ブリッジレポート:(3912)モバイルファクトリー vol.2
(3912:東証1部) モバイルファクトリー |
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企業名 |
株式会社モバイルファクトリー |
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社長 |
宮嶌 裕二 |
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所在地 |
東京都品川区東五反田1-24-2 |
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決算期 |
12月末日 |
業種 |
情報・通信 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2016年12月 | 2,072 | 611 | 611 | 411 |
2015年12月 | 1,751 | 314 | 305 | 185 |
2014年12月 | 1,540 | 211 | 212 | 118 |
株式情報(1/19現在データ) |
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今回のポイント |
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2017年12月期決算 |
「駅メモ!」をけん引役に前期比17.6%の増収、同20.5%の営業増益
売上高は前期比17.6%増の24億37百万円。このうちソーシャルアプリサービスは同26.9%増の15億25百万円。計画通り複数タイトルを終了したスマートノベルの売上が減少したものの、DAU(デイリーアクティブユーザー:一日のサービス利用者数)の増加とプロモーション効果及び運営効果で課金収入が増加した「駅メモ!」(iOS/Android版)が増収をけん引。コンテンツサービスは同3.3%増の8億40百万円。「スタメロ-スタンプ&メロディとり放題」(App Pass版)が堅調に推移する中、お笑いライフfor auスマートパスのサービスを開始した。営業利益は同20.5%増の7億36百万円。「レキシトコネクト」(2017年3月15日配信開始)の早期償却や下期の広告宣伝費の積極投下に加え、18/12期のリリースを予定していた新作の開発中止に伴う開発費の償却もあり、営業費用が17億01百万円と同16.5%増加したものの、売上の増加で吸収した。東証1部への市場変更に伴う株式公開費用13百万円を営業外費用に計上したものの、税負担率の低下(32.7%→29.2%)で最終利益は5億11百万円と同24.2%増加した。 尚、開発を中止した新作タイトルは1.1億円を投下し、このうち0.7億円を第4四半期に費用計上し手仕舞った。開発段階ではあったが、投資回収が難しいと判断し、18/12期中にリリース予定のブロックチェーン関連サービスの開発に経営資源を投じる事にした。 営業利益は同27.6%増の1億90百万円。開発を中止した新作タイトルの手仕舞いに当たり、第4四半期に投じた開発費や資産計上分等70百万円を費用計上した事で売上原価が同42.5%増加した。Webプロモーションや交通広告等で引き続き高水準の広告宣伝費の投下も続いたが、売上高の大幅な増加で吸収した。 *ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。 【「駅メモ!」のプロモーション施策及び運営施策】
17/12期はO2Oイベントを、全国で16件実施し(16/12期11件)、送客数は41.5万人(同17万人)。このうち、関東エリアが6件で推定イベント効果11億円、関西エリアが4件で同6.4億円。アクティブ率向上施策 千葉都市モノレール(千葉県千葉市)とのコラボでは、モノレールを利用しながら対象となっている観光地を巡るイベントを実施した。コラボヘッドマーク車両の運行やコラボデザインの1日乗車券の販売に加え、「駅メモ!」のラッピング車両も運行した。また、千葉出身の作草部チコと作草部マコ(でんこ)がコラボを記念して「千葉都市モノレール公認キャラクター」に認定され、コラボを盛り上げた。 新規ユーザー獲得施策
映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」とのコラボや(株)セガゲームスの大人気パズルゲーム「ぷよぷよ」とのコラボ等を実施した。映画「DESTINY 鎌倉ものがたり」とのコラボでは、劇中に登場する神奈川県鎌倉・藤沢エリアにある6箇所の駅及びスポットを、ゲームを使って実際に巡るキャンペーンを実施。対象駅やスポットにて位置登録すると、劇中に登場するシーンの壁紙が入手できたり、オリジナルグッズが当たる抽選に応募できたり、と多数の特典を用意した。 また、(株)セガゲームスの大人気パズルゲーム「ぷよぷよ」とのコラボでは、同じ属性の駅に4駅アクセス(位置登録)する事でポイントが獲得でき、これまでなかった各駅の属性を生かした新しい遊び方を楽しむ事ができるようにした。 |
2018年12月期業績予想 |
主力サービスである「駅メモ!」は、17/12期にユーザー数及び売上高が過去最高を更新する等、リリースから3年が経過しても勢いが衰えない。国産「位置ゲームNo.1」企業を目指して、引き続き、ユーザーのエンゲージメント向上に向けた機能等の改善、ユーザー数拡大に向けたマーケティング強化、ユーザーの定着に向けた新しいユーザー体験の提供、更には地方創生への寄与等の取り組みを進めていく。一方、その他のサービスについては費用対効果を見ながら運営を進め、コンテンツサービスについては、「スタメロ-スタンプ&メロディとり放題」の配信コンテンツの強化や仕組み改善に取り組んでいく。上記に加え、位置情報連動型ゲームに続く新規事業として、18/12期中のリリースを目指して、ブロックチェーンを活用したサービスの開発を進めていく。 【「ブロックチェーン関連サービス」について】
「ブロックチェーン関連サービス」は、現在のインターネットで主流の「中央集権型」アプリケーションではなく、「分散型」アプリケーションと言われる領域のサービスである。「中央集権型」では、プラットフォーマーと呼ばれる企業が中央に存在し、取引ルール、アプリケーションの市場管理運営、セキュリティ等を担うが、「分散型」では「中央」に依存しないサービスを実現できるため「ブロックチェーン関連サービス」は同社のポテンシャルを高める事になる。ブロックチェーン技術を利用する事でソフトウェアの考え方や金融のしくみ、規制やルールの決まり方等が大きく変わる可能性があり、既存秩序では測れない経済圏が生まれようとしている。ブロックチェーン関連サービスは将来性が期待される分野。ビットコイン2.0 尚、ビットコイン等の仮想通貨はブロックチェーン技術を用いたアプリケーションの一つであり、最近ではブロックチェーン技術を用いたゲームや生活便利ツール等の開発も始まっている。こうした動き(ブロックチェーン技術を改良し金融以外の分野での利用)は「ビットコイン2.0」と呼ばれている。 18/12期リリース予定の「ブロックチェーン関連サービス」
開発に着手したのは、仮想通貨を使ったゲームであり、リアルマネートレードに近いと言う。ブロックチェーン技術に基づく新しいプラットフォーム上で提供するが、ユーザーの見え方は同じ。東京大学 公共政策大学院によると、ビットコインの運用開始は 2009年だが、2017年8月には仮想通賃の種類が1000種類を超え、時価総額は990 億 ドルを超えていると言う。また、同社の説明では、米国最大の仮想通貨取引所であるコインベースは、2016年6月の創業だが、既に仮想通貨取引用の口座数が1,300万口座に達しており(野村證券の口座数が2017年11月末で約5,300万口座)、アジアでは、香港のバイナンスの1日の口座開設申し込みが25万口座を超えていると言う。同社は急拡大する仮想通貨市場をゲームに取り込み、リアルマネートレードに近い楽しさを提供していく考えだ。同社の説明によると、サンフランシスコとバンクーバーに拠点を持つAxiomZen社が、2017年11月に仮想通貨イーサリアムを使ってユーザーがバーチャルのネコを育成・売買できるゲーム「Crypto Kitties(暗号子猫)」をリリースしたが、既に50イーサ(50×約128,000円=約6,400,000円)以上の価格の子猫がいる等、日々300万ドル超の取引が行われ、AxiomZen社の事業は2か月半で月商20億円規模に拡大している言う。 もっとも、同社が志向するのはブロックチェーン技術を応用したサービスであり、第1弾として提供するのはゲームだが、ゲームはその一つに過ぎない。ブロックチェーン技術の応用により、ECモールやフリーマーケット等、既存大型サービスをリプレイスできる可能性があると言う。 【株主還元】
これまで「連結配当性向30%」を株主還元の方針としていたが、18/12期より「総還元性向30%」に変更した。株主に対する利益還元、持続的な成長に対する投資、及び内部留保をよりバランスよく実施するためには、自己株式の取得も含めた株主への還元を実施する事が必要、との判断による。
総還元性向(%)=(配当金額+自己株式取得金額)÷連結当期純利益×100
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会社概要 |
経営理念は「私たちが創造するモノを通じて世界の人々をハッピーにすること」。ブランドメッセージとして、「感動を持ち歩け。」を掲げている。 【沿革】
2001年10月、有限会社モバイルファクトリーとして設立され、着信メロディの配信を開始した。着信メロディ事業が拡大し、2003年4月に株式会社に改組。その後、待受画像、デコレーションメール、占い等、コンテンツを拡充した。ソーシャルアプリサービスは2009年12月に開始。2011年3月に、その後の飛躍のきっかけとなった位置ゲーム「駅奪取」をリリース(GREE Platform)。同年10月にはスマートノベル(男性向け恋愛シミュレーションゲーム)分野にも参入した。同年12月には(株)コロプラの位置情報サービスPlatform “コロプラ”にて位置ゲーム「駅奪取PLUS」をリリース、2014年6月に位置ゲーム「ステーションメモリーズ!」をリリース。2014年5月に(株)フジテレビジョン(現:(株)フジゲームス)と業務提携し、同年11月に「ステーションメモリーズ!」iOS版/Android版をリリースした。 2015年3月に東証マザーズに株式を上場し、同年10月に岩手県とパートナーシップ協定を締結。2017年6月に東証1部に市場変更となった。 【事業内容】
事業は、位置ゲームを中心とするソーシャルアプリサービスと着信メロディ等のコンテンツを提供するコンテンツサービスに分かれる。ソーシャルアプリサービスが基本無料アイテム課金制であるのに対して、コンテンツサービスは月額課金制(一部例外)である。また、プラットフォームを介して、同社グループがユーザーに直接サービスを提供する自社モデル形式(自社名義配信)と、同社とOEM契約等を行った業務提携先がプラットフォームを介してサービスの提供を行うOEMモデル形式(他社名義配信)があり、自社モデル形式はユーザーの利用代金が売上計上され、OEMモデル形式はユーザーの利用代金からプラットフォーム等の手数料を控除した金額(ユーザー利用代金の50%~70%)が売上計上される。
ソーシャルアプリサービス
ソーシャルアプリはユーザー同士が協力または競争等、交流しながらサービスを利用する。同社はSNSプラットフォーム(GREE、Mobage、mixi、コロプラ等)やアプリマーケット(App Store、Google Play等)を通して、位置ゲームやスマートノベルを配信している。一部イラストやシナリオについては外部委託先に制作依頼しているが、システム開発は社内で対応している。位置ゲームでは、主力の「ステーションメモリーズ!」(略称:駅メモ!)の他、「駅奪取シリーズ」等の3タイトルを提供している。2011年3月にサービスを開始した「駅奪取シリーズ」は、身近な駅を他人と奪い合う競争要素、実際に訪れた場所が履歴として残るライフログ要素、奪取した駅や路線・称号等を集めるコレクション要素の3要素を有し、2014年6月にサービスを開始した「駅メモ!」は「駅奪取シリーズ」の駅を奪い合う楽しさを残しつつ、駅を収集する楽しさを追求した。「レキシトコネクト」は日本の歴史を舞台に、位置情報を利用して、個性豊かな「イジン」と共に日本全国で戦国時代さながらの陣取り合戦を楽しむゲーム(実際に訪れた歴史遺産のコレクションや歴史上の英雄達をモチーフにした「イジン」の育成等)。 コンテンツサービス
主に通信キャリアが運営するサービスを通してスタンプ画像や着信メロディ等のコンテンツを提供している。着信メロディは、自社モデル形式の「最新曲★全曲取り放題」や(株)レコチョクとの協業サービス(OEMモデル形式)の「レコチョクメロディ」等、スマー卜フォンやフィーチャーフォン向けに月額100円(税抜)から300円(税抜)で取り放題というサービス。強みは、自社内制作の高音質のサウンドに加え、ドラマ・映画・CM等で話題が旬のうちに迫加できる体制とノウハウ。着信メロディ音源の制作、サイトの開発及び運営は、原則、社内で対応している(一部例外あり)。着信メロディ以外では、スタンプ素材とメロディの定額取り放題サービスを提供している。2004年5月のサービス開始以来、10年以上の運営実績を有し、その時々で効果的な広告手法を取り入れる事でユーザーの獲得に取り組んでいる。課金会員数は漸減傾向にあるが、原則内製でもあり、残存者利益を享受しているため収益性は高い。ただ、経営リソースはソーシャルアプリサービスに優先的に投下している。 |
<参考:コーポレート・ガバナンスについて> |
◎コーポレート・ガバナンス報告書 更新日:2017年12月15日
当社グループは、お客様、株主様、さらには社会全体の信頼と期待に応え、企業価値の極大化のために、法令遵守に基づく企業倫理の確立が最重要課題であると認識しております。そのために、リスク管理、監督機能の強化を図り、経営の健全性・透明性を高め、もって経済社会の発展に寄与していく所存であります。
基本的な考え方 <実施しない主な原則とその理由>
【原則4-8】当社では2名の独立社外取締役のうち1名が、平成29年12月15日付にて辞任いたしました。そのため、平成29年12月16日以降は独立社外取締役が1名となりますが、取締役会においては当該独立社外取締役及び独立社外監査役1名より独立かつ客観的な立場から助言をいただけており、当社の取締役における監督機能は十分に確保されております。今後につきましては、更なるコーポレート・ガバナンス及び企業価値向上への取り組み強化の観点から、新たな独立社外取締役の選任を検討してまいります。 <開示している主な原則>
【原則1-4】当社は、政策保有株式については、事業上の連携強化等、当社の企業価値の維持向上に資すると判断した場合に保有する場合があります。なお、現時点において上場株式を保有しておりません。 【原則1-7】 当社は、関連当事者との取引については、その取引を行うことが合理的であるか等を考慮しております。また、取引条件が他の取引と比較して適正であるか等に留意して、取締役会の承認を得ることとしております。 【原則3-1】 (1)企業理念は、会社ホームページ、有価証券報告書、招集通知、決算説明資料等にて開示しております。 (2)コーポレート・ガバナンスの基本方針は、コーポレート・ガバナンス報告書に記載しております。 (3)取締役の報酬は、株主総会が決定した報酬総額の範囲内で、取締役会で決定しております。 (4)取締役及び監査役は候補の指名を行うに当たって、候補者の知識・経験・能力等を考慮すると共に、総合的に勘案して指名しております。 (5)取締役及び監査役候補者の選任理由を招集通知に記載しております。 【原則4-1-①】 当社の取締役会は、取締役会規程に定められた事項について協議決議を行っております。また「組織規程」「業務分掌規程」「職務権限規程」「稟議規程」に基づき、当社の経営陣に委任しております。 |
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