同社では、これまで
「2020年 取扱高 1,000億円、各事業のNo.1確立」を目標として掲げてきたが、「エアトリ」への投資による旅行事業の成長加速、投資事業の回収フェーズ、ITオフショアやBTMなどストック収益の安定成長、キャンピングカー事業や両替事業など新規事業の収益化、M&Aの推進によるスケール拡大などを鑑み、
「2019年 取扱高1,000億円達成」と1年前倒しでの達成を目指すことした。
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また、17年9月期より「投資事業」を第4の事業として位置づけ、報告セグメントとした。
各事業における成長戦略及び最近主なトピックスは以下の通りである。
(1)オンライン旅行事業
①総合旅行フラットフォーム「エアトリ」
国内航空券販売市場は約1.5兆円という巨大市場であるが、オンライン宿泊予約業界の「じゃらん」、「楽天トラベル」のような圧倒的ブランドがまだ存在していない。
じゃらん、楽天トラベル合わせてオンライン宿泊予約市場の約4割のシェアを有していると見られるが、オンライン国内航空券販売市場では最大手の同社でも約2%となっている。
そこで、同社では前期に新ブランドとして立ち上げた「エアトリ」を、徹底したサービス内容によってオンライン国内航空券販売市場における圧倒的NO.1ブランドとする考えだ。
「既存サービスで行っているWEB広告による集客コストを削減し、顧客へのポイント還元に徹底」、「顧客に対し航空券購入代金の2%を還元」、「エアトリ」で付与されたポイントは航空券購入時に使用できるだけでなく、Gポイントを経由して各種共通ポイント、航空マイル、ギフト券などのポイントに交換が可能」といった、業界最大級の顧客還元を実施する。
また、WEB、電話、メールに加えチャットでの問い合わせ対応もはじめたほか、スムーズで直観的な操作性で圧倒的に使いやすいユーザーインターフェースを実現し、ユーザーの利便性を追求。
顧客に対し最もおトクで、最も便利なサービスを提供する。
同社では「エアトリ」を総合旅行プラットフォームと位置付けており、これまでの国内航空券に加え、国内宿泊、海外航空券、民泊の販売を開始した。今後も順次商材を拡大する。
また、オンライン航空券業界NO.1という実績、徹底した顧客還元が「エアトリ」の強みと考えているため、顧客還元に関しては国内航空券で利益を確保し、他商材については徹底して利益を顧客に還元する方針である。
商材の拡大・統合により、ポイントの相互利用が可能となったため、国内宿泊予約では業界最大級の7%のポイント還元を実現している。
≪トピックス≫
◎積極的なプロモーションを展開
ブランド確立には認知度の向上が不可欠である。
*TVCMを放映開始
札幌、福岡、沖縄エリアで人気漫才師を起用したTVCMの放映を開始した。反応は大変良好ということで、今期中に巨大市場である関東・関西でも放映を開始する予定だ。
*メールマガジン最大手「まぐまぐ社」とのアライアンス
2017年10月、メールマガジン最大手である株式会社まぐまぐを子会社化した。
まぐまぐのメルマガ、メディアを活用し「エアトリ」の販路拡大を始めとした事業シナジーを追求する。
(詳細は、「投資事業」の項を参照)
◎商材の拡充
17年11月、「エアトリ」で航空券と宿泊施設をセットにした国内旅行商品(パッケージ商品)の取り扱いを強化することを目的とし、沖縄、北海道への国内旅行商品(パッケージ商品)に強みを持つ株式会社エヌズ・エンタープライズを子会社化した。同社は日本航空専売認可代理店であり、日本航空の国内チケット仕入れに大きく貢献するものと考えている。
エヌズ・エンタープライズの今期(18年9月期)取扱高は約100億円を見込んでおり、2020年の取扱高目標1,000億円達成に向け大きく前進すると会社側は考えている。
また、今期より従来からの主力商品である国内航空券に加え、海外航空券の販売も強化する。
②BTM(Business Travel Management)市場
日本におけるビジネストラベルマネジメント(BTM)市場は、6.4兆円規模であり、そのうち国内移動・国内宿泊は約1.8兆円規模と言われている。ビジネストラベルマネジメント(BTM)導入によって、出張経費の10~20%削減に繋がるとの調査結果があるものの、航空券利用に関しては過半数の企業が出張経費管理を行っていないという背景から、今後更なる拡大が見込まれる。
具体的な施策としては、営業パートナーを拡大し、市場開拓のスピードアップを図っている。
また、航空券以外の商材としては、「新幹線+宿泊パッケージ」の取り扱いを開始予定。今後も、あらゆる出張ニーズに対応する。
(トピックス)
◎クライアント数は着実に増加
17年9月末時点でのBTM事業クライアント数は前年9月末比で485社増加の1,152社となった。
安定したストック収益拡大に繋がっている。
(2)訪日旅行事業
民泊プラットフォームの構築、海外旅行会社との提携、両替事業やキャンピングカー事業の展開などによりインバウンド需要を様々な形、ルートで取り込む。キャンピングカーレンタル事業では売上国内No.1を目指し、自社保有台数は2020年には300台まで増強する予定。
≪トピックス≫
◎中華系旅行会社との提携
2017年5月に中国最大の旅行会社Ctrip.comと国内航空券領域においては日本初となるシステム連携に向けた業務提携契約を締結したのに続き、17年11月、中国OTAのQunar社が運営する「Qunar.com」の旅行検索システムとエボラブルアジアの国内航空券予約サイトと、システム連携することで合意した。このシステム連携により、Qunar.Comで、日本の国内航空券を、団体旅行やパッケージツアーを利用しない個人手配の中国人旅行客向けに提供を開始する。この提携によりエボラブルアジアはCtrip.comに次いで、中国のOTA最大手2社へ国内航空券の提供をすることとなった。
また同じく17年11月、台湾最大手の旅行会社である雄獅旅行社股份有限公司(ライオントラベル)が運営するオンライン旅行予約サイトへ訪日台湾人を中心とした外国人向けに国内航空券のOEM提供を開始。
今後ますます増加が予想される中華系旅行者に国内航空券を始めとした各種商材を提供するための基盤構築を着実に進めている。
◎両替事業の強化・拡大
(フィンテック両替機を自社店舗に設置)
2017年11月、IoT機能やAIを用いたフィンテック機能を搭載した外貨両替機を自社開発する株式会社エクステックの第三者割当増資を引き受け、資本参加した。
エクステック社の両替機は、多数の通貨や言語に対応し、様々な国からの訪日外国人の両替要望に対応する。小さなスペースにも設置でき、人手もかからず無人運用が可能。オリジナル機を2017年11月より運用開始した。
今後は電子マネーや仮想通貨にも対応し、2020年までにホテル、空港・ターミナル駅、商業施設等へ1,000台の設置を目標としている。
(ホテルと提携し両替サービスを提供)
同じく2017年11月、日本国内最大級の客室数を持つホテルチェーンである株式会社東横インと訪日外国人観光客誘致に関して提携を行うことで合意した。
東横INN最大規模となる東横INN成田空港(全1,384室)がグランドオープンするのに伴い、両社共同で訪日外国人観光客の誘致ならびに顧客満足度の向上のため、ホテルカウンターにおける訪日外国人向け電子決済サービスの導入、ホテルカウンターにおける両替サービスの導入のほか、両社の商材を組み合わせたパッケージ商品の組成、販売などを検討していく。
今後は提携先ホテルの拡大も進めていく。
◎キャンピングカー事業の販路拡大
2017年5月にH.I.S.での販売を開始し、9月には国内体験プランをスタートさせたほか、同じく9月にはJTB グループでeコマース事業を担う株式会社i.JTBと国内キャンピングカーレンタルの予約販売に向けた契約を締結した。
また10月には、パーク24のグループ会社でレンタカーサービス「タイムズカーレンタル」を全国展開するタイムズモビリティネットワークス株式会社と提携、キャンピングカーの貸出・返却拠点が都心部や空港近辺などで増加したほか、タイムズカーレンタルのサイト上でキャンピングカーのレンタル予約が可能となった。
キャンピングカー事業における保有台数は現在15台。単月黒字化すれば台数の大幅増に踏み切る考えだ。
(3)ITオフショア開発事業
現在約800名のラボ人員を、2020年には3,000名へ拡充する。
そのために、多拠点化、欧米案件の獲得、開発上流工程の対応強化、日本語人材の創出の4つの施策を推進している。
今期は新たに4社のラボがオープンした。
(4)投資事業
17年9月期より、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)の性格を持つ第4の事業として位置付けた。シナジー効果とともにキャピタルゲインの機会も追求する。
前期も多くの投資を行ったが、最も注目すべきは株式会社まぐまぐの子会社化であろう。
≪株式会社まぐまぐの子会社の概要≫
株式取得と簡易株式交換により2017年10月、(株)まぐまぐの株式94,256株(議決権所有割合:85.7%)を取得した。
(株式会社まぐまぐ 概要)
1999年創業。「伝えたいことを、知りたい人に」をビジョンに、メールマガジン配信サービス「まぐまぐ!」、WEB メディア「MAG2NEWS」や「MONEY VOICE」の運営を行っている。
メルマガ会員数は国内最大の750万人、メディアもユニークユーザー数300万人/月、ページビュー数1500万PV/月と大きな影響力をベースに、メルマガ等のコンテンツの有料課金、メディア広告収入を収益源に事業拡大をしている。
(想定しているシナジー)
同社は以下3つのシナジー効果創出を想定している。
① 「エアトリ」の販路拡大
豊富なメルマガ会員に総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を遡及する。現在44万人の「エアトリ」会員数を800万人まで拡大させる考えだ。
② 旅行メディアの設立
まぐまぐ社の持つメディア運営能力とエボラブルアジアの旅行商材を組み合わせた旅行特化型メディアを設立する。
③ 開発力の向上
エボラブルアジアのベトナム法人でのITオフショア開発リソースを活用し、まぐまぐ社の開発力を向上させる。
(今後の展望)
エボラブルアジアの子会社によりシステム開発力を大幅に向上させることで、まぐまぐはサービスの拡大・改善のスピードを加速させることができる。加えてエボラブルアジアのマーケティングノウハウを提供することにより来期以降大幅な利益成長を達成すると見込んでおり、将来的な株式上場も目指している。
(5)その他
◎地銀との提携
法人向けサービスの営業を強化するため、横浜銀行、四国銀行、京葉銀行の地銀3行と業務提携を行った。
地銀の顧客の中からITオフショアの開発案件、エボラブルアジアが宿泊施設営業開拓に関する独占契約を締結しているAirbnbの顧客紹介、BTMの顧客紹介を受けるというもの。
3行にとどまらず今後も地銀連携を進めていく。
◎新株予約権による資金調達
クレディ・スイス証券株式会社に対する第三者割当方式による新株予約権を発行した。
3回の合計手取換算額は約101億円で、2020年までに戦略的大型M&Aの実施に約80億円、新ブランドを中心とした認知度向上や顧客獲得を目的とするブランディングコスト約20億円を資金使途としている。
3回の行使価額を段階的に設定することで希薄化を抑制することなどの特徴を持ったスキームであり、資金調達により成長速度を加速させたいと考えている。