ブリッジレポート:(4549)栄研化学 vol.11
(4549:東証1部) 栄研化学 |
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企業名 |
栄研化学株式会社 |
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代表執行役社長 |
和田 守史 |
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所在地 |
東京都台東区台東4-19-9 山口ビル7 〒110-8408 |
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決算期 |
3月末日 |
業種 |
医薬品(製造業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2018年3月 | 34,991 | 3,478 | 3,549 | 2,608 |
2017年3月 | 33,274 | 3,976 | 4,112 | 2,918 |
2016年3月 | 32,163 | 3,536 | 3,570 | 2,429 |
2015年3月 | 31,014 | 2,826 | 3,013 | 2,100 |
2014年3月 | 30,027 | 3,008 | 3,095 | 1,984 |
2013年3月 | 28,645 | 2,548 | 2,812 | 2,453 |
2012年3月 | 27,702 | 2,363 | 2,543 | 1,460 |
2011年3月 | 27,562 | 2,709 | 2,775 | 1,672 |
株式情報(7/4現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
国内シェア60%以上の便潜血検査を始め、尿検査や微生物検査など他社にはない独自技術・ノウハウを利用した高シェア製品多数。また独自開発の遺伝子増幅技術「LAMP法」は世界的に高い評価を得ている。便潜血検査、尿検査とLAMP法などの独自技術を武器にグローバル企業への成長を目指している。 【沿革】
【経営理念】
*経営理念: 「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」
*経営ビジョン:「EIKENグループは、人々の健康を守るために、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。」
*モットー: 「品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”」これらを中心に各ステークホルダーへの考え方として、EIKEN WAYを策定している。 【市場環境】
<国内市場>
臨床検査薬市場は、2016年度で約3,510億円、研究用試薬と検査用機器を含めると約5,897億円(一般社団法人日本臨床検査薬協会調査)となっている。行政は増大している医療費を抑制するために特定健診(メタボ健診)やがん検診の受診率向上やOTC検査薬(薬局で購入できる検査薬)の規制緩和といった予防医療に力を入れており、今後、高齢化の進展と共に臨床検査数(検体数)の増加が見込まれる。 一方でマイナス面としては、価格競争による単価の低下、診療報酬改定(引き下げ)及び長期的には少子化による人口減少がある。ただ、診療報酬改定の対象である保険(検体検査実施料)の推移を見ると、1997年から2006年までの期間に約4割引き下げられたものの、その後はほぼ横ばいないし微減となっている(2018年度検体検査実施料 -0.4%)。これは同社の含めた業界全体として予防、検査の重要性を働きかけた結果という事で、中期的には国内市場は年率2%程度の微増傾向が続くと思われる。 前述の協会会員130社(2018年6月時点)の内メーカーは約80社で、売上100億円以上の企業は15社程度となっており、大多数は中堅・中小企業という構造。臨床検査は検査項目が多岐にわたっているため企業ごとに得意とする分野が異なり、企業間での棲み分けが出来ている。そのため、他社から原料・製品を仕入れて製造・販売するといった業務提携が多く見られる。また、そうした棲み分けが出来ている中、市場は小幅ながらも拡大しているため、明確な淘汰は現在のところ起きていないということだ。 <海外市場>
2015年の世界の検体検査薬・機器市場は約623億USDといわれており、地域別構成比は米国44%、欧州29%、アジア17%などとなっている。市場規模自体が国内市場の10倍超と巨大であると同時に、先進国では高齢化の進展に伴う検査数の増加、また新興国においては経済成長、所得増加に伴う医療ニーズの拡大などにより、年率7~8%と国内市場を大きく上回る成長が見込まれるため、国内企業は積極的にグローバル化を進めている。 ただ、グローバル市場においては、ロシュ、アボット、シーメンス、ベックマンなど売上高が2,000~9,000億円にも上る世界的大企業がメインプレーヤーとなっており、日本企業が競争に勝ち抜くためには独自性のある製品・システムの開発など競争力強化が不可欠である。 【事業内容】
1.臨床検査とは
臨床検査には、レントゲン、CT、MRI、心電図、超音波など、医療機器を使用して体を直接調べる「生体検査」と、患者から採取した血液、尿・便、細胞などの生体試料(検体)を調べる「検体検査」がある。同社が取り扱う臨床検査薬とは、検体検査に使用する試薬の事で、例えば感染症の検査や便に含まれる微量の血液の測定など、病気の診断をサポートするもの。これら試薬の大部分は体外診断用医薬品と呼ばれ、医薬品医療機器等法の規制を受け、試薬メーカーなどがPMDA(医薬品医療機器総合機構)に対し申請し、認可を受けたものである。ユーザーは、病院、医院、診療所、受託を受けて検査を行う検査センター、健診センター、保健所、衛生検査所など。 2.主力製品
主として以下の各検査用試薬や測定装置を製造・販売している。同社は幅広い検査薬を取り扱うために、自社製品に加え他社製品の仕入販売も行っている。 主要な自社製品は、便潜血検査用試薬、微生物検査用試薬、免疫血清検査用試薬、尿検査用試薬、遺伝子検査用試薬など。自社製品と他社製品の売上比率は約60:40。粗利率は自社製品が約55%、他社製品が約35%。 便潜血検査用試薬
大腸がんのスクリーニング検査として糞便中ヒトヘモグロビンを特異的に検出・測定する便潜血検査用試薬・採便容器を主力製品とし、グローバルに販売している。
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)
リウマチや炎症性疾患の診断及び胃の健康度評価(ABC分類)に使用する汎用自動分析装置用試薬「LZテスト‘栄研’」を始め、各種検査用試薬の開発、製造、販売を行っている。また東ソー(株)から、全自動エンザイムイムノアッセイ装置用試薬及び自動グリコヘモグロビン分析装置用試薬を導入・販売している。
尿検査用試薬
尿中の潜血、たんぱく質、ブドウ糖など多項目の検査が行える尿検査用試験紙「ウロペーパーIII‘栄研’」、全自動尿分析装置用には専用試験紙の「ウロペーパーαIII‘栄研’」などを開発・製造・販売している。
微生物検査用試薬
同社は創立以来、感染症及び食中毒の予防を目的とし、生体試料や食品・環境の微生物検査用試薬を開発してきた。現在では、各種細菌検査用培地(増菌用培地、分離用培地、生物学的性状検査用培地、同定検査用培地)、薬剤感受性検査用試薬、迅速検査試薬など、微生物感染症の診断・治療に有用な各種検査用試薬を開発・製造・販売している。
生化学検査用試薬
生活習慣病との関連性が注目されている検査項目を中心に、血清や尿を検体とし生体成分を測定・分析する「エクディアXL ‘栄研’」シリーズなど、生化学検査用自動分析装置に対応する各種検査用試薬を開発・製造・販売している。
器具・食品環境関連培地
食中毒原因微生物の検査などの食品微生物検査用試薬や作業環境の汚染実態などを把握できる環境微生物検査用試薬及び検査用器具・器材の販売を行っている。
遺伝子(LAMP法)関連
同社は1998年、新規遺伝子増幅技術LAMP法を独自開発し特許を取得し、LAMP法を利用した遺伝子検査用試薬を開発・製造・販売している。また、ライセンスも積極的に実施している。このLAMP法は、「簡易、迅速、精確」という特徴を有しており、今後のグローバル展開のための大きな武器となっている。(詳細は後述)
医療機器
各種自動分析装置を販売している。自社試薬を使用する専用装置は製造委託を行っている。便潜血測定装置「OCセンサー」は1989年の発売以来、技術革新と品質向上を重ねている。また、独自技術である画像処理システムを使用した尿自動分析装置「US」、臨床検査分野で世界初となる全自動生物化学発光免疫測定装置「BLEIA-1200」、LAMP法リアルタイム濁度測定装置「LoopampEXIA」など取り揃えている。
3.販売体制
国内の販売体制は11営業所、3営業部。学術部門が販売促進の支援を行っている。2018年3月期の全従業員704名(連結)中、約300名が営業部門。 ユーザーである病院など医療機関向けチャネルに関する直接の販売先は医療系卸会社で、殆ど全ての卸会社と取引を行っている。 海外販売においては、基本的に1か国・1代理店体制をとっており、販売とメンテナンスを委託しており、本社の海外事業室が管理している。輸出先は39ヵ国(2018年3月期)。米国、イタリア、フランス、スペイン、ドイツ、オーストラリア、韓国、台湾が海外売上の大半を占めている。アムステルダム(オランダ)に欧州支店があるほか、中国に関しては連結子会社「栄研生物科技(中国)有限公司」での生産・販売体制の強化を行う他、中国事業室を設置しビジネス拡大を図っている。今後は規模拡大に伴い現地法人化も検討していく。 2018年3月期の海外売上高は5,405百万円。うち便潜血検査用試薬は3,228百万円で構成比は59.7%。 中期経営計画において2019年3月期のROE9.2%達成を目標として掲げている。 重点施策に挙げている高付加価値製品の開発、新規事業・新規市場の創出及び原価率及び販管費率の低減による利益率及び生産性向上を一段と強化する。 現在、約6割の自社製品比率を7割から8割程度に引き上げることが必要なため、特に海外においてはスタッフ増強も含めた営業力の強化が必要と考えている。 【特徴と強み】
①高シェアの製品群
便潜血検査用試薬の国内シェアは60%以上でトップであるほか、尿検査用試薬で約26%(2位)、微生物検査用試薬で約16%(4位)等と他社にはない独自技術・ノウハウを利用した多くの自社製品において高いシェアを有している。同社が便潜血検査用試薬で高いシェアを獲得することができた背景としては、1987年に発売した目視判定法用の便潜血検査用試薬「OC-ヘモディア」が、競合品に比べユーザーニーズに合致した製品であったこと、1989年には測定原理に免疫法(ラテックス凝集法)を採用し世界初の全自動分析装置「OC-センサー」を発売したことである。 また、便潜血検査は1992年に老人保健法の改正が行われ、大腸がん検診のスクリーニング検査法として公費で受診が可能(受診者負担が無料)になったのをきっかけに、普及が加速し競争が激しくなったが、同社は、機能を一新した「OC-センサーneo」を2001年に発売し、シェアを拡大してきた。 日本で実施されている免疫法は、ヒトの血液のみ反応する試薬となっており、また、自動化装置による大量処理が可能である。 一方海外では化学法による古いタイプの試薬が使用されており、精度面に課題がある。2011年になりようやく欧州の検診ガイドラインで免疫法による自動装置測定が推奨され、大きな市場の変化が表れ始めた。 また、市場が最も大きいアメリカでも化学法が主流であるが、徐々に免疫法へのシフトが始まっており、USPSTF(米国予防医療特別委員会)の大腸がんスクリーニングに関する新ガイドラインが2016年6月に発行されたが、その中で従来の化学法ではなく免疫法が優れていると指摘されたことに加え、当社の便潜血検査製品『the OC FIT-CHEK family of FITs』が、高い感受性と特定性で最高の検査パフォーマンスを有していると評価された。さらにアジア、南米の先進国・新興国には未開拓な大きな市場が控えている。 便潜血検査市場は、ニッチな市場であるため、いち早く免疫法を開始した日本企業の技術が最も進んでおり、同社の試薬・装置がグローバルスタンダードとなっている。 ②研究開発に注力
研究開発型企業として独自性のある技術の研究開発と、それをベースとした顧客ニーズに対応したオリジナル製品の開発に注力している。研究開発要員は約100名。顧客の要望は医療のクオリティ向上。具体的には、高感度・高品質による疾患の鑑別精度の向上、検出率の改善といった点が挙げられる。加えて、使用法が簡便であれば医療従事者の負荷軽減につながるため、そうしたニーズへの対応も重要なポイントとなっている。 同社は、1939年の創業以来培ってきた試薬製造の独自技術が蓄積されており、またその試薬の性能を有効に活用するための装置に関しても、便潜血検査用装置や尿自動分析装置、生物化学発光免疫測定装置(BLEIA法)、遺伝子検査などで他社にはない独自技術が用いられている。 ③アライアンス戦略による多品種・多分野展開
臨床検査薬はその対象、項目は多岐にわたり、すべてを自社で開発・製造・販売を手掛けることは困難である。同業他社の多くは自社の得意な技術・製品に絞っているが、同社は臨床検査薬の総合メーカーとして、収益構造の安定化をめざし、アライアンス戦略を通じて自社の有する強みの拡大、機能の補完、新技術の取得といったシナジー効果を追求しつつ、広範に取扱製品を揃え、医療機関を始めとした顧客、ユーザーのニーズに対応している。多品種・多分野に展開しているもう一つの理由としては、経営理念「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」にあるように国民の健康を守るという責務を達成するためには、幅広い臨床検査に対応することが企業としての社会的責任であるとの想いも根底にある。 ④「LAMP法」の優位性
遺伝子検査の中の過程の一つである遺伝子増幅プロセスにおける現在の主流技術は「PCR法」と呼ばれるもの。これに対し同社は1998年「LAMP法」という独自技術を開発した。「LAMP法」はPCR法と比較して、以下の様な優れた特徴を持ち、簡易で迅速に特異性の極めて高い遺伝子検査を行うことが出来るものである。 同社はLAMP法の地位確立のため感染症検査に注力すると同時に、LAMP法の普及・認知度向上のために、畜産・水産、食品・環境など医療以外の分野での利用を推進しており、実際にLAMP法に基づく製品は2002年以降次々と実現している。 また同様の目的から、LAMP法陣営構築のために外部に対し積極的なライセンス許諾を行っている。 LAMP法を世界的に普及させるための中心的な取り組みの一つが、「FIND」とのアライアンスである。 「FIND」は「Foundation for Innovative New Diagnostics」のことで、2003年5月に開催された国連の世界保健会議の場で設立されたスイス政府認可の非営利財団。当初5年間、Bill&Melinda Gates Foundationからの助成金を受けて活動を本格化している。 途上国における感染症撲滅のために、手頃な価格で、取り扱い易く、先進的な検査・診断方法を開発・導入する事を活動の目的としている。 FINDでは対象とする感染症として、結核、マラリア、アフリカ睡眠病などを上げているが、このうち結核について途上国で実施されている顕微鏡検査(塗沫検査)よりも精度を向上させることを目的として、LAMP法による結核検査の共同研究が同社とFINDによって2005年7月より開始された。 途上国の現場でも利用できるように、前処理工程の簡略化(PURE法)、試薬保存方法の改良(室温保存)、装置の簡略化など、PCR法では実現できない改良が加えられた(TB-LAMP)。LAMP法を利用したこの製品は2011年に日本で既に販売となっている。 その後、WHO(World Health Organization、世界保健機構)の推奨獲得のために、途上国14ヵ国での評価試験を終了し、WHOに資料を提出していたが、2016年8月、顕微鏡検査に代わる、あるいは顕微鏡検査を補強する検査としてWHOからの推奨を取得することができた。 WHOが2017年11月に発表した世界の結核に関する報告書によれば、2016年の世界202カ国における結核の罹患患者数は1,040万人で、2014年の960万人から80万人増加し、死亡者数は170万人で、2014年の150万人から20万人増加したという。 そのほとんどが未診断例や未治療例と見られ、「診断や治療へのアクセスが整備されていない国での対策強化が必要」としており、TB-LAMPの普及、浸透はこうした問題解決に大きく貢献するものと同社では考えている。 加えて同社は、結核以外にも前述の疾病のほか、リーシュマニア症及びシャーガス病の検査薬に関して、FINDと共同開発を進めている。 また、同社はLAMP法を利用した次世代の小型全自動遺伝子検査装置および多項目検査チップ「Simprova(シンプローバ)」を開発している。本装置は、検体前処理(核酸抽出・精製)から増幅・検出までを全自動で行え、従来の高純度な核酸抽出・精製を行う装置と増幅・検出装置で合わせて2時間以上を要していた操作時間を、LAMP法の特徴を活かした独自プロトコルの開発により、1時間以内に短縮することが可能となる。まず、複数の呼吸器感染症原因微生物の同時検出を目的とした臨床性能試験を実施するが、その使用用途は広い。 同社では、これらの製品はLAMP法の普及を加速させるとともに、新たな市場を構築した中でグローバルスタンダードとしての地位を確立させるものと期待している。 *遺伝子増幅法
遺伝子検査では、検体に含まれる目的の遺伝子量が極めてわずかなため、遺伝子を検出するためにはまず目的とする遺伝子を増幅させなければならず、遺伝子検査において最も重要なポイントが遺伝子増幅となる。
*アフリカ睡眠病
熱帯アフリカの風土病で、トリパノソーマという原虫がヒトに感染して引き起こす重大な熱帯病。ツェツェバエが媒介する。ヒトの血液中のトリパノソーマがツェツェバエに吸血され、その体内で発育、増殖し2~5週で終末トリパノソーマ型となって次の感染源となる。高熱、頭痛、嘔吐などをきたし、ひたすら眠るようになる。食事が摂れなくなるので痩せ、全身衰弱となり、多くは合併症を引き起こして死亡する。
*リーシュマニア症
リーシュマニアという原虫の感染によって引き起こされ、黒熱病といわれる内臓リーシュマニア症、皮膚と粘膜をおかすブラジルリーシュマニア症、皮膚をおかす熱帯リーシュマニア症があり、いずれも吸血昆虫、とくにサシチョウバエが媒介する。内臓リーシュマニア症は約3か月の潜伏期の後、高熱、発汗や下痢が生じ、1か月ぐらいすると肝臓と脾臓が腫れ、貧血が進み、放置すると衰弱し、半年から2年で死亡することもある。
*シャーガス病
米国南部や中南米において哺乳類吸血性であるオオサシガメ亜科のサシガメを媒介とする感染症。すぐには発病せず、一般的に30年ほどの潜伏期間がある。リンパ節、肝臓、脾臓などの腫脹、筋肉痛、心筋炎、心肥大、脳脊髄炎、心臓障害といった症状をもたらす。
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2018年3月期決算概要 |
前期比増収・減益
売上高は前期比5.2%増の349億円。国内売上は、迅速検査キットなどが堅調だった。海外売上高は、北米や欧州での便潜血検査用試薬・装置に加え、シスメックス社向け尿試験紙・装置が伸長し2桁の増収となった。営業利益は同12.5%減の34億円。経費の効率的な使用に努めたほか、小型全自動遺伝子検査装置(Simprova)の開発が概ね完了したことに伴い研究開発費を約7億円計上した。 計画に対しては海外売上が便潜血検査用試薬およびLAMP試薬が伸び悩み、売上は未達となった一方、設備投資の見直しと、研究開発費が翌期に期ずれしたため、利益は計画を上回った。 ○便潜血検査用試薬
国内は前期比2.1%増。便潜血測定装置「OCセンサーPLEDIA(プレディア)」の設置推進で新規採用が拡大したほか、大腸がん検診啓発活動による市場拡大に引き続き注力した。一方、海外は同33.7%の増収。北米では、HMO(※)など民間医療保険向け売上が増加したほか、退役軍人医療保障プログラム(VA)向け販促を強化した。また、2016年6月に米国予防医療特別委員会(USPSTF)が公表した「大腸がんスクリーニングに関する新ガイドライン」を受けた新規顧客獲得活動に引き続き注力した。 欧州では、ドイツにおいて主要検査センター向けが堅調。前期計画未達だったフランスでは受診率向上に向けた施策を展開しているが、伸び悩んだ。 中東各国で大腸がん国家スクリーニング獲得に向けた活動を継続した。 新たにオーストラリアでの国家スクリーニングを獲得した。 ※HMO(Health Maintenance Organization):アメリカの会員制医療組織。特定の地域または環境に住む個人を対象とし,入院,外来,救急,一般開業医,専門医,リハビリテーション,ナーシングホーム,ホームヘルスケア,予防検診,健康増進等包括的な医療サービスを提供する。 ○免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)
東ソー株式会社から導入・販売している「AIA-CLシリーズ」の設置を促進したが、競争激化もあり微増収だった。LZ試薬は、ヘリコバクター・ピロリ抗体検査用試薬の販売を促進したほか胃の健康度評価 (ABC分類)の普及活動を推進したがLZ試薬全体では微増収だった。 ○尿検査用試薬
国内は、2016年8月に発売開始した尿自動分析装置「US-1000」の後継機種「US-1200」の販売を促進した。また、全自動尿分析装置「US-3500」の新規採用・切替を進めたことで、試験紙「ウロペーパーαIII‘栄研’」が伸長した。海外では、シスメックス社向け尿試験紙の売上が大きく寄与した。 ○微生物検査用試薬
迅速検査試薬においては、「イムノキャッチ - レジオネラ」と「イムノキャッチ - 肺炎球菌」のセット販売がニーズを捉え増収となった。薬剤感受性検査用試薬では、病院市場での微生物分類同定分析装置と組み合わせたトータル提案での新規顧客獲得などによりドライプレートが伸長した。 糞便培地検査の遺伝子検査への変更の影響を受け、生培地(ポアメディア)は減収だった。 ○遺伝子(LAMP法)関連
国内では、流行収束でマイコプラズマ検出試薬が減収。海外では、独HUMAN社とTB-LAMP、マラリアのグローバル展開についてアフリカ・アジアを中心にフィールドスタディを推進した。TB-LAMPについてカメルーンでの採用が決定したほか、Global Fundの予算も獲得した。 特許料収入は同40百万円増加の512百万円。 ○医療機器
尿自動分析装置「US-1200」や海外向けにシスメックス社向け尿検査装置など好調だった。
シスメックス社向けの尿検査用試薬・装置が好調だった。 (5)財務状態とキャッシュ・フロー
設備投資関連債務の支払い等で、負債合計は同9億55百万円減少の126億87百万円となった。 純資産は利益剰余金増などで18億69百万円増加の324億78百万円となった。 この結果、自己資本比率は前期末の68.6%から71.2%へ2.6%上昇した。 配当金支払額の増加で財務CFのマイナス幅は拡大。 キャッシュポジションはほぼ変わらず。 |
2019年3月期業績見通し |
増収増益を予想
中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)最終年度の売上高は前期比5.1%増収の367億円の予想。国内は横這いながら、海外は米国、欧州で便潜血検査用試薬が引き続き堅調。営業利益は同20.7%増の42億円を見込む。増収に加え、設備投資は前期の期ずれ分も含め前期比約14億円増加するが、減価償却費も当初計画より減少する。配当は、中間13円/株、期末14円/株の合計27円/株の予定。株式分割考慮後で4円/株の増配。予想配当性向は32.5%。 (2)重点施策
販売に関しては以下のようなアクションを取る
(4)中期経営計画の進捗
下記のように、海外売上高が前々期、前期と中計数値に未達だったことなどを主因として、中計最終年度である19年3月期の予想を引き下げた。
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和田社長に聞く |
(海外事業の展開)
前期の海外売上高は、前期比では2桁増収とはなったが、便潜血検査用試薬販売は、計画を下回り満足のいくものではなかった。各国様々な事情があり、短期的には当社の自力のみでは何ともしがたい部分もあるが、受診率向上に向けた啓発活動などに引き続き取り組んでいく。
米国、欧州に加え、食生活の欧米化が進む新興市場、中でも中東は今後期待できる市場であり、主要国中心にアプローチを強化する。
そのために、人員の増強を続けている。数年前は10数名だった海外事業担当者は現在30名弱まで増員となっている。今後は各国市場への浸透をよりスピーディーかつ強力に進めるために現地スタッフの採用も強化していく必要があると考えている。
海外売上高を想定通りに伸ばすことが出来ず、中計最終年度の今期業績予想を当初の中計数値から引き下げたが、次期中計において早期のキャッチアップを図っていく。
(小型全自動遺伝子検査システム「Simprova」のリリース)
小型全自動遺伝子検査システム「Simprova」は開発がほぼ終了した。
当社では従来より遺伝子検査をより迅速かつ簡便に実施するための検査方法や試薬を開発してきたが、LAMP法の高感度かつ高特異性を活かし、簡便・迅速に多項目同時検査を実現するのがLAMP小型全自動遺伝子検査システム「Simprova」だ。
臨床検査の世界では、POCT(Point Of Care Testing)と呼ばれる小型分析器や迅速診断キットを用いて医療現場で行うリアルタイム検査の普及が進んでいる。「near the patient」とも呼ばれるPOCTは、病院の検査室や外部の検査センターではなく、クリニック、診察室、在宅医療において患者のかたわらで医療従事者が実施するもので、患者中心の医療提供につなげることを目的としており、被験者のQOL(Quality of life)に資する検査である。
「Simprova」は、小型、検体をセットすれば全自動で検査を実施、前処理の核酸抽出にかかる時間を従来の1時間から15分に短縮し検出も約15分と迅速であることに加え、高精度、多項目を同時に検査可能といった特徴を持っており、POCTを含め、この特長を活かせる様々な検査領域に進めていきたい製品である。
今後は早期のリリースを目指して、製造工程の確立、有力な代理店の開拓などを進めていく。
(研究開発について)
「Simprova」開発を含め、長期の視点で、がんや心血管疾患などを対象とした新規バイオマーカーの探索に取り組んでいる。
ただ自社のみでスピーディーかつ確実に進めるのは困難な部分もあるので、オープンイノベーションの発想の下、様々な大学や研究機関との共同研究を行っていく。
バイオマーカーにとどまらない新技術の探索は当社成長のための重要な取り組みなので、継続的にしっかりと投資を行っていく。
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<参考1:中期経営計画(2017年3月期~2019年3月期)> |
【経営目標】
グローバル企業「EIKEN」の実現に向けた取り組みを加速し、ヘルスケアを通じて世界に貢献するとともに持続的な成長と着実な収益性の向上を目指す。
【業績目標】
成長戦略としては、①国内市場での自社製品のシェアアップ、②グローバル展開の加速を、次の成長への投資として①研究開発の強化、②経営効率を高めるための基盤整備を掲げている。 <成長戦略>
<次の成長のための投資>
【株主還元】
配当性向30%以上の安定した配当を目標としている。
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<参考2:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2018年6月27日に提出している。<実施しない主な原則とその理由> 同社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施している。 |
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