ブリッジレポート
(3747) 株式会社インタートレード

スタンダード

ブリッジレポート:(3747)インタートレード vol.7

(3747:東証2部) インタートレード 企業HP
尾﨑 孝博 社長
尾﨑 孝博 社長

【ブリッジレポート vol.7】2017年9月期業績レポート
取材概要「“Fintech”に象徴されるように、金融商品取引向けサービスは日進月歩の進化を遂げており、「今後、ブロックチェーン技術の活用で金融機関と事業・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年1月10日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インタートレード
社長
尾﨑 孝博
所在地
東京都中央区新川1-17-21 茅場町ファーストビル
決算期
9月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年9月 2,017 -458 -459 -334
2016年9月 2,358 11 14 7
2015年9月 2,459 -165 -164 -331
2014年9月 2,463 -107 -103 -119
2013年9月 2,725 -98 -95 -128
2012年9月 2,811 -129 -104 7
2011年9月 3,335 47 66 172
2010年9月 3,856 -258 -277 -920
2009年9月 5,386 68 -26 -222
2008年9月 4,970 145 51 -326
2007年9月 3,417 -776 -756 -653
2006年9月 3,853 899 801 408
2005年9月 2,872 655 661 388
2004年9月 1,715 623 607 348
株式情報(1/5現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
294円 7,185,600株 2,112百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 1.67円 176.0倍 194.91円 1.5倍
※株価は1/5終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
インタートレードの2017年9月期決算の概要と2018年9月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
証券ディーリングシステム等の開発・保守を中心とする金融ソリューション事業を主力とし、グループ経営管理パッケージソフト等を手掛けるビジネスソリューション事業、ハナビラタケ関連のサプリメントや化粧品等の生産・販売を手掛けるヘルスケア事業、及び金融ソリューション事業の補完的な位置づけの自己資金運用事業を展開している。

グループは、同社の他、経営統合管理プラットフォーム「GroupMAN@IT e2」(ビジネスソリューション事業)の開発・保守等を手掛ける(株)ビーエス・ジェイ(出資比率66.7%)、ハナビラタケの生産・加工を手掛ける(株)らぼぉぐ(同100%)、ハナビラタケ関連製品のカタログ通販やWeb通販を手掛ける(株)健康プラザパル(同100%)、自己資金運用事業の(株)トレーデクス(出資費率100%)、の連結子会社4社、及びフィンテック関連技術によるソリューションや製品・サービスの開発及び販売を行う(株)イーテア(出資比率21%)。尚、2018年1月1日付けで(株)健康プラザパルが(株)らぼぉぐを吸収合併し、(株)インタートレードヘルスケアに商号を変更する。
 
【沿革】
橋本政権下で金融システム改革法が成立し、米国では、E☆TRADEやチャールズシュワブ等のネット証券が台頭した1998年は、「金融ビッグバン」や「ネットベンチャー」という言葉が定着しはじめた時期でもある。こうした中、インターネットの普及と金融の自由化で株式等の取引手法が劇的に変化する(電子トレードへの移行)との考えから、現在、代表取締役社長を務める尾﨑孝博氏と副社長の西本一也氏が1999年1月に同社を設立した。

フロントシステムのコンサルティングからスタートし、ディーリング・トレーディング向けパッケージソフトの開発に展開し、2000年9月にパッケージ型証券業務向けディーリングシステム「Trade Office-SX」の販売を開始。電子トレーディングの技術が発展途上で、金融機関の株式フロント業務に特化したベンダーも限られる中、操作性・機能性に優れたフロントシステムを安価に構築できたため、「Trade Office-SX」は多くの証券会社エクイティ部門で導入が進んだ。2003年3月に開始した「情報配信サービス」(東証など主要取引所の相場情報を配信)も順調に伸び、2004年9月に東証マザーズに株式を上場。2007年8月に販売を開始した「TIGER Trading System」(「Trade Office-SX」の後継システム)でシェアを拡大させた。また、証券のトータルソリューションを志向し、ミドルシステム(約定ポジションに対するリスク計測等のリスク管理システム等)や証券バックオフィスシステム(顧客情報や口座残高等の管理システム)でも実績を残した他、2005年1月には世界で唯一のオークション型PTS(私設取引システム)「ITMonster」の販売を開始した。

2012年以降は事業の多角化を推進。2012年10月に経営管理ソリューションを開発する(株)ビーエス・ジェイを子会社化した他、ヘルスケア事業(当時はフードサービス事業)の育成を目的に、子会社インタートレード投資顧問(株)を(株)らぼぉぐに商号変更すると共に組織変更。2013年にはヘルスケア事業の販路確保を目的に、2月に通信販売業の(株)パル(現(株)健康プラザパル)を子会社化した。
 
【事業概要】
事業は、証券会社等を顧客とし証券業務向けフロントパッケージシステムの設計・開発・販売を手掛ける金融ソリューション事業、一般事業会社を顧客とし法人向けパッケージシステムの設計・開発・販売を手掛けるビジネスソリューション事業、消費者に対してサプリメント等の健康商材や化粧品の開発・販売及び健康関連連商品の仕入販売を行うヘルスケア事業、及び投資教育セミナーの開催運営やトレード情報配信など個人投資家の育成を目的とした投資教育事業を中心にした自己資金運用事業に分かれる。17/9期の売上構成比は、金融ソリューション事業76.4%、ビジネスソリューション事業10.0%、ヘルスケア事業13.5%、自己資金運用事業0.1%。
 
金融ソリューション事業
東京証券取引所の総合取引参加者に導入されている証券ディーリングシステム「Prospect」、外国為替証拠金取引システム「fortissimo」、取引所外取引システム「ITMonster」に加えarrowhead、ToSTNeT、J-GATEなど各取引所との接続システム「J1」、アルゴリズムプログラム等の売買執行シミュレーションとチューニングが可能な「MEX&MSRIII」、トレーディングシステム上で、リアルタイム系、チャート系、ヒストリカル分析系などインテリジェンストレーディングに必要な様々な情報を提供する「DPSS」、この他、ミドルウェアや通信ソフト等の設計・開発・販売を行っている。

近年では、上記のプロダクトのノウハウを活かし、必要なプロセスやアプリケーション機能等をコンポーネント(部品)化し、ユーザーの業務に沿ったシステム機能のみを提供するライブラリ型ソリューション「Spider」の開発も進めている(クラウドを活用したASP方式で提供される)。
 
ビジネスソリューション事業
自社開発の経営統合管理プラットフォーム「GroupMAN@IT e2」及び「Gadics MAN@IT」を中心としたパッケージサービス、保守・運用中心のシステムエンジニア派遣サービス(SES:System Engineering Service)、及びシステムの設計・開発・構築やマルチベンダー・マルチプロダクト・マルチビジネスを特徴とするシステム総合支援サービス等を行うサポートセンターサービスを3本柱とし安定収益の確保を目指している。連結子会社(株)ビーエス・ジェイが「e2」の開発・保守等を手掛けている。

企業は、会計、人事/給与、設備、資材等の複数の業務システムを導入しているが、業務毎にベンダーが異なるケースや同じ業務でも、親会社と子会社でベンダーが異なるケースが多い。この場合、企業内やグループ内で経営情報の統合管理、言い換えると、各システムのデータ連携によるグループ全体の経営分析ができず、多くの企業が高価な投資が必要な連携用のシステムを別途構築している(大手システム会社は自社製でないシステムと自社システムの接続に対して非常に消極的)。これに対して、「GroupMAN@IT e2」は柔軟性の高いインターフェイス「FLEX I/O」を備えているため、ベンダーやシステムが異なる場合でも、データ連携が可能だ。
一方、「Gadics MAN@IT」は機能ではなく、「バーチャルエンジニア」として低価格でパソコン等の運用管理を、「収集」、「判断」、「実施」、「確認」の4つの視点からクラウドベースでサポートする。
 
ヘルスケア事業
ハナビラタケの栽培から手掛け、自社ブランドのハナビラタケ関連製品(サプリメント、健康食品、化粧品)の販売、OEM供給、ハナビラタケ由来成分を使った化粧品原料販売等を国内外で展開している。(株)インタートレードがマーケティングを含めて事業全般を統括し、(株)らぼぉぐがハナビラタケの生産・加工を、(株)健康プラザパルがハナビラタケ関連製品のカタログ通販やWeb通販を、それぞれ手掛けている。また、産官学の共同研究(後述)により、ハナビラタケ由来成分の免疫賦活機能について科学的根拠に基づくエビデンス取得にも取り組んでいる。尚、2013年に実施したヒト臨床試験において、ハナビラタケ由来成分「LB-Scr」の、II型糖尿病、Ⅰ型アレルギー性疾患、及び肝機能指標(γ-GTP、GOT、GPT)への有効性や肌質変化への有効性が確認されている事に加え、有害事象等の検証により、安全で副作用がない事も確認されている。
 
ハナビラタケ
ハナビラタケは、日本各地に加え、欧米等でも自生するが、天然下では本来食用キノコが育たない1,000m級の針葉樹林に生息し、天然ハナビラタケを目にする機会がめったにないため、「希少キノコ」と言われている。また、キノコは茶色が主流だが、ハナビラタケは白い花がふんわり咲いているように美しい白色~淡黄色。健康維持に重要な役割を果たすβ-グルカンの含有量が35%を超える上(アガリクスは12.5%)、アミノ酸やトレハロースなど様々な有用成分にも富んでいる。食用キノコの側面も有する。
 
 
「IT-はなびらたけプロジェクト」の成果(ヘルスケア事業)
 
ハナビラタケの由来成分について科学的根拠に基づくエビデンスを取得し、国内外でエビデンスに裏打ちされた自社オリジナル製品(有効成分を用いた健康食品や生活習慣病対策商品等)の販売やOEM及び原料販売の拡大に取り組んでいく。国内では、カタログ通販やWeb通販に加え、スーパー、百貨店、美容エステサロン、小売業者、薬局、動物病院等への直販や、OEM及び化粧品の原料販売を行っており、海外では、ロシアやドバイでの通販・小売業者への卸売りの他、バングラデシュ人民共和国でハナビラタケ製剤化プロジェクトを進めている。
尚、ロシアでは、RegMed prof社(ディストリビューター)を介して、医療・美容製品の小売最大手「36.6」、医療・美容製品の小売「SUPRAMED」、インターネット販売大手「Beauty Health」、東欧を中心とする大手テレビ通販「Studio Moderna」、の4社が販売を行っている。一方、ドバイではハナビラタケのサプリメントを小売業者に卸売りしている。
 
ハナビラタケは栽培が難しく、年間生産量は、えのき茸の15万トンに対して、100トン。このため、同社は人工栽培の技術とノウハウを取得するべく自社で栽培を開始した。人工栽培に目処が付いたため、2013年1月から約1年かけて安全性や機能性を確認するためのヒト臨床試験を実施。ハナビラタケから抽出された物質に糖尿病と密接な関係があるHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)の血中濃度を低下させる効果がある事を確認した(副次的に色素沈着など肌質変化に対する効果も確認)。
 
【IT-はなびらたけプロジェクト  産総研、東京女子医大との共同研究】
ハナビラタケは、抗腫瘍作用、血糖降下作用、免疫活性作用など多くの生理活性が報告されてきたが、その有効成分は高分子多糖体のβ-グルカンとして報告される事が多く(β-グルカンはヒトの体内では消化・吸収されないものの、腸管免疫に作用して免疫を活性化するなど様々な生理活性を示す)、その他の有効成分についてはほとんど解明されていなかった。しかし、2013年に同社が実施したヒト臨床試験の結果等から、β-グルカンだけでは説明ができない事象が確認されていた。

このため、ハナビラタケの有効成分を細胞・分子レベルで探索し、有効性のメカニズムを解明するべく、細胞・分子レベルの探究が可能な東京女子及び医大産総研と「IT-はなびらたけプロジェクト」を開始した。研究内容は、①ハナビラタケ抽出物の安全性試験、②ハナビラタケ抽出物の活性試験、③ハナビラタケの分子レベル各種分析、④ハナビラタケの有効成分の探索、及び⑤ハナビラタケのゲノム解析、の5項目。同社がハナビラタケ抽出物質を提供し、東京女子医大が安全性・機能性の臨床試験を行い、産総研が遺伝子チップを利用した細胞・遺伝子レベルの探索と成分分析を行っている。仮説を証明し、共同での国際特許を取得する考えだ。
 
2017年3月22日時点での「IT-はなびらたけプロジェクト」の研究成果
ハナビラタケの標準化に成功すると共に、抽出物質から新しい生理活性物質を発見した(ハナビラタケに女性ホルモンの代替化合物「サイレントエストロゲン」が含まれる事を発見)。研究成果に関連する特許を出願し、引き続き有効性等の研究に取り組んでいる。
 
ポイント
(1)ハナビラタケの全ゲノム(遺伝配列)を決定
ハナビラタケの全ゲノム(遺伝配列)を決定した。これにより同社が提供するハナビラタケを標準株として確立し、今後ハナビラタケの有効成分の探索と品質管理に利用する事が可能になった。
 
(2)ハナビラタケから新しい生理活性物質を発見
標準ハナビラタケ株抽出物から、エストロゲン活性(後述)を有するものの、細胞増殖作用がない「サイレントエストロゲン」(エストロゲン様化合物:エストロゲンと同様の機能が認められる化学物質)と呼ばれる化合物を発見した。「サイレントエストロゲン」は、エストロゲン(女性ホルモン)の利点を有する一方で、エストロゲンが持つ欠点が無い。エストロゲンの減少によるホルモンバランスの乱れが原因とされる女性の更年期障害や動脈硬化の治療でエストロゲンの成分を用いたエストロゲン製剤が用いられているが、エストロゲンには細胞増殖機能があり乳癌や子宮内膜癌などのがん細胞を活性化させるリスクがある。これに対して、「サイレントエストロゲン」はエストロゲン同様の生理活性機能を有する一方で、がん細胞の増殖を活性化させない。
 
研究成果
(1)全ゲノム解析によるハナビラタケ標準株の確立
ハナビラタケでは初めて全ゲノム解析を実施し、全ゲノム配列を決定した。具体的には、ゲノム全長約34Mb(メガ塩基対)、ゲノム情報には約1万個の遺伝子が含まれる事を解明し、今回取得した全ゲノム解析データを国立遺伝学研究所(DDBJ)に登録した。ハナビラタケは種レベルでの区別が簡単ではないため、二つ以上の分類群が混同されるケースがあるが、全ゲノム配列を決定して標準株を確立した事で、今後はハナビラタケの安定供給や有効成分の効果や量に関して品質管理が容易になる。また、全ゲノム解析データに含まれる有用遺伝子に関する情報の利用も可能になる。
 
(2)ハナビラタケのエストロゲン作用
産総研は、DNAチップ(遺伝子発現の分析器具)を利用した新しいホルモン活性測定法を確立し、様々な化学物質や天然物有効成分の評価を行ってきた。産総研のホルモン活性測定法の特長は、従来の細胞による活性評価法より高い感度の測定結果を得る事ができる事と、従来不可能だった細胞増殖活性のないエストロゲン様化合物の検出が可能な事。

今回、産総研のホルモン活性測定法によって、エストロゲンに似た遺伝子への影響(タンパク質レベルで確認)とエストロゲンが有する細胞増殖活性が認められない事を確認した。この結果、ハナビラタケ抽出物が新しいエストロゲン療法や創薬に利用できる事や、ハナビラタケ抽出物を利用した癌リスクのない新しいタイプのホルモン薬(エストロゲン製剤)の開発が期待できる事がわかった。

エストロゲンとは女性ホルモンの事で、乳腺細胞の増殖促進、卵巣排卵制御、中枢神経(意識)女性化、動脈硬化抑制等の生理機能(エストロゲン活性)を有するが、閉経前に急激に減少する特徴があり、エストロゲンの不足が更年期障害や動脈硬化等の原因になる。この治療にエストロゲンやエストロゲン様化合物を用いたエストロゲン製剤が用いられるが、エストロゲンは細胞増殖機能も有するため、乳癌や子宮内膜癌の増殖を活性化するというリスクがある。これに対して、ハナビラタケに含まれるエストロゲン様化合物は、「サイレントエストロゲン」と呼ばれるエストロゲンが示す作用の全てまたは一部を有する化学物質であり、エストロゲンと同様の生理活性作用を有する一方で、細胞増殖作用を持たない(がんの増殖を活性化させない)。このため、エストロゲン製剤や抗エストロゲン剤、抗動脈硬化剤等に加え、抗がん剤や健康食品等への利用が期待できる。
 
(3)ハナビラタケの脂質代謝改善作用
マウスにハナビラタケ培養乾燥物を10週間連日経口投与した後、血液生化学的検査により脂質代謝を評価したところ、総コレステロール及び遊離脂肪酸ともに低値傾向を示した。これにより、脂質代謝の改善作用が期待できる事がわかった。
 
(4)ハナビラタケの安全性評価
生物学的安全性評価として、ハナビラタケ培養乾燥物とハナビラタケ熱水抽出物SCE(抽出乾燥物)をマウスに単回経口投与し、その急性毒性を評価したところ、投与後の一般状態、体重推移及び剖検所見において、ハナビラタケ培養乾燥物とハナビラタケ熱水抽出物SCE(抽出乾燥物)に起因する変化は認められなかった。
 
今後の展開
ハナビラタケがより安全なエストロゲン製剤として利用できる可能性が明らかになった。有効成分の探索と利用に関する研究を継続すると共に、ヒトでの有効性及び安全性を更に詳しく検証するべくヒト臨床試験を実施する予定。また、ハナビラタケのエストロゲン活性の特性を活かした製品開発や、ハナビラタケ抽出物及びその成分の、健康食品、創薬、診断等への利用に向けた取り組みを進めていく。
 
 
2017年9月期決算
 
 
前期比14.5%の減収、4億58百万円の営業損失(前期は11百万円の利益)
売上高は前期比14.5%減の20億17百万円。販路の拡大や前期に開始した原料販売及びOEMの寄与でヘルスケア事業の売上が同13.4%増加したものの、解約の影響で金融ソリューション事業の売上が同19.4%減少した。

営業損益は4億58百万円の損失。利益率の高いライセンスビジネス売上・カスタマーサポート売上(共に金融ソリューション事業)の減少や棚卸資産評価減の計上(ヘルスケア事業)等で売上総利益が減少する一方、ハナビラタケ関連の先行投資で販管費が増加した結果、4億58百万円の営業損失となった。ただ、投資有価証券売却益1億39百万円を特別利益に計上した事で最終損失は3億34百万円にとどまった。
 
 
 
金融ソリューション事業
売上高15億41百万円(前期比19.4%減)、セグメント利益3億67百万円(同35.4%減)。新システム「Spider」が大手総合商社に採用され第4四半期(7-9月)に稼動する等、次期以降の展開に向けた成果もあったが、証券ディーリングシステム及び取引所関連システムの大口顧客の解約で利益率の高いライセンスビジネス売上(11億58百万円⇒10億57百万円)やカスタマーサポート売上(5億43百万円⇒3億69百万円)が減少した事が響いた。
 
ビジネスリューション事業
売上高2億01百万円(前期比2.6%減)、セグメント損失58百万円(前期はセグメント損失44百万円)。SES及びサポートセンターによる各種IT支援業務が堅調に推移したものの、当期の受注を見込んでいた自社開発の経営統合管理プラットフォーム「GroupMAN@IT e2」の商談の遅れが響き売上が下振れした。「GroupMAN@IT e2」は既存ユーザーからの追加受注に成功しており、上記の商談遅れ案件と共に18/9期の売上計上が見込まれる。
 
ヘルスケア事業
売上高2億72百万円(前期比13.4%増)、セグメント損失4億24百万円(前期はセグメント損失1億85百万円)。ラオックス(株)の化粧品美容専門エリアに採用される等、販路拡大でハナビラタケ製品の売上が増加した他、前期に開始した原料販売及びOEMが通期で寄与した。また、ハナビラタケの効果・効能を明らかにするべく2014年に開始した産学官の共同研究「IT-はなびらたけプロジェクト」の研究成果の発表を受けて、美容・健康関連事業大手のRIZAP(株)の新規事業に同社が生産するハナビラタケ「ITはなびらたけ」が採用される等の成果も上げた。
一方、損益面では、共同研究やバングラデシュ人民共和国でのハナビラタケ製剤化に向けた研究開発費を含む先行投資の増加に加え、原料販売が期初計画通りに進捗しなかった事に伴うたな卸資産の評価減の計上でセグメント損失が拡大した。
 
 
期末総資産は前期末と比べて4億14百万円減の17億84百万円。営業損失となったが、投資有価証券の売却等で前年同期とほぼ同水準の現預金残高を維持した。自己資本比率78.5%、当座比率(当座資産/流動負債)442.9%。財務体質は、安定性に優れ、流動性に富んでいる。ただ、財務基盤は厚みに欠ける。事業拡大と収益力強化で財務基盤を強固なものにしていく考え。
 
 
 
2018年9月期業績予想
 
 
前期比19.0%の増収、営業利益20百万円
金融ソリューション事業は新たな領域への展開に向けた踊り場となるが、前期に受注した「GroupMAN@IT e2」のリピート案件の寄与等でビジネスソリューション事業の売上が倍増する他、販路拡大効果でヘルスケア事業の売上も増加する見込み。金融ソリューション事業及びヘルスケア事業で研究開発投資が続くものの、増収効果で吸収して営業損益の黒字転換が見込まれる。

尚、経営資源の統合と経営のスピード化を目的に、2018年1月1日付けで(株)健康プラザパルが(株)らぼぉぐを吸収合併し、(株)インタートレードヘルスケアに商号を変更する。
 
(2)今後の取り組み
金融ソリューション事業
金融機関や金融関連業務を展開する事業会社のビジネス拡大に貢献するべく、あらゆる金融商品取引業務に対応可能なライブラリ型ソリューション「Spider」及びキャピタルマーケット向け執行ソリューション「Prospect」を軸にFintech分野に展開していく。事業会社での利用も視野に入れている「Spider」が9月に稼働したが、現在、第2フェーズの開発を進めており、第3フェーズではブロックチェーン技術を取り込む計画(同社は、ブロックチェーン技術の活用で、いずれ金融機関と事業会社の垣根がなくなると考えている)。18/9期は、新たな領域への展開に向けた「Spider」及び「Prospect」開発が続き、金融ソリューション事業の売上は前期並みにとどまる見込み。
 
ビジネスリューション事業
経営統合管理プラットフォーム「GroupMAN@IT e2」の目標導入達成に向けた取り組みが続く。大手外食チェーンや大手製造業の既存ユーザーがグループ各社に分散している経営データを集約するべくグループ企業での導入に動き出している。加えて、商談が最終段階にある案件もあり、これらの寄与で18/9期は売上が倍増する見込み。また、「GroupMAN@IT e2」はグループの情報連携を可能にするシステムだが、外部との情報連携には「Spider」を利用できるため、「Spider」の需要掘り起こしにも取り組んでいく。
 
ヘルスケア事業
ハナビラタケの有効成分の探索と利用に関する研究を継続すると共に、ハナビラタケのエストロゲン活性の特性を活かした製品開発や、ハナビラタケ抽出物及びその成分の、健康食品、創薬等での利用に向けた取り組みを進めていく。
 
健康食品としての展開
この9月には、RIZAP株式会社(以下、RIZAP)が同社新業態「REzap」及び「zapDELI」の惣菜に「ITはなびらたけ」が採用された(共にRIZAPが同社の栄養学に基づき開発した新惣菜を提供する)。また、11月には、「ITはなびらたけ」が日本スーパーフード協会に素材としては日本で初めて、ジャパニーズスーパーフードとして認定された。今後はスーパーフードとしても商品開発を行っていく考えで、第一弾として、「ITはなびらたけ」を使ったふりかけを1月に発売する。この他、大手企業向け原料提供やカタログ通販の千趣会へのハナビラタケサプリのOEM供給が決まっている他、食品メーカー、化粧品メーカー、製薬会社等から引き合いを受けていると言う。

尚、日本スーパーフード協会の定義によるスーパーフードとは、栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い食品、或いは、ある一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる食品の事。一般的な食品とサプリメントの中間にくるような存在で、料理の食材としての用途と健康食品としての用途を併せ持つ。日本スーパーフード協会(2014年1月設立)は、良質な食・美容・運動を通して健康と美しさを維持・増進する社会を創造し、スーパーフードの消費拡大に寄与する活動を行っている。
 
バングラデシュでの糖尿病治療薬事業
2017年末までにバングラデシュでの製剤化試験が完了する予定だ。製剤化試験完了後、現地に合弁会社を設立して日本から輸入したハナビラタケ製品のバングラデシュ国内での販売を開始する。2018年の年内に薬の製造・販売を開始する予定。
 
(3)株主優待
同社は株主優待制度として、9月末の株主に対して、同社の本社併設サロンや子会社(株)健康プラザパルが運営する通販サイト「健康いいものonline(http://kenko-iimono.com/)」で利用可能な株主優待券を進呈している。特に「健康いいものonline」はハナビラタケ関連商品等、健康や美容に関する商品を数多く取り揃えている。
 
 
 
今後の注目点
“Fintech”に象徴されるように、金融商品取引向けサービスは日進月歩の進化を遂げており、「今後、ブロックチェーン技術の活用で金融機関と事業会社の垣根がなくなる」と言うのが同社の考え。この事は証券会社が中心だった同社の顧客が事業会社にも広がる事を意味し、金融ソリューション事業とビジネスソリューション事業のシナジーも期待できるようになる。同社はあらゆる金融商品取引業務に対応可能なライブラリ型ソリューション「Spider」やキャピタルマーケット向け執行ソリューション「Prospect」を軸に、“Fintech”を最大限活用したサービスを積極展開して、金融機関だけでなく、事業会社の需要も掘り起こしていく考えだ。
一方、ヘルスケア事業では、新たな生理活性「サイレントエストロゲン」を発見した事で、食品メーカー、化粧品メーカー、製薬会社等の間でハナビラタケへの関心が高まっているようだ。また、バングラデシュでの糖尿病治療薬事業も本格化する。2017年末までにバングラデシュで糖尿病治療薬としての製剤化試験が完了する予定だが、これが日本で言う「販売承認の取得」に当たる。イスラム圏では、野菜の摂取量が少ないため、糖尿病患者が多いと言う。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレート・ガバナンス報告書       更新日:2017年12月25日
基本的な考え方
当社グループは企業価値の最大化をコーポレート・ガバナンスの基本目標とし、「経営の透明性」「法令遵守」「効率的な経営」の観点から当該基本目標の実現を図ります。
代表取締役をはじめとする経営陣は、当社グループを取り巻くステークホルダー(株主、顧客、取引先、従業員等)との良好な関係を維持する役割を負います。そのため、経営状況を把握できる体制を構築及び運用し、法令及び定款を踏まえた適時適切な情報開示を行うことが重要と考えています。
 
<実施しない主な原則とその理由>
【原則 3-1】情報開示の充実
(3)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(4)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(5)取締役会が上記(4)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任、指名についての説明
(3)、(4)、(5)については現時点で具体的内容を公表はしていないものの、以下のとおりの手続き又は手順を社内にて実行しています。
(3) 取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続については、当社の取締役及び業務執行役員の報酬は、社内で予め定められた業績指標に連動して報酬が上下します。
(4)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続については、組織マネジメント能力と業務遂行能力を基準に評価される社内等級が一定以上の者が取締役及び業務執行役員に就任できるよう社内の規定で定められています。監査役については明文化された規定は無いものの、経営課題に対する知見と高度な専門能力を持つ人材に就任を要請しています。
(5)取締役会が上記(4)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明
については、原則毎月1回行っている経営会議及び全社会議にて、選任・指名について説明しています。
 
<開示している主な原則>
【原則1-4】いわゆる政策保有株式
政策保有を取得する際は、発行会社との業務上の提携等を通して当社の事業の成長に寄与することを条件としています。取締役会においては発行会社の業況及び当社との協業の状況を定期的にモニタリングしています。政策保有の議決権行使については、経営陣の経歴や業況、外部環境等考慮すべき基準が多岐に渡るため、都度判断しています。また、持ち合い株式は原則しない方針です。

【原則1-7】関連当事者間の取引
当社は、関連当事者のうち取締役と取引を行う際は、取締役会での承認決議を要し、役員及びその近親者と当社グループとの取引に関する調査を毎年実施して、関連当事者取引の有無を確認しております。また、当社と主要株主との取引については、当該取引が株主共同の利益等を害することのないように留意し、重要性に応じて取締役会に報告します。

【原則3-1】情報開示の充実
(1)経営理念や経営計画等については、当社HPや決算説明資料等で開示しています。
(2)本報告書【コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報】に記載しております。
(3)全社業績及び事業本部の業績が経営陣の報酬に連動する制度を採用しており、適切なレベルのインセンティブ付与によって企業家精神の発揮を支援しています。取締役の報酬は当期純利益に連動して決定され、さらに取締役は当社株式を10,000株以上もしくは時価300万円相当保有する旨内規で定められています。
(4)取締役候補は、人格や見識、経験や実績等をもとにその責務を果たすことができる適任者を選任する方針とし、取締役会で決定しております。監査役については、経営課題に対する知見や高度な専門能力を持つ人材に就任を要請しています。
(5)取締役及び監査役の選任については、株主総会招集ご通知参考書類に記載の通りです。また、社外取締役については、本報告書【取締役関係】に記載しております。

【原則5-1】株主との建設的な対話に関する方針
当社は、代表取締役社長を中心に、管理部門にてIR業務を行っております。
年に1回決算説明会を開催し、同時にその模様を当社ウェブサイトにて公開しています。また、個人投資家向けの説明会や随時個別ミーティングを実施しています。