ブリッジレポート
(7776) 株式会社セルシード

グロース

ブリッジレポート:(7776)セルシード vol.31

(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
橋本 せつ子 社長
橋本 せつ子 社長

【ブリッジレポート vol.31】2018年12月期第1四半期業績レポート
取材概要「売上計上に加え、前受金も増加している事から提携事業等が順調に進捗していると思われる。18/12期は20百万円の営業利益確保を見込んでおり・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年7月4日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
橋本 せつ子
所在地
東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年12月 85 -1,024 -964 -966
2016年12月 100 -1,413 -1,415 -1,414
2015年12月 193 -568 -531 -535
2014年12月 86 -601 -577 -582
2013年12月 105 -534 -581 -584
2012年12月 75 -846 -842 -913
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(6/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
951円 11,424,292株 10,865百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 3.50円 271.7倍 108.69円 8.7倍
※株価は6/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
セルシードの2018年12月期第1四半期決算の概要と今後の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた「細胞シート再生医療事業」と細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材及びその周辺製品の研究開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」を二本柱とする。 2016年8月には本社のあるテレコムセンタービル(東京都江東区青海)の6階に細胞培養センターを設置した。延床面積約763 ㎡で、自動モニタリングシステムによって、清浄度、室圧、温湿度、機器(培養器や保冷庫等)が自動管理され、監視カメラシステムも完備。また、羽田空港まで車で約20分と至近で空輸にも対応しやすい。2017年3月には「再生医療等の安全性の確保等に関する法律第35 条第1項の規定に基づく「特定細胞加工物製造許可」(許認可権者:厚生労働省)を取得しており、特定細胞加工物の受託製造も可能。このため、臨床研究・臨床試験・自由診療等で必要となる細胞シートの受託加工事業を開始した。 【再生医療とセルシードの戦略】 再生医療とは、失われた臓器や損傷、或いは機能が低下した臓器を再生して治療する新たな医療。様々な細胞に分化できる能力を持った幹細胞が鍵となる。現在、受精卵から作られる「ES細胞」、人口多能性幹細胞「iPS細胞」、及び生体の様々な組織にある「体性幹細胞」、の3つの種類の幹細胞がある。「ES細胞」は受精卵から作られるため全ての細胞に分化する能力を持っているが、受精卵から作られるため倫理的な問題があり、実用化に至っていない。「iPS細胞」は、皮膚等の分化した細胞に4つの遺伝子を導入して培養した人口多能性幹細胞であり、京都大学の山中教授のノーベル賞受賞以降、研究が加速した。しかし、分化のプロセス等、未だ解明されていない部分が多く、実用化には時間を要すると言われている。 一方、「体性幹細胞」は同社が実用化に最も近いと考えている幹細胞である。同社は口腔粘膜や軟骨組織の細胞を「細胞シート工学」を用いてシート状に培養し、患者に移植するという治療(食道や膝軟骨の再生医療製品)の開発に取り組んでいる。具体的には、2018年の販売承認申請提出を目指して「食道再生上皮シート」の治験を進めている他、「軟骨再生シート」は治験開始に向けた準備も進めている。「細胞シート工学」を用いた再生医療製品は、食道や膝軟骨にとどまらず、角膜、歯、耳、肺、心臓、肝臓、及びすい臓の治療でも臨床研究が進められており、既に臨床データも有する。 また、2015年9月には、(株)セルシードの温度応答性細胞培養器材「アップセル」が組み込まれているテルモ製「ハートシート」(心臓の再生医療に用いる)が期限付き承認を取得した。(株)セルシードは「ハートシート」専用(特注品)の温度応答性細胞培養器材「アップセル」の供給責任を負っている。 既に説明した通り、同社は口腔粘膜や軟骨組織の細胞を「細胞シート工学」を用いてシート状に培養し、患者に移植するという治療(食道や膝軟骨の再生医療製品)の開発に取り組んでいるが、この「細胞シート工学」は「iPS細胞」を用いた細胞シートを製造する際にも利用できる。
 
 
中期経営計画(18/12期~20/12期)
【ポイント】  ・食道再生上皮シートの承認取得、販売開始  ・軟骨再生シートの開発加速  ・次期品目の開発着手  ・サプライチェーン体制の構築  ・再生医療支援製品の新製品開発及び収益機会獲得  ・世界展開に向けた事業提携推進 食道再生上皮シートの承認取得・販売開始、サプライチェーン体制を構築 早ければ18/12期第4四半期に、遅くとも19/12期第1四半期に、販売承認申請を提出する。19/12期中に販売承認を取得し、薬価収載後速やかに販売を開始する。20/12期には販売が本格化する。18/12期から19/12期にかけては、病院(口腔粘膜採取)→培養施設(細胞をシート状に培養)→病院(細胞シート移植)というサプライチェーンの構築も並行して進める。国内での細胞シート再生医療の事業化を最優先課題とするため、欧州での食道再生上皮シート開発については「次期開発品目」(後述)の候補品目の一つとして開発優先順位を検討していく。 食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)として東京女子医大先端研が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性細胞培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。細胞シートの培養に合わせて、食道がん切除内視鏡手術を行い、食道潰瘍面に移植する。同社の説明によると、日本では、年間約22,000人が食道がんと診断され(日本では食道がんの90%が扁平上皮がん)、年間約11,500人が食道がんで死亡している。また、男性の発症率・死亡率は女性の5倍で、5年後の生存率は男性36%、女性44%、と男女共に低い。治療法として、2008年に保険収載された内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが(食道がんと診断された患者の約20%が毎年手術を受けている)、ESDは手術後、食道狭窄が起こる可能性がある。 軟骨再生シートの開発加速 自己細胞による軟骨再生シートについては、18/12期上期中に共同研究先の東海大学が先進医療を申請する予定。先進医療の結果を踏まえて企業治験を実施する。先進医療で使用される細胞シートの受託加工は同社が有償で実施する事が決まっている。 同種細胞による軟骨再生シートについては、現在実施されている東海大学での臨床研究が19/12期も続く見込み。同社は20/12期中の企業治験開始に向け、この間にレギュラトリーサイエンス戦略相談・レギュラトリーサイエンス総合相談及び治験準備を進める。 「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科佐藤正人教授との共同研究であり、スポーツによる損傷や加齢を原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症とする。現状では根治する方法がないが、佐藤教授との共同研究は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、共同研究を進めている「軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が臨床研究で確認されている。 同社の説明によると、変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)。また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。 平成25年厚生労働省国民生活基礎調査によると、要支援・要介護になった原因の25%を運動器の障害が占めた。 次期開発品目の検討 現在、同社が開発主体となり推進するパイプラインは、「食道再生上皮シート(日本)」と「軟骨再生シート(日本)」の2本。18/12期中に、これらに続く第3品目の開発案件を選定して事業を開始する。現在、歯周組織再生シートや食道再生上皮シート(欧州)等も、この枠組みの中で候補の一つとして検討する。開発品目や地域についての研究実施機関との契約等、準備が整い次第開発に着手する。 再生医療支援製品の新開発・収益機会獲得 再生医療支援事業のサービスを拡張し、具体的には、再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを開始する(再生医療に関わる総合的なサポートサービスの提供)。具体的なサービスとして、①細胞シート製品の製法開発・受託製造、②運営・申請支援、③細胞培養技術者教育等を考えている。 世界展開に向けた事業提携推進 2017年4月の台湾での独占的事業提携契約締結により、同社はMetaTech社に対して、最大12億50百万円を対価として、細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート・軟骨再生シート)の台湾での独占的な開発・製造・販売権を付与した。台湾での細胞シート再生医療事業の開発・事業化は、(株)セルシード支援の下でMetaTech社が主体となって進めていく。MetaTech社の開発推進意欲は旺盛で、2017年の進捗状況を鑑みると、開発・製造関連データの大半(対価にして10億円相当)の提供が18/12期中に完了する見込み(18/12期予想に織り込まれている)。MetaTech社との事業提携の実績を活かして、アジア諸国・欧米をターゲットに年1件程度を目標に海外事業提携先を獲得していく。 再生医療支援事業では、器材製品の海外市場販売戦略の見直しを行い、改めて販売を強化する。また、一部サービスを拡張し、再生医療に関わる総合的なサポートを通じて、再生医療の研究開発・事業化を支援する再生医療受託サービスを開始する。18/12期は器材製品の販売でセグメント売上高70百万円を見込んでおり、19/12期以降、再生医療受託サービスが寄与してくる見込み。 細胞シート再生医療事業では、引き続き主に食道再生上皮シート及び軟骨再生シートの開発に注力していく。細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート・軟骨再生シート)の台湾での独占的な開発・製造・販売権を付与したMetaTech社への開発・製造関連データの提供に伴い、18/12期は10億円程度の対価を受領できる見込み。また、MetaTech社との事業提携の実績を踏まえ、細胞シート再生医療事業の普及を目指して、アジア諸国・欧米への更なる提携・ライセンシング等を推進していく。これらの取り組みの結果、18/12期はセグメント売上高11億円が見込まれる。
 
 
2018年12月期第1四半期決算と上期予想
MetaTech社(台湾)との事業提携に基づく売上1億円を計上 売上高1億11百万円(前年同期12百万円)。細胞シート再生医療事業において、MetaTech社との間で締結した細胞シート再生医療事業に関する台湾での独占的事業提携活動の一環として、同社より一部の開発データについて提供が完了した事に伴う対価1億円を売上計上した(この他、再生医療支援事業における器材製品の販売で売上高11百万円を売上計上)。 損益面では、販管費を吸収できなかったものの、営業損失が1億09百万円と前年同期比半減した。販管費の内訳は、研究開発費が同8.8%減の1億09百万円、その他が同8.4%減の1億06百万円。 第1四半期末の総資産は前期末と比べて1億34百万円減の14億31百万円。決算を反映して現預金及び純資産が減少した。ただ、前受金は増加しており、提携案件等が順調に進捗している事が推測できる。
 
 
今後の注目点
売上計上に加え、前受金も増加している事から提携事業等が順調に進捗していると思われる。18/12期は20百万円の営業利益確保を見込んでおり、その根拠となるのがMetaTech社との提携事業である。また、移植用「軟骨再生シート」の欧州での基本特許が成立する見込みとなった。18/12期業績への寄与は軽微だが、基本特許の成立は、細胞シート工学の革新性を証明するものであり、軟骨再生シートの新規性・進歩性のグローバルなアピールにもつながる。軟骨再生シートは、東海大学が自己細胞由来シートの先進医療申請を準備しており、先進医療の結果を踏まえて企業治験を実施する考えだ。先進医療申請は、適応面積の拡大を検証し、より多くの変形性膝関節症患者を対象とする事を目的としており、将来的な保険導入のための評価の一助となるため、同社も歓迎している。20/12期に売上高14.5億円、営業利益1億10百万円の達成を目指す中期経営計画は上々のスタートを切った。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレート・ガバナンス報告書更新日:2017年04月05日 基本的な考え方 当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。 今後につきましては、ディスクロージャーの透明性を高めるため一層説明責任を充実するとともに、さらなる経営のチェック機能強化を図ってまいります。 【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】 当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。