ブリッジレポート
(4709) 株式会社IDホールディングス

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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.59

(4709:東証1部) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.59】2018年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「同社の2018/3期第2四半期累計期間は、売上高が前年同期比1.5%増加したものの、営業利益が同40.7%減少するなど残念な結果となった。これは・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年12月12日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区 五番町 12-1 番町会館
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 21,554 1,105 1,133 654
2016年3月 20,082 970 964 548
2015年3月 18,868 966 998 508
2014年3月 17,578 735 765 372
2013年3月 16,446 427 448 -490
2012年3月 16,137 629 659 365
2011年3月 16,450 839 892 447
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
株式情報(12/6現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,331円 10,948,011株 14,571百万円 9.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
40.00円 3.0% 50.33円 26.4倍 666.68円 2.0倍
※株価は12/6終値。発行済株式数は前期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2018年3月期第2四半期決算概要等についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社。システム運営管理とソフトウエア開発・保守を二本柱とし、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理等の複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing(BOO)戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。尚、2013年12月17日、JASDAQから東証2部に市場変更。2014年9月8日、東証1部に上場した。
 
【事業セグメント】
事業は、システム運営管理、ソフトウエア開発・保守、及びその他に分かれ、各事業の概要と売上構成比は次の通り。
 
システム運営管理    (2018/3期第2四半期累計期間売上構成比58.6%)
1,200名規模の技術者を擁する専門部隊が、ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。金融機関をはじめ、情報、通信、製造など、さまざまな業種に対応し、長年にわたる顧客からの高い信頼を獲得している。
 
ソフトウエア開発・保守 (2018/3期第2四半期累計期間売上構成比37.2%)
500名を超える技術者が、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。グループ内にオフショア(海外子会社に委託開発)、ニアショア(地方事業所での開発)体制を構築しており、多数の高度な専門技術者が高品質なサービスを実現し、金融機関、エネルギー、運輸をはじめとする幅広い分野の顧客へ、多くの開発実績を築いている。
 
その他         (2018/3期第2四半期累計期間売上構成比4.2%)
BPO、セキュリティ、コンサルティングなどを展開している。海外の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。
 
 
また、顧客別の2018/3期第2四半期累計期間の売上構成比は、メガバンク、有力地銀、生損保、農林系等の金融機関が51.9%、SIer、情報通信機器ベンダー、或いは通信キャリア系情報サービス大手等の情報・通信・サービスが31.2%、製造、輸送、公共団体、エネルギー等のその他が16.9%。
 
 
その他、契約形態別の2018/3期第2四半期累計期間の売上構成比は、金融機関、情報・通信・サービス、その他(製造、輸送、公共団体、エネルギー等)の直接契約が75.4%、大手ベンダーの戦略パートナーが24.6%と直接契約の比率が高い。
 
【IDグループ】
現在の国内外の連結子会社は6社。このうち国内(2社)は、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド(出資比率85.9%)、障がい者雇用を促進するための子会社愛ファクトリー(株)(同100%)。一方、海外(4社)は、中国でソフトウエア開発、システム運営管理等を手掛ける艾迪系統開発(武漢)有限公司(同100%、ID武漢)、シンガポールでシステム運用コンサルティングやセキュリティサービス等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT SINGAPORE PTE. LTD.(同100%、IDシンガポール)、及びアメリカで人材採用・育成、現地市場調査、情報収集等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC. (同100%、IDアメリカ)。このほか、2016年5月には、ミャンマーでITトレーニングアカデミーの運営等を行うIDM Information Development MYANMAR Co., Ltd. (ID83.9%、IDシンガポール出資比率16.1%)を子会社化。同月、欧州におけるパートナー候補(資本提携、業務提携先)の調査や、金融機関の運用管理ビジネスに関わる情報収集、有望なコンテンツの発掘を目的として、アムステルダムに駐在員事務所を設立した。
 
 
【IDグループのサービスの特徴 - i-Bos24®
 (ID's Business Operations-Outsourcing Service 24)-】
同社は、コンサルティングからソフトウェア開発、システム運営管理、クラウド・セキュリティ、BPOまで、トータルなITアウトソーシングサービス「i-Bos24®」を提供している。
 
 
 
内閣府が11月15日に発表した17年7-9月の国内総生産(GDP、季節調整済み)1次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%増(年率換算で1.4%増)となった。7四半期連続のプラス成長を維持しており、内閣府は「緩やかな回復基調が続いている」との景気認識を維持している。また、情報サービス産業との関連性が深い民間企業設備(実質)も前期比+0.2%と、17年4-6月の+0.5%を下回ったものの4四半期連続のプラスとなり回復基調を維持している。
更に、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(17年11月16日発表。9月分確報値)によると、9月の情報サービス産業売上高、受注ソフトウエア売上高、システム等管理運営受託売上高、ともに回復傾向が継続している。
 
【中期経営計画「I-vision50」】
1.概要
同社グループでは、2016年4月に策定した中期経営計画「I-vision 50」(2017年3月期~2019年3月期)のもと、「より高い品質のサービスをより早くお客さまに」を経営ビジョンに掲げ、「2019年3月期 売上高240億円、営業利益16.8億円」の達成に向けて、各種施策に取り組んでいる。
「I-vision 50」は、3つの基本方針(「徹底した業務プロセスの改革(BPR)」「新たな成長分野の構築」「グループのガバナンス強化」)と、7つの重点施策(①構造改革、②働き方改革、③新技術の利活用推進、④ダイバーシティの推進、⑤グローバルの推進、⑥連結経営のガバナンス強化、⑦BOO戦略の推進) から成り、向上した収益を社員の賃金増に繋げることで、より高い業績目標へチャレンジする好循環を生み出し、社員以外のステークホルダーに対しても、公正な還元を可能とする環境を整えることを目指している。
 
 
2.重点施策の取り組み状況
①構造改革
過去の慣習にとらわれず仕事のやり方を抜本的に変革し、新たな業務プロセスの創造を進める。また権限委譲、ITシステム化を進めることで、組織全体の生産性向上を図る。
②働き方改革
生産性向上、および優秀な人財確保のため、ワークライフバランスを重視し、魅力ある職場づくりを通じた「働き方改革」に全社をあげて取り組んでいる。(当社は、社員が会社の重要な財産の1つであるとの考えから、「人材」を「人財」と表記している。)
③新技術の利活用推進
既存サービスの競争力強化、生産性および品質向上のため、新技術の取り込みを積極的に進めている。これらの取り組みにより社員のパワーアップ、およびグループの総合力の結集を実現する。
④ダイバーシティの推進
グローバル戦略を確実に推進していくための人財育成、および人財の多様化を通じて、変化し続けるビジネス環境への対応力強化や組織の活性化を図っている。
⑤グローバルの推進
日本企業の海外展開への対応、およびグローバル競争力強化のため、積極的に海外展開を進めている。より高い品質の商品やサービスを海外に向けて打ち出し、8つの海外拠点を通じて24時間365日体制でのサポートを提供する。
⑥連結経営のガバナンス強化
国内外あわせて11拠点間との密なコミュニケーションにより、それぞれのソリューションを結集し、企業価値最大化を図っている。各拠点が持つ人財やノウハウ、営業状況などを含めた、経営情報をスピーディに把握し、グループ全体で顧客の課題解決に努める。
⑦BOO戦略の推進
同社のサービス内容は、システム運営管理、ソフトウエア開発、クラウド・セキュリティ、BPO、コンサルティングと多岐にわたる。BOO戦略とは、一つの顧客に対して幅広いサービスを提供することであり、同社の様々なサービスを日本国内のみならず、海外でも提供する。
 
 
 
 
2018年3月期第2四半期決算概要
 
 
前年同期比1.5%の増収、同40.7%の営業減益。
売上高は前年同期比1.5%増の107億49百万円。引き続き既存の金融系運営管理と金融系プラットフォーム開発が増加したことなどによりシステム運営管理の売上高が増加した。一方、大型プロジェクトの受注により運輸系ソフトウエア開発は大幅に増加したものの、金融系ソフトウエア開発が大きく減少したことなどによりソフトウエア開発の売上高は減少した。また、その他業務は、セキュリティ製品の販売拡大に加え、コンサルティングや海外現地法人の拡大が寄与し売上高が増加した。
営業利益は前年同期比40.7%減の2億円94百万円。ソフトウエア開発における2件の不採算プロジェクトによる売上原価の増加(2件のうち1件は8月に終了し、残りの1件も平成30年1月に終了予定)とセキュリティ事業における「Seceon OTM」の積極的な営業展開のための広告宣伝費の増加などが影響した。売上高総利益率は、同1.2ポイント低下の17.1%、売上高対販管費比率は、0.8ポイント上昇の14.4%となった。また、経常利益は同36.5%減の3億9百万円。親会社株主に帰属する四半期純利益は同69.2%減の1億4百万円。前期に計上した退職給付制度終了益2億39百万円がなくなったことと、投資有価証券評価損48百万円を計上したことなどから親会社株主に帰属する四半期期純利益の減益幅が大きくなった。
 
 
システム運営管理事業の売上高は前年同期比6.2%増の62億94百万円。既存の金融系運営管理業務は、一部縮小があったものの、引き続き売上が増加した。また、プラットフォーム開発業務は、運輸系の売上が減少したものの、金融系の売上は引き続き増加した。

ソフトウエア開発事業の売上高は前年同期比6.5%減の39億94百万円。大型プロジェクトの受注により運輸系ソフトウエア開発の売上が大幅に増加した一方で、金融系ソフトウエア開発が大きく減少した。

その他事業の売上高は前年同期比19.7%増の4億60百万円。セキュリティ製品販売に加え、コンサルティングや海外現地法人の売上高も増加した。
 
 
2018/3期第2四半期累計期間の減益は、ソフトウエア開発事業で不採算プロジェクトが2件発生したことが大きく影響した。プロジェクト期間が短い中で、納期の死守と品質の確保のため、管理要員と開発要員の管理を図ったことから、労務費と外注費が大きく増加した。しかし、2件のうち1件は8月に終了し、残りの1件も平成30年1月に終了の予定。
 
 
2017/9末の総資産は前期末比98百万円増加の106億50百万円。資産面では売上債権の増加などが、負債・純資産面では有利子負債の増加などが主な増加要因。自己資本比率は65.6%と前期末比3.4ポイント低下した。
 
 
前年同期に比べ、税金等調整前四半期純利益の減少、売上債権の増加などにより営業CFのプラス幅が縮小した。また、有形固定資産の取得による支出や連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少などにより投資CFのマイナス幅が縮小したものの、フリーCFはマイナスに転じた。一方、財務CFは短期借入金の増加によりマイナス幅が大幅に縮小した。この結果、2017/9末のキャッシュポジションは高まった。
 
(3)「Seceon(セキオン)OTM」販売強化
同社は、米国Seceon Inc.(本社:米国ウエストフォード、Founder & CEO:Chandra Pandey 以下Seceon)のAI(人工知能)・機械学習を活用した最先端セキュリティソリューション「Seceon OTM」の販売を強化している。AIセキュリティの普及が先行する米国では2015年のSeceon創業以来50社以上の企業に「Seceon OTM」が導入されている。今後、日本においても銀行や保険、教育機関、医療、小売りなど、幅広い業種・規模の企業の要望に応えていく方針。
「SeceonOTM」は、AIや機械学習、外部の脅威情報連携、ビッグデータの高速解析など、さまざまな機能や情報を駆使してネットワーク内の状況を把握し、侵入した脅威をいち早く検知する。AIによる最適化は、サイバーセキュリティ専門家による面倒で難解なチューニングを必要としないばかりか、対策が難しい内部不正やIoTデバイスのセキュリティ対策にも適している。加えて、「SeceonOTM」は、これまでSOC(Security Operation Center)にて手作業で行っていたセキュリティ運用を自動化し、顧客のセキュリティ対策コストを大幅に削減できる。更に、従来のセキュリティ製品ではウイルスプログラムの未定義により検知できなかった未知の脅威も、そのプログラムの振る舞いからリアルタイムに脅威を検知し、被害を最小化することが可能。
同社は、上期に「Seceon OTM」の積極的な営業展開のため広告宣伝費を大幅に増加した。下期においては引き続き新規顧客の開拓に注力する。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
前期比5.1%の増収、同9.1%の経常減益の計画
2017/3期第2四半期累計期間の状況を踏まえ、同社は10月20日に通期の利益計画の業績下方修正を行った。
売上高は順調に推移していることから前期比5.1%増の226億50百万円の計画を据え置き。引き続き金融機関を中心に顧客のIT投資の拡大が期待される。また、今後セキュリティ対策への投資の加速も予想される。こうした中、BOO(既存顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理、クラウド・セキュリティまで、複数のサービスを提供すること)の推進により、既存顧客の推進を図るとともに、新規顧客の獲得を目指す。
営業利益は、同6.9%減の10億30百万円へ期初計画から4億40百万円の減額修正となった。第3、4四半期は期初の予想水準で推移する見込みであるものの、上期に発生した不採算プロジェクトによる売上原価の増加が影響する。また、下期においては新規開拓に注力する他、人手不足が深刻化する中、ソフトウエア開発者の外注費増加等を見込んでいる。売上高対営業利益率は、前期比0.6ポイント低下の4.5%の計画。
一方、1株当たりの配当は、来期以降の事業展開と財政状況等を総合的に勘案し、10月31日に期初予想の37円から前期比3円増配の期末40円の予想へ修正された。
 
不採算プロジェクト防止へ向けた今後の対応策
2018/3期上期に発生した不採算プロジェクトの反省をもとに、同社では今後不採算プロジェクト防止のための対応策を強化する。
 
課題1-大規模化と短納期化への対応
[対応策]
・プロジェクト状況の収集から分析、課題対応をスピードアップする手法の標準化とサポートツールの導入を更に進める。
・既に導入している開発フレームワークの一層の強化。
 
課題2-プロジェクト規模拡大による要因調達
    ノウハウ及びマネジメント人材の不足
[対応策]
・新規パートナー会社の開拓推進と既存パートナー会社との情報交換の活発化。
・大量なパートナーをマネジメントする人材の育成・強化。
 
 
今後の注目点
同社の2018/3期第2四半期累計期間は、売上高が前年同期比1.5%増加したものの、営業利益が同40.7%減少するなど残念な結果となった。これは期中に発生したソフトウエア開発事業における2件の不採算プロジェクトの発生が影響した。同社が属する情報サービス業界は、好調な業界環境が継続しているものの、不採算案件の発生という予期せぬ大規模な費用の発生により業績が悪化するリスクをはらんでいることを改めて認識させられた決算となった。こうした中、同社では対応策として、①プロジェクト状況の収集から分析、課題対応をスピードアップする手法の標準化とサポートツールの導入を更に進める、②既に導入している開発フレームワークの一層の強化、③新規パートナー会社の開拓推進と既存パートナー会社との情報交換の活発化、④大量なパートナーをマネジメントする人材の育成・強化、を掲げ、今まで以上に不採算プロジェクトの防止を強力に推進する。これらの施策が、今第3四半期以降の業績にいかなる成果をもたらすのか、それを通じて好業績への回帰により市場の期待を再び高めることができるのか注目される。
また、世界中でサイバー攻撃や情報漏えい事件が発生している中、AIを活用したセキュリティ対策への注目が増している。様々なセキュリティベンダーが最先端のAIセキュリティ製品を開発し、アメリカを中心に導入が進んでいる。今後AIセキュリティが普及していく中、「Seceon OTM」の拡大が期待される。同社では、「Seceon OTM」の積極的な営業展開のために今期積極的な広告宣伝費の投入を行っており、広告宣伝費の増加が今後どれ位のインパクトを持って「Seceon OTM」の拡大に結び付くのかについても期待を込めて注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年3月13日