ブリッジレポート
(6166) 株式会社中村超硬

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ブリッジレポート:(6166)中村超硬 vol.5

(6166:東証マザーズ) 中村超硬 企業HP
井上 誠 社長
井上 誠 社長

【ブリッジレポート vol.5】2018年3月期業績レポート
取材概要「前回のレポートでは、「生産能力増強効果が表れる第4四半期に向け、売上、利益がどれだけ上積みすることができるのかを注目したい。」と書いたが・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年7月11日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社中村超硬
社長
井上 誠
所在地
大阪府堺市西区鶴田町27-27
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 12,140 1,570 1,365 1,381
2017年3月 4,992 -1,653 -1,803 -2,075
2016年3月 6,836 1,435 1,440 1,221
2015年3月 5,123 819 926 1,077
2014年3月 3,617 -373 -415 -423
2013年3月 4,453 -389 -435 -492
株式情報(7/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,179円 4,989,900株 10,872百万円 21.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 - 200.40円 10.9倍 1,577.89円 1.4倍
※株価は7/4終値。発行済株式数は直近決算短信より。ROE、BPSは2018年3月末実績。
 
株式会社中村超硬の2018年3月期決算概要等についてご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
太陽電池に用いられるシリコンウエハの製造工程の一つであるスライス加工で使用されるダイヤモンドワイヤの開発・製造・販売が主力事業。細いピアノ線にダイヤモンドの粒を強く固定した糸状の工具であるダイヤモンドワイヤは、シリコンウエハ(※1)の低コスト化をもたらすものとして急速に普及している。同社はダイヤモンドワイヤの製造販売に加え、関連会社にてダイヤモンドワイヤによるスライス事業(※2)も手掛ける独自のビジネスモデルも大きな強み。新規事業の早期立ち上げにも注力中。
 
ウエハ(※1)
電子材料の塊(インゴット)から目的に応じて薄くスライスされた板状の機能部品。シリコン、サファイア、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)など、用途に応じて様々な材質がある。ICチップや太陽電池に多く用いられるのがシリコンウエハ。
 
【1-1 沿革】
1954年10月大阪府堺市においてミシン用の小ネジを作る会社として創業した「中村鉄工所」が前身。
1970年12月に超硬合金を用いた切削工具、耐摩工具である超硬工具を主に取り扱う「株式会社中村超硬」を設立した。1988年には超硬工具からダイヤモンドへ主材料を転換し、1993年にはダイヤモンドノズル(※1)の開発・製造・販売を開始。IT産業の製造革新の下支えとなり業容は大きく拡大した。ITバブル崩壊後の2004年にはエネルギー産業をターゲットとして現在の主力製品であるダイヤモンドワイヤの研究開発をスタートさせ、2010年には販売を開始。ダイヤモンドワイヤの製造販売だけでなく、スライス事業も手掛けてリーマンショックの苦境を乗り越え、2015年6月、東証マザーズ市場に上場した。
 
ダイヤモンドノズル(※1)
先端に焼結ダイヤモンドを使用したノズル。電子部品をプリント基板に装着したりする際に用いられる。ダイヤモンドを使用する事がノズルの長寿命化や電子部品の保持能力、画像認識への有効性の向上、実装率向上につながっている。
 
【1-2 経営理念】
 
【1-3 市場環境】
(1)需要拡大が続く太陽光発電
地球温暖化の原因と言われている温室効果ガス削減のために再生可能エネルギーの利用が世界的に進められているが、その中でも太陽光発電は中心的な発電方法と位置付けられている。
 
 
そうした状況を背景に太陽光発電の需要は旺盛で、中国、インドを中心に2015年から導入量が急増している。
 
 
(2)多結晶シリコンウエハ市場の拡大とダイヤモンドワイヤ
太陽光発電の普及に伴い、太陽光発電パネルに用いられるシリコンウエハの需要も増大している。
シリコンウエハは単結晶シリコンウエハと多結晶シリコンウエハに大別されるが、それぞれ以下のようなメリット、デメリットがある。
 
 
これまでは価格が安く、歩留まりの良い多結晶シリコンウエハが中心であったが、エネルギー変換効率が高く加工性に優れた単結晶シリコンウエハのパネル設置までを含めたトータルコストパフォーマンスの高さにより、単結晶シリコンウエハが主流となりつつある。

シリコンウエハのスライス加工に用いられるダイヤモンドワイヤの需要も急速に拡大している。
ダイヤモンドワイヤの世界シェアは、これまでは旭ダイヤモンド工業株式会社(6140、東証1部)と同社の日本企業がリードしてきたが、近年では中国メーカーも台頭。中国勢の合計シェアは日本企業合計を上回っているようだ。
ただ、同社は拡大する単結晶シリコンウエハ需要の取り込みに向け、細線化のための技術革新と徹底した原価低減に取り組み、中国製ダイヤモンドワイヤとの差別化を進めている。
 
 
【1-4 事業内容】
1.セグメント
同社の事業は電子材料スライス周辺事業、特殊精密機器事業、化学繊維用紡糸ノズル事業の3事業セグメントで構成されている。
 
 
 
(1)電子材料スライス周辺事業
太陽電池の製造工程におけるシリコンインゴットのスライス加工で使用するダイヤモンドワイヤの開発・製造・販売を行っている。
 
①ダイヤモンドワイヤとは?
同社のダイヤモンドワイヤは、太陽電池パネルのメイン部品となる太陽電池セルに使われるシリコンウエハの製造工程のうち、スライス加工工程において使用される。
ウエハ一枚分の大きさに合わせて直方体に切られたシリコンインゴットを薄くスライスする際に用いる工具が「ダイヤモンドワイヤ」。細いピアノ線にダイヤモンドの粒を強く固定した髪の毛より細い糸状の切断工具である。
スライス加工機で、短い間隔で並べられたダイヤモンドワイヤが高速回転するガイドローラーによって走行し、インゴットをスライスしていく。2~3時間で2000~3000枚のシリコンウエハが製造される。その後、シリコンウエハは洗浄・品質検査を行い、処理を施されセルとなり、太陽電池モジュールに組み込まれる。
 
 
②シリコンウエハのスライス方法
シリコンウエハのスライス方法には、主として「遊離砥粒方式」とダイヤモンドワイヤを用いた「固定砥粒方式」の2種類がある。
 
 
カーフロス(※)
切断溝幅(切り代)のこと。カーフロスは材料のロスとなるため、太陽電池パネルの製造コスト低減のためできるだけ小さくする必要がある。
 
以上のように、「加工速度の向上」、「低いランニングコスト」、「カーフロスの低減」、「ワイヤ使用量の削減による環境負荷軽減」といった点から、ダイヤモンドワイヤを用いた「固定砥粒方式」への転換が進み、需要も増大している。
 
 
 
加えて、1つのインゴットから製造できるシリコンウエハの枚数を増大させることは、生産性の向上、原価低減の観点からウエハメーカーにとっては重要なポイントであるため、ダイヤモンドワイヤの細線化にも積極的に取組んでいる。
同社ではΦ(※)100μmが主流であった時にダイヤモンドワイヤの線径をΦ80μmとし、その後も、現在の業界の主流がΦ70μmである中、今期よりΦ60μmをメイン製品としつつ、更に先を行くΦ50μmの実用化にも取組んでいる。
Φ(※)直径を示す記号。ファイ。

また、ダイヤモンドワイヤを用いたスライス事業を手掛けている。(詳細は、【1-5特徴・強み】の項目参照)
 
(2)特殊精密機器事業
ダイヤモンドや超硬合金、セラミックスなど耐摩耗性の高い硬脆材料を用いた特殊精密部品、工具の開発・製造・販売を行っている。
主要製品は、自動車部品やベアリング製造用工作機械に用いられるダイヤモンド部品、液晶テレビやスマートフォン、タブレット等の電子機器の製造に必要な電子部品実装用の産業機械に用いられるダイヤモンドノズルなど。
特殊精密部品・工具の他、実装機用ノズル等を洗浄する装置などの開発・製造・販売も行っている。
 
(3)化学繊維用紡糸ノズル事業
主に、化学繊維用紡糸ノズル及び周辺部品、不織布用ノズル・同装置等の設計・製造・販売を行っている。
同社は、1928年に創業して以来、化学繊維用(レイヨン製造用)ノズルを国産化し、化学繊維の紡糸ノズル専業メーカーとして事業展開してきた。紡糸ノズルは、不織布、炭素繊維などの製造において繊維の品質を決定づける基幹部品。その製造にあたっては微細加工(孔(あな)あけ加工、パンチング加工)及び工具・冶具の製造に関して繊細な技術が必要となるが、同社では、長年にわたり同事業に特化してきたことにより多くの技術的蓄積を有し、市場のニーズに対応している。
 
【1-5 特徴と強み】
<競争力の高いダイヤモンドワイヤ>
ダイヤモンドワイヤには、従来以上に「使用量が少ない」、「加工速度が早い」、「加工難易度が高い」という高負荷の加工条件が求められるようになっている。
そうした中、同社のダイヤモンドワイヤは単結晶シリコン加工、多結晶シリコン加工両者において以下のような点で高負荷条件を満たしている。
 
(使用量)
顧客評価におけるウエハ1枚当たりのダイヤモンドワイヤ使用量を比較すると、単結晶シリコン加工、多結晶シリコンどちらにおいても他社よりも20%少なく、コスト削減に直結している。
 
(製造方法)
中国メーカーが「6列同時生産方式」により、ワイヤを同時に6本製造するのに対し、同社は「単列フィードバック制御生産方式」により、カメラによる検査と撮像結果のフィードバックを行いながら1本ずつ製造している。
前者は低コストであるものの品質にバラツキが出るというデメリットがあるのに対し、同社の場合は安定した品質を提供できる点が大きな特長である。生産コストが高いという弱みがあるが直近では、高速生産を目指した生産設備の改造に積極的に取り組んでおり、着実に原価は低減し、生産性が向上している。
 
(仕様)
中国製は固定されるダイヤのサイズが大きく、数も多いためダイヤの摩擦が大きい。切削能力が高く、操作は容易なものの、線径の変化が大きいためウエハの厚みにばらつきがあり、加工余力も少なく、ユーザーメリットが小さい。
これに対し、同社製ダイヤモンドワイヤは操作の難易度は高いものの、ダイヤの粒が小さく、数も少ないことから加工時の摩擦が比較的小さい。また線径も小さいためウエハのとれる枚数が多い。また、加工余力があるためワイヤ使用量も少なくて済み、ユーザーメリットが大きい。
 
(単結晶ウエハでの細線化)
今後一層の市場拡大が見込まれる単結晶ウエハにおける細線化でも優位性を誇っている。
まず、前期より韓国トップメーカーから最高のコストパフォーマンスとの高い評価を得て、全量Φ60μmの独占供給を開始した。
また、中国及び日本の複数の単結晶ユーザーに対するΦ60μmワイヤの新規供給を開始した。
加えて、Φ60μmの先を行くΦ50μmワイヤについても世界トップメーカーや韓国トップメーカーに対しサンプル評価を依頼したところ、こちらも高評価を得ることが出来たため、今期中の販売開始を見据えた準備に入っている。

このように、「中国国内では安定調達が困難な高性能日本製素線」、「極細線化ゾーンでの高難度固定化を実現する高品位ダイヤモンド固定技術」、「高効率生産を実現する挑戦的原価低減」という3つの強みを基盤に成長市場における更なるポジション強化を目指している。
 
<スライス事業も手掛ける独自のビジネスモデル>
前述のように中村超硬では、自社が製造したダイヤモンドワイヤを用いてシリコンインゴットをスライス加工し、太陽電池用シリコンウエハを製造・販売している。
量産検証結果をフィードバックし、このフィードバックを基に、ダイヤモンドワイヤの改良、高度化に取り組んでいる。
「ダイヤモンドワイヤを作る技術」と「ダイヤモンドワイヤを使う技術」を併せ持つシナジー効果により、顧客であるシリコンウエハメーカーに対し、様々な技術支援を行う事が可能であり、顧客の信頼獲得を通じた顧客拡大の大きな武器となっている。

この事業モデルは他社にはほとんど例が無く、同社の大きな特長である。
 
 
 
2018年3月期決算概要
 
 
大幅増収・黒字転換も期末の市場環境変化で売上高は修正予想未達
売上高は前期比約2.4倍増の121億40百万円。多結晶シリコンウエハ市場でダイヤモンドワイヤを使用する固定砥粒方式への移行が進み、主力商品であるダイヤモンドワイヤの販売が好調に推移。原価低減効果もあり、営業利益以下黒字に転換した。
ただ、第4四半期(1-3月)に起きた市場環境の大きな変化(発注量減少、価格低下など)のため、多結晶向けダイヤモンドワイヤ販売は計画を下回り、2017年11月に発表した修正予想に対して売上は未達となった。
 
 
<電子材料スライス周辺事業>
増収・黒字転換
主力製品であるダイヤモンドワイヤが、従来の供給市場であった単結晶シリコンウエハ市場に加え、新たに多結晶シリコンウエハ市場で急速に普及が進んだ。また、沖縄工場の本格稼働等による生産量の拡大もあり、受注、販売量ともに前年同期を大幅に上回った。
増収効果に加え、前期より取り組んできた原価低減策において一定の成果が得られたため、黒字転換した。

ただ、第4四半期に入り、グローバル市場での太陽光パネルメーカーのシェア争い激化、単結晶ウエハの市場攻勢による多結晶ウエハ市場での生産調、調整とそれに伴うダイヤモンドワイヤの発注量減少、ウエハ価格下落に伴うダイヤモンドワイヤ市場価格の下落(強引な値下げ要求により約3割下落)など、市場環境に大きな変化が生じたため、18年1月、2月のダイヤモンドワイヤ販売量は計画を下回るなど、第4四半期の売上・利益は対第3四半期比で減収減益となった。

<特殊精密機器事業>
増収・大幅増益
半導体や自動車関連の需要増に加え、中国においてスマートフォン関連の投資が拡大し、実装機向けノズル、工作機械向け耐摩工具とも好調に推移した。新規顧客開拓にも注力した。
工作機械分野の受注拡大による売上増に加え、同社が得意とする加工難易度の高い高付加価値アイテムの受注増で利益も大幅に増加した。

<化学繊維用紡糸ノズル事業>
減収・増益
国外向けノズル販売は好調に推移したが、国内向け販売が低迷した。一方で自動化設備の導入で収益性が向上した。
 
(3)財務状態とキャッシュ・フロー
 
売上増、新株の発行などで現預金が増加し流動資産は前期末比43億53百万円増加した。設備投資による有形固定資産の増加などで固定資産は同10億72百万円増加し、資産合計は同54億26百万円増加の176億21百万円となった。長短期借入金の増加などにより負債合計は同25億57百万円増加の97億38百万円。
利益剰余金の増加で純資産は同28億68百万円増加の78億82百万円。この結果、自己資本比率は前期末に比べ3.6ポイント上昇し、44.7%となった。
 
 
利益が黒字転換し営業CFはプラスに転じた。
一方、有形固定資産の取得による支出が前年同期よりも減少し、投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFはプラスに転じた。株式の発行による収入が減少し、財務CFのプラス幅は縮小。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
① 新規事業加速のためぺプチスター株式会社に2億円を出資
2018年4月、前回のレポートで紹介したように、特殊ペプチド原薬の研究開発・製造及び販売を目的として、ぺプチドリーム株式会社(4587、東証1部)、塩野義製薬株式会社(4507、東証1部)、積水化学工業株式会社(4204、東証1部)の3社により2017年9月に設立された合弁会社であるぺプチスター株式会社の第三者割り当てを引き受け、2億円の出資を行った。

この3社を中心に複数社によるオールジャパン体制で様々な最先端技術の集約による高品質特殊ペプチド原薬の低コストかつ安定供給体制の確立を目指しており、中村超硬は新規事業としてライフサイエンス事業の立上げを進めているが、その中核技術が「マイクロリアクターシステム」。

化学品生産のために使われている従来の「バッチ式」と呼ばれる技術は、各種原材料を混合して加熱・冷却により目的の化学品を作り出すが、大容量を一度に合成できる反面、均一に混ざりにくい、危険がある、大規模設備で莫大なエネルギーを消費する、多量の廃棄物を排出するなど課題も多い。
これに対し、数十から数百μmの微細な流路が設けられたマイクロリアクター(微小反応器)と呼ばれる機器の中で、その流路が合流し、流れのなかで混合、加熱・冷却、分離が行われ理想的な化学反応が起こり化学品の生産が行われるフロー合成技術は、省エネでかつ安全という大きなメリットを持ち、社会的な需要が急速に高まっており、同社では早期のマーケットインを目指してマイクロリアクター関連技術の研究開発を続けている。

今回の出資を通じてマイクロリアクター関連技術を活かし、従来よりも効率の良い特殊ペプチド原薬の製造装置の開発の役割を担うことで、4兆円市場とも言われている特殊ペプチド原薬製造分野において安定的な供給体制の確立に貢献する考えだ。
 
 
2019年3月期業績見通し
 
 
増収増益。下期からの回復を見込む。
売上高は前期比23.5%増の150億円で過去最高を更新する。
営業利益は同5.1%増の16億50百万円の予想。
期初より下記に述べるような単結晶ユーザーへの顧客構成の変更や極細線化への全面移行を進めるが、上期は前期末の多結晶ウエハ市場での混乱が尾を引き、稼働率維持のため低採算のΦ70μmワイヤの生産を継続するため、第1四半期は損失、第2四半期までは収益性は低迷する見通し。
Φ60μm以下への切り替えが完了し、原価低減施策が進捗する第3四半期からの本格的な業績回復、安定的な収益確保を見込んでいる。配当は無配の予定。
 
 
(2)ダイヤモンドワイヤ販売事業戦略について
【1-3 市場環境】の項で触れた市場環境下、ダイヤモンドワイヤ販売事業について以下のような戦略を推進する。
 
<基本方針>
グローバル市場での太陽光パネルメーカーのシェア争い激化とそれに伴うダイヤモンドワイヤ市場価格の下落という厳しい事業環境ではあるが、競合メーカーとの差別化を一層進めて世界NO.1コストパフォーマンスのΦ60μmワイヤの普及により、ピンチをチャンスに転換する。
 
<具体的な戦略>
①単結晶ウエハ市場への販売強化
前期は多結晶シリコンウエハ市場でダイヤモンドワイヤを使用する固定砥粒方式への移行が進む一方で、今後の市場拡大が期待される単結晶ウエハ市場においても同社製品の優位性が多くの顧客に評価されるようになっている。
この優位性を活かし、前期24%であった単結晶向けダイヤモンドワイヤの販売構成比を今期は52%へと一気に引き上げ、多結晶向けと単結晶向けの構成比を逆転させる。
②Φ60μm以下の「極」細線化を積極的に推進
前期の売上構成比が約9割で価格が下落し採算が悪化したΦ70μmワイヤから、Φ60μmを中心とした「極」細線化ゾーンへ市場を誘導。
Φ60μmワイヤの構成比を前期の8%から80%まで引き上げる。
また、すでに顧客からサンプルが高評価を得ているΦ50μmワイヤについても今期中の出荷を目指している。

③「極」細線化を世界最低原価で大量生産
ダイヤモンドワイヤ販売数量が増加する中で、極細線化を推進して販売価格を高止まりさせる一方、挑戦的な原価低減を実行し利益を確保する。
 
 
今後の注目点
前回のレポートでは、「生産能力増強効果が表れる第4四半期に向け、売上、利益がどれだけ上積みすることができるのかを注目したい。」と書いたが、残念ながら第4四半期に入ってからの市場の混乱で今上期まで収益低迷を余儀なくされることとなった。
中国メーカーの追撃もある中、「ピンチをチャンスに転換する」事業戦略の進捗、実績を注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年7月3日

<実施しない主な原則とその理由>
「当社は、マザーズ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。」と記載している。