売上高について
各講座の受講者は受講申込時に受講料全額を払い込む必要があり(同社では、前受金調整前売上高、あるいは現金ベース売上高と呼ぶ)、同社はこれをいったん「前受金」として貸借対照表・負債の部に計上する。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金が月毎に売上に振り替えられる(同社では、前受金調整後売上高、あるいは発生ベース売上高と呼ぶ)。損益計算書に計上される売上高は、「発生ベース売上高(前受金調整後売上高)」だが、その決算期間のサービスや商品の販売状況は現金ベース売上高(前受金調整前売上高)に反映され(現金収入を伴うためキャッシュ・フローの面では大きく異なるが、受注産業における受注高に似ている)、その後の売上高の先行指標となる。このため、同社では経営指標として現金ベース売上高(前受金調整前売上高)を重視している。
季節的特徴について
同社の四半期毎の業績推移は次のとおり。なお、現金ベース売上高(前受金調整前売上高)は受講申し込み金額を集計した売上高を、発生ベース売上高(前受金調整後売上高)は受講申し込み金額を教育サービス提供期間に対応して配分した後の売上高を、それぞれ表している。
同社が扱う公認会計士や税理士などの主な資格講座の本試験が春から秋(第1~第3四半期)に実施されることや、公務員講座など大学生が主な顧客となる講座の申し込みは春から夏(第1~第2四半期)に集中する等の特徴があるため、第4四半期は申し込み(現金ベース売上高)がその他の四半期に比べて少なくなりやすい傾向がある。一方、賃借料や講師料、広告宣伝費などの営業費用は毎月一定額が計上されるため四半期ごとの偏重は無い。
減収減益
現金ベース売上高は前年同期比4.2%減の49億47百万円。発生ベース売上高は同2.1%減の56億7百万円。法人研修事業、人材事業が増収、個人教育事業は減収。
現金ベース営業利益は同5.6%減の8億49百万円。発生ベース営業利益は同21.6%減の5億61百万円。売上原価は外注費中心に同0.8%減、販管費は広告費中心に同1.3%減少したが、吸収しきれなかった。
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講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は前年同期比0.5%増の31億51百万円。
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講師料、営業のための人件費など営業費用は前年同期比2.4%増の8億40百万円。
【出版事業】
増収・減益
(TAC出版)
増収
宅建士、社労士、FP、マンション管理士、医療関連は増収
簿記は減収
サッカー ロシアW杯観戦ガイド、旅行本が寄与
(W出版)
減収
司法書士は減収。
営業費用は、翻訳本出版に係る費用や販路拡大のための販促費用を中心に減少した一方、人件費や返品等に備えて設定する引当金の純繰入額が増加したこと等により、同4.2%増の6億39百万円。
【人材事業】
増収・増益
人材事業は会計業界の全体的な人材不足を背景に、人材紹介は堅調、人材派遣は前年並み。
広告売上は人プロモーション用ビデオ制作の受注が一巡したこともあり減収。
医療系人材サービスでは、(株)医療事務スタッフ関西は、兵庫県内において国民健康保険に係る業務を新規に受注するなどにより増収となったが、病院などに派遣する医療事務人材の獲得は依然として厳しい。
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【マーケット概要】
同社が取り扱う各種資格試験の2017年の本試験申込者は258万1千人と、前年の260万9千人を約2万8千人下回り、3年ぶりの減少となった。
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(財務・会計分野)
公認会計士講座は、一般企業への就職にシフトする受験生も多く受験経験者向けのコースは低調に推移。簿記検定講座は試験区分の改訂によりやや難化した影響もあり2級を中心に申し込みが低調だった。
(経営・税務分野)
税理士講座は、税理士試験全体的な受験者数の減少の影響で減収。
(金融・不動産分野)
宅地建物取引士やFPは講座への申し込み及び試験対策書籍が好調。建築士、不動産鑑定士、マンション管理士、ビジネススクールなど多くの講座で増収。
(公務員・労務分野)
公務員講座(国家一般・地方上級)は、民間の良好な就職状況の影響等により、それぞれ減収。
(情報・国際分野)
語学講座やCompTIAが堅調。
(医療・福祉分野)
社会福祉士及び介護福祉士の試験対策書籍売上が貢献。
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講座別(個人・法人合算)動向
<増加>
宅地建物取引士講座(同9.6%増)、建築士講座(同34.9%増)、FP講座(同15.1%増)、ビジネススクール(同44.1%増)など。
<減少>
公認会計士講座(同7.3%減)、税理士講座(同3.8%減)、中小企業診断士講座(同7.8%減)など。
法人受講者は、通信型研修が同19.8%増、大学内セミナーが同8.2%減、提携校が同11.4%減、委託訓練が同3.7%減。
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現預金の減少等で流動資産は前期末比7億94百万円減少。投資その他の資産の減少等で固定資産は同67百万円減少し、資産合計は同8億61百万円減少の207億56百万円となった。
長短借入金および前受金の減少等で、負債合計は同11億91百万円減少の151億34百万円となった。純資産は利益剰余金の増加等で同3億29百万円増加の56億21百万円。
この結果、自己資本比率は前期末より2.6%上昇し27.1%となった。
(6)トピックス
◎電験三種講座を開講
2018年10月、新規講座として「電験三種講座開講」を開講することとした。
(電験三種講概要)
電験三種(第三種電気主任技術者)は、商業ビルや工場などの電気設備(事業用電気工作物)の工事、維持及び運用の保安の監督を行う国家資格であり、事業用電気工作物の設置者には、電気事業法によって電気主任者を選任することが義務付けられるなど、電気設備を安全に利用するため社会的に非常に重要な仕事を担っている。
電気は、一般家庭はもちろん、商業ビル、工場、鉄道など我々の日常生活に密接に関わる社会のインフラとして必要不可欠なものであり、電気主任技術者は今後も将来性が十分な資格である。
最近の電験三種の受験申込者数は6 万5 千人前後で推移し、合格率(合格者の受験者数に対する割合) は 8%前後となっている。
同社では、公認会計士や税理士、不動産鑑定士など難関資格試験対策を得意としており多くの合格者を生み出してきたが、これまでに蓄積してきた合格ノウハウや効率的なカリキュラムに加え実務経験に長けた優秀な講師陣を配置し、電験三種でも多くの合格者を輩出していきたいと考えている。