少子化問題解決をミッションとする婚活業界最大手。同社が開発・運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)の登録会員数は約60,000名にのぼる。「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション、事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤、加盟相談所への手厚いフォローアップ体制などが特徴・強み。2022年「日本の成婚組数の3%の創出」、「売上高300億円、営業利益50億円達成」を目指し、既存事業の強化に加え、シニアマーケット、国際結婚など新市場創造を進めて行く。
【1-1 沿革】
少子化の進行が明確でありながらもその対策がなされていない状況に危機感を覚えていた石坂茂氏(現 株式会社IBJ代表取締役社長)は、日本では少子化対策のためには単なる出会いの機会ではなく成婚カップルを生み出さなければ意味がないと考え、いち早く婚活サイトの開発・運営を手掛け実績をあげていった。
2003年にはその実績に関心を持ったヤフー株式会社がブライダルネットの株式を取得したが、成婚カップルを生み出すにはネットのみでなく人手を介したリアルな機会の提供も不可欠と考えていた石坂氏は、よりダイナミックに婚活支援事業を展開するため2006年に現経営陣によるMBOを実施し、ヤフー株式会社グループカンパニーから独立して株式会社IBJを設立した。
既にネット集客の基盤やノウハウを持っていた同社は、ネット婚活を拡大させながら、2007年には銀座と新宿に直営ラウンジを新規出店し、カウンセラーがサポートを提供するラウンジ事業を開始した。
石坂社長の構想通り、マッチングに際し人手によるサポートを付加することで他社よりも多くの成婚カップルを生み出すことに成功した同社は、並行して結婚相談所ネットワークの構築に乗り出す。
当時日本全国には3,000社以上の結婚相談所があったが、会員とのやり取りやお見合いの日時連絡などを電話・手紙・FAXで行っており、手間の多さや間違いの発生などが結婚相談所運営の大きな課題と見た石坂社長は、IT化によって結婚相談所の事務処理能力を大きく飛躍させるシステムを構築し、日本各地域における仲人のキーパーソンに同システム採用の提案を行った。
当初は理解が進まず苦労を重ねたが、会員集客媒体としての利用に限って提案していくと、毎月コンスタントな会員獲得が進むことから相談所にとっては無くてはならないものになっていった。その後、改めて同システムの利用を提案すると、業務効率を大幅に改善する同システムの有用性も理解され、全国規模で加盟相談所数は増大していった。
加盟相談所および会員数の増大と並行して婚活サイト「ブライダルネット」が日本最大規模のソーシャル婚活メディアへと成長するに伴い業容は急速に拡大し、2012年には大阪証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場。
その後、2014年の東証2部への市場変更を経て、2015年、東証1部へステップアップした。
【1-2 経営理念】
経営理念においては、「すべてのステークホルダーとの縁、つながりを大切にすること」を、クレドにおいては、「顧客満足度の高いサービスを提供すること」を目標として掲げている。
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また、「人と人をつなぐのは、人だと思う。」をブランドステートメントとし、理念としての共有を図っている。
【1-3 市場環境】
<未婚者状況>
*上昇続ける未婚率。交際相手のいない未婚者も増加。
総務省の国勢調査によれば、25-34歳の未婚率は男女とも上昇を続けている。
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また、「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査) 2015年実施」によれば、18-34歳の未婚者のうち、交際相手のいない未婚者の割合も年を追って上昇している。
*未婚者の結婚の意思 ~「結婚する意思」は引き続き高水準~
一方で、結婚する意思を持つ未婚者の割合は18~34歳の男性で85.7%、女性で89.3%となっており、「結婚したい」と考えている未婚者の数は依然高水準である。
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また、「一生結婚するつもりはない」と答えた未婚者の割合が男女とも上昇してはいるが、その中でも今後「いずれ結婚するつもり」に変わる可能性があると回答した割合は、男性44.1%、女性49.8%となっており、今は結婚するつもりの無い層も半数近くは今後結婚に向けて動き出す可能性がある。
*独身でいる理由 ~25歳を過ぎると適当な相手にめぐり会わない~
未婚者に独身でいる理由を尋ねたところ、18~24歳の若い年齢層では、「若すぎる」、「必要性を感じない」など積極的な動機が無いことが多く上げられているが、25~34歳では、「適当な相手にまだ巡り会わない」という理由を挙げる割合が増加しており、出会いやその機会に対するニーズが大きいことが窺える。
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以上のことから、未婚率および交際相手のいない未婚者の割合は上昇しているが、未婚者の多くは結婚の希望がないわけではなく、出会いやその機会が少ないというのが現状である。
ただ、こうした市場ニーズに対し、実際に結婚というゴールまで導くには単なる機会提供(マッチング)では不十分で、結婚相談所による仲人のサポートが不可欠であるということがユーザーへの調査で明らかになっている。
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こうした市場環境の下、同社は日本最大の会員ネットワーク、専任カウンセラーの手厚いサポートなどの強みを活かして、婚活市場のトップランナーとなっている。
【1-4 事業内容】
報告セグメントは、婚活サイトの運営や婚活イベントの企画・開催などを行う「婚活事業」と、婚活事業で構築した会員基盤を活用して事業ドメインの拡大を目指す「ライフデザイン事業」の2つ。
両事業とも複数の事業で構成されている。
(1)婚活事業
以下の各事業を通じて婚活を支援している。
①コミュニティ事業
実績17年の日本最大級のネット婚活サービスサイト「ブライダルネット」の運営を行っている。
月会費は男女同額の3,000円。一般的な婚活アプリやマッチングサービスと比較して男女とも結婚に真剣な人が集まりやすく、それだけ真剣な出会いも多く生まれている。
月間メッセージ交換成立数は58,000件を突破し、月間カップル成立数は約20,000名にのぼる。
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加えて、2018年12月期からは、「婚シェル」という担当スタッフによる婚活サポートをスタートさせた。
婚シェルは、プロフィールの書き方、初デート取り付けのためのやりとりなど、ネット婚活ではありながらも、同社の強みである「ヒト」ならではのきめ細かいサポートを提供している。
収益モデルは、月会費課金者数 × 月会費 約3,000円。
・1ヶ月プラン 3,980円
・3ヶ月プラン 8,640円(1ヶ月当たり2,880円)
・6ヶ月プラン 12,960円(1ヶ月当たり2,160円)
・12ヶ月プラン19,800円(1ヶ月当たり1,650円)
②イベント事業
結婚活動を目的に参加するイベントを企画し、WEBサイト「PARTY☆PARTY」を通して集客を図り、直営・FC合わせて全国44か所(2018年6月末現在)の自社ラウンジで開催するとともに、外部開催の企画型イベントの開催も行っている。
毎月約4,000件のパーティーを開催し、約60,000名が参加している。
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加えて、東証1部上場企業の同社が運営していることも参加者に安心感を与えている。
収益モデルは、イベント参加費 月平均3,500~3,800円×イベント動員数。
③ラウンジ事業
同社の全国13か所の結婚相談ラウンジ「婚活ラウンジIBJメンバーズ」で、会員に対する婚活支援を提供している。
会員数は同社が運営する日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)に加盟している結婚相談所(個人・法人)約1,700か所の登録者も含め約60,000名と業界最大である。
業界最大の会員ベースに加え厳正な入会審査により上質な出会いを提供しているほか、業界最先端の検索システムによるマッチングを提供している。
加えて、婚活プロフェッショナルの専任カウンセラーによる手厚い成婚サポートが大きな特徴である。
カウンセラーは、会員の人柄や性格など、自分自身では気が付いていない魅力を見つけ出し、カウンセラーとしての経験からマッチする相手を紹介するなど、システムだけに頼るのではなく、人の手によって出会いを創造することで成婚の可能性を高めている。
IBJメンバーズの成婚とは「婚約=会員同士がお互いに結婚すると決めること」を指す。
大手結婚相談所の多くは成婚を、結婚を視野に交際した時点としているところが多いが、会員が結婚相談所で活動する目的は結婚のためであることに加え、同社の社会的意義である少子化問題解決に貢献するためにも、婚約を成婚の定義としている。
このため、カウンセラーは例えば両親へのあいさつの段取りなど、成婚までを手厚くフォローしている。
こうした結果、2017年12月期の成婚者数は前期比18.4%増の1,269名、成婚率(2017年7月~12月の半年間での主要コース実績)は51.5%と、ハイレベルな成婚定義でありながらも業界屈指の成婚率を実現している。
またこうした手厚いサポートの過程で会員とカウンセラーの関係性は深まるのが一般的であるため、新婚旅行、保険といった結婚後の様々なシーンに関連するサービスを提供するライフデザイン事業への誘導にもつながっている。
収益モデルは、会費(年換算 約22~24万円) × 会員数。成婚時には別途成婚料20万円が発生する。
④コーポレート事業
前述の日本最大級のネットワークである日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)に加盟している結婚相談所(個人・法人)約1,700か所へのシステム提供のほか、新規開業支援や加盟営業を行っている。
同社では中期経営計画で日本の成婚組数の3%をIBJから創出する事を目標としているが、その達成のためには加盟相談所の新規獲得、既存加盟相談所の育成が不可欠であり、営業人員を増強するほか、相談所ビジネス成功のためのメソッドの提供にも力を入れている。
収益モデルは、加入した相談所の開業加盟金150万円およびシステム利用料約2~3万円×加盟相談所数。
(法人の場合は開業加盟金300万円から)
(2)ライフデザイン事業
婚活事業で構築した会員基盤をベースに、婚活から派生する様々なフィールドにおいてサービスを提供している。
①ウエディング事業
2016年に子会社化した(株)ウインドアンドサンが、創刊25年のウエディング情報誌「WIND AND SUN」を発行するほかWEBSITEも運用し、ウエディング関連の法人に対して広告サービスを提供している。
また、WEBSITE「ウェディング navi」やウェディングサロンの運営を通じた提携結婚式場への送客も行っている。
②旅行事業
2016年に子会社化した(株)かもめが、新婚旅行に加え、海外パッケージツアーの企画、および大手旅行代理店へのツアー提供やオーダーメイド旅行のアレンジ等を行っている。
この他、2017年にソニー生命保険株式会社と株式会社IBJライフデザインサポートを設立。婚活中から結婚、新生活、子育てなどのライフステージに合わせたライフプランニングをサポートしている。
主な収益モデルは以下の通り。
*式場送客費
披露宴などの飲料費の10%(平均5~10万円) × 送客件数
*ハネムーン旅行代金
平均50~70万円 × 成約件数
*保険成約手数料
3~20万円 × 成約件数
【1-5 特長と強み】
(1)「システム × ヒト」のビジネスモデルが支える強固なポジション
同社が運営する日本結婚相談所連盟(IBJお見合いシステム)は加盟相談所数約1,700社、会員数約60,000名と最大であることに加え、婚活サイト・お見合いパーティー・合コンといった様々なサービスの集客力やサービスレベルは業界トップクラスであり、婚活業界において極めて強力なポジションを構築している。
このポジショニングを可能にしているのが、システムとヒト、それぞれの強みを融合させたビジネスモデルである。
システム面では、高いスキルを持つ自社のWebエンジニアチームが独自のシステムを開発・運用している。
そのため、顧客のニーズに的確に対応して、画面の見やすさ、操作しやすさといったUI(ユーザーインターフェース)の改善や、顧客データベース有効活用によるマッチング精度の向上などUX(ユーザーエクスペリエンス)の向上を迅速に行うことが可能であり、会員及び加盟相談所の満足度向上に繋がっている。
一方、ブランドステートメント「人と人をつなぐのは、人だと思う。」にあるように、成婚主義の追求には「ヒト」の力が欠かせないと考える同社では、ひとりひとりの会員に寄り添い、成婚にまで導くために必要不可欠なカウンセラーを独自のスキル教育プログラムで育成している。
このような「システム × ヒト」のビジネスモデルをベースに構築した婚活業界における圧倒的なポジションは高い参入障壁となっている。
(2)事業の成功確率を高める圧倒的な会員基盤=顧客資産
IBJお見合いシステムの会員約60,000名を始めとして、婚活パーティー参加者数 月間約60,000名、月間お見合い数 月間28,000件など、その会員基盤は常に約100,000名が稼働している。
同社ではこの「活きた会員基盤」を使ってライフデザイン事業を始めとした様々な新事業の展開を目指しているが、常に稼働しているため、成功確率を高めることが出来る点が大きな差別化要因になると同社では考えている。
規模だけではなく、常に稼働している会員基盤はバランスシートには表れることはないが、他社にはない同社の優れた顧客資産である。
(3)加盟相談所へのフォローアップ体制
カウンセラーによる会員に対するきめ細かい婚活支援が同社の大きな特徴となっているが、加盟相談所に対しても結婚相談所ビジネス成功のための手厚い支援を行っている。
同社では2007年以来、直営ラウンジにおいて、集客、対面営業(入会)、入会者へのオリエンテーション、お見合いから成婚実現の各局面において様々な手法を実践してきており、その中で効果の高かったもののみをメソッド(方法・方式)として集約し、加盟相談所に提供している。マニュアルではなく成功メソッドであるため、加盟相談所は結婚相談所ビジネスの成功の道を最短で進むことが出来る。
【1-6 ROE分析】
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ROEを目標としては掲げていないが、高利益率を背景に高いROEを実現している。
【1-7 株主還元】
2017年12月期まで5期連続増配で、配当性向は30%を超している。
また下記のような株主優待制度を設け、保有株数に加え、保有期間による優待を実施している。
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