前期比6.0%の増収、同10.7%の営業増益予想
バルブ事業、伸銅品事業とも、売上の増加を見込んでいる。中でもバルブ事業は、国内での建築設備向けや半導体製造装置向けの好調に加え、海外での北米やアセアンの回復も見込まれ、売上高が過去最高を更新する見込み。
利益面では、バルブ事業の収益性改善が見込まれる。一方、銅市況の影響を大きく受ける伸銅品事業は慎重に見ている。
設備投資は105億円(18/3期98億円)を計画しており、減価償却費は50億円(同42億円)を織り込んだ。

バルブ事業
国内では、主力の建築設備向けが首都圏での再開発関連の納入がピークを迎える(営業面ではオリンピック需要の刈り取りにシフトしていく)。工業用バルブ市場は、既設プラントの保守・更新中心に堅調な推移が見込まれる中、一部で新規投資の動きもある。半導体市場はスーパーサイクルに入り、前期の好調が続くと見ている。生産能力増強効果も期待できる。尚、原材料の他、部品・副資材及び物流費用の高騰を踏まえて5月に価格改定を行った。下期以降、価格改定効果が本格的に現れてくる見込み。
海外は、欧州での苦戦が続くが、半導体製造装置向けを中心に中国・韓国の好調が続く他、米州やアセアンが回復傾向にある。
中国は、データセンター向け等で汎用バルブも堅調な推移が見込まれる他、工業用バルブも、大型案件の受注に成功する等、底打・回復傾向にある。韓国は買収したCephas社(後述)とのシナジーを追及していく。北米はオイル&ガス関連投資が回復傾向にあり、代理店が在庫を増やし始めている。営業拠点拡大及び技術拠点設置による体制強化を進めているアセアンも徐々に回復している。一方、工業用バルブ中心の欧州は回復の兆しが見えないため、地域統括会社のテコ入れを図る。中東向け大型プロジェクトは上期中に納入が完了する予定。
利益面では、市況要因や物流費に加え、減価償却費の増加、更にはM&Aや海外子会社の設立に伴う経費増等が見込まれるが、売上の増加と原価低減で吸収して収益性の改善が進む見込み。
伸銅品事業
銅価格の前提は80万円/トン(前期銅建値平均価格76万円/トン)。需要については、黄銅棒の国内需要が前期より若干減少するとみているが、生産量を維持しシェアアップを図る考え。利益面では、総額53億円の大型設備投資に伴う減価償却費の増加や労務費の増加等で減益が見込まれる。生産性向上によるコストダウンと高付加価値品の拡販等で、どれだけカバーできるかがポイント。
その他
ホテル事業は、客室(10階・11階)のリニューアルによる顧客満足度向上、Web予約の受注強化、国内団体の受注強化等の施策による売上増と利益確保を見込んでいる。
(3)トピックス
国内販売価格改定(2018年4月5日発表)
生産性の向上や合理化等によるコストダウン・諸経費の削減に取り組んでいるものの、原材料の他、部品・副資材及び物流費用の高騰によるコスト増を企業努力のみで吸収する事が難しくなっている。このため、2018年5月1日より、下記の通り、価格を改定した。
韓国CephasPipelinesCorp.を買収
2018年4月、韓国の工業用バタフライバルブメーカーCephas Pipelines Corp.(以下、CPL)を、約37億52百万円で買収した。CPLは大口径まで生産可能なバタフライバルブの専業メーカー。
キッツのバタフライバルブが建築設備向けや産業機械向けが中心であるのに対して、CPL製品は、発電、水処理、石油・ガス、造船向けが中心。また、口径も、キッツが、40~1,350mmであるのに対して、CPLは50~4,000 mm、と分野や制作範囲で補完関係にある。キッツは、2014年よりCPLのバタフライバルブを調達しており、既に国内外において多くの納入実績を有する。近年、プラントの大規模化に伴い、使用される配管の口径が大きくなる傾向にあり、大口径に適したバタフライバルブの需要が増加している。また、高温・高圧等、様々な流体への対応も求められており、バタフライバルブ全体で、一段の需要拡大が見込まれる。今後、両社の強みを活かした生産体制を構築すると共に、キッツのグローバルネットワークを活用する事で、CPL製品の拡販を図る考え。
尚、CPLの2016年度売上高は、30,802百万ウォン(約30億80百万円)。
長坂工場水素ステーションが竣工
2018年4月6日、長坂工場(山梨県北杜市)において、小型パッケージユニットを用いた水素ステーションが竣工した。水素エネルギーは低炭素社会実現に寄与するため、日本政府も重視している。新聞報道によると、燃料電池自動車(FCV)の普及促進、インフラ面での水素ステーションの整備目標引き上げ、更には規制改革等の施策を検討していると言う。
同社は、燃料電池自動車及び燃料電池フォークリフトを社用車として活用し、本水素ステーションの運用の実証を通じて、バルブ開発のための技術蓄積を行っていく。また、コンパクトで高機能、かつ安価を特徴とする小型パッケージユニットの市場への提案も視野に入れている。
竣工した水素ステーションは、圧縮機・畜圧器パッケージユニットを用いたオフサイト供給方式(ディスペンサーのパッケージ化も可能な拡張タイプ)を採用しており、供給能力は55Nm3/h。1時間にFCV2台に水素を満充填できる(充填圧力はFCV用が70MPa、燃料電池フォークリフト用が35MPa)。
キッツメタルワークスによる大規模設備投資
伸銅品事業を担うキッツメタルワークスの黄銅棒製造設備は、長期稼働により、メンテナンス費用の増大や生産効率等の課題を抱えている。一方、欧州で自動車や電子機器部品に使われる銅合金の鉛規制が数年後に強化される見通しであり、環境材の需要は世界的に伸びると見られている。このため、53億円を投じて、鍛造設備、製棒設備及び建屋等、老朽化した製造設備の更新を行い、品質向上と生産性向上を図る事にした。竣工・稼働は2019年6月を予定している。
(4)株主還元
配当は、中間配当及び期末配当を、それぞれ1株当たり1円増配し、上期末8円、期末11円の年19円を予定している(予想配当性向26.1%)。配当性向25%前後をベースに、総還元性向33%(親会社株主に帰属する当期純利益の3分の1前後)以上を目途に自己株式の取得も実施していく考え。