ブリッジレポート
(8130) 株式会社サンゲツ

プライム

ブリッジレポート:(8130)サンゲツ vol.13

(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ 企業HP
安田 正介 社長
安田 正介 社長

【ブリッジレポート vol.13】2018年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「商品力、営業力共に着実に強化が進み、過去数年および同業他社を上回る上期決算となった。Korosealの業績予想を修正したことなどから利益の・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年12月19日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社サンゲツ
社長
安田 正介
所在地
名古屋市西区幅下1-4-1
決算期
3月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 135,640 7,572 8,368 6,570
2016年3月 133,972 9,112 9,463 6,393
2015年3月 132,050 8,031 8,506 4,402
2014年3月 131,978 8,952 9,475 5,459
2013年3月 123,150 8,020 8,393 4,806
2012年3月 118,518 7,095 7,180 4,151
株式情報(12/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,051円 65,451,737株 134,241百万円 6.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
55.00円 2.7% 67.93円 30.2倍 1,623.05円 1.3倍
※株価は12/11終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期末実績。
 
株式会社サンゲツの2018年3月期第2四半期決算概要などをご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
壁紙、床材、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。グループ企業に、エクステリア商品の専門卸「株式会社サングリーン」、照明器具の企画、設計、製造、販売を行う「山田照明株式会社」、中国での事業展開の拠点「山月堂(上海)装飾有限公司」、米国の非住宅向けを中心とした壁装材製造販売会社「Koroseal Interior Products Holdings,Inc.」、施工能力の強化を通じて更なる受注獲得を目指す「フェアトーン株式会社」、カーテン専門の販売会社「株式会社サンゲツヴォーヌ」の6社を有する。
 
【沿革】
1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。
 
【企業理念】
新たなステージに臨む同社では、変革のチャレンジを進める上で、2016年4月、新ブランド理念を含めた企業理念を再構築した。

以下の、「社是」、「企業使命」、「サンゲツ三則」に新しい「ブランド理念」を合わせ、企業理念としている。

<社是>
誠実

<企業使命>
インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与します。

<サンゲツ三則>
創造的デザイン・信頼される品質・適正な市場価格

<ブランド理念>
ブランドステートメント「Joy of Design」を掲げ、ブランドパーパスとして「私たちは、新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」と謳っている。

インテリア商品の作り手と使い手、同社に関連する全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合うことを目指す考えだ。
 
【市場環境】
◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。
 
 
一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数は低水準で推移しているのに対し、同社売上高は過去最高を連続して更新している。
 
 
これは、民間住宅以外に、非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。
 
 
国土交通省発表の「建設投資見通し」によれば、民間住宅建築投資、民間非住宅建築投資ともにリーマンショック後は回復途上にあるが、民間住宅建築通しが未だ2000年レベルの8割の水準であるのに対し、民間非住宅建築投資は同レベルを超えている。

一方、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2017年10月30日発表)によれば、民間非住宅建設投資の対前年度伸び率は、2014年度9.3%増、2015年度(見込み)5.7%増、2016年度(見込み)4.9%増と堅調な推移であったが、以降、2017年度(見通し)1.2%増、2018年度(見通し)0.5%減とスローダウンする見通しとなっている。
着工床面積も、事務所が16年度10.3%増、17年度(見通し)13.7%増と好調なものの、18年度(見通し)は0.0%と急ブレーキがかかり、店舗も16年度7.6%減、17年度(見通し)10.2%減、18年度(見通し)2.0%減と低調に推移する見通しである。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、民間非住宅市場は新設、リニューアルも含め需要は堅調である一方、人手不足によるボトルネックが生じているとの見方もあり、不透明感が残っている。
 
◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の8社が挙げられる。
 
【事業内容】
壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。
 
 
 
商品数は約12,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約4,200点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で30~40%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。
 
◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、53か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として9か所のショールームを有している。
 
 
最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。

そのため、同社では見本帳、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、法人営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約450名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。
 
◎物流体制
全国13か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.14%(約70点程度)となっている。当該地区での欠品であり、周辺の物流センターから即座にカバーする事で、納期待ちを依頼する事はレアケースである。内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。仕入先は約100社と広範囲に亘っている。
 
②「エクステリア事業」
(2017年3月期 売上高 14,778百万円、営業利益 402百万円)
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。
 
③「照明事業」
(2017年3月期 売上高 4,205百万円、営業利益 23百万円)
2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。
 
④「海外事業」
中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」の事業戦略において、海外を重点注力市場と位置付けて連結経営管理することとしたため、2018年3月期第1四半期より新たに設けられたセグメント。
2016年11月に買収したKoroseal Interior Products Holdings,Inc.および2016年4月に設立した山月堂(上海)装飾有限公司の2社で構成される。
 
 
新中期経営計画では2019年度(2020年3月期)の定量目標をROE 8~10%としている。
自己資本の削減に加え、収益性向上のための取り組みが欠かせない。
 
【特徴と強み】
①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。また、商品数12,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。
 
②「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。昭和40年に初のオリジナル壁紙を発売。
昭和48年に制定以降、現在も守り続けられているサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約25名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。
商品ラインアップは他社には例を見ない約12,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する約30種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。
 
 
「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約450名で、業界最大である。
全国61拠点で前述のような、提案営業を展開している。9か所のショールームには約45名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが約40名おり、その提案力も業界最高水準となっている。
 
 
「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。
ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
通常、壁紙は1ロール50m。30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。
 
 
 
2018年3月期第2四半期決算概要
 
 
増収も販管費増で減益。期初計画は上回る。
売上高は前年同期比16.2%増の755億円。インテリア事業、エクステリア事業が増収だったほか、前期買収したKoroseal社、子会社化したフェアトーン社の売上が寄与した。
売上総利益は同20.3%増と増収率を上回り粗利率も1.1%上昇したが、上記2社の販管費に加え、物流拠点整備、基幹システムの再構築準備、人件費および物流コストの上昇、新規連結先ののれん償却増などで、販管費は同29.7%増となり営業利益は同21.5%の減益となった。
売上、利益ともに期初計画は上回った。

構造改革や機能強化のための投資により減益とはなったが商品開発力、営業力、物流機能など事業遂行能力は着実に向上したと会社側は考えている。
また、海外事業の展開に伴い、日・米・中の商品開発や調達面での協業が進展している。
 
 
①インテリア事業
増収、減益だった。

<壁装材>
増収。2017年2月に発刊した不燃認定壁紙見本帳「FAITH」において、非住宅分野への営業強化策が奏功し、ホテル・宿泊施設などで採用が進んだ。また、「サンゲツ壁紙デザインアワード」を開催したところ多数の応募があり、8月には受賞作品を発表するなど、「Joy of Design」を実現するブランディング活動にも注力した。

<床材>
増収。2017年6月に「カーペット総合」、9月には「フロアタイル」見本帳を発刊し、展示会などを通じた設計事務所やコーディネーターへの積極的なPR活動を展開した。また、超高密度なパイル構造を持つ床材「フロテックス」の繊維床材の歩行性・安全性、塩ビ床材のメンテナンス性を兼ね備える機能が高く評価され、2017年度のグッドデザイン賞を受賞。新商品の開発・拡充に努めた。

<ファブリック>
減収。2017年7月に素材とクオリティにこだわった総合見本帳「STRINGS」とワンプライスによる使いやすさを追求した「Simple Order」の2冊を発刊し、全国30ヶ所で新作発表会を開催。市場への浸透に努めた。
コントラクト施設向けカーテンと、専任営業体制による販売強化を進めた椅子生地は堅調となった。

<その他>
増収。施工体制を担うフェアトーン株式会社の業績、施工代などを含んでいる。
 
②エクステリア事業
増収、増益だった。
他社との競争が激化するなか、営業管理体制の再構築と施工力強化を継続した。「快適さ」、「便利さ」への需要が高まるなか、門まわり全体をデザインするファサードエクステリアや、宅配ボックスなどのアイテムが売上を牽引。
関東地区での大型物件獲得や既存営業先の取引規模拡大、施工費の売上伸長など堅調だった。
 
③照明事業
減収、損失拡大。
重点戦略市場であるコントラクト市場において、大手設計事務所との商品の共同開発や道路照明の拡販など、幅広い営業活動に努めたが、価格競争が激化し苦戦した。
 
④海外事業
北米市場を担うKoroseal社においては、和紙など日本の伝統的な風合いを持つ商品や、粘着剤付化粧フィルム「リアテック」の販売に着手するなど、新たな市場ニーズへの営業活動を行った。買収前である前年と比べて売上高は5.1%増となり、北米における営業体制の拡充・強化は進んだが、増収率は低調だった。
中国市場を担う山月堂においては、今年新たに発刊した現地専用の壁紙見本帳が好評を得て医療関連施設等への採用が進むなど、着実に市場開拓を進めている。
 
 
現預金の減少などで流動資産は前期末に比べ79億円減少。固定資産は投資有価証券の増加で同12億円増加した結果、資産合計は同66億円減少の1,570億円となった。流動負債は同31億円減少。長期借入金の減少で固定負債は7億円減少し、負債合計は同38億円減少の509億円となった。利益剰余金の減少、自己株式の増加で純資産は同27億円減少し、1,061億円となった。自己資本比率は前期末に比べ1.0%上昇し、67.5%となった。
 
 
仕入債務の減少などで営業CFのプラス幅は縮小した一方、有価証券の取得による支出が無くなったほか有形固定資産の取得による支出が減少し投資CFのマイナス幅は縮小し、フリーCFは改善。
自己株式の取得による支出の増加で財務CFのマイナス幅は拡大した。
キャッシュポジションは低下。
預入期間が3カ月を超える定期預金や流動性の高い投資有価証券等を含めた総計金額は2017年3月末の297億円から9月末時点では243億円まで低下。安定性を考えると、250~300億円程度が適正であると位置づけており、
下限に近いところまで低下したと考えている。
 
 
見本帳発刊が集中したため新旧在庫が増加し、棚卸資産回転率が上昇したことに加え、在庫の圧縮を目指して仕入れの削減をしたため仕入債務回転期間も低下したため、前年同期末に比べCCCは8.4日上昇した。
 
(4)主な取り組み
1.物流施設の新設・統廃合
2017年5月に愛知県稲沢市の中部ロジスティクスセンター(LC)IIの稼働を開始。隣接する中部LCⅠを合わせた2センターを拠点とする配送体制がスタートした。
8月からは、主要商品の1つであるフロアタイル・リアテックを、これまでメーカー倉庫で保管してものを、中部LCIIIに移管した。
10月には、メーカーから一旦品川の倉庫に入れ、そこからさらに茨城県行方市の縫製工場に持っていったカーテン生地に関しては、直接縫製工場に入れるという物流の効率化を進めている。
最大の課題である首都圏の物流体制については、年末年始には、品川と勝島の2カ所に分かれている拠点を、平和島の新たな物流施設に統合する予定。

2.商品開発
壁装材「2017-2019ファイン」、床材「2017-2019ロールカーペット」、カーテン「STRINGS 2017-2019」など、8つの見本帳を発刊した。また、壁紙や床材で2017年のグッドデザイン賞を受賞した。

3.品質管理の強化
稲沢市の中部LCIIに商品試験室を設けた。さまざまな試験機器を導入するとともにオペレーター4名を投入して、商品の受入検査やクレームの再現と対策品の効果把握や、新商品をメーカーから持ち込まれた場合の安定性や継続性といった、新規技術の評価を行える体制を整えた。
ファブレスメーカーとして必要十分な品質管理体制が稼働を開始した。

4.営業体制の見直し
バリューチェーン各層に対する戦略的な営業体制の構築を進めている。
市場別対応力の強化として、ハウジング営業部を新設し、ハウスメーカーやビルダーに向けた営業体制の強化を図っている。
法人営業部内に比較的利益率の高い粘着剤付化粧フィルム「リアテック」を取り扱う東日本リアテック課、西日本リアテック課を新設したほか、同様に椅子生地を扱う椅子生地事業室スタッフを増員するなど専門知識や営業力が必要な高付加価値商品の販売体制を強化した。

5.海外事業
(Koroseal社)
同社との事業のシナジーを拡大するために、米国での「リアテック」の販売体制を整えるべく、米国向けのリアテック見本帳7,000冊を現地で発刊した。利益面で高い効果が期待できる。
また、米国でも注目が集まっている織物・箔・紙布など日本古来の壁紙の販売を開始した。
一方で、現在壁紙専門であるKoroseal社において床材事業への進出を視野に入れ、準備を進めている。

(山月堂)
8名体制へスタッフを拡充し営業体制を整備した。
また、機能性商品を収録した現地専用の見本帳を発刊したところ医療施設等への採用も進み、中国での販売金額は着実に増加している。
日米中での商品や仕入の提携をスタートさせることができた。

6.自己株式の取得
第2四半期間中、169万株、33億円の自己株式を取得するとともに、取得した株式は早急に消却をする方針に従い107万株を消却した。
現在の発行済み株式総数6,700万株4年前より約1,300万株(約16%)減少している。
 
 
2018年3月期業績見通し
 
 
利益を下方修正。
利益に関し通期業績予想を下方修正した。
売上高は前期比15.0%増の1,560億円。国内外ともほぼ期初計画通りとみている。新築住宅着工は微減を見込むが、非住宅分野での壁装、床材の営業活動を強化し、見本帳の新企画や新商品投入効果による増収を目指す。200億円の増収分のうちインテリア事業に関してはフェアトーン株式会社の連結開始を含め35億円強、海外事業に関してはKoroseal社の損益連結開始と増収により170億円を見込んでいる。
営業利益は前期比19.4%減の61億円。期初計画を15億円、19.7%下回る。
インテリア事業およびKoroseal社の粗利率を見直した。インテリア事業の販管費は期初計画比2.4億円減少するが、海外事業の販管費は同2.8億円増加する。
配当予想に変更は無い。年間合計55円/株を予定。予想配当性向は81.0%。
 
 
 
安田社長へのインタビュー
 
安田社長に、足元の状況、Koroseal社の現況、CSRへの取り組みなどを伺った。
 
Q:「足元の状況をどのように評価していますか?」
A:「商品開発力の強化、営業体制の整備は着実に功を奏している。」
現在、商品力および営業力の強化に取り組んでいる。
商品開発については、前期後半から今上期にかけて、「高級感がありながらリーズナブルな価格設定」、「ワンプライス」といった従来の価格体系を変更した新たな見本帳や、新シリーズである非住宅向け壁紙の見本帳などラインアップを更に充実させた。
加えて、チョークで自由に描き消しができる黒板のような壁紙「Black board」と、カーペットと硬質床材の特徴を併せ持つ新たな繊維系床材「FLOTEX」が2017年グッドデザインを受賞。付加価値の向上、ブランド力の向上にもつながる商品を開発することもできた。
また営業体制の整備も進んでいる。注力中の非住宅市場開拓を一層進めるために、法人営業部内でゼネコン、建築設計事務所など顧客対象ごとの部署を設けたほか、高収益壁装材「リアテック」を扱うリアテック課の新設、椅子生地事業室の営業スタッフ増員なども行った。

こうした施策は着実に数字に表れている。
消費増税の駆け込み需要があった2013年度以降の当社単体(既存インテリア事業)増収率は、2015年3月期0.2%増、16年3月期1.6%増、17年3月期1.0%増と低調に推移してきたが、今上期は2.5%増と堅調で、概ね同業他社を上回り、シェアは向上している。商品開発力の強化、営業体制の整備は着実に功を奏しているといえよう。
 
 
Q:「M&AしたKorosealとのシナジー効果発現に向けた取り組みはいかがですか?」
A:「コミュニケーションは一段と深まり、事業の詳細が分かり始めるにつれ当社から様々な提案も行うようになっている。シナジーも徐々にではあるが出始めている。」
隔月で開催されるKorosealの役員会に出席するとともに、各部門の責任者を交えたテレビ会議を適宜開催し、コミュニケーションは一段と深まっている。
当初は報告を受けるのみであったが、事業の詳細が分かり始めるにつれて議論に参加し当社から様々な提案も行うようになっている。
商品面では、Korosealの担当者が来日し、商品を具体的に見て、箔や紙布など日本的な製品の販売を開始するなど、シナジーも徐々にではあるが出始めている。
また、来年初にはグループ広報誌を発刊する。日本・米国・中国の3拠点体制が出来上がったのに合わせ、年2回、日本語・英語対応の広報誌を発刊して様々なメッセージを発信し、グループ内の理解を促進する。
 
Q:「CSRへの取り組みについてお話しください。」
A:「サプライチェーン全体のCSR活動が重要課題となるなか『サンゲツお取引先さま向けCSR ガイドライン』を作成した。サンゲツらしいCSR活動にも力を入れている。」
持続的成長が可能な企業を目指して、中期経営計画においてもESGやCSRについて方針を掲げているが、当社にとどまらずサプライチェーン全体のCSR活動が重要課題となっており、取引先との一層の協力、連携が不可欠だ。
そこで、2017年10月、取引先へのお願いを明文化したものとして、「サンゲツお取引先さま向けCSR ガイドライン」を作成した。
このガイドラインは、「A.法令・社会規範の遵守と公正・公平な企業活動」、「B.健全な事業運営の推進」、「C.優れた製品・サービスの提供」、「D.地球環境への配慮」、「E.社会貢献の積極的推進と反社会的勢力の排除」、「F.人権・労働安全衛生への配慮」、「G.情報開示とコミュニケーション促進」、「H.秘密保持と情報セキュリティ遵守状況の確認・モニタリング」からなるもので、国連グローバルコンパクト、GRI ガイドラインなどを参考とした。

またCSR、ESGに関しては「サンゲツらしさ」が重要なポイントだと考えている。
様々な活動を行っているが、その中でも「児童福祉施設の改装支援」はまさに当社らしいCSR活動と言えるだろう。
これは、当社が取り扱うインテリア資材(壁紙・床材・カーテン・椅子生地)やその施工技術を活かして、快適な住空間をより多くの方に楽しんでいただけるよう、全国の児童福祉施設の内装改装を支援するというものだ。
全国児童養護施設協議会と連携するなど、2017年3月までに全国で21件の内装改装工事を実施した。
参加した社員たちは養護施設の子供たちに喜んでもらえるのが嬉しいのはもちろんのこと、普段は施工現場に足を運ぶことのない非営業社員にとっても当社の仕事をより深く理解することができる機会となっている。
 
 
 
今後の注目点
商品力、営業力共に着実に強化が進み、過去数年および同業他社を上回る上期決算となった。Korosealの業績予想を修正したことなどから利益の通期予想は下方修正となったが、非住宅市場需要を確実に取り込んでいる。
ただ、株価は引き続き市場および同業他社に対しても低調なパフォーマンスとなっている。第3四半期、第4四半期において売上、利益をどれだけ上積みできるかを注目したい。
 
 
 
 
<参考1:中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」概要>
 
◎ビジョン
「社是:誠実」、「ブランド理念:Joy of Design」のもと、中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」においては、「多様な商品と機能と高い専門性を持ち、国内外で強固な市場を持つ企業グループ構築をする。」ことを目指していく。

PはPersonal。専門性を持ったプロ人材となる。社外との強い人的関係を結ぶ。
LはLocal。各地域での強固な市場ポジションを確立する。
GはGlobal。商品・デザインのグローバル化。
 
 
前中計に引き続き、全てのステークホルダーとの共調を志向しながら資本効率性の向上に注力する。
売上高目標の内訳は、以下の通り。
 
 
◎テーマ
基本方針として「、内装材事業(企画・調達・物流・販売)の地理的拡大、機能強化」を掲げ、以下の5つの基本施策を推進する。
 
(1)成長の為の事業戦略
①安定的かつ基礎的収益源である日本市場において、バリューチェーンでの機能強化・取組領域の拡大により収益の安定的成長を実現
「国内外有力サプライヤーとのアライアンスを通じた材料・原料を含めた商品開発・調達」、「インテリアコーディネーション提案・施工力の強化」、「代理店との連携・協業強化」、「社内営業体制の見直し」などを進める。
 
②成長力のある海外市場での活動を強化、地理的な展開を拡大するとともに商品面・機能面での拡充を実行
北米(米国・カナダ)、アジア(中国・東南アジア)を重点注力市場と位置付け、各市場でのローカルな物流・営業体制を拡充・強化する。
 
③デザインのグローバル化、製造メーカーのグローバル化に呼応し、グローバルな商品の企画・調達体制を構築
日本・米国・中国のローカル拠点間の連携を深め、「海外有力メーカーとの国内外での連携」や「ヨーロッパデザイン・和のデザインの共同展開や商品の共同マーケティング」に取り組む。
 
④地域での事業を担う関係会社・機能を担う関係会社・専門市場を担う関係会社を統合的に経営し、トータルシナジーを生む為の連結経営体制を強化
事業シナジーの最大化や収益管理体制の明確化のために主管部制度を導入するほか、管理部門による横断的なチェック・サポート体制を構築する。
連結経営課を新設し、全体管理や牽制機能を持たせる。
加えて、実効性を上げるために定期的なモニタリングや対話制度も導入する。
 
⑤次期中期経営計画を睨み業態の転換の試行を重ねる。
現在のグループ各社の経営資源や特長をより一層活用してシナジーを追求するために、業態転換の試行・検討を進める。
 
(2)人的資源の強化
真のプロフェッショナル育成のために、グループ各社および本体各組織において、①プロ人材の育成、②能力主義の徹底、③ダイバーシティの推進、④働き方改革、⑤健康経営の推進に取り組む。
 
(3)収益管理体制の強化
①販売管理費の削減と管理の徹底
Chief Cost Controllerを任命する。販管費管理手法を整備する。サンゲツ単体では総人員を縮小する。
 
②グループ各社へのCCC管理の導入
連結ベースでのデュポン分析によるROEおよびCCCの目標を設定し、進捗をフォローする。
 
③サンゲツ各事業部・各支社での経営管理指標の明確化と進捗管理
各支社社員数ベースでの売上・総利益目標を設定する。
 
(4)ESG/CSR方針
①E:環境
☆サンゲツグループの事業全体の環境負荷を把握し、地球温暖化防止や持続可能な資源循環に向けての体制を構築する。
・CO2ゼロエミッションに向けた計画の立案など。
 
②S:社会
☆グループ各社の多様な従業員の活躍を支援するとともに社会的弱者の就労支援
・女性管理職比率15%以上を達成する。(17年3月期実績 10.6%)
・障がい者雇用率目標3%実現(現在2.3%)、など

☆サプライチェーンにおける社会的責任の推進

☆社員が主体的となった社会貢献活動の拡大
・児童養護福祉施設の内装工事支援(目標 20件以上/年)
 
③G:ガバナンス
☆コーポレートガバナンスの透明性の維持と向上、コンプライアンスの徹底
・株主、投資家、従業員、取引先などあらゆるステークホルダーとのコミュニケーション向上
 
(5)資本政策
①資本効率向上に向けた財務方針
資本市場の状況を鑑みつつ、引き続き自己株式取得と安定的増配を行い自己資本を1,050~1,000億円への削減を目指す。(17年3月期 1,088億円)
 
②中期経営計画期間中の株主還元政策
・3年間トータルの連結総還元性向は100%超とする。
・長期安定的な増配の基本方針に基づき、安定的増配を継続する。
・株式市場の状況に応じて機動的に自己株式を取得する。

以下のような資金調達及び資金配分を計画している。
 
 
 
<参考2:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年7月5日

<基本的な考え方>
当社は、「誠実」を社是とし、企業価値の向上を図るため全てのステークホルダーとの良好な関係を築き、長期安定的に発展していくことを目指しています。
その実現のため、経営の透明性、迅速性、効率性を基盤としたコーポレートガバナンスの強化が重要な経営課題であると認識しています。
当社は、取締役会における監査・監督機能を強化することと、社外取締役比率を高めることで株主の視点を踏まえた議論が活発化することをねらいとして2015年6月に、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しています。
このガバナンス体制のもと、更なる企業価値の向上に努めていきたいと考えています。

<実施しない主な原則とその理由>
同社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施している。