事業 (業務システム開発事業) 具体的には各分野で培った技術により、Web系や基幹系、フロント業務からバックオフィス業務、新規システム開発や保守開発を行い、各分野の大手企業との信頼関係を築き上げ、安定した受注を確保している。 (運用サポート事業)
主要取引先は通信キャリア、人材総合サービス会社、及び航空会社系情報システム子会社など。「ITを通じて顧客の日常業務の運用をサポートする事業」であり、大手顧客の事業ドメインに沿った形での継続的なビジネスであるため、安定した収益を見込むことができている。 具体的な業務内容としては、以下のようなものがある。
各種業務システムを用いるエンドユーザーに対するサポートデスク業務
インフラ(サーバー、ネットワーク)の構築・維持保守を行う業務
最新技術動向に応じた、効率的なシステム運用を行う業務
②エンベデッドソリューション事業
車載機器、モバイル機器、情報家電機器及び通信機器等のソフトウェア開発を大手メーカーから直接受託している。(組込み開発事業) この内、車載機器、モバイル機器、情報家電機器等においては機器のファームウェア、デバイス機器の制御、アプリケーション等、システム全体にわたるソフトウェア受託開発を行っている。 特に、今後成長が見込める車載機器においては、インフォテインメントをはじめ、新しい技術である自動運転関連に注力している。また、通信機器においては、無線基地局や通信モジュール機器のソフトウェア受託開発を行っている。 (組込み検証事業)
製品に対する品質や性能の検証業務の受託及び検証業務を通じて機能や製品の改善について提案を行っている。専門的な機器を使用し動作や性能を検証するラボ試験や、国内・海外(北米、アジア、ヨーロッパ等)の実際の環境で検証するフィールド試験、最終的な品質検証として第三者の観点で実施するシステム総合試験まで、様々な検証業務を行っている。 海外で実施するフィールド試験については、必要に応じて子会社のDIT America, LLC.に委託することにより、迅速なサービス提供と現地スタッフの感性も踏まえたユーザビリティの検証を行っている。 対象機器としては、車載機器、医療機器、通信機器、モバイル機器等である。 ③自社商品事業
成長分野として独自技術の商品を自社開発し販売している。現在同社が販売に特に注力しているのは、ウェブサイ卜の改ざんを発生と同時に検知し、瞬時に元の正常な状態に復元できる、新しいセキュリティソリューション『WebARGUS(ウェブアルゴス)』、データの分解・再構成機能を特徴とし様々な形のデータ事務処理ニーズに応えるExcel業務イノベーションプラットフォーム『xoBlos(ゾブロス)』の2つ。 この他、電子メールに電子署名を自動的に付与し、フィッシング詐欺やブランド盗用による被害を未然に防ぐためのソリューション『APMG(エーピーエムジー)』、ホームページ編集・更新が容易にできるCMS(コンテンツマネジメントシステム)『楽らくページ』などがある。 (2)システム販売事業
同社及び子会社の東洋インフォネット株式会社が、カシオ計算機株式会社製の中小企業向け業務支援・経営支援基幹システム「楽一」の販売を行っている。販売エリアは、神奈川からスタートし、東京、千葉、群馬、愛媛へと順次拡大。ユーザーに対し、手厚いサポートを行うことで、リピート率の向上に努めている。加えて、コールセンターを設けて新規顧客開拓を進めており、「楽一」販売台数は全代理店中14年連続全国No.1となっている。 2.注目の戦略商品
①Webセキュリティソリューション「WebARGUS(ウェブアルゴス)」
WebARGUSは、ウェブサイ卜の改ざんを発生と同時に検知し、瞬時に元の正常な状態に復元できる新しいセキュリティソリューション。改ざんの瞬間検知・瞬間復旧により、悪質な未知のサイバー攻撃の被害から企業のウェブサイトを守ると同時に、改ざんされたサイトを通じたウイルス感染などの被害拡大を防ぐ。
◎増加するウェブサイト改ざん
「JPCERTコーディネーションセンター」が公開しているインシデント報告対応レポートによると、毎月100件前後の報告がなされており、官公庁なども含めて規模に関わらず常にその脅威に晒されている。「JPCERTコーディネーションセンター」(※):インターネットを介して発生する侵入やサービス妨害等のコンピュータセキュリティインシデントについて、日本国内に関する報告の受け付け、対応の支援、発生状況の把握、手口の分析、再発防止のための対策の検討や助言などを、技術的な立場から行なっている。 ◎「WebARGUS」開発の背景
こうした状況の下、電子メールに電子署名を自動的に付与しフィッシング詐欺やブランド盗用による被害を未然に防ぐためのソリューション「APMG」を既に自社開発しリリースしていた同社は、セキュリティに関するコア技術をベースに「WebARGUS」を2年程の調査の後、2013年春に開発に着手。2014年7月にリリースした。同社はITに関する多様で豊富な技術を有するのが大きな特長・強みだが、セキュリティのコア技術に関してもハイレベルである。これは、受託開発では飽き足らず独自製品を作りたいという同社エンジニアのベンチャーマインドやチャレンジ精神に起因するもので、後述する同社の企業文化、カンパニー制度に代表される組織戦略が大きく影響しているといえそうだ。 これに対し、「WebARGUS」を導入していれば、改ざんの瞬間検知・瞬間修復により、サイトの状態を正常に維持し続けることが可能なため、改ざんを検知しても慌ててサイトの公開を停止する必要がない。サイトの運用を続けながら、改ざんされた原因を追求し防御強化に専念する事ができる。 他社の改ざん検知ソフトは、事前設定によって決められたタイミングや間隔でWebサイトを検知する定期監視が主流。ただこの場合は改ざん時と検知時のタイムラグが発生するため、改ざん状態は免れない。またタイムラグを縮小するために検知の間隔を短くするとCPUへの負荷が大きくなってしまうなど課題が残る。 「WebARGUS」は、WebのOSに何らかのイベント(閲覧されている以外の、データを消された、書き加えられた等)が発生するとそのイベントを検知するリアルタイム検知を行うため、そのような課題は発生しない。 加えて、同製品は検知した改ざん状態を0.1秒未満(デモ環境の平均値:1ファイル当たり0.003秒)で正常復旧することが可能な、瞬間復旧機能を搭載している点が大きな特長であり、この瞬間復旧は同社のオリジナル技術である。 「WebARGUS」の年間ライセンス利用料は1OSにつき\480,000(税別)で、サポート込み。 マイナーバージョンアップ時の更新モジュールの無償提供なども含む。 ◎導入および販売状況
リリース当初はWebサイトセキュリティに対する考え方は侵入に対する防御が中心で、「改ざん検知」自体の認識が低いこともあり、ややスローな立ち上がりであったが、日本におけるIT国家戦略を技術面、人材面から支えるために設立された経済産業省所管の独立行政法人「IPA(情報処理推進機構)」でも、改ざん防止のための対応への言及が増加していること等から、「防御ソフトのみでなく改ざん検知ソフトが必要」という共通認識が急速に広がりつつある。加えて、2017年11月16日に発表された「サイバーセキュリティ経営ガイドラインの改訂ポイント」において経済産業省は、「攻撃の検知」および「復旧」に関する「サイバーセキュリティリスクに対応するための仕組みの構築」を新たに重要項目として追加したこともあり、引き合いは更に強まっているという。 こうした環境下、同社では、より高度なセキュリティの必要性を認識しているユーザー層を対象に、セミナーの開催、展示会への出展などのプロモーションやマーケティングを展開している。 販売力強化に関しては、代理店販売にも力を入れており、現在の代理店契約総数は37社。 また、データセンターやクラウドサービス事業者との協業にも積極的に取組んでいるほか、国内への製品販売だけでなく、海外進出も予定しており、世界中のウェブサイト改ざん攻撃に対応する考えだ。 ◎商品力の強化
当初はLinux版のみであったが、2016年4月にはWindows版を、2017年9月にエンタープライズ版をリリースしたほか、2018年2月にはトータルWebセキュリティ機能を大幅に強化する次世代型クラウドWAF「WebARGUS Fortify」の提供を開始した。特に大規模企業向けであるエンタープライズ版のリリースにより、上場企業を中心とした大企業の導入事例も増加している。また、ユーザーの利便性を高め、一層の普及を促すべく「SaaS」による提供も開始した。 加えてIoT時代のセキュリティ対策を見据えた組込み製品向けWebARGUSをはじめとして、製品の適用範囲の拡大を検討している。特に組込み版については正式なプロジェクトを立上げ、製品化に向けて具体的なビジネスの検討と技術調査を継続中である。 ②Excel業務イノベーションプラットフォーム「xoBlos(ゾブロス)」
IT化の進んだ先進企業でも、現場ではExcelを利用した手作業を含む様々な業務が数多く存在している。紙帳票からの手入力によるExcel帳票生成、複数のExcelシートを元にした集計作業、パッケージシステムから抽出されたCSVデータの可視化と分析等の非定型業務の多くは、現場部門の地道な手作業によって処理されている。同社が独自開発した「xoBlos(ゾブロス)」は、こうしたExcelベースの非効率な業務を完全自動化し、劇的な業務効率化をサポートするもの。 ◎開発の背景
企業では見積書や請求書作成に表計算ソフトの代表であるExcelを用いるケースが多いが、例えば、顧客ごとに異なったフォーマットの見積書、請求書をExcelで作成している場合、集計、分類・分析などを行うにはシステム化は困難で、手入力が必要となる。そこで、この作業を自動化し業務効率の大幅な改善を目指すことを目的として開発されたのがExcel業務イノベーションプラットフォーム「xoBlos」である。
まさに「時代が同社とxoBlosに追い着いてきた。」状況だ。 また、商品力強化に向けて2018年2月にはExcel業務の自動処理化をより一層強化した「xoBot(ゾボット)」の提供を開始した。 「xoBot」は、得意とする Excel処理に加えてRPA(※)製品や他システムとの連携機能を持たせることで自動化処理をより一層強化したプラットフォーム商品。 PCクライアント上で動作する業務自動化プラットフォームである今回の「xoBot Solo(ゾボット ソロ)」に続き、8月にはWeb Server上で動作する業務自動化プラットフォーム「xoBot corabo(ゾボット コラボ)」を投入する予定だ。 同社では、「xoBot」を契機として今後提供するxoBlosテクノロジーを使った新商品・新サービスを「xoBlos2.0世代」と位置づけ、販売活動を展開していく考えである。 ※RPA(Robotic Process Automation) ロボットによる業務自動化の取り組み。AI(人工知能)や、AIが反復によって学ぶ「機械学習」等の技術を用いて、主にバックオフィスにおけるホワイトカラー業務の代行を担う。人間が行う業務の処理手順を操作画面上から登録しておくだけで、ソフトウェア、ブラウザやクラウドなどさまざまなアプリケーションを横断して処理することができる。 *導入事例:住友林業グループ「予算集計業務を月間180時間削減」
(同社資料よりインベストメントブリッジ抜粋・要約)
(xoBlos導入前の状況) 住友林業株式会社の住宅事業本部住宅企画部業績管理グループは住宅事業の売上管理と決算業務を担当し、月次の損益見込みの集計と年次予算の策定の作業が大きな負荷になっていた。 毎月160組織分の損益見込みデータが各拠点からメールで送付され、担当者が半日かけてエクセルシートに貼り付けて集計。手間もかかり、ミスも起こりがちで、年に一度の予算策定の場合は、拠点ごとに何百項目ものデータが必要になり、集計するのに大きなマンパワーが必要になっていた。 また、同社の情報システム子会社である住友林業情報システム株式会社では、予算の集計は5、6台のパソコンでエクセルを使って、分散して処理していたが、結果が返ってくるまで丸1日間かかるため、その間は他の作業ができない状態であった。 (導入効果) xoBlos導入は期待通りの効果を発揮したという。
エクセルと操作性が変わらないため特に研修などは必要なく、簡単なマニュアルを用意するのみであった。
以前は月次データをユーザーが基幹システムから抽出して一つ一つ転記していたが、xoBlosは基幹システムと連携してデータを引き出せるので、ワンクリックで済み、転記ミスはゼロになった。
各支店で2時間程度かかっていた作業がゼロになったことで、合計で120時間削減できた。また、本部での集計作業もわずか5分で完了し、ミスも根絶することができた。
従来の予算集計システムでは集計結果1回の更新に1分から2分かかるところが、エクセルライクなxoBlosであれば、1秒から2秒で済むようになった。
グループ会社で木造注文住宅の施工・監理を行う住友林業ホームエンジニアリング株式会社には700名の技術(大工)職がいて、どんな技術や資格を持っているかを自己申告するスキルマップシートを作成しており、その集計にxoBlosを利用している。これまでは前年分のスキルマップシートを個人が保管して毎年見直してきたが、xoBlosを使うことで、前年度のシートを配布して過去の履歴を見ながら記入できるようになった。当然、提出もワンクリックで行え、さらに集計機能を使って分布を確かめることもできるため同社にとって重要なスキルの現状分析も簡単に行える。
住友林業ではxoBlosの効果に加えDITの迅速なサポート体制も高く評価しており、グループ全体でのxoBlosのより一層の活用を計画しているということだ。 ◎導入及び販売状況
現在の累計導入社数は310社を超えた。販売に関しては、主力代理店の一つである大興電子通信株式会社(8023、東証2部)とのセミナー共催など、大興電子通信の持つ幅広い顧客層と拠点、販売力を活かすことを中心に営業を展開中。 当初は中堅企業の採用が中心だったが、現場業務の効率化ニーズが増大する中、大企業の導入実績も増加しており、足元では新規導入先の約7割は大企業となっている。 販促のためのセミナーを毎週3回開催しているが、ほぼ毎回満席状態が続いているという。 【1-4 特長と強み】
①多面多様のIT企業
同社は、IT技術の進化と変化に柔軟に対応して業務システム開発事業を皮切りに、コンピュータ販売事業(現・システム販売事業)、組込み開発検証事業、運用サポート事業などに事業領域を拡大すると同時に、その過程で磨き上げてきた技術力をベースに自社による独自製品の開発販売にも取組んでいる。幅広い事業領域と独自性のある自社製品を提供する事の出来る「多面多様のIT企業」である点が同社の大きな特徴である。
②幅広い顧客基盤
取引先は約2,600社で、上場企業及びその関連会社から中小企業まで幅広い。顧客の約7割が直接取引である。 ③部分最適と全体最適の組織戦略
部分最適と全体最適の相反する2要素をバランスよく活かした組織戦略も同社の大きな特徴となっている。部分最適に関しては、カンパニー制度の導入で専門特化したカンパニーを立上げ、その領域でのNo.1を目指すとともに、ベンチャーマインドを持った経営者の育成・輩出を行っている。 全体最適に関しては、本社・本部が事業のスクラップアンドビルド、各カンパニー間のコラボレーション、新規事業領域の開拓など、カンパニーの独自性を尊重しながら、シナジーを追求している。 ④独自性のある自社製品の開発・販売
前述した「xoBlos」及び「WebARGUS」を代表として長年培ってきた技術を活かして様々な独自性のある自社製品を開発している。将来の収益の柱として育成している。
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2018年6月期決算概要 |
8期連続の増収・増益。計画も上回る。
売上高は前期比7.8%増の110億76百万円。エンベデッドソリューション事業が大きく牽引し、自社商品も着実に伸長した。販管費は1桁の伸びにとどまり、営業利益は同20.5%増の7億87百万円となった。8期連続の増収増益で過去最高を更新した。 ◎ソフトウェア開発事業
増収・増益。*ビジネスソリューション事業分野 業務系ソフトウェアは金融を中心に医療・製薬系、社会インフラ系等の業種全般が伸びると共に、運用サポートも好調に推移した。 *エンベデッドソリューション事業分野 大幅増収となった。車載向け開発に関しては全ての顧客向けに順調で大きく増加。IoT向けモバイルアプリ開発が進展したほか、半導体関連の組み込み開発では、車載ネットワーク上のデータを保護し、電子制御ユニット (ECU) への不正接続を防止するセキュアマイコンのソフト開発案件が大きく増加した。 *自社商品事業分野 大幅増収。「WebARGUS」はエンタープライズ版の投入などで大手企業への導入が段階的に進んでいる。 「xoBlos」も製品シリーズ化や、働き方改革の有効ツールとしての認知度向上を背景に案件数が大幅に増加した。 ◎システム販売事業
減収・損失はやや拡大。カシオ計算機株式会社製の中小企業向け「楽一」は前年同期並みで推移した。 負債合計は同1億62百万円増加し14億61百万円となった。 利益剰余金の増加で純資産は同2億7百万円増加し26億21百万円。 この結果自己資本比率は前期末から0.8ポイント低下の63.7%となった。 前期にあった株式の発行による収入が無くなった一方自己株式の取得があったため財務CFのマイナス幅は拡大。 キャッシュポジションは上昇した。 |
2019年6月期業績予想 |
9期連続増収増益へ。
売上高は前期比7.5%増の119億4百万円、営業利益は同26.9%増の10億円の予想。各事業とも増収を見込む。新規事業への投資も継続するが利益率は向上し、2桁増益を見込む。 9期連続の増収増益、過去最高更新を予想している。 配当は中間、期末それぞれ7円/株の合計14円/株を予定。予想配当性向は32.3%。 ◎ビジネスソリューション事業分野
金融を中心に医療・製薬系、社会インフラ系等の業種全般が伸びると共に、運用サポートも好調に推移する。
◎エンベデッドソリューション事業分野
車載向け開発需要が好調で、開発・検証ともに順調。IoT関連案件が広がりを見せており増加する見込み。半導体関連の組み込み開発事業も堅調に推移する。
◎自社商品事業分野
セキュリティ需要の高まり、時短や働き方改革の時流に乗り、「WebARGUS」、「xoBlos」ともに高成長が続く。
(※)ARM(アーム)アーキテクチャ:英国ARM社が知的財産権を持つプロセッサの設計方式であり、スマートフォンや車載機器等の低電力アプリケーション向け半導体チップに広く採用されている。 (※)システムレジリエンス思想:レジリエンスとは、復元力、回復力の意味であり、WebARGUSの瞬間検知・瞬間復旧(検知したら直ぐに元に戻す)の仕組みのことを表す。 ◎システム販売事業
「楽一」の新規販売及びリプレースを中心に、自社商品、ネットワーク機器など販促活動を積極化し増収を見込む。
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中長期成長戦略と資金使途 |
(1)成長戦略概要
同社は中期的なビジネス展開として、幅広い事業領域で安定した取引を重ねて堅固な事業基盤を構築すると同時に、その基盤の上で自社商品を軸とした新しい価値を提供するという二軸で大きく成長する事を目指している。「整備」の16年6月期に次いで、前々期(17年6月期)、前期(18年6月期)を「強化」、来期以降を「拡大・安定化」と位置付けており、中期目標として以下の様に「売上高100億円、営業利益10億円、営業利益率10%」のトリプル10の実現を目指しているが、売上高に関しては前々期17年6月期に達成することができた。 今期営業利益10億円は必達と考えている。 (2)資金使途
更なる企業価値向上に向け、効果的な資金活用を進める。(M&A) 既存ビジネスにおける人材不足の中、ビジネスソリューション系、エンベデッドソリューション系における最適な会社のM&Aを検討している。 (協業・提携) 相互補完する製品やビジネス領域を持つ会社との協業・提携を推進する。 (株主還元) IoTに絡むセキュリティ製品への投資など成長のための大規模投資とのバランスをみながら徐々に配当性向を高めて行く方針である。 |
市川社長に聞く |
Q:「新たに社長に就任され、社内に対しどんなメッセージを送っていらっしゃいますか。」
A:「社長に就任にあたり「不変」と「変化」という2つの言葉を掲げた。変えない部分、変わらなければいけない部分を明確にしたうえで活発な社員とのコミュニケーションを図り、当社の理念やミッションを改めて社内に浸透させていくとともに、意識改革も進めて行く。」 「不変」、社長および経営体制が変わっても変わらない部分は3点ある。 1つ目は、各人の特徴を徹底的に生かすこと。 これは創業者が常日頃述べていることなのだが、完璧な才能・スキルを持った人材を採用することは到底できない。だが、社員各人が持つ特徴や強みを全て合体させて大きなパワーを生み出せば、決して他社に負けることはない。こうした考え方の下、当社では長年に亘り社員の戦力化を図ってきたが、これが当社の強みのベースとなっている。 次に経営理念にある「顧客起点」。 当社ではここから全てが始まると考えており、これからも社内における徹底的な浸透を図る。 3つ目が小さい単位での組織運営だ。 これも創業者の想いなのだが、組織は大きくなると機動力が低下すると同時に、欠点や悪い点が見えなくなりがちだ。当社がカンパニー制を採用しているのもこのためで、今後も社員数が増加すれば新たな組織を作って活性化を図っていく。 続いて「変化」、変わらなければならない部分だが、これも3点ある。 まず1つは、経営体制の変更だ。これまでは創業者の強力なリーダーシップの下で会社運営が進められてきたが、今後は組織による経営を行っていく。 ただ一方で、当社には創業者の指示に従って行動することが重視されがちな傾向があるのも事実だが、今後はこの点は改善していかなければならない。 自主・自律を重視した社員の意識改革を進めて行く。 3点目は当社の重要なステークホルダーである社員への待遇を現在の事業環境にマッチしたものへと変更すること、いうなれば当社の「体幹」を強化することだ。 採用・離職防止の観点から、評価制度・給与・ストックオプションを含めたインセンティブなどの制度設計を構築する。 以上のような「変えない部分」、「変わらなければいけない部分」を明確にしたうえで活発な社員とのコミュニケーションを図り、当社の理念やミッションを改めて社内に浸透させていくとともに、意識改革も進めて行く。
Q:「続いて事業の現況について伺います。御社が目標として掲げている利益率の向上について、ビジネスソリューション事業、エンベデッドソリューション事業、自社商品事業、それぞれの見通しをお聞かせください。」
A:「ビジネスソリューション事業、エンベデッドソリューション事業ともに利益率をさらに改善させることができる余地はまだまだ大きい。 自社製品事業については現状ではまだ収益を生んでいないが、サイバーセキュリティ需要の高まり、時短や働き方改革の時流に乗り、「WebARGUS」、「xoBlos」ともに高成長が続くと見ており、早期の黒字化が達成されれば当社の利益率は大きく上昇することとなろう。 もちろんそのためには顧客の期待に十分応えるだけの成果を上げて行かなければならないのは当然で、今後も対売上高比率1%程度を目途とした積極的な研究開発投資を行っていく。」 また、エンドユーザーとの直接契約も利益率向上に結び付くため、今後は一層新規顧客開拓に注力する。 エンベデッドソリューション事業は当初は携帯電話関連の案件が主だったが、ここ数年車載関連の顧客が中心になっている。 加えて車載関連の顧客の中でも当社がお付き合いさせていただいている顧客は足元の業績が好調な企業が多いため、以前とは違うレベルの利益率を実現することが出来ている。 またビジネスソリューション事業同様、請負スタイルの案件も増加傾向にあり、利益率をさらに改善させることができる余地はまだまだ大きい。 自社製品事業については現状ではまだ収益を生んでいないが、サイバーセキュリティ需要の高まり、時短や働き方改革の時流に乗り、「WebARGUS」、「xoBlos」ともに高成長が続くと見ており、早期の黒字化が達成されれば当社の利益率は大きく上昇することとなろう。 もちろんそのためには顧客の期待に十分応えるだけの成果を上げて行かなければならないのは当然で、今後も対売上高比率1%程度を目途とした積極的な研究開発投資を行っていく。
Q:「では最後に株主や投資家へのメッセージをお願いいたします。」
当社では2016年6月期を起点とする中長期経営計画の中で、5年以内に「トリプル10」、すなわち、売上高100億円、2019年6月期 営業利益を10億円、2021年6月期 営業利益率10%の達成を目指している。A:「今期は中長期経営戦略に掲げた「トリプル10」のうち営業利益10億円必達を掲げ、新経営体制の下、全社一丸となって邁進している。株主、投資家の皆様には、付加価値の向上と変化への対応を通して、安定と成長を目指す当社を中長期の視点で是非応援していただきたい。」 売上高100億円については2017年6月期に達成済みであり、今期は営業利益10億円必達を掲げ、新経営体制の下、全社一丸となって邁進している。 株主、投資家の皆様には、付加価値の向上と変化への対応を通して、安定と成長を目指す当社を中長期の視点で是非応援していただきたい。 |
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<参考:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月13日<基本的な考え方> 当社は、法令を遵守し、経営の透明性を確保して、健全で継続的な企業価値の向上を図ることが、経営上の最も重要な課題と認識しています。 この課題に取り組み、株主その他のステークホルダーに対する社会的責任を果たしていくために、以下のコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。また、今後この体制をさらに強化し、その機能を定期的に検証して、必要な施策を実施することが、重要であると考えています。 <実施しない主な原則とその理由> すべての原則について、2018年6月改訂前のコーポレートガバナンス・コードに基づき記載しております。改訂コーポレートガバナンス・コードに基づく更新は、2018年12月までに行う予定です。 |
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