事業内容
ウイン・パートナーズ(以下、同社)は、首都圏や東北地域を中心に医療機器を販売する独立系グループである。グループ傘下にウイン・インターナショナルとテスコを持ち、全国に22の営業拠点を展開する。
図表1:営業拠点網
(出典:ウイン・パートナーズ)
同社は、国内外のメーカーより仕入れた医療機器を、医療施設に販売している。患者の生命に直結する医療現場では、医療機器の欠品や不具合があってはならないが、保険適用のものだけでも35万品目を超え、すべての品目を医療施設が在庫として保有し、管理することは現実的でないため、同社のような企業が発注、配送、適正使用支援、在庫管理や情報提供等の役割を担っている。医療機器メーカーにとっても、配送、債権回収、在庫管理、情報提供やマーケティング等、自社ですべて対応できないため、同社がその役割の一部を担う。
同社は、特定メーカーの代理店ではなく、独立系であるため、様々なメーカーの製品から治療に最適な医療機器を選択し、顧客施設に提供している。現在、国内外85社のメーカーから製品を仕入れ、約440の医療施設に販売している。病院の中でも、急性期(症状の急激な発生や悪化で治療の緊急性の高い状態)にある患者に、高度で専門的な治療を行なう「急性期病院」が同社の主要顧客である。
図表2:事業概要
(出典:ウイン・パートナーズ)
「低侵襲医療」に特化、心臓カテーテル販売では国内首位
低侵襲医療とは、熱、出血、苦痛等(侵襲)を可能な限り、少なくした医療を指す。足の付け根や手首からカテーテルを挿入し、血流を回復させる「心臓カテーテル治療」はその代表例である。身体的な負担が少ないため、早期回復が見込まれ、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ、生活の質)の向上に寄与できる。また治療や入院期間の短縮は、増え続ける医療費の抑制にも寄与する。
同社はこの低侵襲医療分野にいち早く注目し、1990年代から、国内での普及において先駆者的な役割を担ってきた。バルーンカテーテルやステントといった狭心症や心筋梗塞を治療する医療機器において、国内首位のマーケットシェアを有する。
沿革
1992年、同社の前身となるタクミコンサーン(現ウイン・インターナショナル)に経営再建のため招聘された秋沢英海氏は、米国で心臓カテーテル治療を学んだ医師との出会いを契機に、低侵襲医療の将来性にいち早く着目し、経営資源を同分野に集約するとともに、心臓カテーテル治療の国内での普及、啓蒙活動を推進した。
市場では、その後も新しい治療法が次々と開発され、ペースメーカ、末梢血管ステント、ステントグラフトといった製品が登場。同社も医療技術の進歩とともに成長を遂げ、売上高は当時の30倍以上に拡大した(図表3)。その過程において高い専門性や豊富なノウハウを蓄積してきた。
2002年には、ウイン・インターナショナルがJASDAQに上場。2013年には、東北を地盤とする同業のテスコと経営統合。両社の親会社となる共同持株会社ウイン・パートナーズが設立され、2014年には、東証一部に指定された。
2017年10月には、子会社のテスコが秋田県の同業、大沢商事を買収。2018年7月には、テスコに吸収合併された。
図表3:売上高の推移
(出典:ウイン・パートナーズ)
主な取扱製品
バルーンカテーテルやペースメーカ等を販売
図表4の通り、同社が取り扱っている製品の多くは、バルーンカテーテル、ステントやペースメーカ等の高度管理医療機器(生命や健康に影響を与えるおそれがあるため、適切な管理が必要とされる医療機器)である。使用期限があり、適切な温度管理や在庫管理が必要とされる。
図表4:取扱製品一覧
(出典:ウイン・パートナーズ)
製品分類別概要
虚血性心疾患関連(PCI)
虚血性心疾患関連(PCI)では、冠動脈が狭くなること等により、血流が減少し、心臓が酸素不足の状態(虚血)となる疾病を血管内から治療する医療機器を販売している。主なものに狭心症や心筋梗塞の治療に使われるPTCAバルーンカテーテル、薬剤溶出型ステント(DES)や血管内超音波(IVUS)診断カテーテルがある。
図表5:PCIの主要製品
(出典:ウイン・パートナーズ)
【カテーテル治療】
カテーテルを血管内に通し、狭くなった箇所を先端に付いた風船で広げた後、金属製の網状の筒であるステントによって内部から血管を支え続け、再び狭くなるのを防ぐ。
心臓律動管理関連(CRS)
心臓律動管理関連(CRS)では、心臓の拍動に異常が生じる疾患を治療する医療機器を販売している。脈が遅くなる不整脈を治療するペースメーカや、脈が速くなる致死性の不整脈の発生を感知して、心筋に電気ショックを送り発作を止めるICD(植込型除細動器)やCRTD(両室ペーシング機能付き植込型除細動器)等がある。また、カテーテルの先端に電極が付き、不整脈を引き起こす部分を焼き切る(または冷却する)ことで不整脈を根本から治すアブレーション(心筋焼灼術)用カテーテル等がある。
図表6:CRSの主要製品
(出典:ウイン・パートナーズ)
心臓血管外科関連(CVS)
心臓血管外科関連(CVS)では、大動脈瘤や弁膜症等、心臓の構造的な疾患および冠動脈や大動脈の疾患を外科的に治療する医療機器を販売している。大動脈瘤を治療するためのステントグラフトや、カテーテルを用いて大動脈弁狭窄症を治療するTAVI用生体弁等が主要製品。
図表7:CVSの主要製品
(出典:ウイン・パートナーズ)
末梢血管疾患関連(PPI)および脳外科関連
末梢血管疾患関連(PPI)では、下肢等の動脈が狭くなり、血流が悪化する疾患を血管内から治療する医療機器を販売している。代表的なものに閉塞性動脈硬化症の治療に使われるPTAバルーンカテーテルや、心臓用のステントと形状等は同じだが、動きの多い足に使用するため、柔軟性・耐久性に優れている末梢血管用ステント等がある。また、脳外科関連では、首や頭部の血管の疾患を治療する医療機器を販売している。代表的なものに脳動脈瘤を治療する塞栓用コイル等がある。
図表8:PPI、脳外科の主要製品
(出典:ウイン・パートナーズ)
糖尿病関連(DMS)
糖尿病関連の主要製品には、プログラムに従って持続的にインスリンを注入する携帯型のインスリンポンプや血糖測定器等がある。糖尿病は心疾患の入口のひとつであり、合併症に発展した場合、既存の顧客施設への紹介等、医療連携が可能なことから、相乗効果を狙って進出した分野である。
図表9:DMSの主要製品
(出典:ウイン・パートナーズ)
大型機器関連
消耗品のほかに、コンピュータ断層撮影装置(CT)、磁気共鳴画像診断装置(MRI)、移動式X線撮影装置等、診察室や手術室で使用される大型医療機器を取り扱っている。また、これらの機器販売だけではなく、手術室の設計、施工も手掛けている。医療現場の動線を考慮した機能的な手術室を提供するため、特定建設業許可(建築工事業、内装仕上工事業)を取得しているほか、一級建築士事務所登録も行っている。
図表10:大型機器関連の主要製品
(出典:ウイン・パートナーズ)
ビジネスモデル
消耗品中心のストック型ビジネス、価格下落リスクは高い
大型機器を除き、製品は主に消耗品(使い捨て)のため、患者数および治療件数が増加すれば、販売数量は継続的に伸びる。一方で、保険償還価格(保険制度で定められた公定価格)が設定されているため、同社の販売価格は、二年に一度の償還価格の改定の影響を受ける。
在庫リスク、為替リスクは低い
メーカーから製品の貸与を受け、顧客である医療施設に常置し、使用された時点で、売上および仕入を計上するいわゆる「置き薬方式」であるため、在庫リスクは比較的低い。仕入先は外資系メーカーが多いが、日本法人経由で取引は円建てであり、為替リスクは基本的にメーカーが負う。
独自サービスが競争優位性の源泉
同社は、最先端の治療技術や製品の動向をアップデートし、医療現場での適切な使用をサポートするとともに、病院経営の視点から、様々な提案を行っている。特にユニークなサービスに、医療の質と顧客病院の競争力を高める「バリューアップ支援」がある。
図表11:バリューアップ支援
(出典:ウイン・パートナーズ)
病院が新たに高度な治療を始めるためには手術実績、設備機器、人員体制等、様々な要件(施設基準)を満たさなければならない。例えば、前述の大動脈弁留置術(TAVI)のような治療を行うにはハイブリッド手術室や複数の専門医が必要になる。同社は、顧客病院が施設基準を満たし認定施設となるよう設備投資の提案や人材補強等の支援を行っている。
これらに加え、独自の診療圏調査に基づいて、顧客施設のターゲットを明確化したうえで、患者を集める・増やす施策の考案、効率化やコスト削減策の提案を行い、病院経営を総合的に支援している。
「適正使用支援」も同社の重要な役割のひとつである。製品は高度化、複雑化が進んでおり、治療に最適な製品の選択や、使用方法の説明、使用期限の管理等、専門的な支援が欠かせない。
例えば同じ品目でもメーカーによって、サイズや形状、使い勝手が異なるため、様々なメーカーの中から症例に最適な製品を選択し、適正な価格で提供している。特定メーカーに偏らない独立系ならではのサポートは、顧客から高く評価されている。緊急対応が可能であることや、在庫管理まで一貫して現場を支援できることも評価されている。バルーンカテーテル等は、滅菌期限があり、期限をすぎると使用することができない。医師や医療スタッフが治療に専念できるよう、同社が手術前から手術後まで、きめ細かくサポートしている。
こうした支援の提供により、「顧客病院の競争力強化」→「患者数や治療件数の増加」→「販売数量増加・売上拡大」というサイクルが確立されている。顧客病院の成長を支えることで、顧客との信頼関係が構築され、安定した事業基盤の構築につながっている。
図表12:適正使用支援
(出典:ウイン・パートナーズ)
業界平均を上回る効率経営
同社が専門とする低侵襲医療の分野では、製品開発が活発で成長性が高いうえ、治療は主に先進医療施設で行われるため、施設を絞って効率的な営業展開を行うことができる。また、顧客病院に患者が集中するように支援するため、効率的に収益を伸ばすことが可能である。ROE、ROA、利益率および一人当たりの指標において、業界平均を上回っていることからも明らかであろう。
図表13:経営指標における業界平均との比較(2017年3月期実績ベース)
(出典:業界平均は、カワニシHD(2689)、ほくやく・竹山HD(3055)、ディーブイエックス(3079)、メディアスHD(3154)、シップヘルスケアHD(3360)、日本ライフライン(7575)、ヤマシタヘルスケアHD(9265)の2016年度の有価証券報告書等に基づき同社作成)
競争力を支える人材育成プログラム
販売する製品は基本的に同業他社と同じであり、優位性を維持するためには、顧客の課題やニーズを的確に把握し、解決策を提案できる営業員の育成が極めて重要であることから、同社では、独自の教育プログラムを創設している。
入社1年目の医療現場でのOJT(オンザジョブトレーニング)に始まり、適正使用支援およびバリューアップ支援の各ステップを経て、8年目を目途に総合的なコンサルティングができるレベルまで育成することを目指している。
図表14:教育プログラム概要
(出典:ウイン・パートナーズ)
企業理念とガバナンス
同社は、事業活動を通じて、人々のクオリティ・オブ・ライフ(QOL、生活の質)の向上、健康幸福寿命の伸長に貢献することを企業理念に掲げている。
同社の機関設計は監査等委員会設置会社であり、9名の取締役のうち、社外取締役は4名となっている。コーポレートガバナンス基本方針は以下の通りである。
コーポレートガバナンス基本方針
当社は「すべての人にベター・クオリティ・オブ・ライフを提供し、豊かな社会の実現に貢献します」をグループ企業理念に掲げております。安全で最適な医療の提供はもとより、身体的な負担の少ない「低侵襲医療」の普及を通じて、健康幸福寿命の伸長に貢献することがグループの社会的使命と考え、企業活動を通じて持続可能な医療体制の構築という社会的課題の解決にも取り組みます。
グループ企業理念のもと、株主、患者、顧客、従業員、取引先、国・行政、地域社会等、すべてのステークホルダーとの良好な関係は長期的な企業価値向上をもたらし、社会的課題の解決は社会の持続性に基づいた企業の長期競争力の原動力となり、活力ある人材はイノベーションの原動力となると考えます。この考え方に基づき、当社はグループ各社を適切に統治し、経営の公平性、透明性を高め、ステークホルダーとの信頼関係の構築に努めます。
株主構成
2018年3月末時点の株主の状況は図表15の通りである。筆頭株主であるオフィスAは代表取締役社長、秋沢英海氏の資産管理会社であり、3位のキエマ企画は同社取締役およびテスコ代表取締役社長である秋田裕二氏の資産管理会社である。秋沢英海氏と秋田裕二氏を併せて発行済み株式の34.8%を保有している。なお、同業のグリーンホスピタルサプライも5.5%を保有しているが、取引関係はない。
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