ブリッジレポート
(6498) 株式会社キッツ

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ブリッジレポート:(6498)キッツ vol.33

(6498:東証1部) キッツ 企業HP
堀田 康之 社長
堀田 康之 社長

【ブリッジレポート vol.33】2018年3月期業績レポート
取材概要「19/3期はバルブ事業の売上高が過去最高を更新する見込みだ。国内では、首都圏再開発やオリンピック関連で良好な事業環境が続き、海外では・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年6月13日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社キッツ
社長
堀田 康之
所在地
千葉市美浜区中瀬1-10-1
決算期
3月末日
業種
機械(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 114,101 8,929 8,799 5,400
2016年3月 117,278 7,245 7,300 4,915
2015年3月 117,036 6,886 7,581 6,881
2014年3月 117,355 6,470 6,501 3,564
2013年3月 111,275 6,558 6,521 4,039
2012年3月 108,446 4,638 4,388 2,480
2011年3月 106,059 6,341 5,929 3,063
2010年3月 96,592 6,976 6,248 3,079
2009年3月 127,095 7,188 6,475 3,396
2008年3月 149,274 11,615 10,525 6,290
2007年3月 149,512 11,342 10,652 9,973
2006年3月 107,631 9,673 9,132 8,070
2005年3月 95,705 9,627 8,513 5,804
2004年3月 73,802 4,181 2,962 1,598
株式情報(5/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
994円 97,342,575株 96,759百万円 8.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
19.00円 1.9% 72.93円 13.6倍 782.98円 1.3倍
※株価は5/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
キッツの2018年3月期決算の概要と2019年3月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
バルブを中心とした流体制御機器の総合メーカー。バルブ事業では、国内トップ、世界でもトップ10に入る。バルブは、青銅、黄銅、鋳鉄、ダクタイル鋳鉄(強度や延性を改良した鋳鉄)、ステンレス鋼等、用途に応じて様々な素材が使われ、同社は素材からの一貫生産(鋳造から加工、組立、検査、梱包、出荷)を基本とする。国内外の子会社36社とグループを形成し、子会社を通して、バルブや水栓金具、ガス機器などの材料となる伸銅品の生産・販売(伸銅品でも国内上位のポジションにある)の他、ホテル事業等も手掛けている。 【企業理念 -キッツは、創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指します-】 「企業価値」とは「中長期的な株主価値」であり、「中長期的な株主価値」の向上には、顧客の信頼を得る事によって利益ある成長を持続していく必要がある、と言うのが同社の考え。そして、企業価値を向上させる事により、株主をはじめとして、顧客、社員、ビジネスパートナー、社会に対して様々な形で寄与し、豊かな社会づくりに貢献していきたいと考えている。 同社は、これらの思いを「キッツ宣言」に込め、更なる飛躍を目指している。
キッツ宣言 キッツは、 創造的かつ質の高い商品・サービスで企業価値の持続的な向上を目指し、ゆたかな社会づくりに貢献します。
KITZ' Statement of Corporate Mission To contribute to the global prosperity, KITZ is dedicated to continually enriching its corporate value by offering originality and quality in all products and services.
行動指針(Action Guide) Do it KITZ Way ・ Do it True(誠実・真実) ・ Do it Now(スピード・タイムリー) ・ Do it New(創造力・チャレンジ)
Do it True 人と人との関係で忘れてならないのが誠実に対応する心。また、表面的なものでなく物事の本質を追い求める心も必要。この基本を忘れる事なく企業活動を進めるための合言葉。 Do it Now 情報をいち早くキャッチし、迅速な意思決定と確実に実践していく躍動的な社員像を表現した言葉。 Do it New 変化に対応するために従来の発想から抜出して秘められた創造力を発揮し、新しい事にチャレンジする社員像を表現した言葉。
【事業セグメントの概要】 事業は、バルブ事業、伸銅品事業、及びホテル・レストランの経営(ホテル事業)等のその他に分かれ、18/3期の売上構成比は、それぞれ78.8%、18.9%、2.3%。 バルブ事業 バルブは、配管内の流体(水・空気・ガスなど)を「流す」、「止める」、「流量を調整する」等の機能を持つ機器で、ビル・住宅設備用、給水設備用、上下水道用、消防設備用、機械・産業機器製造施設、化学・医薬・化成品製造施設、半導体製造施設、石油精製・コンビナート施設など様々な分野で使用されている。同社は、鋳物からの一貫生産を特徴とし(日本で最初に「国際品質保証規格ISO9001」の認証を取得した)、住宅・ビル設備等の建築設備分野に使用され、耐食性に富む青銅製や経済性に優れた黄銅製の汎用バルブ、或いは付加価値の高いボールバルブ等の工業用ステンレス鋼製バルブと言った主力商品で高い国内シェアを有する。 販売面では、国内は主要都市に展開する販売拠点ときめ細かい代理店網によって全国をカバーしており、海外は、インド、U.A.E、フィリピン、に駐在員事務所を置く他、中国、香港、韓国、シンガポール、マレーシア、タイ、アメリカ、ブラジル、ドイツ、スペインに販売拠点を設置し、グローバルな販売ネットワークを構築している。生産では、国内工場の他、海外では中国、台湾、韓国、タイ、インド、ドイツ、スペイン、ブラジルに生産拠点を展開し、グローバルコスト及び最適地生産の実現に向けた生産ネットワークを構築している。 伸銅品事業 伸銅品とは、銅に亜鉛を加えた「黄銅」、すず及びりんを加えた「りん青銅」、ニッケル及び亜鉛を加えた「洋白」等の銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造等の熱間または冷間の塑性加工によって、板、条、管、棒、線等の形状に加工した製品の総称。 キッツグループの伸銅品事業は(株)キッツメタルワークス及び北東技研工業(株)の事業分野であり、黄銅製の材料を用いた「黄銅棒」(黄銅棒はバルブ部材の他、水栓金具、ガス機器、家電等の部材としても使用されている)及びその加工品を製造・販売している。 その他 子会社(株)ホテル紅やが手掛けるリゾートホテルの運営(長野県諏訪市)が事業の中心。同ホテルは、諏訪湖畔の好立地を特徴とし、夕日に輝く展望風呂や大小の宴会場に加え、国際会議も開かれる大コンベンションホールを有する。
 
 
2018年3月期決算
 
前期比9.2%の増収、同13.3%の営業増益 売上高は前期比9.2%増の1,245億66百万円。内訳は、バルブ事業が同7.0%増の981億62百万円(予想+0.4%)、伸銅品事業が同21.7%増の235億35百万円(同+4.6%)。海外売上高比率は27.9%と1.8ポイント低下した(17/3期29.7%)。 利益面では、第4四半期の銅市況の下落で伸銅品事業の利益が減少したものの、原価低減活動や価格改定効果、国内建築設備向けの好調等によるバルブ事業の利益の増加で吸収。営業利益は101億17百万円と同13.3%増加した。為替差損2億08百万円(前期は19百万円)の計上等による営業外費用の増加を吸収して経常利益が97億33百万円と同10.6%増加。特別損益の改善で最終利益は65億18百万円と同20.7%増加した(有価証券売却益の減少で特別利益が減少したが、減損損失の減少で特別損失も減少した)。 バルブ事業 国内が前期比9.5%(55億52百万円)増の642億02百万円、海外が同2.5%(8億43百万円)増の339億60百万円と国内外で売上が増加したが、海外は為替による押し上げが9億44百万円あったため、実質的には減収だった。 国内では、主力の建築設備向けが首都圏再開発案件を中心に273億円と同7%増加した他、半導体製造装置向けが同43%増の80億円と伸長。この他、機械装置、石油精製・石油化学、一般化学、食品・製紙、電力・ガス等を対象とする工業用バルブ市場は、大型投資は少なかったが、既設プラントの保守・更新を中心に5~10%増と底堅く推移。水市場向けは、東京都の予算執行が低迷したものの、同5%増加した。 海外は、欧米での苦戦が続く中、韓国・中国で半導体製造装置向けが伸びた。中国ではデータセンター等の建築設備向けが好調を維持。この他、各国の拠点を活用して代理店開拓等を進めたアセアンが微増。欧米では、停滞が続く欧州で明るさが見えないが、米州はオイル&ガス関連の投資に動きが出てきた。この他、中東向け大型プロジェクトは、仕様変更等により、納期が19/3期上期にずれ込んだ。 営業利益は同11.8%(13億53百万円)増の127億98百万円。市況の影響による原材料高や経費増はあったものの、原価低減効果(16.2億円の増益効果)が大きかった事に加え、下期は新価格(5月に改定)が浸透し、通期で原材料高の影響を吸収する効果があった。 伸銅品事業 販売価格への影響が大きい銅相場は、第4四半期に下落したが、2017年年初からの一貫した上昇で第3四半期は800千円/トンレベルで高止まり。販売重量は若干減少したが、販売価格の上昇でセグメント売上高は235億35百万円と前期比21.7%増加した。営業利益は、銅相場が大きく上昇した前期との比較では、6億99百万円と同16.0%減少した。 その他 その他の収益はホテル事業が大半を占めており、収益は季節要因により上期偏重である。当期は、前期の「御柱祭(7年に1度開催」)の反動がある中、インバウンド団体客の集客伸び悩みの影響もあり、売上高が28億67百万円と4.5%減少し、28百万円の営業損失となった(前期は営業利益59百万円)。 期末総資産は前期末と比べて150億39百万円増の1,341億87百万円。2018年3月に普通社債100億円を発行した事で現預金及び有利子負債が増加した他、期末が金融機関の休日だったため売上債権・仕入債務が増加。基幹システムの更新で無形固定資産も増加した。自己株式の取得(35億32百万円)及び償却(10百万株、65億62百万円)を行った。自己資本比率56.8%(前期末61.9%)。 期末が金融機関の休日だったため売上債権の回収が翌期にずれ込んだため運転資金が増加し営業CFが減少した。一方、基幹システムの更新を含めた設備投資の増加で投資CFは増加。普通社債の発行や長期借入金の積み増しで必要資金を賄った。 *ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ *上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。 (4)トピックス  香港及びマレーシアに販売現地法人を設立 香港に現地販売法人を設立 2017年7月、香港・九龍地区にKITZ HongKong Company Limited(以下、KHC)を設立し、受注業務をKITZ Corporation of ShanghaiからKHCに移管し、2018年1月に営業を開始した。 同社の香港市場での歴史は古く、商社を通じて1970年代から香港向けにバルブを販売している。香港は好調な中国経済にも支えられGDPは4年連続で過去最高を更新している。不動産投資が活発であり、スクラップアンドビルドが繰り返される中で、建築設備向けの需要を取り込んでいく他、現状では供給できていない製品の需要を発掘し、更なるシェアアップを図る考え。 マレーシアに現地販売法人を設立 同社はアセアンを重点地域の一つと位置付け、拠点を順次拡充している。既にベトナム、フィリピンで現地販売法人が活動しているが、これに続く拠点として、2017年12月にマレーシア(ジョホールバル州)に現地販売法人KITZ Valve&Actuation(Malaysia)Sdn.Bhd.(以下、KVM)を設立し、2018年4月に営業を開始した。 KVMを設立したマレーシア・ジョホールバルは、イスカンダル計画(2025年までの総投資額約10兆円)と呼ばれる大規模投資が進められており、今後、バルブ需要の拡大が見込まれる。KVMは、代理店販売とエンドユーザー直販の2つの商流をミックスさせた新たなビジネスモデルを目指しており、自社在庫の充実と新規代理店の開拓に取り組んでいく。
 
 
2019年3月期業績予想
 
前期比6.0%の増収、同10.7%の営業増益予想 バルブ事業、伸銅品事業とも、売上の増加を見込んでいる。中でもバルブ事業は、国内での建築設備向けや半導体製造装置向けの好調に加え、海外での北米やアセアンの回復も見込まれ、売上高が過去最高を更新する見込み。 利益面では、バルブ事業の収益性改善が見込まれる。一方、銅市況の影響を大きく受ける伸銅品事業は慎重に見ている。 設備投資は105億円(18/3期98億円)を計画しており、減価償却費は50億円(同42億円)を織り込んだ。 バルブ事業 国内では、主力の建築設備向けが首都圏での再開発関連の納入がピークを迎える(営業面ではオリンピック需要の刈り取りにシフトしていく)。工業用バルブ市場は、既設プラントの保守・更新中心に堅調な推移が見込まれる中、一部で新規投資の動きもある。半導体市場はスーパーサイクルに入り、前期の好調が続くと見ている。生産能力増強効果も期待できる。尚、原材料の他、部品・副資材及び物流費用の高騰を踏まえて5月に価格改定を行った。下期以降、価格改定効果が本格的に現れてくる見込み。 海外は、欧州での苦戦が続くが、半導体製造装置向けを中心に中国・韓国の好調が続く他、米州やアセアンが回復傾向にある。 中国は、データセンター向け等で汎用バルブも堅調な推移が見込まれる他、工業用バルブも、大型案件の受注に成功する等、底打・回復傾向にある。韓国は買収したCephas社(後述)とのシナジーを追及していく。北米はオイル&ガス関連投資が回復傾向にあり、代理店が在庫を増やし始めている。営業拠点拡大及び技術拠点設置による体制強化を進めているアセアンも徐々に回復している。一方、工業用バルブ中心の欧州は回復の兆しが見えないため、地域統括会社のテコ入れを図る。中東向け大型プロジェクトは上期中に納入が完了する予定。 利益面では、市況要因や物流費に加え、減価償却費の増加、更にはM&Aや海外子会社の設立に伴う経費増等が見込まれるが、売上の増加と原価低減で吸収して収益性の改善が進む見込み。 伸銅品事業 銅価格の前提は80万円/トン(前期銅建値平均価格76万円/トン)。需要については、黄銅棒の国内需要が前期より若干減少するとみているが、生産量を維持しシェアアップを図る考え。利益面では、総額53億円の大型設備投資に伴う減価償却費の増加や労務費の増加等で減益が見込まれる。生産性向上によるコストダウンと高付加価値品の拡販等で、どれだけカバーできるかがポイント。 その他 ホテル事業は、客室(10階・11階)のリニューアルによる顧客満足度向上、Web予約の受注強化、国内団体の受注強化等の施策による売上増と利益確保を見込んでいる。 (3)トピックス 国内販売価格改定(2018年4月5日発表) 生産性の向上や合理化等によるコストダウン・諸経費の削減に取り組んでいるものの、原材料の他、部品・副資材及び物流費用の高騰によるコスト増を企業努力のみで吸収する事が難しくなっている。このため、2018年5月1日より、下記の通り、価格を改定した。 韓国CephasPipelinesCorp.を買収 2018年4月、韓国の工業用バタフライバルブメーカーCephas Pipelines Corp.(以下、CPL)を、約37億52百万円で買収した。CPLは大口径まで生産可能なバタフライバルブの専業メーカー。 キッツのバタフライバルブが建築設備向けや産業機械向けが中心であるのに対して、CPL製品は、発電、水処理、石油・ガス、造船向けが中心。また、口径も、キッツが、40~1,350mmであるのに対して、CPLは50~4,000 mm、と分野や制作範囲で補完関係にある。キッツは、2014年よりCPLのバタフライバルブを調達しており、既に国内外において多くの納入実績を有する。近年、プラントの大規模化に伴い、使用される配管の口径が大きくなる傾向にあり、大口径に適したバタフライバルブの需要が増加している。また、高温・高圧等、様々な流体への対応も求められており、バタフライバルブ全体で、一段の需要拡大が見込まれる。今後、両社の強みを活かした生産体制を構築すると共に、キッツのグローバルネットワークを活用する事で、CPL製品の拡販を図る考え。 尚、CPLの2016年度売上高は、30,802百万ウォン(約30億80百万円)。 長坂工場水素ステーションが竣工 2018年4月6日、長坂工場(山梨県北杜市)において、小型パッケージユニットを用いた水素ステーションが竣工した。水素エネルギーは低炭素社会実現に寄与するため、日本政府も重視している。新聞報道によると、燃料電池自動車(FCV)の普及促進、インフラ面での水素ステーションの整備目標引き上げ、更には規制改革等の施策を検討していると言う。 同社は、燃料電池自動車及び燃料電池フォークリフトを社用車として活用し、本水素ステーションの運用の実証を通じて、バルブ開発のための技術蓄積を行っていく。また、コンパクトで高機能、かつ安価を特徴とする小型パッケージユニットの市場への提案も視野に入れている。 竣工した水素ステーションは、圧縮機・畜圧器パッケージユニットを用いたオフサイト供給方式(ディスペンサーのパッケージ化も可能な拡張タイプ)を採用しており、供給能力は55Nm3/h。1時間にFCV2台に水素を満充填できる(充填圧力はFCV用が70MPa、燃料電池フォークリフト用が35MPa)。 キッツメタルワークスによる大規模設備投資 伸銅品事業を担うキッツメタルワークスの黄銅棒製造設備は、長期稼働により、メンテナンス費用の増大や生産効率等の課題を抱えている。一方、欧州で自動車や電子機器部品に使われる銅合金の鉛規制が数年後に強化される見通しであり、環境材の需要は世界的に伸びると見られている。このため、53億円を投じて、鍛造設備、製棒設備及び建屋等、老朽化した製造設備の更新を行い、品質向上と生産性向上を図る事にした。竣工・稼働は2019年6月を予定している。 (4)株主還元 配当は、中間配当及び期末配当を、それぞれ1株当たり1円増配し、上期末8円、期末11円の年19円を予定している(予想配当性向26.1%)。配当性向25%前後をベースに、総還元性向33%(親会社株主に帰属する当期純利益の3分の1前後)以上を目途に自己株式の取得も実施していく考え。
 
 
中期経営計画
 
第3期中期経営計画(17/3期~19/3期)が進行中である。第3期中期経営計画は、①19/3期に営業利益100億円越え(長期経営計画最終の21/3期に営業最高益更新となる125億円の達成)、②利益とキャッシュ・フロー重視を徹底しROE8%以上、③強みが生かせる重点市場分野に経営資源を集中、及び④株主還元の充実、4項目を基本方針としている。 【進捗状況】 19/3期の計画は、売上高1,200億円、営業利益100億円、経常利益97億円、当期純利益63億円だったが、売上高・利益共に18/3期に1期前倒しで達成した。けん引役は、バルブ事業で売上の伸びと原価低減による収益性の改善が想定を上回って推移している。また、ROEについても、18/3期に8.7%を達成し、19/3期は9.1%と更なる改善が見込まれる。株主還元については、総還元性向が17/3期92.5%、18/3期80.0%と高水準。更に18/3期は10百万株(65億62百万円)を償却した。 バルブ事業 重点市場分野を「建築設備」、「石油化学・一般化学」、「クリーンエネルギー(水素、LNG)」に、重点地域を日本+3極2拠点(3極:欧州・米州・アセアン、2拠点:中国・インド。特にアセアン、米州を重視)に、それぞれ絞り込み、特化した新製品投入と複合機能化の推進によるシェアの拡大を目指している。 実際、「建築設備」は、事業環境にも恵まれ、順調に伸びている。「石油化学・一般化学」では、プロジェクト案件専用のハイパフォーマンスバタフライバルブの開発・投入やM&Aによる大口径バタフライバルブへの対応等、取り組みが進んでいる。「クリーンエネルギー(水素、LNG)」についても同様だ。地域では、欧州で課題が残るものの、米州・アセアンで成果が出つつある。加えて、2015年2月にインドの工業用バルブメーカーMicro Pneumatics Pvt. Ltd.、2015年11月にブラジルの工業用ボールバルブメーカー MGA、2018年4月に韓国の工業用バタフライバルブメーカーCephas Pipelines Corp.を、それぞれ子会社化し成長市場に布石を打った。 この他、縦(機能別組織)と横(全社横断組織)のマトリックス体制による、「組織」と「製品」の両輪でのマネジメント強化にも取り組んでいる。 伸銅品事業 生産性向上による利益の最大化と事業再構築による付加価値の拡大に取り組んでいる。伸銅品事業の事業主体である(株)キッツメタルワークスが、品質向上と生産性向上を念頭に、53億円を投じて、鋳造設備、製棒設備、及び建屋等、老朽化した製造設備の更新を行っている事は既に説明した通り。 上記に加え、キッツスマート養殖と水処理技術を活かした新規事業の育成も進行中だ。キッツスマート養殖は世界的な水産市場の需要高まりと天然資源の不足を踏まえたもの。一方、水処理技術を活かした事業では、キッツ、東洋バルヴ、清水合金製作所、キッツマイクロフィルター等が連携して、世界的な水需要と環境意識の高まりに応えていく。 【長期経営計画「KITZ Global Vision 2020」】 「真のグローバル企業への進化」をスローガンとして掲げ、企業価値の最大化と強くて良い会社の実現を目指している。数値目標は下記の通り。
 
 
今後の注目点
19/3期はバルブ事業の売上高が過去最高を更新する見込みだ。国内では、首都圏再開発やオリンピック関連で良好な事業環境が続き、海外では、半導体製造装置向けの好調に加え、アセアン・北米が回復傾向にある。国内では2年連続の価格改定を行ったが、同業他社も追従する等、理解を得やすい環境にある。下期以降、期末にかけて新価格が浸透していくものと思われる。 19/3期が始まったばかりで、少し気が早いが、来20/3期は長期経営計画「KITZ Global Vision 2020」の最終目標達成を視野に入れた展開となる。創立70周年に当たる21/3期の売上高・利益目標は、売上高1,350億円、営業利益125億円。18/3期実績ベースで、それぞれ92%、81%の進捗。19/3期の着地が期初予想通りであれば、98%、90%の進捗となり、目標達成に「王手」がかかる。長期経営計画の前倒し達成が現実味を帯びてきた。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書更新日:2017年6月28日
 当社は、創造的かつ質の高い商品・サービスの提供により持続的に企業価値の向上を図ることを企業理念に掲げ、社会的に責任ある企業として、株主をはじめ、すべてのステークホルダーに配慮した経営の実現に取り組んでいます。  また、経営の効率性とコンプライアンスの強化を図るため、ステークホルダーからの要請や社会動向などを踏まえ、迅速かつ効率が良く、健全で透明性の高い経営が実現できるよう、様々な施策を講じて、コーポレート・.ガバナンスの充実を図っています。 <実施しない原則とその理由> 当社は、コーポレート・ガバナンス・コードの各原則をすべて実施しております。 <開示している主な原則> 9.株主との建設的な対話に関する方針(原則5-1)  当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のためには、経営の受託者としての説明責任を自覚し、株主・投資家等のステークホルダーに対し、適時・適切な情報開示を行い、経営の公正と透明性を維持することが重要であると認識しています。 また、必要とされる情報を継続的に提供するとともに、外部者の視点による意見や要望を経営改善に活用するためのIR活動が重要であると考えています。  そのため、当社は、経営戦略や経営計画に対する株主の理解を得られるよう、株主との建設的な対話を推進するため、代表取締役やIR担当執行役員を中心とするIR体制を整備し、以下の施策を実施しています。 1) 当社は、IR担当執行役員を選任しています。  株主からの面談申し込みがあった場合は、原則としてIR部門長が対応していますが、面談の趣旨及び所有株式数などに応じて、代表取締役またはIR担当執行役員が対応することとしています。 2) 当社は、IR担当執行役員を中心に、必要に応じて、IR部門、経営企画部門、経理部門、総務人事部門及び法務部門等による会議を開催するなど、有機的な連携を図っています。 3) 当社は、機関投資家及びアナリストを対象とし、3月期(期末)及び9月期(第2四半期)に決算説明会を、第1四半期及び第3四半期には、四半期決算に関するアナリストミーティングをそれぞれ実施しています。また、毎年計画的に個人投資家への会社説明会を開催しています。なお、これらの会社説明会においては、代表取締役社長が自ら説明を行っています。さらに、決算短信及び有価証券報告書等の決算情報のほか、経営情報、株式・株主総会の情報及びコーポレート・ガバナンスに関する報告書等のIR情報を当社ホームページに掲載し、情報開示を行っています。 4) 当社は、機関投資家・アナリストとの対話において把握された意見をIR部門から代表取締役及びIR担当執行役員に定期的に報告し、必要に応じて、代表取締役がその内容を取締役会及び経営会議に報告することとしています。 5) 当社は、経理部門担当執行役員を情報取扱責任者としており、機関投資家・アナリストとの対話に際して開示する情報の内容について、事前に経理担当執行役員、IR部門及び経営企画部門が協議するなど、インサイダー情報の管理に留意しています。 6) 当社は、毎年3月末及び9月末時点における株主名簿から、実質株主の状況調査を実施し、IR活動に活用しています。 7) 当社は、長期経営計画及び中期経営計画を策定し、売上高、営業利益、経常利益、海外売上高比率、有利子負債残高、自己資本比率及び自己資本当期純利益率(ROE)等の目標値を当社ホームページ等で開示するとともに、決算説明会等を通じ、目標達成に向けた具体的な施策を説明しています。  また、中期経営計画は、業績、社会情勢及び経済情勢等を踏まえ、適宜見直しを行っており、変更が生じた際は、変更の背景や内容について、株主総会や決算説明会等で説明を行っています。