ブリッジレポート:(8130)サンゲツ vol.15
(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ |
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企業名 |
株式会社サンゲツ |
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社長 |
安田 正介 |
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所在地 |
名古屋市西区幅下1-4-1 |
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決算期 |
3月末日 |
業種 |
卸売業(商業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2017年3月 | 135,640 | 7,572 | 8,368 | 6,570 |
2016年3月 | 133,972 | 9,112 | 9,463 | 6,393 |
2015年3月 | 132,050 | 8,031 | 8,506 | 4,402 |
2014年3月 | 131,978 | 8,952 | 9,475 | 5,459 |
2013年3月 | 123,150 | 8,020 | 8,393 | 4,806 |
2012年3月 | 118,518 | 7,095 | 7,180 | 4,151 |
株式情報(6/7現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。グループ企業に、エクステリア商品の専門卸「株式会社サングリーン」、照明器具の企画、設計、製造、販売を行う「山田照明株式会社」、中国での事業展開の拠点「山月堂(上海)装飾有限公司」、米国の非住宅向けを中心とした壁装材製造販売会社「Koroseal Interior Products Holdings,Inc.」、施工能力の強化を通じて更なる受注獲得を目指す「フェアトーン株式会社」、カーテン専門の販売会社「株式会社サンゲツヴォーヌ」、東南アジアにおける内装材料販売会社である「Goodrich Global Holdings Pte. Ltd.」の7社を有する。
【沿革】
1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。
【企業理念】
新たなステージに臨む同社では、変革のチャレンジを進める上で、2016年4月、新ブランド理念を含めた企業理念を再構築した。
以下の、「社是」、「企業使命」、「サンゲツ三則」に新しい「ブランド理念」を合わせ、企業理念としている。
<社是>
誠実
<企業使命>
インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与します。
<サンゲツ三則>
創造的デザイン・信頼される品質・適正な市場価格
<ブランド理念>
ブランドステートメント「Joy of Design」を掲げ、ブランドパーパスとして「私たちは、新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」と謳っている。
インテリア商品の作り手と使い手、同社に関連する全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合うことを目指す考えだ。
【市場環境】
◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。
一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数は低水準で推移しているのに対し、同社売上高は過去最高を連続して更新している。
これは、M&Aに加え、民間住宅以外に非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。
国土交通省発表の「建設投資見通し」によれば、民間住宅建築投資、民間非住宅建築投資ともにリーマンショック後は回復途上にあるが、民間住宅建築投資が未だ2000年レベルの8割の水準であるのに対し、民間非住宅建築投資は同レベルを超えている。
一方、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2018年1月26日発表)によれば、名目民間非住宅建築投資の対前年度伸び率は、2016年度までは2014年度10.6%増、2015年度(見込み)7.4%増、2016年度(見込み)6.0%増と堅調なものの、2017年度(見通し)1.4%増2018年度(見通し)は1.2%減とスローダウンする見通しとなっている。
着工床面積も、事務所が16年度10.3%増から17年度(見通し)3.4%増、18年度(見通し)は0.0%と急ブレーキがかかり、店舗も16年度7.6%減、17年度(見通し)1.3%減、18年度(見通し)1.8%減と低調に推移する見通しである。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、民間非住宅市場は新設、リニューアルも含め需要は堅調である一方、人手不足によるボトルネックが生じているとの見方もあり、不透明感が残っている。
【事業内容】
壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。また2019年3月期から連結対象となったGoodrich社を含めた子会社3社により海外事業も展開している。
商品数は約12,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約4,200点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で30~40%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。
◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、53か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として9か所のショールームを有している。
最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。
そのため、同社では見本帳、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、コントラクト営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約450名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。
◎物流体制
全国12か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.14%(約70点程度)となっている。当該地区での欠品であり、周辺の物流センターから即座にカバーする事で、納期待ちを依頼する事はレアケースである。内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。仕入先は約100社と広範囲に亘っている。
②「エクステリア事業」
(2018年3月期 売上高 15,013百万円、営業利益 439百万円)
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。
③「照明事業」
(2018年3月期 売上高 3,663百万円、営業利益 -137百万円)
2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。
④「海外事業」
(2018年3月期 売上高 17,151百万円、営業利益 -870百万円)
中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」の事業戦略において、海外を重点注力市場と位置付けて連結経営管理することとしたため、2018年3月期第1四半期より新たに設けられたセグメント。2016年11月に買収したKoroseal Interior Products Holdings,Inc.、2016年4月に設立した山月堂(上海)装飾有限公司および2017年12月に買収したGoodrich Global Holdings Pte. Ltd.の3社で構成される。
【特徴と強み】
①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。また、商品数12,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。
②「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。昭和40年に初のオリジナル壁紙を発売。昭和48年に制定以降、現在も守り続けられているサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約25名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。商品ラインアップは他社には例を見ない約12,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する約30種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。
「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約450名で、業界最大である。
全国61拠点で前述のような、提案営業を展開している。9か所のショールームには約45名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが約40名おり、その提案力も業界最高水準となっている。
「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。
ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
通常、壁紙は1ロール50m。30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。
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2018年3月期決算概要 |
増収も販管費増で減益。利益は修正計画も下回る。
売上高は前期比15.3%増の1,563億円。インテリア事業、エクステリア事業が増収だったほか、前期買収したKoroseal社、子会社化したフェアトーン社の売上が寄与した。
売上総利益は同18.6%増と増収率を上回り粗利率も0.8%上昇したが、上記2社の販管費に加え、物流拠点整備、基幹システムの再構築準備、人件費および物流コストの上昇、新規連結先ののれん償却増などで、販管費は同30.8%増加したため営業利益は同33.5%の減益となった。
①インテリア事業
増収・減益。
<壁装材>
増収。非住宅向けに不燃認定壁紙を収録した見本帳「FAITH」が順調に推移したほか、粘着剤付化粧フィルム「リアテック」、「ガラスフィルム」において、都市圏を中心としたコントラクト案件への営業強化が奏功した。
<床材>
増収。新設住宅着工戸数の伸び悩みが影響し、住宅向け塩ビ床シートは前年並みとなったが、商業施設等において塩ビ床タイルが継続して堅調に推移したほか、医療福祉施設や文教施設の改修需要に伴い、メンテナンス性に優れた施設用塩ビ床シートが好調だった。
<ファブリック>
増収。2017年7月に発売した住宅向けカーテン見本帳「STRINGS」と「Simple Order」が売上を牽引した。また、注力市場に特化した営業活動を行い、コントラクト施設向けカーテンも堅調に推移した。
<その他>
増収。施工体制を担うフェアトーン株式会社の業績、施工代などを含んでいる。
②エクステリア事業
増収・増益。
従来から継続している営業管理体制の整備と施工力の強化を進めたほか、地域戦略に沿った営業拠点の統廃合を実行した。商品においては、カーポートや大型ガレージが伸びたほか、エクステリア照明や人工木材デッキ、宅配ボックスといったガーデンエクステリアの需要伸長に対応した商品の取り扱い拡大と販売促進に注力した。
③照明器具事業
減収・減益。
照明市場全体がインバウンド等に伴う建設・リニューアルの活況や省エネルギーへの需要により底堅く推移するなか、従来から継続しているコントラクト営業の強化や、サンゲツと連携した営業活動に注力した。また、大手建設事務所と照明の共同開発に取り組むなど、営業力と商品力の強化に努めた。一方で、他社の市場参入や低価格化などにより競争は激しく再び営業損失となった。
④海外事業
北米市場を担うKoroseal社においては、粘着剤付化粧フィルム「リアテック」の営業活動をより広い地域で展開し、ホテル物件等の販路を拡大した。ただ、スクラップ率の高止まり等による製造原価増や、見本帳費用について従来は市場投入後4年で償却していたものをより保守的に投入後即償却へ計上方法を変更したことによる販管費増で収益は低調だった。
中国市場を担う山月堂(上海)においては、従来の塗り壁から壁紙への仕様の変更も追い風となり大型集合住宅への壁紙の採用が進むとともに、医療・商業関連施設等への床材採用など、取扱商品の拡大にも努めた結果、単年度黒字を達成した。
海外事業のれん償却前の営業損失は205百万円。
現預金は減少したが、売上債権やたな卸資産の増加などで流動資産は前期末に比べ6億円増加。固定資産は有形固定資産の増加等で同10億円増加した結果、資産合計は同16億円増加の1,709億円となった。流動負債は同15億円増加。長期借入金の増加等で固定負債は同43億円増加し、負債合計は同59億円増加の648億円となった。利益剰余金の減少、自己株式の増加で純資産は同43億円減少し、1,030億円となった。自己資本比率は前期末の65.2%から3.7%低下し61.5%となった。
子会社株式の取得による支出が減少しフリーCFはプラスに転じた。
自己株式取得増加などで財務CFはマイナスに転じた。キャッシュポジションは低下した
棚卸資産回転期間は上昇したが、売上債権回転期間が低下し、CCCは前期に続き短縮させることが出来た。
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2019年3月期業績見通し |
増収増益、利益率も上昇
売上高は前期比4.9%増の1,640億円。インテリア事業、エクステリア事業は堅調。海外事業においてGoodrich社の連結が開始する。
売上総利益は増収率を上回る同9.3%で粗利率も1.3%上昇。Goodrich社の販管費、ロジスティクス費などによる販管費増を吸収し、営業利益は前期比19.2%増の60億円。配当は前期比0.5円増配の56.00円/株を予定。予想配当性向は77.7%。
◎インテリア事業
路線便運賃徴収の実施や自社配送便の増強など、物流費上昇を吸収し収益改善につなげる施策を実施する。
◎照明器具事業
抜本的なテコ入れが必要と考えている。
商品点数の大幅な削減による在庫回転率の改善と製造コストの削減など商品構成の見直しや製造コストの削減に取り組むほか、新規製品への依存意識からの脱却、汎用品との混合バランス改善など販売体制の見直しも行う。
◎海外事業
Koroseal社では、取り組みを始めていたリアテックや日本製壁紙(織物箔・紙布)などサンゲツ製品の販売に力を注ぐほか、製造コストの削減を図り2つあった工場をLouisvilleに統合し新規設備も導入する。
好調な山月堂(上海)では、人員を増強し日経・中国系双方の顧客対応を強化する。計画を前倒しで累積黒字化を実現する。東南アジア市場ではGoodrich社へサンゲツより社員を派遣し、商品・営業面での連携をスタートさせる。
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中期経営計画「PLG 2019」の進捗 |
同中計では基本方針として「内装材事業(企画・調達・物流・販売)の地理的拡大、機能強化」を掲げ、「成長の為の事業戦略」や「人的資源の強化」など5つの基本施策を示しているが、主な進捗は以下のとおりである。
(機能強化)
◎ロジスティクス
2017年5月に中部ロジスティクスセンターⅡの稼働を開始し、2018年1月には東京のロジスティクスセンターも稼働を開始した。また、2019年1月には北海道ロジスティクスセンターを新規施設に移転・統合することを決定した。
拠点間輸送による仕入れの効率化、在庫の配置転換による作業効率化、首都圏の物流施設新設統合による配送の効率化、配達時間の短縮による顧客サービス向上など、サプライチェーンの効率化を今後も追求する。
◎営業体制
従来は地域軸中心の営業体制であったが、市場・商品を合わせた3軸による営業体制(3D営業体制)を構築した。
加えて、これまでは受注や顧客問い合わせ対応などをセントラル化していたが、顧客や地域により密着することが必要と考え、各支社で対応することとした。
また、今後の堅調な市場拡大が見込まれると考え、サンゲツ沖縄を2018年6月に設立することとした。
◎高付加価値商品への注力
主に非住宅・ハイエンド住宅用途の見本帳「エクセレクト」、主に住宅用途の見本帳「HAMPSHIRE GARDENS -EDA-」を発刊した。
壁装材見本帳「エクセレクト」では、箔や和紙といった日本の伝統技術から生まれた和素材壁紙のほか、意匠性の高いグローバルブランドの壁紙を選りすぐって収録しており、インバウンド需要やより高い品質・デザイン性を求めるニーズに対応する。
見本帳「HAMPSHIRE GARDENS(ハンプシャーガーデンズ)-EDA-」は、「ファブリック」と「壁紙」のコーディネーションをテーマとし、イギリスに拠点を構えるWalker Greenbank社のデザインアーカイブをもとに、サンゲツのオリジナルブランド「EDA」を展開する。
(地理的拡大)
◎シンガポールの内装材料販売会社Goodrich社を買収
前回のレポートで紹介したように、2017年12月20日付で、シンガポールの内装材料販売会社であるGoodrich Global Holdings Pte. Ltd.の過半数以上の株式を取得し連結子会社とした。取得価額は29.2百万シンガポールドル(約25億円)。
Goodrich社はシンガポールを本社とし、東南アジアを中心とした6カ国に12の事務所と、商品を展示するギャラリーを有し、主に壁紙・ファブリック・カーペット等のインテリア商材を取り扱い、東南アジアの内装材料販売市場においては最大のシェアを有している。
また、業界最大規模の営業人員数によりデザイナー・設計等の内装材料スペック決定権者から事業主・施工業者迄をカバーする営業体制を構築しており、1983年の創業以来30年以上に渡り同市場で築きあげた顧客とのネットワークを最大の強みとしている。
2017年12月期の売上高は57百万シンガポールドル(約48億円)。
今回の買収により従来の日本市場、米国市場、中国市場に加えて東南アジアをカバーする販売ネットワークの拡大が可能となり、サンゲツグループ全体の企業価値向上に大きく貢献するものと同社では考えている。
(人的資源の強化)
◎グループ報「Harmony」を創刊
2017年12月サンゲツグループ全社員向けのグループ報「Harmony」を創刊した。
日本語と英語で制作された「Harmony」は、社是「誠実」など企業理念の共有・浸透、中期経営計画 「PLG 2019」の理解促進、グループの相互理解を深め一人ひとりの仕事をグローバルにつなぐことを目的としている。
◎働き方改革の実行
フレキシブルな働き方の実現に向けフレックスタイム制度を導入したほか、ICTを活用して場所や時間にとらわれず自宅や近くにある会社の拠点などで仕事をするテレワークの試行も開始した。また、研修制度の充実、ダイバーシティの推進、健康経営の推進などにも取り組んでいる。
現在、女性管理職比率は課長職以上11.4%、係長以上 32.9%となっているが、経営企画課長・広報IR課長・総務課長に女性を登用するなど活躍の場を拡充している。
また、健康経営に関しては、健康経営優良法人「ホワイト500(※) 2017年度版」を取得した。会社敷地内禁煙や全社員を対象としたストレスチェック等、健康経営に向けた取り組みを実行している。
※ホワイト500:経済産業省が2016年に創設した認定制度「健康経営優良法人」のうち、規模の大きい企業や医療法人を対象とした大規模法人部門の認定法人
(収益管理体制の強化)
◎販管費の管理
Chief Cost Controllerの機能強化に取り組んでいる。
「削減:他手段への代替」、「活用:設備や人材」、「転嫁:輸送費、商品、設備費、諸費用」の観点から収益管理体制を強化しつつ、10年~20年後の将来を見据え、必要な施策を確実に実行していく。
(資本政策)
中計では、自己株式取得と安定的増配による自己資本1,050~1,000 億円への削減、3年間トータルの連結総還元性向100%超、安定的増配の継続、機動的な自己株式取得などを掲げているが、前期は342.06万株、69.75億円の自己株式を取得した。
年間配当総額35.87億円との合計、総還元額は105.62億円となり、連結総還元性向は234.0%である。
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安田社長に聞く |
安田社長に足元の状況、中期経営計画「PLG 2019」の進捗などを伺った。
Q:「2018年3月期決算について簡単にレビューしていただけますか?」
A:「減益とはなったが構造改善や機能強化のための投資をしっかりと行うことが出来た。その結果市場シェアは着実に上昇した。」
販管費増により前期比で減益とはなったが、期初から計画されていたものであり、物流拠点整備や基幹システムの再構築準備など、当社の構造改善や機能強化のための投資をしっかりと行うことが出来た。
その結果、他社の決算や業界が発表している数字を見ると、壁紙、床材など主力製品では市場シェアを着実に拡大させることができたと考えている。
一方、Koroseal社が予想以上に苦戦したこと、前々期に黒字転換した山田照明が再び損失となったこと、原材料費や物流費の上昇に対する対応など今期の課題も明らかになった決算であった。
Q:「では、それらの課題へどう対応されますか?」
A:「Koroseal社は生産体制の見直し、山田照明は抜本的なテコ入れを進める。コスト上昇に対しては、輸送費の徴収や製品価格の値上げに関し、顧客・市場のご理解を得るべく努力する。」
Koroseal社については原価低減・収益性向上のためには生産体制の見直しが必要と判断し、現在ある2つの工場を1か所に統合するとともに、旧式の機械を廃棄して最新のデジタル印刷機械を導入する。
また、米国市場で評価が高い織物・箔や紙布といった日本スタイルの壁紙を積極的に投入する。
Koroseal社とは2カ月に1回のペースでミーティングを行っているが相互理解や信頼関係構築も着実に進んでおり、今期から売上だけでなく利益でも貢献するよう取り組んでいく。
一方山田照明は抜本的な改革が必要だ。
商品点数の大幅な削減や製造コストの削減、販売体制の見直しなどを徹底して進めて行く。
物流費を中心としたコスト上昇に対しては、2月より一部で輸送費の徴収を始めたほか、今後2014年以来となる製品価格引き上げも予定している。
当社では前期から一定規模の投資を行って物流設備の新設や統廃合を進めているが、これらは効率化による配送時間の短縮などお客さまに対するサービス向上にもつながるものであることを是非ご理解いただきたいと考えている。
Q:「今回買収したGoodrich社についてはどのような取り組みでシナジーを生み出していきますか?また、中国事業の状況についてもお話しください。」
A:「Goodrich社は当社グループの商品調達力を活かし、住宅・非住宅含め、巨大なASEAN市場の開拓に取り組むための営業体制を構築していく。好調な山月堂(上海)は早期の累損赤字一掃を目指す。」
Goodrich社はシンガポールを始めとしてASEAN6か国12都市に拠点を持ち、内装材料販売市場で最大のシェアを有する。特にホテル業界に強みを持っており、その最大の基盤は全従業員の半数以上にあたる約180名の営業スタッフだ。
ただ、一人当たり売上高は相対的に低く、もっと引き上げることが出来るのではないかと考えている。
これまでは強みを持つホテル業界に注力する一方でそれ以外の市場を積極的に開拓してこなかったようなので、当社やKoroseal社を含めた当社グループの商品調達力を活かし、住宅・非住宅の巨大なASEAN市場の開拓に取り組むための営業体制を構築していく。
上海の山月堂は前期、単年度黒字化を達成し、想定以上のペースで収益貢献を始めている。
好調な要因は二つ。一つはやはり中国市場の大きさだ。営業活動の中で、様々な案件を掬い上げることが出来ており、住宅・非住宅ともに着実に受注に結び付いている。
二つ目は当社の商品力。デフレ下で鍛えられた日本製品の競争力は受注獲得の大きな武器となっている。
人員も増強を続けており、まずは早期の累損赤字一掃を目指す。
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<参考1:中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」概要> |
◎ビジョン
「社是:誠実」、「ブランド理念:Joy of Design」のもと、中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」においては、「多様な商品と機能と高い専門性を持ち、国内外で強固な市場を持つ企業グループ構築をする。」ことを目指していく。
PはPersonal。専門性を持ったプロ人材となる。社外との強い人的関係を結ぶ。
LはLocal。各地域での強固な市場ポジションを確立する。
GはGlobal。商品・デザインのグローバル化。
前中計に引き続き、全てのステークホルダーとの共調を志向しながら資本効率性の向上に注力する。
売上高目標の内訳は、以下の通り。
◎テーマ
基本方針として「内装材事業(企画・調達・物流・販売)の地理的拡大、機能強化」を掲げ、以下の5つの基本施策を推進する。
(1)成長の為の事業戦略
①安定的かつ基礎的収益源である日本市場において、バリューチェーンでの機能強化・取組領域の拡大により収益の安定的成長を実現
「国内外有力サプライヤーとのアライアンスを通じた材料・原料を含めた商品開発・調達」、「インテリアコーディネーション提案・施工力の強化」、「代理店との連携・協業強化」、「社内営業体制の見直し」などを進める。
②成長力のある海外市場での活動を強化、地理的な展開を拡大するとともに商品面・機能面での拡充を実行
北米(米国・カナダ)、アジア(中国・東南アジア)を重点注力市場と位置付け、各市場でのローカルな物流・営業体制を拡充・強化する。
③デザインのグローバル化、製造メーカーのグローバル化に呼応し、グローバルな商品の企画・調達体制を構築
日本・米国・中国のローカル拠点間の連携を深め、「海外有力メーカーとの国内外での連携」や「ヨーロッパデザイン・和のデザインの共同展開や商品の共同マーケティング」に取り組む。
④地域での事業を担う関係会社・機能を担う関係会社・専門市場を担う関係会社を統合的に経営し、トータルシナジーを生む為の連結経営体制を強化
事業シナジーの最大化や収益管理体制の明確化のために主管部制度を導入するほか、管理部門による横断的なチェック・サポート体制を構築する。
連結経営課を新設し、全体管理や牽制機能を持たせる。
加えて、実効性を上げるために定期的なモニタリングや対話制度も導入する。
⑤次期中期経営計画を睨み業態の転換の試行を重ねる。
現在のグループ各社の経営資源や特長をより一層活用してシナジーを追求するために、業態転換の試行・検討を進める。
(2)人的資源の強化
真のプロフェッショナル育成のために、グループ各社および本体各組織において、①プロ人材の育成、②能力主義の徹底、③ダイバーシティの推進、④働き方改革、⑤健康経営の推進に取り組む。
(3)収益管理体制の強化
①販売管理費の削減と管理の徹底
Chief Cost Controllerを任命する。販管費管理手法を整備する。サンゲツ単体では総人員を縮小する。
②グループ各社へのCCC 管理の導入
連結ベースでのデュポン分析によるROEおよびCCCの目標を設定し、進捗をフォローする。
③サンゲツ各事業部・各支社での経営管理指標の明確化と進捗管理
各支社社員数ベースでの売上・総利益目標を設定する。
(4)ESG/CSR 方針
①E:環境
☆サンゲツグループの事業全体の環境負荷を把握し、地球温暖化防止や持続可能な資源循環に向けての体制を構築する。
・CO2ゼロエミッションに向けた計画の立案など。
②S:社会
☆グループ各社の多様な従業員の活躍を支援するとともに社会的弱者の就労支援
・女性管理職比率15%以上を達成する。(17年3月期実績 10.6%)
・障がい者雇用率目標3%実現(現在2.3%)、など
☆サプライチェーンにおける社会的責任の推進
☆社員が主体的となった社会貢献活動の拡大
・児童養護福祉施設の内装工事支援(目標 20件以上/年)
③G:ガバナンス
☆コーポレートガバナンスの透明性の維持と向上、コンプライアンスの徹底
・株主、投資家、従業員、取引先などあらゆるステークホルダーとのコミュニケーション向上
(5)資本政策
①資本効率向上に向けた財務方針
資本市場の状況を鑑みつつ、引き続き自己株式取得と安定的増配を行い自己資本1,050~1,000 億円への削減を目指す。(17年3月期 1,103億円)
②中期経営計画期間中の株主還元政策
・3年間トータルの連結総還元性向は100%超とする。
・長期安定的な増配の基本方針に基づき、安定的増配を継続する。
・株式市場の状況に応じて機動的に自己株式を取得する。
以下のような資金調達及び資金配分を計画している。
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<参考2:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年7月5日
<基本的な考え方>
当社は、「誠実」を社是とし、企業価値の向上を図るため全てのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的に発展していくことを目指しています。
その実現のため、経営の透明性、迅速性、効率性を基盤としたコーポレートガバナンスの強化が重要な経営課題であると認識しています。
当社は、取締役会における監査・監督機能を強化することと、社外取締役比率を高めることで株主の視点を踏まえた議論が活発化することをねらいとして2015年6月に、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しています。
このガバナンス体制のもと、更なる企業価値の向上に努めていきたいと考えています。
<実施しない主な原則とその理由>
同社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施している。
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