【ポイント】
・食道再生上皮シートの承認取得、販売開始
・軟骨再生シートの開発加速
・次期品目の開発着手
・サプライチェーン体制の構築
・再生医療支援製品の新製品開発及び収益機会獲得
・世界展開に向けた事業提携推進
食道再生上皮シートの承認取得・販売開始、サプライチェーン体制を構築
早ければ18/12期第4四半期に、遅くとも19/12期第1四半期に、販売承認申請を提出する。19/12期中に販売承認を取得し、薬価収載後速やかに販売を開始する。20/12期には販売が本格化する。18/12期から19/12期にかけては、病院(口腔粘膜採取)→培養施設(細胞をシート状に培養)→病院(細胞シート移植)というサプライチェーンの構築も並行して進める。国内での細胞シート再生医療の事業化を最優先課題とするため、欧州での食道再生上皮シート開発については「次期開発品目」(後述)の候補品目の一つとして開発優先順位を検討していく。
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食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)として東京女子医大先端研が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性細胞培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。細胞シートの培養に合わせて、食道がん切除内視鏡手術を行い、食道潰瘍面に移植する。同社の説明によると、日本では、年間約22,000人が食道がんと診断され(日本では食道がんの90%が扁平上皮がん)、年間約11,500人が食道がんで死亡している。また、男性の発症率・死亡率は女性の5倍で、5年後の生存率は男性36%、女性44%、と男女共に低い。治療法として、2008年に保険収載された内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが(食道がんと診断された患者の約20%が毎年手術を受けている)、ESDは手術後、食道狭窄が起こる可能性がある。
軟骨再生シートの開発加速
自己細胞による軟骨再生シートについては、18/12期上期中に共同研究先の東海大学が先進医療を申請する予定。先進医療の結果を踏まえて企業治験を実施する。先進医療で使用される細胞シートの受託加工は同社が有償で実施する事が決まっている。
同種細胞による軟骨再生シートについては、現在実施されている東海大学での臨床研究が19/12期も続く見込み。同社は20/12期中の企業治験開始に向け、この間にレギュラトリーサイエンス戦略相談・レギュラトリーサイエンス総合相談及び治験準備を進める。
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「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科佐藤正人教授との共同研究であり、スポーツによる損傷や加齢を原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症とする。現状では根治する方法がないが、佐藤教授との共同研究は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、共同研究を進めている「軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が臨床研究で確認されている。
同社の説明によると、変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)。また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。
平成25年厚生労働省国民生活基礎調査によると、要支援・要介護になった原因の25%を運動器の障害が占めた。
次期開発品目の検討
現在、同社が開発主体となり推進するパイプラインは、「食道再生上皮シート(日本)」と「軟骨再生シート(日本)」の2本。18/12期中に、これらに続く第3品目の開発案件を選定して事業を開始する。現在、歯周組織再生シートや食道再生上皮シート(欧州)等も、この枠組みの中で候補の一つとして検討する。開発品目や地域についての研究実施機関との契約等、準備が整い次第開発に着手する。
再生医療支援製品の新開発・収益機会獲得
再生医療支援事業のサービスを拡張し、具体的には、再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを開始する(再生医療に関わる総合的なサポートサービスの提供)。具体的なサービスとして、①細胞シート製品の製法開発・受託製造、②運営・申請支援、③細胞培養技術者教育等を考えている。
世界展開に向けた事業提携推進
2017年4月の台湾での独占的事業提携契約締結により、同社はMetaTech社に対して、最大12億50百万円を対価として、細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート・軟骨再生シート)の台湾での独占的な開発・製造・販売権を付与した。台湾での細胞シート再生医療事業の開発・事業化は、(株)セルシード支援の下でMetaTech社が主体となって進めていく。MetaTech社の開発推進意欲は旺盛で、2017年の進捗状況を鑑みると、開発・製造関連データの大半(対価にして10億円相当)の提供が18/12期中に完了する見込み(18/12期予想に織り込まれている)。MetaTech社との事業提携の実績を活かして、アジア諸国・欧米をターゲットに年1件程度を目標に海外事業提携先を獲得していく。
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再生医療支援事業では、器材製品の海外市場販売戦略の見直しを行い、改めて販売を強化する。また、一部サービスを拡張し、再生医療に関わる総合的なサポートを通じて、再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを開始する。18/12期は器材製品の販売でセグメント売上高70百万円を見込んでおり、19/12期以降、再生医療受託サービスが寄与してくる見込み。
細胞シート再生医療事業では、引き続き主に食道再生上皮シート及び軟骨再生シートの開発に注力していく。細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート・軟骨再生シート)の台湾での独占的な開発・製造・販売権を付与したMetaTech社への開発・製造関連データの提供に伴い、18/12期は10億円程度の対価を受領できる見込み。また、MetaTech社との事業提携の実績を踏まえ、細胞シート再生医療事業の普及を目指して、アジア諸国・欧米への更なる提携・ライセンシング等を推進していく。これらの取り組みの結果、18/12期はセグメント売上高11億円が見込まれる。