ブリッジレポート
(8793) NECキャピタルソリューション株式会社

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ブリッジレポート:(8793)NECキャピタルソリューション vol.3

(8793:東証1部) NECキャピタルソリューション 企業HP
今関 智雄 社長
今関 智雄 社長

【ブリッジレポート vol.3】2018年3月期業績レポート
取材概要「ファンドの大型売却は経常的なイベントとは言い難いが、堅調なファイナンス事業とあわせて、同社の事業ポートフォリオの特徴がよく表れた・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年6月27日掲載
企業基本情報
企業名
NECキャピタルソリューション株式会社
社長
今関 智雄
所在地
東京都港区港南2-15-3 品川インターシティC棟
決算期
3月末日
業種
その他金融業(金融・保険業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 215,718 6,024 6,537 3,517
2016年3月 202,637 4,870 6,031 3,334
2015年3月 213,853 6,043 4,733 2,816
2014年3月 228,262 16,067 16,478 5,009
株式情報(5/23現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,040円 21,533,400株 43,928百万円 7.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
50.00円 2.5% 185.76円 11.0倍 3,927.22円 0.5倍
※株価は5/23終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期実績。
 
NECキャピタルソリューション株式会社の2018年3月期決算概要などをお伝えします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
NECグループに属する国内唯一の金融サービス会社。ファイナンス・リースを中心とした賃貸・割賦事業が売上の7割強を占める。官公庁・自治体に強みを持つNECとの関係をベースとした安定した事業基盤、ICTと金融の融合などが大きな特長・強み。事業そのものが社会的価値を創造すると共に、企業として求めるべき経済的価値も創出するCSV経営を目指す。 従業員全員が企業理念に基づくそれぞれのミッション、バリュー、ビジョンを明確に捉え、顧客の信頼に足るベストパートナーを目指している。 また、同社では以下のようなグループビジョンを2013年10月に制定した。 今後10年間にわたり、グループで共有して目指す方向性であり、ありたい姿を文言化したもの。 同社を取り巻く外部環境及び内部環境は絶えず変化する事が予想されるが、どんな変化に対しても事業展開がぶれないよう、同社の拠り所とするものである。 このグループビジョンでは、事業そのものが社会的価値を創造すると共に、企業として求めるべき経済的価値も創出するCSV(Creating Shared Value)の概念に基づく経営を目指すという方向性を打ち出した。 近年、企業が永続的に存在するためには、より豊かな社会の創造に貢献する社会価値を創造することが求められるようになっており、同社もCSV経営という考えを中心に据えて、10年後のありたい姿を明確にし、持続的な成長を目指していきたいと考えている。 同社はこれまでもCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を強く意識した事業展開を行ってきた。 リース事業が循環型産業であることにいち早く着目し、リース満了品の3R(リデュース、リユース、リサイクル)処理や環境に配慮した機器をリースする「エコリース」の拡販に取り組んできたのはその一例。 また同社が得意とする官公庁向けのビジネスでは、社会インフラ構築そのものの支援をしている。 このような素地を足掛かりに、CSRから一歩進んで、事業そのものを通した社会価値の向上に貢献していきたいと考えている。 【1-3 市場環境など】 ◎リースの仕組み 同社の売上の大半を占める「リース取引」の仕組みは以下のとおり。 プレーヤーは以下の3者。 日本では、リース会計基準により、リース取引は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに区分される。 <ファイナンス・リース> 以下の2要件を満たすリースを指す。 ① リース期間の中途での解約が禁止されている。(中途解約禁止) ② 物件金額と付随費用(賃貸人の調達金利、税金、保険、手数料など)合計が、リース料で概ね全額(90%以上)回収されること(フルペイアウト)。つまりリース料総額は「物件金額+付随費用」となる。 ユーザーには、事務管理の省力化、コスト削減、多額の初期費用が不要など様々なメリットが生じる。 ファイナンス・リース取引は、さらに、「所有権移転外ファイナンス・リース」と「所有権移転ファイナンス・リース」に区分される。 「所有権移転ファイナンス・リース」は譲渡条件付きリース、購入選択権付リース、特別仕様物件のリースの3つで、限定的。 「所有権移転外ファイナンス・リース」は、「所有権移転ファイナンス・リース」以外のファイナンス・リースで、ファイナンス・リースの大部分は「所有権移転外ファイナンス・リース」となる。 <オペレーティング・リース> ファイナンス・リース以外のリースのこと。 つまり、上の2要件のうち両方、もしくはいずれかを満たさないリース。 通常は「②フルぺイアウト」の要件を満たさない仕組みのリースである。 将来価値が見込まれる機器や設備に関し、その価値をあらかじめ見込んだリーススキーム。 オペレーティング・リースを行う場合は、まずリース終了時点におけるリース物件の中古物件価値(残存価額)を見積もり、物件金額から残存価額を差し引いた金額をベースにしてリース料を設定する。 残存価額は、ユーザーがオペレーティング・リース取引を希望する物件について、リース会社が「中古市場の有無や動向」、「経済情勢」、「同一物件の過去の実績」、「ユーザーの使用状況」などから将来の市場価値を予測して設定する。 このため、オペレーティング・リースにおけるリース料総額は、物件金額よりも小さく、ファイナンス・リースと比べて安くなる。 同社が扱うのは主として「ファイナンス・リース」だが、一部航空機、建物などを対象としたオペレーティング・リースも取り扱っている。 ◎市場動向・規模 公益社団法人リース事業協会の統計によれば、2017年度のリース取扱高(速報ベース)は約4.8兆円。 2008年4月に導入された新リース会計基準(※)及び同年9月に発生したリーマンショックの影響により、取扱高は大きく減少した。 ただ、中堅・中小企業には新リース基準が適用されないこと、前述の様なオフバランス以外のファイナンス・リースのメリットは依然魅力的であることから、近年は5兆円近辺で推移している。 一方、リース会社間の競争に加えて、マイナス金利政策の導入で事業環境が悪化している地方金融機関が、リース会社の取引先を含めたこれまでは融資対象としていなかった先に対しても貸出を積極化させており、競争は激化している。 サービスの多様性、高付加価値化など、差別化要因の確立がリース会社各社に求められている。 (※)新リース会計基準:2008年4月の導入。それまでは、所有権移転外ファイナンス・リース取引は所有権の移転が無いことから賃貸借処理(オフバランス)が認められていたが、新基準では原則廃止となり、 売買処理(オンバランス)が原則となった。原則としてリース開始時に貸借対照表に「リース資産」、「リース債務」を計上。また、リース資産に係わる減価償却費とリース債務に係わる利息相当額を、それぞれ損益計算書に計上する。 適用対象会社は、金融商品取引法が適用される上場会社並びにその子会社及び関連会社または、会社法上の大会社 (資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)。 中小企業は、従来通り、賃貸借処理(オフバランス)を継続できる。資本金5億円未満かつ負債総額200億円未満の株式会社、特例有限会社、合名会社、合資会社または合同会社は、新リース会計基準の適用を受けず、従来通りの賃貸借処理(オフバランス)が認められている。 多くのリース会社が、PBR1倍割れの状況にある。 同社も収益性の向上に加え、投資家に対する認知度の向上や、特徴・強み・競争優位性・持続的な利益拡大の道筋などの理解促進が不可欠である。 【1-4 事業内容】 1.事業セグメント 事業セグメントは賃貸・割賦事業、ファイナンス事業、リサ事業、その他の事業の計4つ。 ◎賃貸・割賦事業 リース事業および割賦販売事業を行っている。 ファイナンス・リース以外には、保守契約をセットしたスキームである「メンテナンス・リース」、オフバランスが可能な「オペレーティング・リース」、ICT機器を対象とした解約自由の残価設定型オペレーティングリースである「Nレンタル」サービスなど、様々なサービスを提供している。 オペレーティングリースは通常、経年による価値低下が緩やかでリース契約期間満了後もある程度の価格で売却可能な飛行機や船舶といった資産が対象となり、陳腐化の速いPC等ICT機器は対象とし難いが、同社の「Nレンタル」リースは、ICT機器を再生することで価値を高めてこの課題をクリアし、世界の中古市場へ販売している。 このようにどのようなタイプのリースであってもリースされた製品は必ず返却されることから、同社ではリースは資源循環型社会に貢献するサービスであると捉え、リース満了品のうち再販可能なICT製品をリユース中心に3R処理し、資源循環型社会づくりにつなげている。 割賦販売はユーザーの設備投資における資金ニーズや設備所有ニーズに対して、ユーザーに代わって同社が設備を購入し、ユーザーへ割賦販売する事業。購入代金や金利等は分割で回収する。 近年は、取り扱う営業資産の多様化を進めており、太陽光パネル等の再生可能エネルギー関連設備、建物、航空機等にも取り組んでいる。 ◎ファイナンス事業 主に「企業向け貸付」や「ファクタリング」から構成される。 企業向け貸付は、主に「各種債権流動化プログラムの提供」や「設備投資向けストラクチャードファイナンスの提供」等を行う事業。 ファクタリングは売掛金の早期回収を実現し、企業の資金調達負担を軽減するサービスである。 これらのサービスは新規の顧客を主力のリース事業に結び付けるためのきっかけづくりとしての役割も担っている。 この他、有価証券の投資業務等も行っている。 ◎リサ事業 金融サービスの多様化を目的に2010年12月に連結子会社とした株式会社リサ・パートナーズ(以下、リサ)が展開する事業。 顧客企業の抱える経営課題に対し、資金面で支援する「投融資」と、金融・不動産を軸に専門的見地から助言する「アドバイザリー」の両面から、解決策を提供している。 事業成長支援、資本効率改善、債権の健全化、不動産の有効活用など、幅広い課題にワンストップで対応できるのは、各専門分野のプロフェッショナルが多数在籍している同社ならではの強みである。 中でも同社が得意としているのが、180を超える地域金融機関とのネットワークを活かした地域企業の活性化支援。 その強みを活かして2014年3月には、日本政策投資銀行、地域経済活性化支援機構と共に「観光活性化マザーファンド」を設立している。 このファンドは全国各地の観光産業の活性化を目的とし、宿泊、飲食、観光物産品の製造・販売、地方交通等、観光関連の事業を幅広く投資対象としている。同ファンドを通じて、国内各地で、地域ごとの豊かな観光資源を活かした経済活性化に貢献することで、観光大国としての日本経済の成長に寄与していきたいと考えている。 ◎その他の事業 ストラクチャードファイナンスの組成手数料等の様々な手数料収入が計上される他、賃貸事業において同社が保有するリース満了・中途解約物件を売却する中古品売買、保守料の回収、顧客の債権管理に関する業務効率化やアウトソーシングニーズに対し同社が業務を代行するサービスなどがある。 CSV観点の新しいニーズの開拓と事業化を推進する中で新たに取り組むこととなった太陽光発電事業、PFI事業、ヘルスケア事業の手数料もこのセグメントに含まれる。 (ICT関連事業) ICTのライフサイクルである導入、利用、廃棄まですべての領域で顧客のICT資産の運用・管理の最適化をBPO(Business Process Outsourcing)型クラウドサービスで支援している。 また契約満了後のICT機器は、子会社のキャピテック&リブートテクノロジーサービス株式会社によって再生し、海外を含む独自のルートで中古販売している。 (PFI事業) PFI(Private Finance Initiative)は、民間資金を活用した社会資本整備、つまり民間の資金、経営能力及び技術能力を活用して公共施設等の建設、維持管理、運営等を行う官民連携事業。 一般的にはプロジェクト・ファイナンスによる資金調達の組成が必要となるため、専門スタッフが事業に最適なストラクチャーを構築し、低利な資金調達の支援、官公庁への提案書作成等、事業者側に立ったサービス提供を行っている。 (ヘルスケア事業) 投資家から募った資金をヘルスケア施設に特化して投資する不動産投資信託証券「ヘルスケア REIT」を中心に展開している。 (エネルギー事業) CSV経営の一つとして、SPC(特定目的会社)を通した太陽光発電事業の他、地域新電力会社の運営、電力の買い取り及び販売を行っている。 2015年10月には、「エネルギーの地産地消」というコンセプトの下、浜松市や株式会社NTTファシリティーズ、浜松市内の金融機関や民間企業と共に地域新電力会社「株式会社浜松新電力」を設立した。 浜松新電力は、市内の太陽光発電事業者等から電力を買い取り、小中学校をはじめとした市内の公共機関を中心に電力を販売している。地域産のエネルギーを地域内で消費することで、外部からの供給に頼らない電力の安定確保が実現でき、加えて、電力供給に関わる資金や資源を市内で循環させることで、地域経済の活性化にもつなげていく。 2.海外展開 現在、香港、シンガポール、マレーシア、タイに現地法人を設立し、海外展開を進めている。 通常海外拠点設立に際しては、相当の準備と期間が必要になるが、同社はNECの海外戦略に呼応し、既にNECがサービスを展開し注力しているマーケットに対し、金融面のサポートをするという形をとりリスクの低減を図っている。 現地企業への対応、アジアへの進出を図る日本企業の支援等も含め、事業を拡大していく考えだ。 【1-5 特長と強み】 ①NECとの関係をベースとした安定した事業基盤 NECグループに属する国内唯一の金融サービス会社である同社は、設立以来NECと顧客基盤を共有してきたことから、顧客の5割以上を占める官公庁や大企業を中心とした安定した顧客基盤を有している。 また、契約実行高の3分の2近くがNECやNEC系販社からのものとなっている。NEC製品については、メンテナンスリースやベンダーファイナンスプログラム等、NECの製品・サービスと組み合わせたメーカー系ならではのリースも提供している。 NECとは戦略的なパートナーシップの構築を推進している。 NECが顧客に行うシステム等の提案活動に際し、同社はその上流工程から参加し、販売方法について検討を行い、「チームNEC」として提案活動を行っている。 NECは競合先との差別化を図った提案ができ、同社は他の金融サービス会社と競合することなく商談を進めることができ、両社ともメリットを享受している。 リース契約は平均5年程度という長期間にわたり、顧客と取引をするビジネス。 メーカーが機器を販売した後も、同社と顧客の取引は続いており、新たな顧客の課題を知ることもでき、こうした顧客との関係から、同社からNECに新規のビジネスチャンスを紹介することもある。 ②「ICT」と「金融」の融合 様々な種類の設備についてリースを提供している同社だが、中でもNECの販売促進のための金融会社として歩んできた経緯から、ICT製品のリースの取扱割合が7割強と高くなっている。 こうしたバックボーンを背景に、多くのリース会社の中で同社の存在を特徴づけているキーワードが『「ICT」と「金融」の融合』だ。 「ICT」と「金融」が融合した同社ならではのサービスの代表例が「PITマネージドサービス」。 利用に際して各種の設定や管理が必要となるPCを始め様々なデバイスやソフトウェアなどICT資産の「調達、展開から運用管理・資産処分」に至るまでのライフサイクルを管理する各種サービスをワンストップで提供するBPO型クラウドサービスである。 パソコンだけではなく、スマートフォンやタブレット端末等のマルチデバイスに柔軟に対応し、NECに限らず複数のメーカーを取り扱い、顧客の状況に合わせたベストな提案を行っている。 また、最新の技術・サービスを取り入れたクラウドサービスにより、トータルコストの削減とクオリティ維持に貢献している。 加えて、サービスデスクを運営し、コンプライアンスやセキュリティを考慮した各種サービスを提供して顧客のバックオフィス機能の業務を代行する。 NECとの戦略的な連携という強固な事業基盤の上で、ICTに関する豊富な知見を武器に、幅広い金融ソリューションを提供しているのがNECキャピタルソリューション株式会社である。 ③CSV経営 同社を特徴づけるもう一つのキーワードがCSV経営だ。 2013年10月、自社の存在意義を明確にし、持続的成長を追求するためには決してぶれることの無い指針が必要と考え、採り入れた。 前述の様にCSVは、事業そのものが社会的価値を創造すると共に、企業として求めるべき経済的価値も創出するという考え方。 2011年、「競争戦略論」で有名なマイケル・ポーター教授が、ハーバード・ビジネス・レビューで提唱した。 社会に対する責任や活動としてはCSRが有名だが、CSRが、コンプライアンス(法令順守)や、環境マネジメント、フィランソロピー(社会貢献的活動)など本業の周辺における活動であるのに対して、CSVは、本業、事業そのものでの戦略的展開が重視される。 CSVは、CSRより一歩進んで、社会的価値の実現を通じて企業価値、事業価値や競争力を向上させる新しい動きとして理解されはじめている。 取り組み事例①:「環境・復興支援シンジケートローン」 「環境・復興支援シンジケートローン」は、環境に配慮した事業を指向する企業の支援や、東日本大震災の被災地の復興支援を目的とするもので、日本政策投資銀行(DBJ)との連携により、全国の金融機関の協力を得てシンジケートローンを組成し、その趣旨に沿った案件に資金を活用している。 2012年に組成を開始し、これまで7回組成している。2013年10月には第15回グリーン購入大賞における最高賞の「大賞・環境大臣賞(協働プロジェクト部門)」を受賞するなど、高く評価されている。 取り組み事例②:「次世代自動車用充電インフラ整備プロジェクト」 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)等、環境にやさしい次世代自動車の普及拡大に不可欠な充電スタンド等のインフラを整備するためにNECグループで「次世代自動車用充電インフラ整備プロジェクト」を推進している。 顧客となる大型商業施設や公共施設等、大規模導入が可能な施設を運用する企業・自治体への提案を行うこのプロジェクトにおいて同社はファイナンス関係を担当。充電器等の導入にリースを活用するとともに、政府からの補助金を活用することで、導入時の初期投資を限りなくゼロに抑える仕組みを提案した。 首都圏を中心とした複数の施設で運用が始まっている。 CSV経営は、全社員が自分の部署において何をなすべきかを話し合ったほか、社長が支店を含めた全部門と議論するなど理解、浸透を図った結果しっかりと定着している。新中期計画2017の策定を契機に改めてリマインド、ブラッシュアップを図る為社長が全社員と議論する場を設けた。 18年3月期の売上高当期純利益率は約1ポイント上昇したが、今期は0.6ポイント低下する見込み。 一定規模のリース資産を保有する必要があるため業態的に総資産回転率の上昇はなかなか難しいだろうが、マージンの着実な向上によるROEの上昇が望まれる。 【1-7 株主還元について】 主力の事業であるリースは、契約期間が長く、定期的にリース料を受領するビジネスモデルであるため、ベースとなる収益は安定的な推移となっている。こうした事業の特性から、配当方針も安定配当を第一としている。 上場来44円/株を続けていたが、前2018年3月期に初の増配を行い50円/株とした。 また、保有期間および保有株式数に応じた株主優待制度を設けており、3月末現在の株主を対象に年に一度実施している。株主優待品の発送は7月初旬の予定。 また、株主が優待品の受け取りにかえて寄付を希望する場合、ならびに事前に優待品の辞退を申し出た場合は、同社より優待品相当額を東日本大震災を支援する団体へ寄付している。
 
 
2018年3月期決算概要
増収・増益で計画も上回る。 売上高は、前期比7.3%増の2,314億円。リサ事業のファンドにおける有価証券売却収益や、その他の事業におけるヘルスケア関連の販売用不動産の売却などが寄与した。 経常利益は同105.8%増の135億円。リサ事業が好調であったことに加え、ファイナンス事業における配当収益や金利収入が増加した。 期初計画および2度目の修正となった17年10月発表の修正計画を共に上回った。 また配当予想についても期末配当を22円/株から28円/株に修正した結果、年間合計は50円/株となった。(従来予想は44円/株) *賃貸・割賦事業 減収・増益。 2017年度の業界全体のリース取扱高は前期比3.9%の減少で、同社の主力である情報通信機器のリース取扱高も同0.3%の減少と市場環境は低調。 貸倒引当金戻入額の計上等により、営業利益は増加した。 契約実行高は、官公庁領域での大型案件受注、民需領域も順調で、全体では同22.6%増。 成約高についても、同様で全体では、同11.9%増となった。 *ファイナンス事業 増収・増益。 配当収益や金利収入の増加で増収。貸倒引当金繰入額の増加はあったが増益だった。 一括ファクタリングを除く契約形態別の契約実行高は、割賦バックや個別ファクタリングで大型案件を受注したことで、全体では前期比31.0%の増加。 業種別契約実行高では、不動産業が減少した一方で製造業の大型案件を受注したのを始め全業種で増加し、民需全体では同31.4%の増加となった。 *リサ事業 増収増益。 (アセットビジネス) ファンドにおいて大型の投資有価証券売却があったため前期比倍増以上の大幅な増収・増益。 (不動産) 前期に大型案件があったため減収となったが手数料収入の拡大で増益。 (アドバイザリー) 減収だったが利益はほぼ前年並みを確保した。 リース債権及びリース投資資産、営業貸付金、投資有価証券の増加などにより資産合計は前期末比460億円増加の9,064億円。 有利子負債の増加により負債は同438億円増加の7,955億円となった。純資産は同21億円増加の1,109億円。 自己資本比率は前期末比0.1ポイント上昇の9.3%となった。 賃貸・割賦事業の残高は官公庁が順調で増加。個別ファクタリングや割賦バックで大型受注があったファイナンス事業の残高も増加した。ファンドビジネスの進捗によりリサ事業の残高も増加したが、ヘルスケア関連の販売用不動産の売却があったため、その他の事業の残高は減少。全体の残高は前年3月末に比べ541億円増加した。 ◎資金調達状況 短期および中期市場金利の低位安定推移やCPの活用などで、資金原価率(資金原価 ÷ 有利子負債平残)は前期比0.05ポイント減の0.63%となった。 有利子負債合計に占めるCP、社債、債権流動化の構成比である直接調達比率は、CPおよび社債の残高増加により前期末の33.9%から39.0%へ上昇した。 営業貸付金の増加、賃貸資産の取得による支出増加などで営業CFのマイナス幅は拡大。 投資有価証券の取得による支出増加で投資CFのマイナス幅も拡大した。 前期あった社債の償還による支出が無くなったことなどから財務CFのプラス幅は拡大。 キャッシュポジションは低下した。 (5)トピックス ◎地元材を利用する小型高効率木質バイオマス発電所へ出資 シン・エナジー株式会社(本社:兵庫県神戸市)が、愛媛県内子町で起工した小規模の木質バイオマス発電施設「内子バイオマス発電所」に地元企業とともに出資を行った。 発電規模2,000kW未満の商用小型発電所としては、四国で初めての施設であり、順調に工事が進めば、2018年11月も発電を開始する見込み。 ◎水素モビリティの分野の拡大による持続可能なエネルギー社会の実現に向け資本参加 2018年3月、同社は、JA三井リース株式会社、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、三井住友ファイナンス&リース株式会社、未来創生ファンド(運営者:スパークス・グループ株式会社)の 4社とともに、水素ステーションネットワーク合同会社(以下「JHyM(ジェイハイム)」:Japan H2 Mobility)の資本参加に関する契約を締結した。 JHyMは、日本の「水素基本戦略」(2017年12月26日付、再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議決定)における、水素ステーション整備の推進役として、2018年2月に自動車メーカー、インフラ事業者、金融投資家等11社で設立された。 水素ステーションの日本全国への戦略的な整備及び効率的な運営への貢献を主な事業内容としている。 今回、資本参加する同社を含めた5社は、次世代自動車である燃料電池自動車や環境エネルギーの普及、水素ステーションに係るICTの活用、安全性の立証、技術のイノベーション及び購買方法の多様性など、各社が有する強みをJHyMに結集し社会に貢献していくことを目的に参画した。 今回の資本参加によりJHyMを中心とした更に堅固なコンソーシアムが形成されたことを受け、JHyMは、その具体的な取組みである「水素ステーションの戦略的な整備及び事業としての自立化支援」並びに「燃料電池自動車ユーザーの利便性向上を通じた燃料電池自動車の普及拡大」という好循環を実現し、水素モビリティの分野の拡大による持続可能なエネルギー社会の実現に向け、より一層取り組んでいく。
 
 
2019年3月期業績予想
減収減益を予想 前期、大型の販売用不動産の売却があったため売上高は前期比13.6%減の2,000億円の予想。 経常利益についても、前期に投資有価証券の売却や与信コストの戻入益があったことから、同40.5%減の80億円を見込む。 配当は前期と同じ50円/株の予定。予想配当性向は26.9%。
 
 
中期計画2017の進捗状況
(1)中期計画 2017概要 同社は「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」をグループビジョンに掲げ、その実現に向けた10年間のロードマップを三段階に分割しており、2018年3月期から第二段階にあたる「中期計画 2017」を推進中である。 「中期計画2017」ではこの3年間を「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」で持続しうる事業基盤を構築する期間と位置付けている。 (※「中期計画2017」の詳細は、後述の「参考」を参照) (2)取り組み状況 <コア領域の完成> 各種付随収益が期待できるリースにこだわった事業を展開すると共に、様々な商材を組み合わせるアレンジ力や社内外とのシナジー創出に注力しながら、強みを活かした同社らしい「サービス」の確立に取り組む。 <新事業の立ち上げ> 非金融を含め同社らしく持続可能な新事業を確立する。 新事業は「エネルギー、ヘルスケア、農業、観光」の4つを重点分野としている。 <経営基盤強化戦略> 事業戦略を支える経営基盤を強化する。 以下のような進捗があった。 コンプライアンス強化推進、業務品質向上への取り組み進展 労働生産性向上及び従業員満足度向上に向け、働き方改革や女性活躍推進活動が始動 女性活躍に関する「えるぼし(2段階目)」認定取得
 
 
今関社長に聞く
今関社長に2018年3月期決算の振り返り、中期経営計画の進捗状況、株主・投資家へのメッセージなどを伺った。 Q:「2018年3月期決算に対する自己評価を伺いたいと思います。」 A:「何とか合格点をつけられる決算でした。短期的な収益に関しては、リサが2010年のM&A後、純利益ベースで最大の収益貢献となりました。また。中期的な視点では、営業資産の積み上げをしっかりと行うことが出来ました。」 何とか合格点をつけられる決算でした。 短期的な収益に関しては、リサが2010年のM&A後、純利益ベースで最大の収益貢献となりました。 リスク管理の強化やアセットの入れ替えなどの取り組みを進め、この3-4年で安定的に利益を稼ぎ出せる体質となってきました。ファンドビジネスにおいてIPOにより大型のEXITが実現出来たことは当社グループにとって大きな意味を持つと考えています。もともと地銀や信用金庫など地域金融機関とのパイプの太さが特徴の同社ですが、買収時には約70行であった相手先が現在は約180行まで増加しており、今後も様々なビジネスの広がりが期待できます。 また、中期的な視点では、営業資産の積み上げをしっかりと行うことが出来ました。 当社の事業においては営業資産の積み上げは将来の収益につながる極めて大事なファクターです。 その意味で、17年3月期には前期比減少した賃貸・割賦事業の営業資産が前年比257億円増の4,924億円と2年前の水準をも上回ったのは大きな成果です。 一方、新事業領域においては時間がかかる面はあるものの、もう少し具体的な結果が欲しかったと思っています。 出資を含めた各種スキームの構築は行っていますが、残念ながら付加価値の創出にはまだ至っていません。出来る限り早く収益貢献するように取り組んでいきます。 Q:「続いて中期計画2017の進捗ついてお聞かせください。」 A:「コア領域においてはNECとの戦略的な関係構築を進めたことに加え、独自商流に関しては外資系ベンダーを中心としたベンダーファイナンスも拡大させることが出来ました。新事業においてはバイオマス発電、水素ステーションネットワークへの参画などを行いました。」 まずコア領域においてはNECとの戦略的な関係構築を進めることが出来ました。 NECを通じた顧客はオフバランスニーズでリースを利用していた大企業が多いため、新リース会計基準が導入された2008年4月以降、リースの取扱が急減し民需におけるNECとの関係性も弱くなっていました。 しかし、事業基盤強化のためにはNECとの関係強化が必要と考え、前中期計画において改めて明確な目標として取り組んできました。香港とグアムを結ぶ光海底ケーブルプロジェクト向けシンジケートローン組成を成功させ、注力してきたNECとの連携強化を成果として残すことが出来ました。 この案件は当社にとって海外プロジェクト向けシンジケートローン組成の第1号案件であり、これを機にNECにおける当社のプレゼンスは大きく向上したと感じています。 今後は国内だけでなく、海外でも協業が増加すると期待しており、事業の幅を広げる大きな一歩となったと思います。 また、NECとの関係を深める一方で、当社独自の商流開発も重要と考えています。その一つとして、外資系ベンダーを中心としたベンダーファイナンスを拡大させることができたのも大きな成果です。 当社の強みの一つであるICT関連のノウハウや実績を武器にアプローチを行ったところ、この点を高く評価いただき実績に繋がりました。今後もこの分野には積極的に取り組んでいく考えです。 新事業に関しては、全体の深堀はまだこれからですが、太陽光以外の電源としてバイオマス発電スキームに出資を行いました。 雇用の創出や売電を通じて地域経済活性化への貢献を果たすことになり、当社が標榜しているCSV経営にも繋がるものです。 また日本水素ステーションネットワークへの参加は、燃料電池車の普及に関し、電気自動車の充電施設設置プロジェクトにおける当社のノウハウや実績が活かせると考えています。 Q:「では最後に株主や投資家の皆さんへのメッセージをお願いします。」 A:「前期、東証一部指定替え以降初の増配を行い50円/株を安定配当のベースとすることとしました。良質な営業資産を今後も着実に積み上げ、中長期で持続的な成長を続けていく考えですので、これからも是非当社を応援していただきたいと思います。」 当社は2006年以来、安定配当を基本方針として44円/株の配当を続けてきましたが、今期増配を行い、今後は50円/株を安定配当のベースとすることとしました。 また、配当性向についても同業他社平均を意識して配当政策を進めて行く考えです。 リースを取り巻く事業環境は決して良好とは言い難いですが、今後も良質な営業資産を着実に積み上げるとともに、リサ事業や新事業を更に拡大し、中長期で持続的な成長を続けていく考えです。これからも是非当社を応援していただきたいと思います。
 
 
今後の注目点
ファンドの大型売却は経常的なイベントとは言い難いが、堅調なファイナンス事業とあわせて、同社の事業ポートフォリオの特徴がよく表れた決算だった。M&Aしたリサが純利益ベースで買収後最大の収益貢献したことは評価されるべきポイントであろう。 一方で、株価はほぼTOPIXと同等のパフォーマンスとなっているが、更にTOPIXを上回るためには各事業における案件数の増大など、収益変動性の低下が必要となろう。
 
 
<参考1:中期計画2017について>
同社は事業活動そのものが社会的価値を創造すると同時に、企業として求めるべき経済的価値を創出し、企業と社会双方に共通の価値を生み出すCSV経営を目指し、グループビジョンに掲げている。 このビジョンに基づき、CSV経営実現に向けた10年間のロードマップを三段階に分割しており、第一段階である「中期計画 2014」が終了したことに伴い、「中期計画 2017」を策定した。 (1)中期計画2014の振り返り 「コア領域の基盤再構築とビジョン実現に向けた仕掛けの構築」をテーマとした「中期計画2014」は、異次元の金融緩和による競合激化を受け、従来型のリース・ファイナンスが伸び悩み、数値面では当初計画を下回る結果となった。ただ、各事業領域の収益拡大や新たな収益源の確保が進み、2016年度における見直し後の計画値は達成することができた。 また、各種施策が着実に進捗し、コア領域の基盤再構築及び新事業の仕掛け構築についても一定の成果を得る事が出来たと考えている。 (2)新中期計画2017概要 この3年間を『ビジョン実現に向けた「コア領域の完成」と「新事業立ち上げ」の期間』と位置付けている。 ① 事業戦略 <コア領域の完成> 各種付随収益が期待できるリースにこだわった事業を展開すると共に、様々な商材を組み合わせるアレンジ力や社内外とのシナジー創出に注力しながら、強みを活かした同社らしい「サービス」の確立に取り組む。 <新事業の立ち上げ> 地域活性化や労働人口減少等の社会課題解決に対する事業への取り組みを推進する。 以下の5領域で事業戦略を展開する。 <経営基盤強化戦略> 事業戦略を支える経営基盤を強化する。 収益性向上を図りつつ成果を刈り取り、着実に増益を達成する。
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
◎コーポレートガバナンス報告書 最終更新日:2017年6月30日 <実施しない主な原則とその理由> 「コーポレートガバナンス・コードの各原則について全てを実施しております。」と記載している。 <コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づいて開示している主な原則>