ブリッジレポート
(2183) 株式会社リニカル

スタンダード

ブリッジレポート:(2183)リニカル vol.33

(2183:東証1部) リニカル 企業HP
秦野 和浩 社長
秦野 和浩 社長

【ブリッジレポート vol.33】2018年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「同社18/3期第2四半期連結累計期間の営業利益は、前年同期比25.1%の減益と厳しい内容となった。これは、日本、アジア、欧州で開始予定であった・・・」続きは本文をご覧ください。
2018年1月8日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社リニカル
社長
秦野 和浩
所在地
大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル
決算期
3月
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 8,355 2,128 2,076 1,447
2016年3月 7,666 2,012 1,985 1,330
2015年3月 4,872 876 840 437
2014年3月 3,721 706 703 449
2013年3月 3,599 1,003 998 616
2012年3月 3,110 728 723 424
2011年3月 2,512 288 278 147
2010年3月 2,404 480 473 273
2009年3月 2,036 549 515 300
2008年3月 1,273 505 494 296
2007年3月 613 186 195 114
2006年3月 118 16 19 11
株式情報(11/30現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,545円 22,725,457株 35,110百万円 40.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
11.00円 0.7% 70.40円 21.9倍 179.97円 8.6倍
※株価は11/30終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
※ROEとBPSは前期実績、EPSは18/3月期予想。
 
リニカルの2018年3月期第2四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
臨床試験(治験)に関わる業務の一部を代行する事で製薬会社の医薬品開発を支援するCRO(Contract Research Organization)事業を中心に、医薬品のマーケティング業務ならびに製造販売後{以下製販後という}臨床研究・調査の受託などを行う育薬事業を手掛ける。
医薬品は発売前に厚生労働省の承認・認可を受けることが義務づけられており、承認前の薬剤(医薬品候補)を患者さまに投与して効果や安全性を確かめる必要がある。その臨床試験としての治験を支援する事業がCRO(Contract Research Organization)である。また、医薬品は製販後も調査、臨床研究を行う必要があり、その段階を支援する事業が育薬(Contract Medical Affairs)である。
同社は創業以来、がん・中枢神経系(CNS)など、世界中の人々がその撲滅を願い、新薬開発への強いニーズが存在する疾病領域を中心にCRO事業を展開してきた。これらは非常に難易度が高い領域であり、同社の知識・経験豊富なエキスパートが高度な治験を支えている。また、同社は創薬支援・育薬事業にも力を注ぎ、申請業務支援、承認後のマーケティングや臨床研究、製販後調査支援まで、単なるアウトソーシングを越えてお客様の事業を幅広くコンサルティングする「製薬会社の真のClinical Development Partner(医薬品開発パートナー)」を目指している。更に、国際化・大規模化が進む医薬品開発の流れのなかで、グローバルで大規模なプロジェクトにも同社グループのワンストップで十分な対応を行い、製薬会社とともに新しい時代を開拓していく戦略的ビジネスパートナーとして、顧客の市場競争力の拡充をトータルに支援している。
 
【沿革】
2005年6月、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬株式会社)で免疫抑制剤等の開発に携わってきたメンバー9名によって設立された。大阪発理想の医薬品開発受託(CRO)事業を目的として、設立当初から、CNS領域やがん領域の育成に取り組み、会社設立後まもなく大塚製薬からCNS領域の案件を受注。その後、人材を補強し事業部として受注活動を強化した。また、がん領域も外資系製薬会社等でがん領域の医薬品開発を手掛けた人材等に恵まれ、足元、受注が拡大している。
SMO(治験施設支援機関)事業進出を念頭に、06年1月に同事業を手掛けるアウローラ(株)を子会社化したが、CRO事業への経営資源集中を図るべく07年5月に全保有株式を売却。08年7月に、国内の製薬会社の米国進出支援を目的に米国カリフォルニア州に全額出資子会社LINICAL USA, INC.を設立。同年10月の東証マザーズ上場を経て、13年3月に東証1部に市場変更となった。13年5月に、台湾と韓国に全額出資子会社LINICAL TAIWAN CO.,LTD.とLINICAL KOREA CO.,LTD.を設立。14年4月には、LINICAL KOREA CO.,LTD.と買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。14年10月29日には欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbH との間で締結し、12月1日付けで同社の100%子会社となった。更に、グループとしての一体感の醸成と連携強化を図るため、連結子会社となったNuvisan CDD Germany GmbHの名称をLINICAL Europe GmbHに商号変更した。その他、16年3月にLINICAL U.K. LTD.を、同年10月にLINICAL POLAND sp.z.o.o.を、2017年9月にLINICAL Czech Republic s.r.oを 設立した。
 
 
【業務内容】
CRO事業
主力のCRO事業においては、新薬の迅速な市場投入につながる高品質で高効率な治験の支援を目指して、高い技術と豊富な経験をもつスタッフが担当にあたっている。今後も拡大するグローバルスタディに対応していくため、アジア(韓国、台湾、シンガポールなど)と欧州、米国に拠点を開設。薬事から企画、実施計画書の作成、モニタリング、データマネージメント、統計解析、ファーマコビジランスまでワンストップで対応。国際共同治験においては、リニカル本社を窓口に位置づけ、各国に医薬品開発事情に精通した人材を配置。日本語ベースで機動的な国際共同試験が可能な開発環境を整えている。10年から20年近くに及ぶ新薬開発プロジェクトの中でも、3年から7年を要するといわれる治験で特に重要とされる患者を対象とする「第II相(フェーズII試験)」「第III相(フェーズIII試験)」のプロセスに特化し、治験の核となる「モニタリング」を「品質管理」「コンサルティング」とともに提供。信頼性の高いデータの収集を行い、迅速、確実な新薬開発の実現を支援している。さらに担当領域も市場からの開発要請の強いがん領域や中枢神経系領域をはじめ難易度の高い領域に特化することで、顧客である製薬会社のニーズに応えている。

*国際共同試験
「国際共同試験」とは、新規の医薬品開発に世界規模で取り組み、早期上市を目指すため、臨床試験を複数の国または地域において同時並行的に行うことをいう。
 
育薬事業
医薬品承認後の臨床研究は、臨床現場における医薬品使用について有効性の検証、安全性の確認、相互作用の検討等を実施するもので、医療の質の向上に寄与するEBM(Evidence Based Medicine)データを創出。近年、臨床研究についてルール整備が進んでおり、従来の医師主導臨床研究に加え、企業主導臨床研究も多く実施される様になってきている。同社は、治験で培った臨床試験のノウハウに加え、最新の規制情報に対応した臨床研究をグローバルで実施することができ、試験の介入研究のみならず、観察研究、データベース研究と各種の臨床研究の受託が可能。今後、製薬会社においては、営業活動の適正化・透明化に伴い、各疾患領域のKOL(Key Opinion Leader)への意見聴取は、MA部(Medical Affairs)のMSL(Medical Science Liaison)が主体として実施することが予測されている。MSLは、KOLエンゲージメント、アドバイスボードの運営、講演会運営等を多種の業務を実施しており、その育成も重要となってきている。同社は、これまでの営業資材作成、ROL(Regional Opinion Leader)支援、臨床研究の手順書作成支援、コンサルティング業務の経験を生かし、各種MSL業務支援をグローバルで実施。
 
創薬支援事業
同社が提供するサービスは、治験のモニタリング業務の受託、新薬の販売支援などにとどまらず、 開発計画の立案や治験計画書作成から発売に至るまでの医薬品開発業務全般に幅広く対応するなど、クライアントである製薬会社のニーズに的確に対応。更に、医薬品開発の初期段階にある、「クスリの種」となるような化合物について、創薬ファンドや助成金などを活用したリスクの少ない開発の提案を行う。
 
【5つの強み】
(1)グローバル規模でワンストップ
同社は日本発の唯一のグローバルCROとして、日本を中心にアジア、欧州、米国の3極でサービスを提供可能であり、同社として20ヶ国程度、パートナーを通じてサービスを提供出来る国を含めると30ヶ国程度においてサービスの提供が可能。また、医薬品開発のプランニングから、モニタリング、データマネジメント、統計解析、メディカル・ライティング、薬事、ファーマコ・ビジランスなどあらゆるサービスにおいて経験豊富なプロフェッショナル・メンバーが顧客ニーズに応え、Local試験はもちろん、マルチナショナル・トライアルまでフルサービス、且つ、ワンストップで提供している。
 
 
(2)創薬支援から臨床開発、臨床研究まで
同社は顧客の真のパートナーとして薬剤の価値最大化に貢献するべく、創薬段階から臨床開発、製造販売後の育薬まで一気通貫で対応出来る体制をとることにより、効率的な新薬開発とライフサイクルマネジメントの延長を可能とし、上市までの期間の短縮TTM)と売上げの早期最大化(TTP)を図っている。
 
 
(3)がん・中枢・免疫にフォーカス
医薬品開発のトレンドは、がん、中枢神経系、免疫領域に集中してきている。同社創業メンバーは免疫領域において豊富な経験を持ち、創業当初より難易度の高い免疫領域等を中心にサービスを提供してきた。その後、日本においては2006年に中枢神経領域、2010年にがん領域へと専門性を拡げていき、現在では難易度の高い、がん、中枢神経系、免疫などアンメット・メディカル・ニーズな領域でのサービスを大きな3本柱として事業を展開している。また、海外子会社においても同じく、がん、中枢神経系、免疫系のサービス実績が多く、同社全体で難易度の高いがん、中枢神経系、免疫系を得意領域としている。
 
 
受注残高は、急性疾患や特定疾患などのその他領域とCNS領域(中枢神経系)、がん領域を中心に拡大傾向。育薬(CMA)の2017年9月末の受注残高は、2017年3月末に比べ減少したものの、今後複数の大型プロジェクトが控えており拡大が期待される。
 
 
 
 
(4)グローバル・コラボレーション
日本発グローバルCROとして、顧客へ世界規模のサービスを提供。高品質(Japan Quality)なサービスご提供する為に、日本に国際事業開発本部を設置し、日本語、英語、母国語を含めたその他言語(韓国語、台湾語、ドイツ語など)が堪能なマルチリンガル・メンバーを大阪本社および東京支社に多数配置し、海外メンバーと適切なコミュニケーションをとっている。日本の顧客とは日本語でのコミュニケーションも可能。海外メンバーもJapan Qualityについて理解を深めており、All LinicalとしてJapan Qualityを提供している。
 
(5)高品質なサービス
同社は顧客へ高品質なサービスを提供すべく、社員に対して量・質ともに充実した教育を実施。その成果として、一般社団法人日本臨床試験学会によるGCPサポート認定試験にて第1回目から高い合格率を維持しており、当学会より高い合格率と質の高い臨床試験の推進に貢献した証として感謝状を授与された。また、GCP適合性調査の経験が豊富にあり、FDA inspectionの経験もある。いずれも適合・問題無しとの評価を受けており、同社の品質については社外からも高い評価を得ている。なお、海外子会社においても、FDAやKFDA 、ANVISAなどからのinspectionの経験があり、日本同様に高い評価を得ている。
 
 
経営戦略
 
(1)CRO事業
CRO事業の重点戦略は、
① がん領域や中枢神経系領域などで実績を積み上げるとともに、リピート受注から独占契約へつなげる
② 早期に国内CRA300名体制を構築し、CRAの高稼働率を維持するとともに、米国・台湾の規模を拡大する
③ グローバル体制構築による国際共同治験のワンストップ受託を拡大するというもの。
 
 
国内は、案件増加に対応するため、質・スピードを確保しつつ人材を積極的に採用し、早期にCRA300名体制を構築する。なお、CRAは18/3期に300名体制となる見込みであるが、マネージャーが約2割を占めている模様。同社は、早期にマネージャーを除く最前線のCRA300名体制の構築を目指している。18/3期は、薬学を中心とした定期採用で確実な増員を確保するとともに、中途採用は競争激化も前年並みの採用を確保する計画。更に、CRAの高稼働率を維持するとともに、がん領域や中枢神経系(CNS)領域などにおける独占契約の拡大を図る。
 
グローバル展開
グローバルでは、確立した日本・アジア、米国、欧州における国際共同治験の受託体制を武器に、今後事業の拡大を加速させる。治験の多国間実施体制の整備の一環として、2013年5月に、LINICAL TAIWAN CO., LTD.(台湾台北市、資本金1千万台湾ドル)、及びLINICAL KOREA CO., LTD.(韓国ソウル特別市、資本金10億ウォン)を設立(いずれも100%出資)。2014年4月には、LINICAL KOREA CO., LTDと買収した韓国のCROであるP-pro. Korea Co., Ltd.との統合を完了した。また、2008年7月に設立したLINICAL USA, INC.は業務拡大を目的として2014年9月にサンディエゴ事務所を設立した。更に、2014年10月29日に欧州でCRO事業を展開しているNuvisan CDD Holding GmbHの全株式を取得し子会社化するための株式譲渡契約を、Nuvisan Pharma Holding GmbH との間で締結し、12月1日付けで完全子会社化が完了、同時に商号をLINICAL Europe GmbHと変更した。これにより日本・アジア、米国、欧州3極による受託体制が確立された。
同社は製薬会社のグローバル戦略をサポートするため、各国に医薬品開発事情に精通した人材を配置し、日本語ベースのコミュニケーションを図れる環境を整備している。特に、がん・中枢神経系など難易度の高い疾病領域の国際共同治験においては、日本のリニカルを窓口に国内で早期開発段階を手がけた後、日本・アジアの拠点での開発に拡大している。後期開発段階を日本・アジア+米国+欧州で手がけて各国での同時上市を目指す戦略。
同社は今後も更なる日亜・米・欧3極における国際共同試験受託体制の強化を推進する方針である。
 
 
 
米国では早急に20名規模まで人員を拡充する予定で、拠点増設を検討している他、積極的なM&Aも検討している。約定済4案件に新規案件を上積するとともに対応する要員を確保する。また、台湾ではCRA20名規模まで拡大。シンガポール子会社を含めた新規案件の獲得を目指す他、中国への進出も検討する。加えて、欧州でも、設立したポーランド子会社を含め、更なる増員と拠点拡大を検討する。その他、韓国でも早期に50名規模まで拡大。更なる高収益体質の確立を目指す。
 
(2)育薬事業
他社が手掛けるMRの派遣サービスとは一線を画し、同社が主体となって業務を進める受託サービス型の育薬事業を志向している。具体的には、特定の疾患領域やエリアで経験豊富なMRを採用し、CRO事業部で蓄積したノウハウを活用する事で専門性の高い業務を受託し差別化を図っていく考えで、現在、臨床研究のサポート業務受託とプロダクトマーケティング(リエゾン)業務受託が2本柱。臨床研究のサポート業務受託は、エビデンス創出のための臨床研究において質の確保が課題となっている。同社では、手順書作成などの体制構築サポートやモニタリング、監査などを実施している。プロダクトマーケティング(リエゾン)業務では、未経験領域の新製品上市に伴う新規医療機関・医師の開拓や製品差別化戦略の提案・実行を行う。13/3期は臨床研究の受託に成功し、セグメント損益が黒字転換し、14/3期以降臨床研究等の新規受注により売上・利益の成長が加速してきた。
今後も旺盛な引き合いに対応すべく、積極的な採用を継続する予定である。
 
 
(3)創薬支援事業(新規事業の育成)
日本の行政当局においては、日本発の革新的な医薬品・医療機器を世界に先駆けて実用化したい、また、韓国・台湾の行政当局においては、国際的な競争力を高め、新医薬品を創出していきたいとのニーズを持っている。また、国内外のバイオベンチャーにおいては、医薬品市場世界第3位の日本で自社製品を開発・販売したいとのニーズが高まっている。同社では、こうした昨今のニーズへの対応を念頭に創薬支援事業の育成を目指している。同社は、臨床開発品だけでなく、より早期段階での支援や大手製薬会社で研究・開発・ライセンスを長年経験したプロフェッショナルが、国内外バイオベンチャーのパートナリングまでの支援を提供することが可能である。また、創薬ファンドへの出資も行う。創薬ファンドからの投資案件の増加は、今後の同社のCRO事業の拡大に繋がるとともに、これまでの経験で同社が培ってきた目利きの力が生かされる。更に、開発計画立案から当局対応までの受託経験が蓄積される。
 
 
具体的には、市場分析(売上予想等)、開発戦略立案と薬事対応(PMDA相談等)、パートナリング(ビジネスモデル提案、ライセンス交渉支援等)などを実施する。現在、内外の会社との間で、契約締結済5社、メディカルライティング契約締結済1社と事業が順調に立ち上がってきている。
 
 
 
2018年3月期第2四半期決算
 
 
前年同期比7.2%の増収、同21.8%の経常減益
売上高は前年同期比7.2%増の43億19百万円、経常利益は同21.8%減の8億38百万円となった。
同社が属するCRO業界とCSO業界は、医薬品開発・販売のアウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景として、市場規模は緩やかに拡大している。
こうした中、売上面では、日本、アジア、米国、欧州におけるグローバル受託体制の構築を強力に推し進めたことが、国際共同試験の受託件数増加に結び付きCRO事業を中心に増加した。育薬事業においても新薬販売後の臨床研究を中心とした案件の受託により増加した。
利益面では、日本、アジア、欧州で開始予定であった大型国際共同試験の開始が遅れていること等により、売上の増加が当初の想定を下回ったため、受注計画に基づく先行的な人材投資による人件費の増加や東京オフィス移転に伴う費用等を吸収しきれず、減益となった。育薬事業は新薬販売後の臨床研究を中心とした案件の受託により人員の稼働率が上昇し増益となった。営業利益は8億39百万円と同25.1%減少した。売上総利益率は39.1%と前年同期比7.3ポイント低下、売上高対販管費率は19.7%と同1.1ポイント上昇。営業外損益で為替差益5百万円が発生したことなどから経常利益は同21.8%の減少の8億38百万円と営業利益に比べ減益幅が小さくなった。その他、特別損益の計上はなく、親会社株主に帰属する四半期期純利益は5億37百万円と同28.2%減少した。
 
 
CRO事業は増収減益となったものの、育薬事業は大幅な増収増益となった。
 
 
日本は、既存案件の工数追加変更契約を中心に増収。新卒・中途採用、既存要員の昇格昇給等により原価人件費等が増加した。米国は、増員に伴い人件費が増加した。欧州と台湾は、大型国際共同試験開始の遅れが影響した。韓国は、受注が好調に推移した。
 
 
CRO事業、育薬事業共に、1年から3年程度の受託契約期間において、契約に従い毎月売上が発生する。受注残高は、既に契約締結済みの受託業務の受注金額の残高である。このため、今後1年から3年程度の期間で発生する売上高を示しており、同社グループの今後の業績予想の根拠となる指標である。

2017年11月13日時点の受注残高は、前期末(2017年3月)に比べ、3.8%増加。これは、既存の委受託契約を順調に消化し受注残高の金額が売上高として計上されたものの、これを上回る受託案件の新規契約があったもの。アウトソーシング化及び国際共同治験の増加を背景に足元の受注環境は良好であり、営業活動の成果により既存・新規顧客からの受託案件の打診が多いことから、同社ではCRA(臨床開発モニター)の増員などにより、受託体制の強化を図る計画。
 
 
17年9月末の総資産は前期末比1億88百万円増の84億88百万円。資産サイドは売掛金、差入保証金等が減少した一方、現預金、立替金等が増加した。負債純資産サイドは、未払金、長期借入金等が減少した一方、利益剰余金等が増加した。17年9月末ののれんは、11億10百万円と同59百万円増加。また、17年9月末の自己資本比率は52.8%と前期末比3.4ポイント上昇した。
 
 
CFの面から見ると、前年同期との比較で、税金等調整前四半期純利益や前受金の減少などにより営業CFのプラスが縮小した。差入保証金の回収による収入の増加などにより投資CFがプラスへ転じたもののフリーCFのプラス額は縮小した。また、リース債務の返済による支出の増加などにより、財務CFのマイナスが拡大した。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
前期比14.0%の増収、同12.8%の経常増益予想。
18/3期の会社計画は、売上高が前期比14.0%増の95億28百万円、経常利益が同12.8%増の23億42百万円の期初予想から修正なし。
大手製薬会社は、大型製品の特許切れの影響を補完するため、アウトソーシングによる経営の合理化・効率化並びに有望な医薬品開発品目の確保のため、海外ベンチャー企業の買収などを加速させており、医薬品開発のための治験受託件数は増加するものと予想される。特に、がん領域及び中枢神経系領域においては、いまだに有効な治療法が確立していない疾病があるため、その治療薬の開発が強く望まれており、こうしたニーズに対応するための医薬品開発は増加傾向となっている。また、使用方法の難しい新薬を中心に適正使用を促進するための企業主導型臨床研究は拡大傾向にあり、臨床研究法の成立によりアウトソーシングはますます加速するものと期待される。
売上面では、CRO事業において、開始の遅れている大型国際共同試験のために先行的に増加させた人材を他の受注案件に振り向け上期の落ち込みをカバーする計画。利益面でも、韓国、欧州子会社のM&Aに伴うのれん償却の影響が続くとともに、米国子会社等で先行投資が発生するものの、海外子会社の経営基盤を強化し高収益体質を確立することにより、利益の拡大を目指す。また、育薬事業においても、新薬発売後の企業主導型臨床研究を中心に営業活動を強化し、CRO事業で得たノウハウを活かした専門性の高い領域での新規案件の受託を拡大する。
営業利益は前期比11.1%増の23億65百万円の予想。国内の増員と米国の拡大など先行投資負担の増加を織り込み、売上高営業利益率は24.8%と前期比0.7%ポイント低下する計画となっている。その他、営業外損益と特別損益の大きな計上の予定はない。
配当も1株当たり11円の予想と前期比1円の増配の期初の予定を据え置き。
 
 
18/3期第2四半期連結累計期間の営業利益は、上期(第2四半期連結累計期間)の会社計画に対して、約35%の進捗率と、遅れ気味となっている。CRO事業において、開始の遅れている大型国際共同試験のために先行的に増加させた人材を他の受注案件に振り向け上期の落ち込みをカバーする計画。
 
 
今後の注目点
同社18/3期第2四半期連結累計期間の営業利益は、前年同期比25.1%の減益と厳しい内容となった。これは、日本、アジア、欧州で開始予定であった大型国際共同試験の開始が遅れていること等により、売上の増加が当初の想定を下回ったため、受注計画に基づく先行的な人材投資による人件費の増加や東京オフィス移転に伴う費用等を吸収しきれなかったものである。同社は、下期においてこの遅れている大型国際共同試験に対応するために先行的に増加させた人材を他の受注案件に振り向けることで、上期の落ち込みを挽回することを見込んでいる。しかし、上期の営業利益は、通期会社計画の営業利益に対して約35%の進捗率と通期会社計画の達成に向けて、ハードルは低くない。旺盛な受注の獲得と、人員の稼働率向上を通じて、どこまで挽回できるのか、第3四半期の業績動向が注目される。一方、育薬(CMA)事業は、業績が順調に拡大している。育薬事業の2017年9月末の受注残高は、2017年3月末に比べ一時的に減少したものの、新薬発売後の企業主導型臨床研究を中心に今後複数の大型プロジェクトが控えている模様である。今後の育薬事業における新規案件の受託動向についても期待を込めて注目したい。
また、今後増加が予想される国際共同試験において大型の受託を獲得するためには、米国拠点の早期の拡充が不可欠である。米国拠点の事業基盤の拡充は、受注プロジェクトの大型化につながるため、同社の成長性を一気に加速させる可能性を秘めている。こうした環境下、早期に事業基盤を手に入れるため欧州同様にM&Aを実施することが予想される。その最有力候補であろう米国におけるM&Aの動きにも引き続き注目していきたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
コーポレート・ガバナンス・コード適用以降のコーポレート・ガバナンス報告書直近の提出日、2017年7月6日。
<基本的な考え方>
当社は、その有している医薬品開発の技術をもって国内大手製薬会社のパートナーとして医薬品開発に貢献し、医薬品の分野から社会全体の期待に応えてまいります。さらに、企業価値を高めていくためには、健全性と透明性が確保された迅速な意思決定を可能にする体制の整備が必要であると考えております。
そのため、今後は最重要課題であるコンプライアンスの徹底を含む内部統制の強化を図っていく所存です。

<コーポレート・ガバナンス・コード各原則の実施について>
実施をしないコード:15項目、そのおもな原則と理由
 
 
 
<その他>
同社ではこれまで社外取締役を選任していなかったが、29年6月に開催した第12回定時株主総会でアステラス製薬株式会社社長をはじめ、旧藤沢薬品工業株式会社時代から国内外で重職を歴任されてきた、野木森 雅郁氏を社外取締役として選任した。
CGCの適用が開始されてから3年目となるが、これまでエクスプレインで対応してきた事項についても、コンプライにした方が良いのかの要否を検討した結果であり、同社では形式だけではなく、活きたCGCの運用をしていることが確認できた。