ブリッジレポート
(4312) サイバネットシステム株式会社

スタンダード

ブリッジレポート:(4312)サイバネットシステム vol.2

(4312:東証1部) サイバネットシステム 企業HP
田中 邦明 社長執行役員
田中 邦明 社長執行役員

【ブリッジレポート vol.2】2018年12月期上期業績レポート
取材概要「通期予想に対する進捗率は、売上高55.1%(通期実績ベースの前年同期52.4%)、営業利益67.1%(同58.6%)、経常利益66.1%(同56.6%)・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年9月5日掲載
企業基本情報
企業名
サイバネットシステム株式会社
社長執行役員
田中 邦明
所在地
東京都千代田区神田練塀町3 富士ソフトビル
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年12月 17,987 1,504 1,639 937
2016年12月 16,031 1,027 1,001 462
2015年12月 15,518 851 1,003 463
2014年12月 15,396 810 974 596
株式情報(8/17現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
822円 31,158,269株 25,612百万円 6.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16.52円 2.0% 33.02円 24.9倍 453.15円 1.8倍
※株価は8/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
サイバネットシステムの2018年12月期上期決算の概要と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
“CAEソリューション”と“ITソリューション”を事業の柱として、“ものづくり”を支援している。CAE(Computer Aided Engineering)とはコンピュータによる工学支援の事で、コンピュータ上で仮想設計し、仮想実験(シミュレーション)する事。“ものづくり”において、高品質、開発期間の短縮、及び開発コストの削減を実現すると共に、試作実験に伴い発生する廃材の削減を通して環境にも優しい。同社は、世界的に実績のある10社以上・50種類以上の多彩なソフトウェアのライセンス販売・保守サービスや業務の受託サービス等を、自動車、機械、電機等の約2,000の企業や500の研究機関・大学へ提供している。

グループは、連結子会社13社。北米、英、仏、独、ベルギー、アジアに展開し、主な連結子会社のうち、開発子会社は3社あり、公差解析(設計時に設定した寸法のバラツキの許容範囲)ソフトウェアを開発・販売・技術サポートしているSigmetrix.L.L.C.(米)、数式処理システムのWATERLOO MAPLE INC.(カナダ)、PIDO(Process Integration Design Optimization:最適化支援)ツールの開発・販売・技術サポートのNoesis Solutions NV(ベルギー)。代理店子会社は3社あり、CAEソリューションのCYBERNET SYSTEMS(SHANGHAI) CO.,LTD. (上海)、CYBERNET SYSTEMS TAIWAN CO.,LTD.(台湾、出資比率57%)、及びCYFEM Inc.(韓国、同65%)がある。
 
 
【企業理念(Corporate Philosophy)】
企業理念は、「私たちは高付加価値、高品質のサービスをもって、満足度の高い“ソリューション”を提供し、顧客と社会の発展に寄与する」。「つくる情熱を、支える情熱」(Energy for Innovation)をメッセージとして掲げ、いつも顧客と共に歩み、頼りにされる、顧客にとって、CAEの「First Contact Company] を目指している。
 
【事業内容】
当事業は、CAEソリューションや関連する技術サービス等を提供するCAEソリューションサービス事業とITソリューションやデータソリューションのITソリューションサービス事業に分かれ、CAEソリューションサービス事業が全体の80%以上を占める。
 
 
CAEソリューションサービス事業
CAD (Computer Aided Design:コンピュータによる設計支援)システムと連動して解析・シミュレーションを行うCAEソフトウェア(以下、ソフト)やハードウェア(以下、ハード)の販売や技術サポート等の代理店ビジネス及びベンダービジネスに加え、顧客の高度な要求にソリューションを提供するコンサルティングサービス、電子回路や基板の設計、モデルベース開発(MDB、後述)、更には最適設計支援等のエンジニアリング(受託)サービス、及び、セミナー、ユーザーカンファレンス、事例発表会の開催等のユーザー教育・支援サービスを提供している。
 
CAE6応用分野と開発子会社・販売子会社
当セグメントの動向は、同社(個別)が提供する6つの応用分野と開発子会社及び販売子会社に分けて説明されている。

CAE6応用分野
①MCAE(Mechanical CAE)
CADでのデザインが終わった後に、構造、伝熱、電磁場、熱流体等の解析をサポートするソフトウェア及びサービスを提供する。主力商品は、米ANSYS Inc.製品のマルチフィジックス(複数の物理的な力)の解析ツール「ANSYS」。

②光学設計
レンズ設計などの光学解析、照明解析、光通信システム解析及び有機ELや光学部材特性等の測定ツールやソリューション、及びサービスを提供する。主力商品は、米Synopsys社製「CODE V」(光学設計評価プログラム)、同「LightTools」(照明設計解析ソフトウェア)など。

③EDA(Electronic Design Automation)
電子機器や半導体の設計を自動化するソフトウェア、及びプリント基板設計・解析・製造/実装までの運用提案・設計解析サービスを提供する。主力商品は、米Mentor Graphics社製「Xpedition Enterprise」、同「HyperLynx」など。

④MBD(Model Based Development)
MBDとは構想・設計・検証といった開発プロセスを数理モデルに基づき実施する設計手法。主力製品は、同社グループのMaplesoft社製品であり、STEMコンピューティング・プラットフォーム「Maple」や同システムレベルモデリング・シミュレーションツール「MapleSim」など。

⑤テスト・計測及びその他
テスト・計測分野では、同社が開発したFPD(Flat Panel Display)自動検査システムなどの提供。その他の分野では、同社グループ製品である3次元公差マネジメントツール(評価対象の組立部品寸法、部位バラツキ評価を基にしたコストと品質の最適化)、最適設計支援ツール(解析の自動化、ロバスト制御・信頼性評価、品質工学適用等)に加えて、CAE技術教育サービスなどを提供している。

開発子会社
3次元歩公差解析ソフト(歩留まり計算ソフト)「CETOL 6σ」の開発・販売・技術サポートを行うSigmetrix.L.L.C.(米)、様々な物理現象を数式化(見える化)する数式処理ソフト「Maple」や1D CAEソフト「MapleSim」の開発・販売・技術サポートを行うWATERLOO MAPLE INC.(カナダ)、及びPIDO(Process Integration Design Optimization:最適化支援)ソフト「Optimus id8」の開発・販売・技術サポートを行うNoesis Solutions NV(ベルギー)の3社。

販売子会社
CAEソリューションのCYBERNET SYSTEMS(SHANGHAI) CO.,LTD. (上海)、CYBERNET SYSTEMS TAIWAN CO.,LTD.(台湾) 及びCYFEM Inc.(韓国)の3社。
 
ITソリューションサービス事業
ITソリューション分野とデータソリューション分野に分かれる。ITソリューションでは、サーバー・クライアントPC等のウイルス感染・情報流出等を防ぐSymantec社のエンドポイント・セキュリティ製品や「SKYSEA Client View」(SKY社)・「ISM CloudOne」(クオリティソフト社)等のIT資産管理ソリューション、データベース開発支援やアプリケーション性能管理等、企業のITインフラを支える様々なソリューションを提供している。

一方、データソリューションでは、CAE解析データを分かりやすく可視化する可視化ソリューションや、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)、ビッグデータ等、ものづくり支援につながるデジタルソリューションを提供している。AR関連ではARアプリ開発ツールやARコンテンツ配信システム等、VR関連ではVR設計レビュー支援システムや3次元アプリケーション合成表示ソフトウェア等、ビッグデータ関連では自社製品ビッグデータ可視化ツール「BIGDAT@Viewer(ビッグデータビューア)等を提供している。
この他、顧客の環境に応じた運用コンサルティング、導入支援、ユーザー教育支援等のサービスを提供している。
 
 
 
 
2018年12月期上期決算
 
 
前年同期比14.1%の増収、同18.9%の営業増益
売上高は前年同期比14.1%増の107億48百万円。CAEソリューションサービスが同15.7%、ITソリューションサービスが同13.2%、と共に二桁の増収。CAEソリューションサービスでは、主力のMCAE分野及び光学設計分野が好調に推移する中、MBD(Model Based Development)が伸びた。ITソリューションサービスでは、セキュリティ関連ソリューションの新規ライセンス販売等が増加した。

営業利益は同18.9%増の10億48百万円。自動車用照明設計プラットフォーム(光学設計分野)やSymantec社製品等、相対的に原価率の高い商品の売上構成比上昇で売上総利益率が1.7ポイント低下する中、人員増による人件費の増加や新製品開発に伴う研究開発費の増加等で販管費が増加したが、売上の増加で吸収した。補助金収入の増加と為替差損益の改善で営業外損益が改善した他、事業譲渡益4億94百万円を特別利益に計上した事で四半期純利益は9億53百万円と同64.7%増加した。

同社が重視する経営指標である、のれん償却前営業利益は同16.7%増の11億91百万円(計画:10億60百万円)、EBITDAは同17.2%増の13億52百万円(同:12億14百万円)。
 
 
 
 
CAEソリューションサービス
売上高89億74百万円(前年同期比15.7%増)、営業利益15億87百万円(同10.6%増)。商品構成の変化で利益率が低下したものの、MCAE分野や光学設計分野を中心に売上が増加した。分野別の動向は下記の通り。

MCAE分野では、主力の米ANSYS Inc.製品(マルチフィジックス解析ツール)の新規ライセンス販売が自動車・機械・精密機器業界を中心に増加した他、オプション機能を標準搭載した新パッケージの寄与もあり、保守契約の更新も順調に進んだ。エンジニアリングサービスも、自動車・精密機器業界のモデルリダクションや解析自動化の需要増で増加した。

光学設計分野では、運用や開発環境構築の支援を含めた提案戦略が奏功し、自動車関連業界からの大型受注に成功した自動車用照明設計プラットフォームの新規ライセンス販売が伸びた。一方、主力商品の米Synopsys社製「CODE V」(光学設計評価プログラム)は、保守契約の更新が進んだが、新規ライセンス販売が前年同期と同水準にとどまった。米Synopsys社製「LightTools」(照明設計解析ソフトウェア)は保守契約の更新が進んだものの、新規ライセンス販売が減少した。

EDA(Electronic Design Automation)分野では、機械・精密機器業界を中心にプリント基板(PCB)エンジニアリングサービスの売上が増加したものの、米Mentor Graphics社製「Xpedition Enterprise」や「HyperLynx」等の電子回路基板設計ソリューションは、半導体関連製品が増加したものの、電気機器業界の落ち込みが響き、新規ライセンス販売・保守契約の更新共に減少した。

MBD(Model Based Development)分野では、熱問題対策ニーズの増加で同社グループ製品である1D CAEツールの新規ライセンス販売が、機械・精密機器及び電気機器業界を中心に増加し、保守契約の更新も進んだ。モデルベース開発のエンジニアリングサービスは、自動車業界からの自動運転及びMBSE関連の引合いの増加が続く中、EV関連の引合いも増加した。

上記の他、テスト・計測分野では同社が開発したFPD(Flat Panel Display)自動検査システムは電気機器業界向けのパイロット機としての受注があり、光学関連測定器も、高精度散乱測定器が医療機器で使われる散乱部材の測定用途での受注があった。一方、その他分野では、同社グループ製品である最適設計支援ツール、3次元公差マネジメントツール共に保守契約の更新が進んだものの、新規ライセンス販売が減少した。
 
 
 
ITソリューションサービス
売上高19億76百万円(前年同期比13.2%増)、営業利益2億16百万円(同4.8%減)。Symantec社製品等、比較的原価率の高い製品を中心に売上が増えた事で営業利益が減少した。分野別の動向は下記の通り。

ITソリューション分野は、Symantec社製品等のセキュリティ関連ソリューションの新規ライセンス販売が、情報通信業界向け大型受注(月額提供ライセンスモデル)で増加した他、保守契約の更新も進んだ。また、「SKYSEA Client View」(SKY社)・「ISM CloudOne」(クオリティソフト社)等のIT資産管理、データベース開発支援、アプリケーション性能管理等のソリューションの新規ライセンス販売も、輸送用機器業界からの大型受注により増加。保守契約の更新も進んだ。

一方、データソリューション分野は、VR製品バーチャルデザインレビューやMRデバイスを用いた作業支援システム等の開発請負サービスの受注で、AR及びVR分野が増加したものの、イノベーション支援ソリューションの新規ライセンス販売が減少した他(保守契約の更新は進んだ)、医用可視化エンジニアリングも、前年同期の教育・官公庁からの大型受注の反動等で減少した。
 
 
 
 
上期末の総資産は前期末と比べて5億99百万円増の214臆8百万円。売上の増加で売上債権・仕入債務が増加した他、好調な業績を反映して純資産が増加。一方、償却と為替の影響でのれん(2億69百万円減。うち1億25百万円が為替の影響)が減少した。自己資本比率68.0%(前期末67.6%)。
 
 
 
2018年12月期業績予想
 
 
業績予想に変更なく、前期比8.5%の増収、同3.7%の営業増益予想
18/12期は中期経営計画の達成に向けた「先行投資の期」との位置付け。人材投資と共にグループ製品のブラッシュアップ及び新製品開発に力を入れる。人件費(国内外で20名程度増加)や開発費(1億円強増加)の増加に加え、基幹システム(ERP)の更新に伴う1億円以上のコスト増も織り込んだ。

売上面では、前期は第4四半期にOEMが想定以上に獲得でき、うち1件は本来今期分だったが顧客の事情で前倒し契約した事等を踏まえて保守的な予想にとどめた。また、同社の業績は上期偏重の特徴があり、特に第3四半期(7-9月)は例年売上が弱含みとなる。

配当は、1株当たり上期末8.26円、期末8.26円の年16.52円を予定(配当性向50.0%)しており、1.47円の増配となる。
同社は、配当性向50%または純資産(株主資本)配当率3.0%のうち、いずれか高い方を配当金額決定の参考指標とし、合わせて今後の企業価値向上に向けての中長期的な投資額を勘案した上で、総合的な判断により決定する事を利益配分の基本方針としている。
 
 
中期経営計画(15/12~20/12期)
 
15/12期から20/12期にかけての6年間(前期:15/12~17/12期、後期:18/12~20/12期)にわたる中期経営計画が進行中である。中期経営計画は、「サイバネット独自の価値の提供」、「自動車分野への注力」、及び「パートナーとの連携強化」、を基本戦略とし、最終20/12期の数値目標として連結売上高300億円(14/12期153.9億円)、連結営業利益30億円を掲げている。

17/12期に終了した中期経営計画前期は8.0%超の営業利益率目標を達成した。「サイバネット独自の価値の提供」では、注力したマルチドメインソリューション(後述)開発の国内売上高が14/12期の127億円から17/12期の146億円に拡大し、「自動車分野への注力」では、国内売上高に占める自動車関連分野の売上高が14/12期の12.0%から16.4%に上昇。ベンダービジネスの拡大に向けた「パートナーとの連携強化」では、販売パートナー数が81社から123社(52%増)に増加し、パートナー向けのOEM売上高が4.5億円から5.5億円(23%増)に増加した(OEM売上高はほぼ営業利益に等しく、利益面でのインパクトが大きい)。
 
【後期(18/12期~20/12期)  -収益性の改善を伴ったトップラインの引き上げ-】
代理店ビジネス及びコンサルティングビジネスにおいて2桁成長と営業利益率10%を、ベンダービジネスにおいては2桁成長と営業利益率20%を目指している。既存ビジネス及び前期(15/12期~17/12期)に開始した新規ビジネスの拡大に加え、後期(18/12期~20/12期)に開始する新規ビジネスの寄与を見込んでおり、既存ビジネスについては、17/12期の173億円から226億円(平均成長率9.4%)へ、前期に開始した新規ビジネスについては、「1D CAE+3D CAEマルチドメインソリューション」などを7億円から34億円へ、それぞれ拡大させる。後期からの新規ビジネスについては、「MBSE(後述)による拡大マルチドメインソリューション」を39億円規模に育成する。
 
基本戦略
サイバネット独自の価値の提供
中期経営計画後期では、浸透しつつある“1DCAE+3DCAEマルチドメインソリューション”を引き続き推進すると共に、更なる開発効率の向上に寄与するべく、“MBSEによる拡大マルチドメインソリューション”を展開していく。MBSEとは、複数の専門分野にまたがって、開発工程全般を数式モデルベースで進める開発手法。“MBSEによる拡大マルチドメインソリューション”では、1Dの前段階である0Dから検証までを一気通貫するソリューションを構築する。子会社の技術に加え、同社自身が持つCAEやMDBの長年の技術サポートとコンサルティング実績が強みだ。長期的には、MBSEプラットフォームを構築し、プラットフォームビジネスとしての展開を考えている。MBSEプラットフォームの構築に当たって不足する技術については、パートナー連携や約100億円の余裕資金を活用したM&Aで取り込んでいく考え。
 
自動車分野への注力
ADAS(先進運転支援システム)、EV、Connected Car等の開発が進む自動車分野は技術的チャレンジが受け入れられやすい分野である。このため、同社は様々な技術領域でソリューションを提供していく。具体的には、センサー領域、コントローラ領域、構造機能設計領域、及び情報通信領域を挙げる事ができる。特にセンサー領域では、個々のセンサーの機能を融合させたフュージョンセンサの開発も始まっている。搭載するセンサーの増加は安全性に比例するが、限られた自動車のスペースではセンサー搭載数に限界がある。このため、フュージョンセンサが注目されており、開発時間の短縮と開発コストの削減には“MBSEによる拡大マルチドメインソリューション”が不可欠だ。また、各領域での解析プロセスを自動化・統合化し社内リソースの有効活用と開発期間の短縮を実現する最適設計支援ソフト「Optimus id8」の提案にも力を入れる。
 
パートナーとの連携強化
グローバル&ローカルな販売・サポート体制の構築に取り組むと共に、OEMを推進していく。具体的には、子会社事業の拡大に向けた北米・欧州・アジアでのグローバル代理店網の構築と国内での新製品の販売拡大に向けた代理店網の構築に取り組み、CAEソリューションに強みを持つ海外コンサルティング企業とのパートナー連携も強化していく。
一方、OEMについては、これまで同業者向けのOEMが中心だったが、今後はIoT(Digital Twin)分野に展開してエンドユーザー向けに力を入れる。メーカー各社が、製品の販売だけでなく、メンテナンスやアフターフォローにも収益機会を求める傾向を強めており、CAEが開発だけでなく、保守にも利用される可能性が出てきた。この一環として注目を集めているのが、IoTとCAEを活用してプラットフォームを構築し故障原因や不具合原因の解析を事前に行うDigital Twin(デジタル ツイン)分野である。Digital Twinとは、物理世界の出来事をデジタル上に再現して故障原因や不具合原因の解析を事前に行い、故障や不具合の発生を予測する概念やシステムの事。IoTを活用した故障原因や不具合原因の事前解析ではセンサー情報を基に故障や不具合を予想するが、Digital Twinでは、これと並行して実際の利用状況と同じ環境をコンピュータ上で再現し、故障原因や不具合原因の事前解析を行う。
 
事業ドメイン別戦略、グローバル戦略、及び応用分野別戦略
基本戦略の下、事業ドメイン別戦略、グローバル戦略、応用分野別戦略を進めていく。
 
事業ドメイン別戦略
収益性の高いベンダービジネスとコンサルティングを伸ばし、代理店ビジネスについては販売テリトリーを広げる事で売上を拡大させつつ売上構成比を下げていく。17/12期には32%(58億円)だったベンダービジネス&コンサルティングの売上構成比を20/12期には36%(108億円)に引き上げ、代理店ビジネスの売上構成比を68%(122億円)から64%(192億円)に低下させる。代理店ビジネスではベンダーとの関係を強化してマルチドメインソリューションと技術サポートで付加価値を追求すると共に販売テリトリーを広げる。
代理店ビジネスは、事業拡大余地が大きいアジア地域を重視する。マーケットとしては、ADAS、EV、Connected Car等での需要が見込める自動車分野やDigital Twin(※1)関連等のIoT分野に力を入れる。MBSEの展開により、差別化を図っていく考えだ。
※1 Digital Twin:物理世界のできごとをデジタル上に再現し、事故原因・不具合原因の解析等を事前に予測する
 
グローバル戦略
日本での事業を拡大させつつ、海外売上比率を引き上げる。北米地域は10%(18億円)から14%(42億円)へ、欧州地域は4%(7億円)から6%(18億円)へ、アジア地域は7%(13億円)から11%(33億円)へ。CAE市場の地域別シェアは、北米地域40%、欧州地域30%、日本を含むアジア地域30%と言われており、同社は海外での事業拡大余地は大きい。販売代理権を取得し、アジア、アセアン、インドへと販売テリトリーの拡大で代理店ビジネスを展開していく他、北米・欧州地域で、アライアンスや資本提携による現地での販売パートナーの開拓やコンサル企業とのパートナー連携を強化し、子会社製品をOEM中心に拡大させる。欧州地域では特にドイツ市場に注力する。一方、日本では、子会社製品のOEM提供に力を入れると共に、グループ連携強化によりMBSEビジネスを推進する。また、CAEソリューションとITソリューション(セキュリティ、資産管理、ビッグデータ可視化等)との連携も強化する。
 
応用分野別戦略
CAEソリューションは、17/12期に146億円だった売上高を20/12期に245億円に拡大させる。主力のMCAE(17/12期実績65億円→20/12期目標95億円)では、中国・台湾の販売子会社との連携強化で、アジアでのANSYS社製品の拡大を図る。また、2018年1月に取り扱いを開始した機構解析ソフト(動きを解析する)の販売を強化する。機構解析ソフトはANSYS社製品と緊密に連携できるため、ANSYS社製品ユーザーに対して機構解析ソリューションを展開していく。光学設計(34億円→52億円)では、中期経営計画前期に本格参入した自動車分野(ヘッドライトの解析ソリューション)の拡大を図る。EDA(5億円→9億円)では、競合からのリプレイスによる販売拡大に取り組む。MBD(31億円→60億円)では、北米及び欧州でモデルベース解析ソフト「1D CAEツール」のOEM展開を進めると共に、国内で自動車関連をターゲットにMBSEソリューションを展開していく。その他(11億円→29億円)では、子会社Sigmetrix,L.L.C.(米国)が手掛ける3次元公差解析ソフト「CETOL 6σ」が伸びる。同ソフトは2017年後半に世界3大CADの全てをサポートできるようになった事が追い風になる。世界3大CADとは、仏Dassault Systèmes社「CATIA」、米PTC社「Creo Parametric」、及び独Siemens AG社「NX」だが、これまで独Siemens AG社「NX」をサポートしていなかった。この効果でSigmetrix,L.L.Cの17/12期は売上が前期比30%増加し、営業利益率は20%を超えた。

ITソリューションでは、17/12期に34億円だった売上高を20/12期に55億円に拡大させる。ITソリューションでは、既存の「セキュリティ、IT資産管理、クラウドソリューション」による三本柱戦略に加え、クラウドでのCAEの提供に取り組む。現状ではクラウドでのCAEソフトの提供は一般的ではないが、同社は今後の普及が期待できると考えている。
データソリューションでは、取り組みを進めている、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)及びビッグデータとCAEの連携強化に加え、新規事業として、医療可視化ビジネスを進める。医療可視化ビジネスとは、オリンパス、昭和大学医学部、及びAI周りを担当する名古屋大学との連携による国家プロジェクトであり、大腸内視鏡の画像処理ソフトの開発を進めている(2020年の販売開始を目指している)。
 
 
今後の注目点
通期予想に対する進捗率は、売上高55.1%(通期実績ベースの前年同期52.4%)、営業利益67.1%(同58.6%)、経常利益66.1%(同56.6%)、当期純利益92.6%(同61.7%)、と順調。業績予想を据え置いたのは、第2四半期(4-6月)のCAEの新規契約の伸びが前年比で若干鈍化した事及び4Qに海外子会社で見込む大型商談の利益インパクトが大きいことも要因のようだ。しかし、CAE市場は自動車の電子・電気化やIoTの普及・拡大を背景とする成長市場だ。CAE自体も、MBD/MBSEやDigital Twinに代表されるように、今なお技術革新が続いている。このため、目先の業績よりも、成長市場の流れに乗っているか否かの見極めの方が大切。基本戦略の下で進める、事業ドメイン別戦略、グローバル戦略、応用分野別戦略の進捗に注目していきたい。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書       更新日:2018年03月12日
基本的な考え方
当社は、あらゆる企業活動の場面において関係法令の遵守を徹底し、社会倫理に適合した行動をとることを、「サイバネットグループコンプライアンス行動指針(以下「サイバネット行動指針」という。)」として掲げております。これは、全てのステークホルダーに対する当社の基本姿勢であります。また、当社はコーポレート・ガバナンスにおける基本的な考え方としてサイバネット行動指針を尊重し、経営の健全性の確保、アカウンタビリティ(説明責任)の明確化、適時かつ公平な情報開示に努めております。そして、経営判断の迅速化と業務執行の監督機能強化を図るとともに、リスク管理及び牽制機能が効いた組織づくりに努めております。
 
<実施しない原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則につきまして、全てを実施しております。
 
<開示している主な原則>
[原則1-4 いわゆる政策保有株式]
当社では、いわゆる政策保有株式としての上場株式を保有しないことを原則としております。ただし、業務提携その他経営上の合理的な理由から保有する場合には、目的に応じた保有であることを検証の上、合理性を定期的に確認いたします。

[原則1-7 関連当事者間の取引]
当社では、関連当事者との重要な取引においては、取引内容の合理性及び妥当性について、取締役会において十分に審議した上で決議しております。また、必要に応じて法務部門が社外の専門家の意見を踏まえるなどし、審査を行ってまいります。なお、支配株主との取引については、後項「I.4.支配株主との取引等を行う際における少数株主保護の方策に関する指針」をご覧ください。

[原則5-1 株主との建設的な対話に関する方針]
当社は、IR担当部門を設置しており、同部門の担当役員は、管理部門の担当役員として、管理部門間の有機的な連携を図っております。また、同部門は、四半期に一度、代表取締役、および担当役員に対し、IR活動報告を行っております。なお、インサイダー情報の管理に関しては、後項「V.2.(3)ディスクロージャーポリシー」及びホームページに掲載しております「情報開示基準(ディスクロージャー・ポリシー)」を下記URLよりご覧ください。
(情報開示基準(ディスクロージャー・ポリシー))
http://www.cybernet.jp/ir/ir_policy/standard/

なお、当社の主なIR活動は次のとおりです。
(1) 決算説明会(年1回)
(2) 中期経営計画説明会(年1回)
(3) 株主総会(年1回)
(4) 個人投資家向説明会(不定期)
(5) 機関投資家向個別面談(随時)
(6) 電子メールによる情報提供(随時)