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(3135) 株式会社マーケットエンタープライズ

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ブリッジレポート:(3135)マーケットエンタープライズ vol.1

(3135:東証マザーズ) マーケットエンタープライズ 企業HP
小林 泰士 社長
小林 泰士 社長

【ブリッジレポート vol.1】2018年6月期業績レポート
取材概要「リユースは「店舗型」から「ネット型」へ、「ネット型(C To B To C)」からフリマアプリによる「C To C」へ、というイメージがあったが、全ての・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年9月12日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社マーケットエンタープライズ
社長
小林 泰士
所在地
東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル
決算期
6月末日
業種
小売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年6月 5,630 -7 4 -19
2016年6月 4,863 96 93 49
2015年6月 3,988 237 227 136
株式情報(9/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,050円 5,098,380株 5,353百万円 3.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 15.69円 66.9倍 185.47円 5.7倍
※株価は9/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
東証マザーズに株式を上場するマーケットエンタープライズの会社概要と業績の動向について、小林社長のインタビューと共にご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
販売店を持たずにインターネットを通じて、商材の買取から販売を手掛けるネット型リユース事業を展開。「C to B to C」をベースとしつつも、法人の大型案件にも対応。商品ジャンル毎30種の買取専門サイトを用意し、事前査定を受け付けている。コンタクトセンターで事前査定を行い、買取価格や買取方法を提案する。出張、宅配、店頭(リユースセンターへの持ち込み)の3つの買取方法が用意されており、買い取った商品は全国10カ所に展開するリユースセンターで管理し、販売は、「ヤフオク!」、「Amazon」、「楽天」、「eBay」といった主要Eマーケットプレイスや2015年9月に開設した自社ECサイト「ReRe」を通して行っている。
グループは同社の他、MVNO(仮想移動体通信)事業を展開する連結子会社(株)MEモバイルがある。
 
 
【企業理念“Win Winの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団であり続ける”】
売り手にとっての売却価格(買取価格)の不透明感、買い手にとっての購入した商品に対する不安。リユース品の売買には、こうした不安が常につきまとうが、買取商品の事前査定や販売商品への保証サービス等、各種サースの拡充によって不安を払拭すると共に、顧客に対して安心感・信頼感を提供してきた。このため、買取・販売のための店舗は持たないが、顧客満足度を高めるために不可欠なコンタクトセンターとリユースセンターの整備と拡充には力を入れている。コンタクトセンターで手軽に事前査定を受ける事ができ、買取りも、宅配や店頭買取であれば自分のペースで行う事ができ、出張買取であれば、全国10カ所に展開するリユースセンターが迅速に対応してくれる。この事が業容拡大の原動力となっており、ベースにあるのが、「Win Winの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団であり続ける」という経営理念である。
 
【強み】
強みは、一気通貫のフルフィルメントセンターによる全国均一なサービス、高価買取・低価格販売を実現するローコスト運営、そして、IT×リアルによる利便性に優れ、かつハートフルなサービスである。
 
一気通貫のフルフィルメント(仕入から在庫管理、受注販売管理、配送に至る一連の流れ)による高いコンバージョン率の実現
商材の事前査定や買取方法をナビゲートするコンタクトセンター、宅配・出張・店頭のいずれかによる買い取り、全国(札幌、仙台、埼玉、東京、西東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、福岡)10カ所に展開しているリユースセンターにおける商品メンテナンス、インターネット販売、更には販売後のコールセンター対応まで一貫したサービスを提供する事で、買取依頼から実際の買取に至るコンバージョン率を高めている。
 
高価買取・低価格販売を実現するネット型リユースによるローコスト運営
店舗を持たないネット型リユース業のため店舗運営費が発生せず、「高価買取」、「低価格販売」として店舗運営費分を利用者に還元できる。加えて、在庫を自社開発のシステムで一元管理すると共に販売サイトを多様化する事で、効果的な集客・販売による高い在庫の回転を実現している。
 
IT×リアルによる利便性とハートフルなサービスの実現
ITシステムは全て自社開発し、査定のための商品データベースを一元管理している。このため、買取価格は、対象商品のこれまでの落札価格のデータベースを基に確実に売れて利益の取れる価格が設定され、査定の際、この買取価格が売却希望者に迅速に伝える体制が構築されている。
商品は自社サイトの他、多くのマーケットプレイスに同時に出品されるが、落札されたら在庫が連動して消去され、売れない場合は更に値下げして売る、というオペレーションが自動化されている。
加えて、顔の見えないインターネットでの取引に不安を感じる利用者に配慮して、コンタクトセンターでの事前審査(業界初)やリユースセンターでの出張買取等、安心して利用できるようにリアルによるハートフルなサービスが用意されている。

同社は、「IT×リアル」によって、自社開発である最先端「IT」の利便性と、人が提供するハートフルなサービスである「リアルオペレーション」を同時に実現する事で、独自性かつ優位性を実現している。また、一点一点異なる商品の膨大なデータベースを一元管理して運用する「IT×リアル」の強みを活かして、農機具、建機、医療機器等、新たなビジネスにチャレンジしている。
 
 
【沿革】
現在、代表取締役社長を務める小林泰士氏が独立・起業して始めた個人事業をルーツとする。使い捨てカメラの電池のリユース事業からスタートし、電池販売での出店をきっかけにフリーマーケットの主催業務(企画・制作・運営)に展開した。全国的なリユース品へのニーズの高まりを背景に、使い捨てカメラの電池から取扱商品の幅を広げ、リユースとフリーマーケットの主催業務との二本柱で業容が拡大。2006年7月に法人組織に改組し、(株)マーケットエンタープライズを設立した。

2007年7月にはネット型リユース事業を開始。2008年10月にカテゴライズされた「高く売れるドットコム」を開始する等、徐々に成長著しいネット型リユース事業に軸足を移していった。2010年12月に東京リユースセンターを開設し、その後、大阪、名古屋へとリユースセンターのネットワークを拡大。2013年10月には、ネット型リユース事業に経営資源を集中するべく、フリーマーケット事業を譲渡。2015年6月に、東証マザーズに株式を上場した。
2006年 7月 会社設立
2007年 7月 ネット型リユース事業開始
2010年 12月 東京リユースセンター開設
2012年 3月 大阪リユースセンター開設
2013年 1月 名古屋リユースセンター開設、7月 横浜リユースセンター開設
2014年 6月 福岡リユースセンター開設
2015年 3月 埼玉リユースセンター開設、6月 東証マザーズに株式を上場、10月 神戸リユースセンター開設
2016年 4月 仙台リユースセンター開設、6月 徳島コンタクトセンター開設
2017年 2月 中古農機具買取サービス開始、6月富裕層向け買取りコンシュルジュサービス「プライベートバイヤー」のサイト開設、7月 宅配レンタルサービス「ReReレンタル」スタート、9月 西東京リユースセンター開設
2018年 1月 札幌リユースセンター開設、2月 中古建機買取サービス開始、4月 中古医療機器買取サービス開始
 
※ 中古農機具買取サービス
トラクター、コンバイン、田植機、耕運機等を対象に、コンタクトセンター及びWebで受付を行い、最短で当日の出張買取を行う。提携陸送業者を通じて直接国内オークションに持ち込み、国内外の事業者に販売する。
※ 中古建機買取サービス、中古医療機器買取サービス
油圧ショベル等の建機や重機、医療機器を対象に、中古農機具買取サービスと同様の流れでサービスを提供する。
 
 
 
2018年6月期決算
 
 
法人向けリユース等の新規ビジネスをけん引役に前期比12.5%の増収、前期4百万円にとどまった経常利益が94百万円に拡大
売上高は前期比12%増の63億33百万円。在庫戦略の見直しに伴い、個人向けリユースが55億34百万円(17/6期55億12百万円)と前期比微増にとどまったものの、法人向けリユース(農機具、建機、医療機器)や通信等の新規ビジネスの売上が前期の1億19百万円から7億99百万円に増加した。
営業損益は前期の7百万円の損失から96百万円の利益に転換。在庫処分損の増加(△98百万円)に加え、西東京リユースセンター及び札幌リユースセンターの開設や人件費増加に伴い販管費も4.5%増加したものの、売上の増加で吸収した。
 
期初予想との差異
今後の展開を見据えた在庫戦略の見直しに伴い、ブランド品等の高価格帯かつ長期滞留商品の在庫の適正化を進めたため、売上高が予想を下回った。一方、新規ビジネスとして注力している農機具や通信は利益率が高く、これら商品の好調が利益の上振れ要因になった。
 
新規ビジネス
・法人向けリユース:農機具、建機、医療機器
・通信他:インターネット(WiMAX2+回線)契約を中心としたとMVNO事業「ME mobile」
    :買取仕入れによる商品ラインナップを強みとする「ReReレンタル」
・Webメディア(月間230万PVを誇るメディアに成長)
「ビギナーズ」:趣味を始めたい人や趣味を見つけたい人を応援(https://www.rere.jp/beginners/)
「iPhone格安SIM通信」:iPhone・Wi-Fi・WiMAXの情報を発信(https://www.kashi-mo.com/media/)
「高く売れるドットコムマガジン」:買取・売却ノウハウ、各地域の粗大ごみ回収方法等、リユース関連情報を発信
(https://www.takakuureru.com/magazine/)
 
 
西東京リユースセンター(2017年9月、東京都府中市)及び札幌リユースセンター(2018年1月、札幌市)の開設による仕入基盤の強化と地域展開の加速による仕入れの増加に加え、17/6期に開始した中古農機具取扱いの本格化、18/6期期初(2017年7月開始)に開始した宅配レンタルサービスやヤフー(株)との連携による買取サービス(カウマエニーク)の開始(2017年11月)の寄与もあり、18/6期第4四半期は増収ピッチが加速し、収益性も改善した。
ヤフー(株)との連携による買取サービス「カウマエニーク」は、ヤフー(株)が運営する買取サイト「カウマエニーク」で受け付けた買取依頼商品を同社が出張買取し、“ヤフオク!”に出品して売却する。買取依頼者は、買取代金を、銀行振込、現金、Tポイントで受け取る事ができ、Tポイントの場合は商品査定価格に期間固定Tポイントが上乗せされる。
 
 
期末総資産は前期末と比べて2億92百万円増の18億29百万円。安定性と流動性に優れた財務体質を有する。具体的には、現預金が総資産の51.3%(前期末53.7%)を占め、自己資本比率も51.7%(同59.4%)と高い。また、100%を超えていれば短期的な支払い能力は安全とされる流動比率250.0%(同337.7%)、100%未満であれば長期的にも安全とされる固定比率35.3%(同18.9%)。
 
 
営業CFは営業利益(96百万円)を大きく上回る2億45百万円。投資CFのマイナスは西東京及び札幌リユースセンター開設に伴う有形固定資産の取得、2018年5月に発表した中古建機販売プラットフォーム「ALLSTOCKER」を運営するSORABITO社への出資によるもの。96百万円のフリーCFを確保した。
 
 
19/6期は売上高当期純利益率が改善に転じ、総資産回転率の改善も続いた。19/6期の業績が期初予想に沿った着地であれば、ROEは8%程度に高まるものと思われる。
 
 
2019年6月期業績予想
 
 
前期比21.6%の増収、同70.5%の経常増益予想
売上高は前期比21.6%増の77億円。農機具を中心に新規ビジネスの売上が、ほぼ前期比倍増する見込み。既存ビジネスも、西東京リユースセンターと札幌リユースセンターの通期稼働による仕入の増加に加え、ヤフー(株)との連携による買取サービス(カウマエニーク)の寄与もあり、増収が見込まれる。営業利益は同65.8%増の1億60百万円。売上総利益率の保守的な想定の下、人員増強に伴う人件費の増加や新規ビジネス関連の投資に加え、前期に開設したリユースセンターのコストが通期で発生する事もあり、販管費が30億34百万円と同18.6%増加する見込みだが、売上の増加で吸収する。
 
 
(2)今後のイメージ
同社の根幹であり、基盤領域と位置付ける「C to B to C」のネット型リユースで持続的な売上拡大と生産性向上を実現し、その上で、農機具、建機、及び医療機器といった専門領域を育成していく。専門領域は、「C to C」のネット型リユース企業には参入障壁が高いうえ、グローバルアクセスも可能。既存マーケットの商流をリプレイスする「IT×リアルのOnly 1プレイヤー」を目指していく。更に、長期持続的な成長を実現するべく、レンタル、メディア、モバイル等、リユース以外の新領域での収益基盤の確立に取り組んでいく。
 
 
 
社長インタビュー -小林社長に聞く-
 
同社は2015年6月の東証マザーズ上場以降、リユースセンターの整備や新規事業の育成等による先行投資が利益を圧迫していたが、先行投資を吸収して利益を増やせる体制が整ってきた。19/6期は経常利益が1億62百万円と前期比70.5%増加する見込みで、来20/6期には15/6期の過去最高(2億27百万円)更新が視野に入る。東京都中央区の本社にお邪魔して、お話を伺った。
 
小林社長は2003年に東洋大学工学部(現理工学部)を卒業。その後、ベンチャー企業を経て2004年に独立して、使い捨てカメラの電池のリユース事業を開始した。その後、電池販売での出店をきっかけにフリーマーケット(以下、フリマ)の運営に転じた。集客を目的にスーパー等でフリマを開催し、スーパー等から手数料を徴収する一方、出店料を無料にするビジネスモデルを確立。全国36都市で800以上のフリマを開催したが、フリマビジネスに限界を感じ、ネット型リユース事業に転じた。経験や人脈が少ない段階で成功の確率を上げるには、人がやっていない「Only One」の事業を手掛ける事が重要、と言うのが小林社長の考え。電池のリユース、出店料無料のフリマ、ネット型リユースは、いずれも同社がパイオニアである。
 
【ネット型リユースによる新たな市場の創造】
「マーケットエンタープライズ」という社名の由来を教えてください。
小林社長: “市場を創出していきたい”、と言う思いを社名に込めて、13年前に当社を設立しました。ネット型リユースを日本で最初に始めたのは当社です。累計240万人の方にご利用いただき、毎月3~4万件、全国から買取りのご依頼が寄せられています。インターネットでの買取依頼数としては、日本では最大規模です。ネット型リユースという市場の創造には貢献できたのではないでしょうか。「Win Winの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」という経営理念を掲げているように、これからもネット型リユースを中心に市場を創出していきたい、と考えています。

ただ、ネット型リユースに至るまでに、2度ビジネスモデルを変更しました。「格安電池.com」という使い捨てカメラの電池のリユースからスタートして、その後フリーマーケットです。36都道府県で延べ800回のフリーマーケットを開催しました。日本で最も多くのフリーマーケットを開催した企業という事になります。電池のリユース、フリーマーケット共に順調に立ち上がり、軌道に乗りましたが、マーケットサイズと言うのでしょうか、事業の成長性の面で限界を感じました。
 
創業以来、リユースにかかわる事業で、マーケットの創造に取り組んできたのですね。その取り組みの中で、ネットとリユースを結び付けた事が飛躍のきっかけとなり、大きく展望が開けたという事ですね。
小林社長: Eコマースも伸びていましたし、リユースも伸びている中で、日本で最初の総合ネット型リユースという事もあり、順調に伸びていきました。もっとも、単に市場の拡大に任せていた訳ではありません。この業界は不透明で、お店に行くまでは価格が分からない・・・、自宅に来てもらうまでは価格が分からない・・・、そういう不安感がありましたから、当社は過去の落札相場等を基に事前に金額が分かる仕組みをつくり、業界で初めて事前査定を導入しました。Webだったり、電話だったり、気軽に買取りのご依頼を頂き、「その商品であれば、いくらですよ」と事前に金額をお伝えした上で、その金額で宜しければ、商品をお送りください、と。ユーザーにしてみれば、不透明感がなく安心できます。こうした「Only One」の取り組みが、評価された事も大きかったと思います。
 
価格データベースも含めて、事前査定のシステムを自社で構築したのですか。
小林社長: そうですね。システムによる「事前査定の仕組み」と、リアルも含めた「宅配・店頭・出張による買取の仕組み」を構築し、対象となる商品を広げていく事で、多種多様な買取依頼にお応えできるようにしていきました。商品の販売もシステム化されています。自社で店舗を持たず、自社ECサイト「ReRe」や、「ヤフオク!」、「Amazon」、「楽天」、「eBay」といったECの主要マーケットプレイスを通して販売していますが、各リユースセンターの商品が全てのサイトに同時に出品され、売買が成立すれば、在庫が自動的に消し込まれるようになっています。
システムと共に重要な役割を担っているのが、お客様との接点になるリアルのコンタクトセンターとリユースセンターです。上場までのフェイズでは、システム化とサービス体制の整備に取り組みました。
 
【差別化した独自サービスの提供に向け、先行投資と試行錯誤が続いた上場後】
御社が機会ある毎に説明している「IT×リアルによる利便性とハートフルなサービス」ですね。ただ、上場後は売上が伸びる一方、利益面で苦戦しました。上場後の取り組みや業績の背景についてお話しいただけますでしょうか。
小林社長: 9期目(2015年6月)に東証マザーズに上場しました。上場後は、しっかりと成長戦略を進めていこうという事で、買取サイトの増設(Only One商品の拡充)とサービス拠点の整備・拡充に取り組みました。農機具、建機、医療機器の買取り事業を立ち上げ、リユースセンター4拠点とコンタクトセンター1拠点を開設しました。この他、モバイルの子会社も設立しましたから、これらの投資が負担になりました。

この6月に終わった18/6期であれば、西東京(2017年9月)と札幌(2018年1月)にリユースセンターを開設しました。17/6期は農機具の買取り、レンタル、富裕層向け買取りコンシュルジュサービスのサイトを開設しました。16/6期には、神戸(2015年10月)と仙台(2016年4月)のリユースセンターの開設に加え、コンタクトセンターを徳島(2016年6月)に開設して、東京(東京都墨田区)との2拠点体制としました。徳島への進出では、徳島市の企業誘致制度の適用を受けました。徳島市はベンチャー企業の進出条件等も良く、サービスの拡充はもちろん、人材育成の場としても活かしていく考えです。
買取りと在庫管理業務を行うリユースセンターは、現在、全国に10拠点を展開しています。1ヶ所に集約して効率を追求する考え方もありますが、リユースの場合、買取りをさせていだたいて初めて商売ができる訳ですから、物流拠点が全国にあるという事が競争戦略上重要であると考えています。お客様に近い方が当社は買取りのための移動コストや時間を抑える事ができますから、その分高く早く買取る事ができますし、売り主の方の換金も早くなります。この事と取扱う商材の幅広さ、そして「事前査定」が、リユースの需要が高まる中で評価されてきた、と考えています。今後の拠点展開につきましては、先ずは既存拠点のブラッシュアップに取り組みますが、政令指定都市が20都市ありますから、その中での展開を考えていきたいですね。
 
西東京リユースセンター
更なるニーズが見込まれる首都圏の対応力を強化。
札幌リユースセンター
ニーズがありながらも、地理的制約でリーチできていなかった地域への対応。
 
新規事業として立ち上げた、農機具、建機、医療機器の買取りも興味深いですね。御社ならではの発想ではないでしょうか。
小林社長: 上場時の買取サイトは26サイトでしたが、上場後に、農機具、建機、医療機器を立ち上げました。総合買取りサイトReReを含めて、現在30サイトです。農機具、建機、医療機器は、いずれもフリマアプリを使った「C To C」では対応できない分野です。個人間の取引は洋服や雑貨等が中心で、平均単価は1,500~2,000円ですが、農機具、建機、医療機器のように単価が高くなると、本物なのか?本当に使えるのか?等の不安が大きくなりますし、保証も必要になります。また、大きいものになると、個人では、梱包や運送が問題になります。昨今、「C To C」が話題を集めていますが、大型、高額、大量、専門、企業在庫、あるいは国をまたぐ取引等は、「C To C」では成り立ちにくいのが現状です。先ほど、個人間の取引の平均単価が1,500~2,000円とお話ししましたが、当社の平均単価は約2万円台後半です。現在は総合リユースとして、多種多様な買取依頼にお応えしていますが、もともとニッチな分野で需要を掘り起こし、ニッチ分野を増やしてきた結果、気が付くと総合リユースになっていました。当社が得意とするニッチ分野は、「C To C」では成り立ちにくい分野です。リユース市場は成長が続いていますが、未だリユースが活発でない分野は少なくありません。
 
なるほど、フリマアプリ等を使った「C To C」では対応が難しい分野ですか・・・。私自身、リユースは「店舗型」から「ネット型」へ、そして、フリマアプリを提供する企業の好調を目の当たりにして、「ネット型(C To B To C)」から「C To C」へ、というイメージがありましたが、言われてみればその通りです。リユースが可能なモノ全てが、御社の事業の対象になり、フリマアプリで取引されている商品は対処の中の一部でしかない。御社は、数多くある対象の中で強みを発揮できる分野にフォーカスしていく、と言う事ですね。
 
小林社長: おっしゃる通りです。当社が得意としている分野が「C To C」では成り立ちにくい分野である事を、投資家の皆さんにしっかりとお伝えしていかなければならないと考えています。リユースで一番大きなマーケットはブランド品で、これに書籍やCD/DVD等が続きますが、当社はこうした商品を避け、ニッチな分野やOnly Oneの分野で需要を掘り起こし、こうした分野を増やす事で総合リユースになりました。言わば、ニッチ・Only Oneの集合体です。農機具、建機、医療機器も、この方針に沿った分野です。
 
また、富裕層向けの買取サービスとして提供している「プライベートバイヤー」というサービスがあります。金融機関の方等から、ご紹介を頂くケースが増えていますが、この分野も「C To C」では難しい分野です。当社の専門バイヤーが、ご自宅にお邪魔して査定をさせていただく訳ですが、富裕層の方に受け入れていただく事自体、ハードルが高いと思います。この他、ヤフーさんやAmazonさんとの提携で出張買取サービスを提供してしますが、当社がパートナーとして選ばれたのは、多種多様な商品を全国対応で買取りできる企業は当社以外にないからだと思います。
 
お話を伺って、思慮深さと言いますか、戦略性の高さと言いますか、御社に対するイメージが変わりました。ただ、上場後は通期の売上が期初予想を下回る事が少なくありませんでした。思い通りにマーケットが成長していない部分もあったのでしょうか?
小林社長: マーケットの拡大基調が続く中で、色々な商材を試してきました。例えば、高単価なブランド物の時計や骨とう品等です。チャレンジした事自体は悪い事ではないと考えていますが、高価な商品は想定したほど回転率が高くなく、なかなか思ったようにはいかないな、というのが正直なところです。このため、決算期毎に在庫の適正化を行ってきました。例えば、Rolexの時計等は、100万円で仕入れて103万円で売るようなビジネスですから、利益率は低いのですが、取扱いを減らすと売上へのインパクトは大きくなります。結果として、売上が期初予想に届かず、在庫処分等で利益面でも影響を受けました。ただ、自社の得手不得手を見極め、得意なジャンルに磨き込みをかける中での事です。予想に届かなかった事は大変申し訳なく思いますが、買取りの需要が想定に届かなかったとか、検索が想定を下回ったと言う事ではありませんから、前向きに評価していただければと考えています。
 
ところで、御社の売上総利益率(粗利率)は同業他社と比べると低いように感じますが、高く買って安く売っている結果でしょうか?
 
リユース事業の粗利率は、扱う商品で決まります。基本的に単価が低い商品は粗利率が高く、単価が高い商品は粗利率が低くなります。先ほど、ご説明したように当社が扱う商品は高単価なものが多いですから粗利率は低くなります。ただ、店舗を持たない事で不動産費用や人件費を抑える事と、ローコストで生産性と回転率を高める事で競争力を生み出しています。上場時は6%程度の経常利益率がありましたから、その辺りが当面の目標といえば目標と言えますが、成長期と位置付けていますから利益率よりも成長です。成長していく事で株主の皆さんに報いていこうと考えています。この3年間で様々な事を実施してきましたが、成長戦略の下、引き続きスケールアップに取り組んでいきます。
 
【持続的な成長に向けた専門領域・新規領域の育成】
なるほど、勉強になりました。ところで、農機具、建機、医療機器といった新しい分野は、上場後の事業展開の中でヒントを得て始めたのですか?
小林社長: 有難うございます。上場前から頭の中にはありました。日本経済は成熟し、高齢化も進みますが、リユースマーケットには追い風です。リユースは社会的なニーズだと思います。社長の平均年齢が61歳、就農者の平均年齢は67歳くらいです。また、美術品ですとか、骨とう品等を含めた日本人が保有する資産の2/3は65歳以上の方が保有しているというデータもあるようです。その一方で、残念な事ではありますが年間120万人の方が亡くなられ、8年度には200万人と言われています。資産だけでなく、様々な所有物が、所有者が代わり、流動化していく転換期を迎えているのではないでしょうか。このため、リユースのマーケットは更にスケールアップしていくと考えています。農機具、建機、医療機器は、流動化していく所有物の一部に過ぎません。
取り扱いが順調に増えている農機具の場合、農家戸数の減少が続いており、農林水産省の統計によると平成27年(2015年)の戸数は平成12年(2000年)に比べ約69%。経営規模の縮小・廃業で農機具の処分に迫られても、処分費用への不安や買取先がわからない等で扱いに苦慮するケースが少なくなるようです。その一方で、新規に就農される若い方が増えていますし、海外でも、品質が高い日本製の中古農機具は評価されています。
これを買い取って販売する訳ですが、物流のノウハウが必要になります。当社は、自社の物流だけでなく、陸送会社さん等との提携も活かして、様々なご要望にお応えしています。インターネットで「トラクター買取り」等のキーワードで検索すると、一番上に当社が表示されます。こうした集客力に加え、コンタクトセンターとリユースセンターで買取りのご要望にきめこまかく全国対応できる事が当社の強みです。
 
 
18/6期上期決算の説明で、「フォームの改良によって農機具買取りのアクセスが増えた」とご説明をいただきましたが、どういう事でしょうか。
小林社長: ユーザーインタフェイスの改善も含めて、入力フォームを、使いやすく、見やすくしました。これまでに発売された農機具とその中古価格のデータベースを構築していますから、当社のWebサイトで入力フォームに農機具の型番や年式等を入力すると、人の介在なしに概算の買取価格を確認できます。あくまで概算金額ですが、事前査定はこれまでになかったサービスです。農機具の買取りは、サービス開始から1年が経過して、だいぶ形になってきました。
 
(デモを拝見して)なるほど、こんなに簡単に金額がわかるのですね。建機や医療機器については、いかがでしょうか。
小林社長: 建機はスタートして1年も経っていない育成中のサービスですが、「建設機械買取り」で検索をかけると一番上に表示されます。海外でも人気がありますよ、日本の建機は。農機具と同じようにインターネットを介しての買取窓口の強みと陸送等のノウハウが活かされています。所有者は個人の方よりも、建設会社やンタル会社の方が多いのですが、強みである価格の透明性と検索の容易さに加え、法人取引におけるECの一般化もあり、引き合いが増えています。陸送会社さんや建機を扱う商社等の協力を得て、ブラッシュアップに取り組んでいるところです。
医療機器の国内リユースマーケットはこれからですが、海外には既に大きなマーケットがあり、日本のリユース品は人気があります。日本は未だ閉鎖的ですね。ですから、しっかりとビジネスを立て付ける必要があります。先ず、内視鏡や超音波診断装置等、日本メーカーのシェアが高い分野に力を入れていきます。海外では医療機器が高くて子供が十分な医療サービスを受けられない、といった事が現実として起きています。国際的な社会貢献という意味からも力を入れたいサービスです。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」にも適うサービスであると考えています。もともと、リユースというビジネス自体、持続可能なビジネスですから、昨今の時代の要請に適っている訳ですが。
農機具もそうですが、新規事業の商品の流れは既存事業とは異なります。既存のサービスは全てリユースセンターを介しますが、農機具や建機は、陸送会社さんの物流拠点を利用させていただく等で、直接、オークション会場へ運ぶケースがあります。
 
農機具、建機、医療機器のいずれの分野も、既存プレイヤーが存在するのでしょうね。既存プレイヤーとの競合についてはどのように考えれば宜しいですか。
小林社長: どの分野も既にリユースはあるのですが、確立されたものがある訳ではありません。例えば、自動車であれば2次流通市場が確立されていますから、お売りになる場合、どこを選ぶかですが、農機具の場合は、農協への依頼であったり、メーカーへの依頼であったり、地域差も大きく、確立されたものがありません。このため、既存の業者さんと共にリユース市場を育てていこうという考えです。当社は、既存の業者さんと異なり、インターネットを介してマーケットを育てていく事になります。
 
既存の業者とは棲み分けが可能で、御社はインターネット上にマーケットプレイスを作って、全国均一のサービスを提供していこうという訳ですね。話は変わりますが、新規事業としてレンタルサービスも始めましたね。
小林社長: 自動車のカーシェアの人気に象徴されるように、モノを持たずに楽しみたい、という時代です。当社は日本で一番買取依頼の多い会社ですから、在庫を連動させる事で、販売するだけでなく、レンタルも可能になります。全国配送等のノウハウも蓄積されています。特に、家電、楽器、カメラ等で、ニーズが強いようです。いい楽器で趣味の演奏をしてみたい、あるいは結婚式等での演奏や撮影に使いたいから式場に届けて欲しい、宿泊先のホテルに届けて欲しい等、配送先も含めて様々なニーズがあります。集客はオウンドメディア「ReReレンタル」で行っております。
 
農機具リユース等の軌道化で在庫回転日数が改善傾向。
 
【中期展望と投資家へのメッセージ】
在庫を連動させる事で、売るもよし、貸すもよし、と言う事ですね。先ほども少し触れられましたが、オウンドメディアや通信事業の育成にも取り組まれています。レンタルもそうですが、農機具、建機、医療機器よりも更に先を見据えての事だと思いますが、中長期的な事業イメージをお話しいただけますでしょうか。
小林社長: 基盤領域、専門領域、新規領域、の3本の矢といった形です。リユースを基盤としつつも、コングロマリット化して、時代にあったビジネスを展開していきます。
上場してからの3年間は、リユースセンター4拠点とコンタクトセンター1拠点を開設し、農機具、建機、医療機器を立ち上げ、モバイルの子会社の設立やレンタル、メディアといった事業も立ち上げました。成長戦略を3本の矢に切り替えると共に、生産性向上に取り組んだ3年間でした。

今期以降、3本の矢の成長戦略を進めていく訳ですが、基本は基盤領域です。引き続き、商品カテゴリーを広げ、拠点を拡充していきます。生産性の向上にも取り組み、社内業務の半自動化等で商品カテゴリーが増えても、問い合わせに迅速に対応できる体制を維持していきます。専門領域では、農機具、建機、医療機器のように「C To C」では対応できない分野やグローバルアクセスできる分野を開拓・育成していきます。新規領域は、現在では、MEモバイル、レンタル、メディアになりますが、これらはネット型リユースよりも収益性が高い事が特徴です。こうした領域でも、事業を育成・拡大させていきたいと考えています。
冒頭の話ではありませんが、「Win Winの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団であり続ける」という経営理念の下、市場を創出していく主体的な集団として業務に取り組んでいくという事になります。
 
なるほど、総じて言えば、市場の創出に行き着く訳ですね。それでは、最後に株主・投資家の皆さんへのメッセージをお願いします。
小林社長: 上場後の3年間につきましては反省すべき点も多いのですが、ベンチャー企業は高い目標を掲げてチャレンジしていかなければなりません。計画をしっかりと達成していく事も大切ですから、投資家の皆さんの期待を裏切らないよう体制を整えつつ、引き続き攻めていきたいと考えています。
19/6期のテーマは「RIZING」。「登っていくぞ!」という思いを込めました。駆け上がっていく1年間にしたいと考えています。ネット型リユースは既存の店舗型リユースを置き換えていく過程にあり、未だ成長市場です。また、農機具、建機、医療機器とった「C To C」では対応できない専門領域では当社が市場を創造していきます。コンタクトセンターとリユースセンターを整備・拡充し、更なるシステム化による生産性の向上にも取り組み、しっかりと伸ばしていきたいと思います。こうした点にご理解を頂き、引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
 
リユースの不透明感払拭、システム化による顧客の利便性向上とローコストオペレーション、「C To C」では対応できない分野の開拓と拡充、そして高齢化の進展による資産の流動化を見据えた事業展開等、興味深いですし、御社やリユース事業に対するイメージも変わりました。
長時間にわたり、丁寧なご説明を頂き有難うございました。小林社長と株式会社マーケットエンタープライズの益々のご活躍とご発展をお祈り申し上げます。
 
 
今後の注目点
リユースは「店舗型」から「ネット型」へ、「ネット型(C To B To C)」からフリマアプリによる「C To C」へ、というイメージがあったが、全てのリユースに「C To C」が対応できる訳ではなく、国策でもある循環型社会への取り組みが進めば進むほど、「C To C」で対応できないリユース分野が増えるだろう。こうした考えが同社の成長戦略のベースになっていると思われ、実際の成長戦略は高齢化社会も念頭に立案されている。そして、この戦略を可能にするのが、有店舗リユースにはない無店舗リユースならではの機動力と、「C To C」にはないコンタクトセンターとリユースセンターによる対応力である。このため同社については、既存のリユース事業者を基にした先入観を捨てて見る必要があるだろう。
来20/6期は過去最高となったマザーズ上場時(15/6期)の経常利益2億27百万円の5年ぶりの更新を視野に入れた展開となる。越えなければならないハードルも多いのだろうが、最高益の更新は通過点に過ぎないと考えた方が良さそうだ。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書   更新日:2017年10月2日
基本的な考え方
当社は、「WinWinの関係が築ける商売を展開し、商売を心から楽しむ主体者集団で在り続ける」という創業以来の経営理念を常日頃より体現すべく、公正で透明性が高く、迅速で効率的な経営に取り組むことを基本的な考えとしております。その実現のため、少数の取締役による迅速な意思決定及び役員相互間の経営監視をはじめとした組織全体でのコンプライアンスの徹底、ディスクロージャーの充実等により、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、従業員等各ステークホルダーと良好な関係を築き、長期的視野の中で企業価値の向上を目指すべく経営活動を推進しております。
 
<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの基本原則を全て実施しております。