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(6826) 本多通信工業株式会社

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ブリッジレポート:(6826)本多通信工業 vol.18

(6826:東証1部) 本多通信工業 企業HP
佐谷 紳一郎 社長
佐谷 紳一郎 社長

【ブリッジレポート vol.18】2018年3月期業績レポート
取材概要「スマートフォン向け出荷が減速するとの見通しから、18年2月以降、同社に限らず主要コネクタメーカーの株価は総じて軟調に転じている。・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年7月4日掲載
企業基本情報
企業名
本多通信工業株式会社
社長
佐谷 紳一郎
所在地
東京都品川区北品川5-9-11 大崎MTビル
決算期
3月末日
業種
電気機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2018年3月 19,498 2,007 2,109 1,625
2017年3月 17,205 1,425 1,476 1,542
2016年3月 17,119 1,301 1,237 1,364
2015年3月 16,639 1,415 1,565 1,440
2014年3月 14,824 932 975 1,479
株式情報(6/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
946円 23,909,604株 22,618百万円 14.2% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
20.00円 2.1% 62.7円 15.1倍 503.26円 1.9倍
※株価は6/25終値。発行済株式数、BPSは直近期決算短信より。ROEは前期実績。
 
本多通信工業の2018年3月期決算概要、中期計画「GC20」の進捗、佐谷社長へのインタビューなどをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
車載、FA機器、通信インフラ、民生機器用途向けの電気コネクタおよび光コネクタの製造販売を行う。「Segments No.1」を掲げ、特定分野での高い競争力を追求している。長い歴史の中で培われた幅広い設計技術力、産業用機器向けで培った長期信頼性と堅牢性に関するノウハウ、多品種少量生産体制などが特長。子会社ではソフトウエア開発なども手掛けている。グループ認知度の向上に向けて、複数存在していたブランドを「HTK」に統一。グループは同社と連結子会社7社(国内2社、海外6社)の計9社で構成されている。(2018年3月末現在) 【沿革】 1932年5月に精密ねじ加工業として現在の東京都目黒区で創業。第二次大戦後は、日本電信電話公社(現NTT)の電話交換機用プラグ・ジャック、防衛庁向けプラグ・ジャックを始め、その発展形となるコネクタの製造販売を手掛け、業容を拡大。2001年に東証2部に上場した。だが、ITバブル崩壊で売上が急減。数度のリストラクチャリングを経て、成長路線への復帰と拡大発展をめざし、2008年に松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)と資本業務提携契約を締結。2014年2月、約80年に亘って本社を置いていた目黒から品川区へ本社を移転した。 2016年3月、東証1部に上場した。 【経営理念など】 特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事をめざし、「Segments No.1」を掲げている。 また、新中期経営計画「GC20」策定に際し、グループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。 豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。 【佐谷 紳一郎社長プロフィール】 佐谷紳一郎社長は1957年11月生まれの現在60才。松下電工株式会社(現パナソニック株式会社)では事業戦略企画部門に在籍し、M&Aや他社とのアライアンス締結等に長年に亘り携わってきた。そうした中、コネクタ事業のアライアンス先として幅広い技術力・製品ラインアップを有する企業を調査している中、本多通信工業の実力に着目し、アライアンスを推進、2008年資本業務提携を実現させた。同年、取締役就任。2009年にはパナソニック電工を退社し、同社副社長に就任。2010年4月に同社社長に就任した。社長就任後は中期経営計画「Plan 80」を策定・実行。基本戦略として「Segments No.1」を設定し、複数のニッチ分野でNo.1となることを目指すと共に、様々な構造改革を断行し、黒字体質の確立、財務基盤の安定化を実現した。中期経営計画「DD15」で事業拡大と体質強化を進めた現在は、良い会社(Good Company)かつ過去最高業績更新をターゲットとする新中期経営計画「GC20」を推進中で、ESG経営に注力、ワンランク上の企業作りに取り組んでいる。 【事業内容】 事業セグメントはコネクタ事業と情報システム事業の2つ。 ◎コネクタ事業 <コネクタとは?> 電子回路や光通信において配線基板同士を接続し、電気や信号を繋ぐために用いられる部品・器具のこと。基板をはんだ付けや圧着で接続した場合、分断時にはケーブル切断等が必要になり再接続は困難となるが、コネクタを使用した場合、手または簡易的な工具を用いて容易に繰り返し脱着することが可能であるため、ほぼ全ての電子機器で使用される。 <利用分野> 長年の経験で培われた高い技術力により、以下の6分野を中心に付加価値の高く、顧客志向のコネクタを始めとした製品をラインアップしている。 2018年3月期の分野別売上構成比率(全売上高に対する構成比)は、車載分野35%、FA分野 22%、通信分野17%、民生分野 10%となっている。 最も構成比の高いで車載分野において、安全性や運転性能向上の観点から車載カメラやセンサの搭載台数が増加しているカーエレクトロニクスの成長に対応して投資や製品開発を進めている。 ◎情報システム事業 通信分野でのソフトウエアの重要性が高まる中、1983年に事業をスタート。 システム開発から保守運用まで幅広いソリューションを展開している。なかでも仮想化(*)サーバの構築では業界屈指の技術を有し、クラウドコンピューティングの広がりに貢献している。 世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れている。 *仮想化とは?:1台のサーバ(物理サーバ)を複数台の仮想的なサーバ(仮想化サーバ)に分割して利用する仕組み。それぞれの仮想化サーバではOSやアプリケーションを実行させることができ、あたかも独立したコンピュータのように使用することが可能となる。 サーバ台数の適正化や消費電力を含めた運用管理コストの低減など、企業のITコスト見直しニーズに対応し、注目が集まっている。 また、仮想化環境下ではハードウェア等を新たに購入しなくても新サーバを容易に追加することができるため、ビジネスの変化に迅速かつ柔軟に対応するというITシステムニーズに対する有効なソリューションの一つとなっている。 【特徴と強み】 ①幅広い設計技術力 前述のように、同社のコネクタは、様々な分野で用いられている。 同社は、日本電信電話公社(現NTT)を始めとした多くの顧客からの様々なニーズに対応したカスタマイズによる製品作りに長年取り組んできた。この「顧客密着度の高さ」が、同社の幅広い設計技術力の源泉である。 ②長期信頼性と堅牢性 制御装置に用いられる「1.27mmピッチコネクタ」、FTTH(Fiber To The Home:光通信のための光ファイバーを家屋内に引き込むこと)に用いられる「シャッター付きSC形プラグ」、プロジェクタに用いられる「高耐圧電源用コネクタ」などで強みを持っている。 これらは、顧客から長期信頼性や堅牢性が求められる分野であり、長年に亘って培ってきた同社の技術力や製造能力が顧客に高く評価されている証となっている。こうした強みを活かし、安全性という面でハードルの高い車載分野での売上を大きく伸ばしている。 ③多品種少量生産 同社は現在約4,000品目のコネクタを生産しているが、このうちの月間生産個数が1万個未満の品目数は94%を占める。また生産金額ベースでも1万個未満の生産が62%、1万個以上が38%と、多品種少量生産が同社の特長となっている。 こうした状況に対応し、国内工場、海外工場の2つの車輪で最適なものづくりを行っている。 国内工場(安曇野工場:旧松本工場)は1万個未満の多品種少量生産の拠点。今後も同社の得意技を磨き、迅速な納入を行うため国内で稼動を続ける。 海外工場(深圳工場)は1万個以上の中量品の一気通貫生産を行い、機動力を高め世界で戦うための拠点とする。 一方、多品種少量生産ながらも短納期を実現させ、顧客から発注を受けたら1週間以内での製品配送を確約する「1weekデリバリーサービス」に2013年から積極的に取組んでいる。 現在の取扱品目数はシステム化を進めた安曇野物流ハブの完成によりそれまでの倍にあたる約1,000品目に拡大している。 2020年に向けた目標とする経営指標に「ROE 13%以上」を掲げている。 原価低減や新製品開発によるマージンの向上に加え、在庫水準のコントロールによる総資産回転率の向上にも取組んでいく考えだ。
 
 
2018年3月期決算概要
2桁の増収増益。 中期計画「GC20」の折り返しとなる18年3月期の。売上高は前期比13.3%増の194億98百万円。旺盛な設備投資需要を受けFA分野が牽引し、引き続き車載分野も好調。全分野で増収となった。 営業利益は同40.9%増の20億7百万円。営業利益率も2pt上昇し10%超え。人件費増や原材料高を増収と合理化で吸収した。 経常利益は同42.9%増の21億9百万円。 当期純利益は同5.3%増の16億25百万円。特別利益に投資有価証券売却益76百万円を、特別損失に環境対策費80百万円を計上した。 売上高、営業利益、経常利益は今世紀最高、当期純利益は過去最高を記録。 期初予想はもとより、2度目の修正予想(18年1月発表)も上回った。 *FA スマホ、半導体向けおよび自動化・省人化など設備投資需要が引き続き旺盛。ただ、第4四半期に一部顧客で発注過多に伴う在庫調整があった。 *通信 上期でDC向けメンテ品が一段落し、第4四半期はFTTH向けが市場飽和で前年割れとなった。 *民生 監視カメラとハイエンドDSCで堅調だったが、第4四半期は中国の春節の影響で減収となった。 *車載 顧客の広がりを受け計画通りに増産を進めている。主力顧客における増産の反動から第4四半期は減収。 *情報システム クラウド、DC(データセンター)、IoT、AI案件で活況が続き、第4四半期も増収で初の8億円超えとなった。 現預金、売上債権の増加で流動資産は前期末比12億19百万円増加。有形固定資産の増加で固定資産は同3億55百万円増加し、資産合計は15億73百万円増加の164億86百万円となった。 負債合計は同4億29百万円増加の44億52百万円。利益剰余金の増加で純資産合計は同11億44百万円増加の120億34百万円。 この結果、自己資本比率は前期末と変わらず73.0%。 税金等調整前当期純利益の増加で営業CFおよびフリーCFのプラス幅は大きく拡大し、キャッシュポジションも上昇した。
 
 
2019年3月期業績予想
増収・営業増益 売上高は前期比5.1%増の205億円の予想。引き続き車載、FAが堅調。 営業利益は同2.1%増の20億50百万円を計画。投資拡大や各種コスト増を見込んでいるが、合理化や増収、価格改定で吸収し増益を確保する。 2019年3月期は、Season1での仕込みを育ててSeason2のゴールにつなぐ年として位置づけており、積極的な投資を継続。コスト増などの逆風もあるが、利益率10%にこだわりながらも、売上、利益の着実な拡大を目指す。 配当予想は2円増配の20円/株とした。増配は10期連続となる。予想配当性向は32.0%。 予想為替レートは期中 1USD=105円(前期111円)、期末 105円(前期106円)としている。 (3)各種投資について 地域未来投資促進税制を活用し、開発、増強に加え、快適な勤務環境作りに向け積極投資を行う。 設備投資と研究開発を合わせ、投資額は20億円と過去最高を計画している。 ①業務用コネクタ事業 *多品種少量(FA向け)の深耕:3億円 ほぼフル操業の中、ロボット生産の拡大を中心に、セル生産ラインの構築、少量生産に適合した光造形金型の導入、デジタル部品検査システムの導入など生産能力の増強や効率化を進める。 *新事業の創出(8K対応光コネクション):1億円 AOCの量産化を進めるとともに、宅内配線への参入も進める。 ②車載用コネクタ事業 *次世代商品の開発:1億円 次世代デジタルカメラ用の案件獲得と量産化対応に取り組む。車内ネットワーク向けコネクタの商品化を進める。 *製造力の増強:3.5億円 カメラ用コネクタの全自動生産ラインを導入する。また、海外において新製造拠点を確立する。 *品質力の強化:0.5億円 品質モニタリングシステムを導入する。 ③楽勤化(生産性UP & 働き甲斐/働きやすさ) 「生産性向上」ではなく「気持ちを切り替えて仕事に臨もう。」、「明日、来年を今よりも楽しく楽に働けるよう、今工夫しよう。」という意味を表す「楽勤」を、快適な勤務環境作りのキーワードとしている。 安曇野厚生棟の建設と事務フロアの改装に3億円、基幹システムの刷新に3億円投資するほか、教育投資は前期の1.5倍に拡大する。 (4)利益率確保に向けて 引き続き積極的な投資を行うほか、人件費や外注費などコスト増要因もあるなか10%の営業利益率を確保するために、以下のような課題に取り組み今期は生産性を10%引き上げる。 *自動化/省人化 品種と量を自由に変えながらも効率的な生産を行う「変種変量生産」のためにロボットによるセル生産を活用するほか、自動機器を導入するなど自動化、省人化を進める。 *業務改革 世界的に評価の高いSAP社製基幹業務システムへの移行と同期して2万時間の業務量削減や業務品質の向上に取り組む。 *先進技術の活用 IoTを活用した見える化、GQM(Goal Question Metric:設定した目標に対する計測手法)を取り入れた部品検査、AIを用いた外観検査など、先進技術を活用して生産効率の改善を図る。 このほか、組織改編や業務用事業部の安曇野工場集結など事業部制の強化も進め、GC20の目標に向けまず今期は生産性を2017年度比で10%向上させ、その後も2019年度1.3倍、2020年度1.5倍に引き上げる。
 
 
中期計画「GC20」の進捗状況
2021年3月期の過去最高業績更新を目指すとともに持続的な「よい会社」作りに取り組む中期計画「GC20」は、前期をもって仕込みのステージであるSeason1を終え、今期より目標達成に向けた躍進のステージであるSeason2に入った。 (1)Season1の振り返り ①定量目標 Season1の最終年度18年3月期は「売上高200億円、営業利益18億円」を当初計画としていたが、下記のような自己評価の下、当初計画よりも円高傾向の中、資産効率やキャッシュ創出の点で課題は残しつつも概ね目標を達成できたと会社側は考えている。 ②定性目標:よい会社を目指して 全てのステークホルダーから信頼される会社を目指している。 (投資家) 2015年3月期比、時価総額は約1.5倍、配当も10円(分割調整後)から18円へ増加し、社外取締役も0名から2名になるなど、投資家に対しては一定のリターンを提供し、コーポレートガバナンス体制についてもその充実に対し意欲的に取り組んだ。 (顧客) 同社調査の顧客満足度は非常に良いとの回答が26%から36%に上昇したほか、1weekデリバリーの対象品目数が500品目から1,000品目に増加、品質クレーム件数は半減した。 (従業員) 平均給与は約10%増加。教育費用も2.5倍とし、社員の市場価値向上に注力した。 また、長時間労働対策、勤務間インターバル、育休制度の充実、時間単位有給制度など、現在働き方改革を先行して進めて行った。 (社会) 地域未来投資の選定企業に選ばれた。 社会貢献活動を拡大させた。 (取引先) 商慣行の是正を宣言し実行した。適正取引実現に向け、手形サイトの短縮に取り組んだ。 (2)Season2経営計画 ①基本コンセプト 持続性あるGood Companyを目指すという基本方針に変更は無いが、「セグメントNo.1戦略をグローバルで展開」、「キャッシュ・フローをより重視し、コンパクト経営を深化」、「ESGの観点で企業価値向上」を掲げ、計画完遂に向け深化させる。 ②売上・利益目標 「売上高250億円、営業利益30億円」と、業界他社並みの利益率実現に向け売上高営業利益率目標を10%から12%に上方修正した。 ③躍進に向けた5つの取り組み ESG経営をベースに3つの戦略で企業価値を高める。 <1.事業戦略> ①車載用コネクタ 車載カメラ(ビューカメラ)用コネクタ業界トップクラスの実績をベースに、カメラにとどまらず車内ネットワーク用などの新部位、自動運転に向けたセンシングカメラ用用途への展開を進めるとともに、顧客についても現在の日系メーカーにとどまらず、欧米メーカーへのアプローチを強化する。 供給力や価格競争力強化のために製造工程における自動化の導入、海外製造拠点の追加が必要と考えている。 また、品質力向上のためにGQMを本格展開し、トレーサビリティやモニタリングを強化する。 ②業務用コネクタ 設計製造近接、1 weekデリバリーなど自社の強みを活かし、「カスタム」、「少ロット」、「長期供給」、「短納期」といった業界特性に応えるオリジナリティにより自動化・省人化・IoT・AI・ロボットをキーワードに拡大するFA市場を深耕する。 また、同様に通信の世界で長年に亘って培ってきた強みを活かし、「超高速」、「大容量」、「ノイズ特性」、「放熱性」といった特長を活かし、超高精細8Kによって大きく変わる通信市場の開拓も進める。 ③情報サービス ハイブリッド・クラウド インテグレーション、AI/IoT開発、映像セキュリティソリューションの3つの新分野でセグメントNo.1を果たし、セグメントNo.1分野を粗利ベースで29%と最大のウェイトに引き上げ、利益率の向上を図る。 <2.技術戦略> サンプル出荷中で2018年10月より大量生産を開始する石英タイプのAOCに加え、高速POF(プラスティック・オプティカル・ファイバー)対応のAOCを開発した。2018年10月のサンプル出荷開始、2019年の量産開始を予定している。 これら「光コネクション」を、高精細の医療機器やFA検査装置など最先端分野から提案を始めていく。 また、4K/8K放送が実現すると、現在使用している電気ケーブルでは電波漏洩が起こり、スマホやWiFiへの通信障害が発生する可能性が指摘されているが、これへの対応として一般家庭の配線にも簡単に施工できる「GI-POF」の採用を提案している。 このように、AOCを次代を担う新事業と位置付けている同社は、「映像伝送のHTK」としてブランドを確立すべく、高速大容量伝送分野での商品展開に挑戦していく。 <3.財務戦略> サプライチェーン全体を最適化しつつ、資本効率の上昇を目指す。 キャッシュ・フローを重視し、営業CFにおいては21年3月期のCF生産性(人件費当りの営業CF)を前期の1.5倍へ、CCCは前期の79日から9日短縮して70日を目指す。 投資CFについては特に大型投資に関してはROICや資本コストから投資の是非を判断する。 具体的には、部門別にKPIを設定し、CF生産性の向上を最終目標にした逆ツリーによって各現場での浸透を図る。 <4.ESG戦略> 「よい会社」を目指すための具体的な指針としてESGを重視する同社は、それぞれの項目について以下のような取り組みを進めて行く。
 
 
佐谷社長に聞く
佐谷社長に「GC20 Season1」の振り返り、Season2最終ゴール達成に向けた課題や対応などを伺った。 Q:「まずSeason1についての自己評価をお聞かせください。」 A:「売上、利益についてはほぼ計画を達成することが出来た。CCCについて課題を持ち越したが、キャッシュ・フローを重視しコンパクトで高い資本効率の実現を目指す。」 売上高は当初計画の200億円には未達の195億円となったが、為替が計画よりも円高となったことを考えれば、ほぼ計画を達成できたと評価して良い。 利益に関しては注力してきた車載用コネクタが大きく伸長したことに加え、FAが想定以上に好調だったことから、水準、利益率ともにしっかりと達成することが出来た。 一方、CCCが悪化、Season2に課題として持ち越すこととなった。最適生産、物流リードタイムなどを改めて見直してもう一度強化に取り組み、キャッシュ・フローを重視したコンパクトで高い資本効率の実現を目指す。」 Q:「いよいよ過去最高業績への挑戦となるSeason2が始まりました。取り組み、手ごたえ、課題についてお話しください。」 A:「車載用コネクタについては、業界トップのアドバンテージを活かし拡大を目指す。業務用コネクタについては多品種少量生産に磨きをかけて拡がるFA市場と変わる通信市場を深耕する。海外生産拠点の新設も重要な取り組みだ。」 (車載用コネクタ) おかげさまでカメラ用コネクタでは、業界No.1のポジションを得ることが出来た。業界における当社の認知度や知名度は確実に向上し、技術面にとどまらず、顧客の要望に応えた試作品を納品することができる「スピーディーな試作力」など、当社の良さについてのご理解も浸透し始めている。こうしたアドバンテージを活かしながら、3つの方向で拡大を目指す。 まず一つは「車内ネットワーク用コネクタ」だ。 自動運転技術の進歩に伴い自動車内外でやり取りされる通信量は飛躍的に拡大し、コネクタやケーブルなど車内LAN(ローカルエリア・ネットワーク)を構成する機器の数も増加の一途を辿っている。車内Ethernet用コネクタ技術は世界的にも確固たる技術はまだ確立されておらず、大きなビジネスチャンスが広がっている。 次が「次世代センシングカメラ用コネクタ」だ。 レベル3や4といった極めてハイレベルの自動運転に対応する次世代カメラ用コネクタの開発を進めており、新たな需要を取り込んでいく。 3つ目が顧客の横展開だが、この点は大きな課題と認識している。 前期から日系の新規顧客が稼働を開始したが、従来の主力顧客が好調なこともありウェイトはほとんど変わっていない。また日系メーカーのみでなく欧米メーカーへの横展開が不可欠だが、欧州やアメリカ西海岸へのアプローチがまだまだ足りない。人材確保を始めとしてスピーディーに取り組まなければならないと考えている。 (業務用コネクタ) 当社では最大の強みである多品種少量生産に更に磨きをかけて業務用コネクタに高い付加価値を与えることで、競争優位性をより強固なものとすることができると考えているが、Season1では多品種少量生産サービスの拡充を進めることが出来た。 少量でも短期間で納品することに加え、長期供給保証付きというサービスを新たな付加価値として提供する「やめないビジネス」に発展させるための素地が完成しつつある。 こうした強みを活かして自動化やAI、IoTの利用で拡がるFA市場と、超高精細の4K/8Kで変わる通信市場を深耕する。 (生産体制の拡充) ほぼフル生産が続く中で2021年3月期売上高250億円を達成するためには、供給力や価格競争力強化のために自動化や省人化を進めるとともに、新たに海外に生産拠点を設ける必要がある。 現時点では申し上げることはできないが選定は着実に進んでおり、開設に合わせて、安曇野工場と海外工場の役割を整理し、最適な生産体制を構築する。 Q:「ESG経営に注力されています。その背景や具体的な取り組みをお聞かせください。」 A:「GC20に掲げる「よい会社」を具体的に追求するための指針が「ESG」であると考えている。HTKが社会に提供する価値とは何かをお伝えするツールとして「統合報告書」を初めて作成した。」 当社は中期計画で過去最高業績の実現のみでなく、文字通り「よい会社」となることを目指している。 では「よい会社」とは何かというと、当社とお付き合い下さる全ての人から「HTKと付き合ってよかった」と思っていただける会社のことであり、これを具体的に追求するための指針が「ESG」であると考えている。 E(環境)に関しては、CO2排出などにとどまらず、製品やサービスを通じた会社や社会の無駄をなくすことがHTKにとっての循環型社会における貢献であり価値創造だ。 S(社会)に関しては、従業員の働きやすい環境作りに加え、サプライチェーン全体で付加価値や生産性を向上させることが重要と考えることから、当社だけがメリットを得るのではなく、顧客、取引先を含めたすべてのステークホルダーが適正な利益を確保するための適正取引の徹底に取り組んでいる。 G(ガバナンス)に関しては、やや手前味噌になるが当社の規模としては様々な工夫を取り入れて大変積極的に取り組んできたと自負している。常に最適なガバナンスを追求し続けることを基本とし、今回のコーポレートガバナンス・コード改訂に対しても、社外取締役の三分の一以上の選任、女性取締役の選任による多様性の確保等、迅速に対応した。今後も株主や投資家との対話をより一層充実させていきたい。 こうしたESGに関する当社の考え方、取り組みなどを始めとして、HTKが社会に提供する価値とは何かをお伝えするツールとして「統合報告書」を初めて作成した。 是非ご一読いただき、当社に対するご理解を更に深めていただきたい。 (https://www.htk-jp.com/admin/upload/doc/20180625171850_1_HTK20180625_IntegrationReport.pdf
 
 
今後の注目点
スマートフォン向け出荷が減速するとの見通しから、18年2月以降、同社に限らず主要コネクタメーカーの株価は総じて軟調に転じている。 ただ、同社においてもFA分野におけるスマホ向け減少は想定内であること、PERは市場平均近辺まで低下してきたことから、投資家としては改めて21年3月期の数値目標達成に向けたGC20 Season2の進捗を注目していくべきだろう。 ちなみに、Season2の数値目標である当期純利益22億円を前提とすれば、PER15倍で時価総額は330億円、PER20倍であれば時価総額は440億円である。 ※売上高、営業利益は今期会社側予想、単位は百万円。ROEは前期実績、単位は%。時価総額は6月25日終値ベース×6月25日時点直近の短信記載の発行済株式数(自己株式を除く)。単位は百万円。PER(予)・PBR(実)は6月25日終値ベース。単位は倍。 ヒロセ電機は今期よりIFRS適用のため日本基準との前年比が非表示。
 
 
 
<参考1:中期経営計画「GC20」>
全てのステークホルダーから信頼と期待をされる「よい会社」であるとともに、過去最高の売上、利益を更新し持続的成長企業へのスケールアップを目指すのが2021年3月期を最終年度とする新中期経営計画「GC20」。 (1)基本コンセプト GC20の基本コンセプトは、『事業戦略として「Segments No.1戦略の深耕」、プラットフォーム戦略として「コンパクト経営の追求」により価値を創造し続けるGood Companyを目指す。』というもの。 また、Good Companyを持続的なものにするのが、グループ企業理念とコーポレートガバナンス基本方針である。 (2)グループ企業理念 今回のGC20策定に際し、同社ではグループの企業理念として「Value by Connecting」を新たに掲げた。 豊かな未来のために「人」、「もの」、「情報」をつなぎ、価値を創造し続ける事を目指すというビジョンを示したもの。 (3)コーポレートガバナンス基本方針 金融庁と東京証券取引所により策定された「コーポレートガバナンス・コード」が2015年6月1日から適用されるのに先立ち、2015年5月22日、「コーポレートガバナンス基本方針」を公表した。 株主を始めとした全てのステークホルダーとの信頼関係構築のためのコーポレートガバナンスの重要性を深く認識したうえで、最適なコーポレートガバナンスを実現することが自社の責務であると宣言している。 (4)事業戦略 特定分野で特徴あるソリューションを提供することで顧客に「この分野なら本多通信グループに限る」と高く評価される事を目指すのが「Segments No.1戦略」。 これまでも同社では、様々なNo.1商品を生み出してきたが、現在の形ではそれぞれの商品の持続性・継続性は不十分と考えている。 そこで、それぞれのNo.1商品を核に水平展開と次世代化で「Segments No.1 領域」を創り出し、特長のある価値を提供する事で持続的成長を目指していく。 その展開モデルは、現在のSegments No.1商品/サービスを核に、次世代商品やサービスを創出し、顧客の具体的な欲求である「ウォンツ」を解決するというもの。 同社の強みである、スピード、カスタム対応、少量短納期、周辺技術を差異化要因とし、新たな顧客、新たな市場への展開を図る。 分野別のSegments No.1 戦略は以下の通りである。 ①業務用コネクタ Segments No.1 戦略:サービスとの融合戦略で顧客価値を倍化 長年培ってきた堅牢性や長期信頼性というハードの強みに、少量短納期、カスタマイズに加え、コネクタに付随する適切なハーネスもあらかじめ接続するワンストップ受注といった「サービス」を融合させ、顧客満足度を引上げる。 世界的にIoT、4Kや8Kの高画質化ニーズが高まる中、通信分野(海外における光通信化)、FA分野(グローバルな生産性向上ニーズ)、業務分野(セキュリティニーズ)において、堅牢性や長期信頼性といったノウハウの展開や高速POFによる市場創出により、通信分野やFA分野で規模と収益性を堅持する。 ②車載用コネクタ Segments No.1 戦略:ADASコネクタへ進化させ、将来価値を倍化 自動車の安全系機能の進化スピードは目を見張るものがある。 自動車の目となる車載カメラも、パーキングアシストなど「見る」機能から、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)というコンセプトの下、車線検知、歩行者認識、衝突防止といった「測る」機能がより重要になると同時に、各自動車メーカーに限らずGoogleなど大手IT企業も含め、自動運転システムの開発が加速している。 ADASを構成するものは、車載カメラに加え、センサ、ミリ波レーダー(ミリ波帯の電波を用いて100m程度の範囲の状況を探知可能なレーダーシステム)、レーザー、ECU(エンジンコントロールユニット:エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイクロコントローラ)、電子ミラー、カーナビ、HUD(Head Up Display:フロントガラスに運転者向けの基本的な情報の画像を提供する)など多岐にわたり、その全てがデジタル高速伝送により情報のやり取りが行われ、コネクタの活躍するシーンはますます拡大する。 こうした流れの中、車載カメラ数量は2014年度から2020年度で約3.5倍の14,000万個に、ADAS市場も同期間に2.5倍の7,700億円に急成長すると見られており、同社では高速伝送、小型化などコネクタメーカーならではのノウハウを注入したADAS用コネクタを開発し、急成長市場に投入する。 販売は、北米のTier1(自動車部品メーカーのうち、自動車メーカーに直接納入する一次サプライヤー)メーカーへの参入を狙う。また、製造においては中国、東アジアに次ぐ拠点づくりの検討を開始している。 ③情報システム Segments No.1 戦略:インテグレーションで事業価値を倍化 サーバ効率化のための仮想化において業界屈指の技術を有しており、現在はクラウドコンピューティングの広がりの中、世界的ベンダーとの連携により、上流工程からの受注に力を入れ高付加価値の一括案件の獲得を進めている。今後は、データの収集から分析までを一括して請け負うビッグデータ基盤ソリューションを提供し、特徴あるSegments No.1の獲得を目指す。 成長市場において、企画から運用までフルサポートする総合提案で収益性の向上にも取り組む。 (4)プラットフォーム戦略:コンパクト経営の追求 以上の様な事業戦略の下で営業利益率の向上を目指す同社だが、繰越欠損が無くなること等から今後の実効法人税率の上昇は避けられず、市場の期待に応える水準のROE、ROAを実現するためには「資産の軽量化/高回転化」、具体的には総資産回転率の引き上げが重要な課題となる。 前期の同回転率は1.39回だったが、以下のような取り組みによって1.4~1.5の達成を目指す。 ROICを意識した事業投資。設備は小型、省スペースおよび転用が可能なものとする。またEMSの活用など、社外リソースとの共創を進める。 ロスや無駄をなくしての生産性向上。製造や業務品質の向上。遊休資産や過剰在庫の極小化に取り組む。 CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の短縮 機動的な資本政策 (5)よい会社に向けて 全てのステークホルダーからの信頼と期待の下、組織力と人材力の強化に最注力し、持続的成長を遂げる「よい会社」を目指す。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2018年6月25日