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(7776) 株式会社セルシード

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ブリッジレポート:(7776)セルシード vol.28

(7776:JASDAQ) セルシード 企業HP
橋本 せつ子 社長
橋本 せつ子 社長

【ブリッジレポート vol.28】2017年12月期第2四半期業績レポート
取材概要「「食道再生上皮シート」の治験は、フェーズ3相当の治験を9症例で実施する。症例数は少ないが、治療治験のため、より高い安全性が求められて・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年9月5日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社セルシード
社長
橋本 せつ子
所在地
東京都江東区青海二丁目5番10号 テレコムセンタービル
決算期
12月末日
業種
精密機器(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年12月 100 -1,413 -1,415 -1,414
2015年12月 193 -568 -531 -535
2014年12月 86 -601 -577 -582
2013年12月 105 -534 -581 -584
2012年12月 75 -846 -842 -913
2011年12月 86 -1,418 -1,358 -1,442
2010年12月 66 -1,204 -1,002 -1,009
2009年12月 87 -785 -788 -790
2008年12月 61 -778 -644 -650
2007年12月 40 -809 -614 -616
2006年12月 23 -672 -464 -470
2005年12月 34 -412 -336 -343
2004年12月 53 -257 -214 -215
株式情報(8/25現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
512円 10,414,292株 5,332百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - - - 129.90円 3.9倍
※株価は08/25終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
セルシードの2017年12月期上期決算について、通期の見通しと共にブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
東京女子医科大学の岡野光夫教授が開発した日本発・世界初の「細胞シート工学」を基盤技術とし、この技術に基づいて作製した「細胞シート(シート状の培養細胞)」を用いた「細胞シート再生医療事業」と細胞シートの基盤ツール(培養器材)である温度応答性細胞培養器材及びその周辺製品の研究開発・製造・販売を行う「再生医療支援事業」を二本柱とする。

2016年8月には本社のあるテレコムセンタービル(東京都江東区青海)の6階に細胞シート培養センターを設置した。延床面積約763㎡で、自動モニタリングシステムによって、洗浄度、室圧、温湿度、機器(培養器や保冷庫等)が自動管理され、監視カメラシステムも完備。また、羽田空港まで20分と至近で、空輸にも対応しやすい。2017年3月には「再生医療等の安全性の確保等に関する法律第35条第1項の規定に基づく「特定細胞加工物製造許可」(許認可権者:厚生労働省)を取得しており、特定細胞加工物の受託製造も可能。このため、臨床研究・臨床試験・自由診療等で必要となる細胞シートの受託加工事業を検討中である。
 
ミッション : 価値ある、革新的な再生医療をリードし、世界の医療に貢献します。
 
【再生医療とセルシードの戦略】
再生医療とは、失われた臓器や損傷、或いは機能が低下した臓器を再生して治療する新たな医療。様々な細胞に分化できる能力を持った幹細胞が鍵となる。現在、受精卵から作られる「ES細胞」、人口多能性細胞「iPS細胞」、及び生体の様々な組織にある「体性幹細胞」、の3つの種類の幹細胞がある。「ES細胞」は受精卵から作られるため全ての細胞に分化する能力を持っているが、受精卵から作られるため倫理的な問題があり、実用化に至っていない。「iPS細胞」は、皮膚等の分化した細胞に4つの遺伝子を導入して培養した人口多能性細胞であり、京都大学の山中教授のノーベル賞受賞以降、研究が加速した。しかし、分化のプロセス等、未だ解明されていない部分が多く、実用化には時間を要すると言われている。

一方、「体性幹細胞」は同社が実用化に最も近いと考えている幹細胞である。同社は食道や膝の軟骨に近い部分の細胞を「細胞シート工学」を用いてシート状に培養し、患者に移植するという治療(食道や膝軟骨の再生医療製品)の開発に取り組んでいる。具体的には、2018年の販売承認申請提出を目指して「食道再生上皮シート」の治験を進めている他、「軟骨再生シート」の2017年の治験開始に向けた準備も進めている。「細胞シート工学」を用いた再生医療製品は、食道や膝軟骨にとどまらず、角膜、歯、耳、肺、心臓、肝臓、及びすい臓の治療でも臨床研究が進められており、既に臨床データも有する。
また、2015年9月には、(株)セルシードの温度応答性細胞培養器材「アップセル」が組み込まれているテルモ製「ハートシート」(心臓の再生医療に用いる)が期限付き承認を取得した。(株)セルシードは「ハートシート」専用(特注品)の温度応答性細胞培養器材「アップセル」の供給責任を負っている。
 
 
2017年12月期上期決算と通期予想
 
 
細胞シート培養センターのオペレーションの効率化や一部研究開発費の下期ずれ込みで損失が期初予想を下回る着地
売上高26百万円は再生医療支援事業によるもの。上期初予想を下回ったのは、上期に受注した製品の売上高計上が下期にずれ込んだため。ただ、細胞シート再生医療事業において、細胞シート培養センターのオペレーションが想定以上に効率的に行われている事や一部の研究開発費の投下が下期ずれ込んだ事で、営業損益以下の損失が期初予想を下回った。研究開発費は前年同期比7.4%増の2億51百万円。

尚、6月に、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が公募した平成29年度「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」に、同社を代表機関とし、東海大学及び(株)DNAチップ研究所を分担機関とした研究開発項目「同種軟骨細胞シートのための有効性品質評価手法の開発」が採択された(今後、研究開発費の一部補助を受ける)。また、6月17日~20日に米国サンディエゴで開催された、「2017Bio International展示会」に参加した(後述)。
 
(2)2017年12月期予想
通期予想に変更はなく、売上高1億円(16/12期 売上高1億円)、営業損失12億50百万円(同 営業損失14億13百万円)、経常損失12億30百万円(同 経常損失14億15百万円)、当期純損失12億30百万円(同 当期純損失14億14百万円)。
 
 
中期経営計画(17/12期~19/12期)と進捗状況
 
【中期経営計画の概要】
 6本の柱と進捗状況
・食道再生上皮シートの承認取得・販売開始 ⇒ 先駆け審査指定制度対象品目
                       に指定
・同種(他家)軟骨再生シートの開発加速  ⇒ AMED事業に採択
・次期品目の開発着手           - 調査・検討中 -
・サプライチェーン体制の構築       ⇒ 特定細胞加工施設の許可取得
・海外企業との事業提携推進        ⇒ 台湾企業と事業提携契約締結
 
 
「食道再生上皮シート」については、現在、治験が進行中であり、18/12期に販売承認申請を行い、19/12期の販売承認取得を目指している(19/12期 目標に一部織り込み)。この他、細胞シート再生医療事業の海外展開につながる事業提携にも積極的に取り組んでいく(事業提携関連の売上高は現在協議中の案件も含めて織り込んでいない)。
 
【細胞シート再生医療パイプライン】
(1)「食道再生上皮シート」
食道がん再生治療法(食道創傷治癒・狭窄予防)として東京女子医大先端研が開発した治療法である。患者の口腔粘膜から採取した細胞を温度応答性培養器材で約2週間かけて培養し、細胞シートを作成する。細胞シートの培養に合わせて、食道がん切除内視鏡手術を行い、食道潰瘍面に移植する。
同社の説明によると、日本では、年間約22,000人が食道がんと診断され(日本では食道がんの90%が扁平上皮がん)、年間約11,500人が食道がんで死亡している。また、男性の発症率・死亡率は女性の5倍で、5年後の生存率は男性36%、女性44%、と男女共に低い。治療法として、2008年に保険収載された内視鏡切除手術(ESD)が増加しているが(食道がんと診断された患者の約20%が毎年手術を受けている)、ESDは手術後の食道狭窄の副作用がある。
 
 
2008年から2014年にかけて大学で臨床研究が行われ、東京女子医科大学10症例、東京女子医科大学・長崎大10症例(長距離輸送検証:長崎大で採取した細胞を東京女子医大で培養し、長崎大で移植手術)、カロリンスカ大学病院(スウェーデン)10症例、の計30症例が既にあり、同社は、東京女子医科大学と開発基本合意契約を締結して同大学の研究成果を引き継いだ。2016年4月に治験届を提出し、2016年8月に国立がん研究センター(中央病院、東病院の2施設)及び東京女子医大において治験を開始した(フェーズ3相当の治験を9症例で実施する計画)。また、海外では、スウェーデンでの企業治験を計画しており、その推進役となる子会社CellSeed Sweden AB(スウェーデン)を2015年5月に設立し、2015年11月30日にスウェーデン医薬品庁(MPA)との事前相談を開始した。2016年には、欧州全体での承認を目指して、欧州医薬品庁(EMA)との相談も開始した。
 
先駆け審査指定制度の対象品目に指定
2017年2月に、厚生労働省「先駆け審査指定制度」対象品目に指定された。この制度は、国内の患者に世界で最先端の治療薬を最も早く提供する事を目指するもの。指定の対象になるのは、①新作用機序の画期性、②対象疾患の重篤性、③極めて高い有効性、及び④世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思、の指定4要件を満たす画期的な新薬等。対象品目に指定されると、薬事承認に係る相談・審査での優先的な取扱いに加え、製造体制の整備に係る指導や承認後に円滑に医療現場へ提供するための対応を受ける事ができる(優先相談、事前評価、優先審査、審査パートナー制度といったメリットがある)。
 
(2)軟骨再生シート
「軟骨再生シート」は、東海大学整形外科佐藤正人教授との共同研究であり、スポーツによる損傷や加齢を原因とする軟骨欠損や変形性関節症を適応症とする。現状では根治する方法がないが、佐藤教授との共同研究は軟骨表面の根本的な再生を目的としている。膝の軟骨は、硝子(しょうし)軟骨と言い、耳や鼻等の軟骨とは異なり、クッション性と対摩耗性に優れた硬い軟骨で再生が難しい。しかし、共同研究を進めている「軟骨再生シート」は、硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる事が臨床研究で確認されている。

同社の資料によると、変形性膝関節症とは、緩徐に進行する難治性の関節軟骨変性。国内における患者数(40歳以上)は2,530万人、そのうち有症病者は800万人と推定されている(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター調査)。
また、高齢化により患者数の増加が予測され、国民健康寿命・介護費・医療費の観点から喫緊に対処すべき疾患であると言う。
平成25年厚生労働省国民生活基礎調査によると、要支援・要介護になった原因の25%を運動器の障害が占めた。
 
東海大学との共同研究
2011年8月に自己細胞シート移植の臨床研究が第65回厚生科学審議会科学技術部会で承認され、同年10月の厚生労働大臣の意見書(厚生労働省発医政1003第3号)発出を受けて、同年11月に第1例目臨床研究が始まった。そして、2015年11月に8例の2年後評価が終了した(現在、移植施術後3年以上が経過したが、いずれも術後経過は良好)。販売承認の許認可機関である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)との薬事戦略相談も始まっており、アドバイスを受けているが、更に相談を重ね、安全性データの蓄積と臨床プロトコルの確立に取り組んでいく考え。

同種細胞シート移植についても、2017年2月15日に第1例目の臨床研究が始まった(移植手術を実施)。この臨床研究は、多指症患者から軟骨組織を採取し、2~3週間かけて培養した細胞シートを移植するもので(先天的に手の指が6本ある乳児から切除された指の軟骨細胞を同意を得て利用)、今後3年間で10名の患者への移植を計画している。細胞の培養については、細胞シート培養センターでの培養が協議されている。
 
 
東海大学とは、開発基本合意書(同社が国内外で開発する権利を有する事の合意)及び共同での特許の出願の合意書を取り交わしている。特許については、既に国内特許が成立し、海外特許が審査中である。今後、更に特許網を広げていく考え。
 
【海外展開】
(1)台湾での事業提携契約
2017年4月に、三顧股処ヘ有限公司(MetaTech(AP) Inc.:台湾 新北市、代表者 胡立三。以下「MetaTech社」)との間で、台湾での細胞シート再生医療事業(食道再生上皮シート・軟骨再生シート)の独占的事業提携契約を締結した(2016年12月から協議を進めており、協議開始に当り、MetaTech社から導出検討着手金50百万円を受領している)。
 
 
契約の概要及び対価
今後、台湾での細胞シート再生医療事業の開発・事業化は、セルシード支援の下、MetaTech社が開発主体となって進めていく。契約の対価として、(株)セルシードは食道再生上皮シート・軟骨再生シートそれぞれのMetaTech社の開発進捗に応じた目標達成報奨金(マイルストーン収入)及び、開発進捗に対応して提供する開発・製造関連データや開発サポートにかかる対価(「開発サポート料」)を、最大12億5千万円程度受け取る予定。また、上市(販売)に至った際には、売上高に応じた数%程度のロイヤルティを受領する。
 
17/12期より「開発サポート料」を売上計上
この契約締結の対価の一部である「開発サポート料」は、17/12期より稼働時間に応じて売上計上される予定。「開発サポート料」が(株)セルシードの業績に重大な影響を与える事が判明した場合は速やかに情報を開示する、としている。MetaTech社は今年度中に開発に着手する計画のため、17/12期から「開発サポート料」が売上計上される予定だが、開発進捗に応じた対価の受領は来期以降、3~4年かけて売上計上される見込み。尚、台湾でも再生医療医薬品の早期承認に向けた検討が進められているようだが、現在は通常の医薬品と同じ審査プロセスが必要である。
 
MetaTech社概要
MetaTech社は、電子材料の商社ビジネスを中心に、医療美容製品や医療機器の卸・小売、バイオテクノロジーやその他のビジネスサービスも手掛ける台湾の店頭公開企業。1998年9月17日の設立で、15/12期は、売上高21億53百万台湾ドル(1台湾ドル=3.65円換算で78億58百万円)、経常利益6百万台湾ドル(同22百万円)、総資産10億33百万台湾ドル(同37億70百万円)、純資産5億24百万台湾ドル(同19億13百万円)、資本金4百万台湾ドル(同1億60百万円)。
 
(2)米国BIO International Conventionに参加
6月17日~20日に米国サンディエゴで開催された米国BIO International Conventionに参加した。同展示会は、大手企業からスタートアップまで多くのバイオ関連企業が参加しており、今回は参加者16,000名、参加企業4,000社、展示企業1,800社。事前登録によるパートナリング機能を利用した事前マッチング及び会期中の面談が特徴であり、同社も今後の海外における細胞シート再生医療事業の提携候補先の調査・探索を目的として出展し、複数の製薬企業・米国州商務部等との面談を実施した。面談した企業とは、現在、フォローアップの協議を重ねている。
 
【資金調達】
2017年3月6日に、新株予約権(第16回)の第三者割当を実施した(一定期間内での権利行使義務があるコミットメント・イシュー)。2017年7月末時点で1,300千株(59%)の行使が完了しており(前半コミット分が行使済)、上期末の現預金は13億32百万円。2018年5月14日までに全ての新株予約権が行使されるため、「食道再生上皮シート」の販売承認取得頃までの資金確保ができている計算だ。

新株予約権の概要
割当予定先      Evolution Biotech Fund
新株予約権の総数   2,200千個
発行価額       総額6,600千円
行使価格の総額    1,122,000千円
期間(原則)     14.5ヶ月
リセット回数(原則) 通算で58回(予定)
行使価格(※)    VWAPの90%(当初行使価格510円、下限行使価格283円)
全部コミット     2018年5月14日までに2,200千株全ての行使を原則コミット
前半コミット     2017年10月5日までに1,100千株(50%)以上の行使を原則
           コミット
※5価格算定日毎に、この間の普通取引の売買高加重平均価格(VWAP)の単純平均値の90%に相当する金額の1円未満の端数を切上げた額に修正される。
 
 
 
今後の注目点
「食道再生上皮シート」の治験は、フェーズ3相当の治験を9症例で実施する。症例数は少ないが、治療治験のため、より高い安全性が求められている事や他の疾患や併用薬との因果関係を排除する必要があるため被験者の選定基準が厳しい事等から、ある程度の時間を要する。こうした中、この上期は海外展開が進展した。台湾での事業が順調であれば、向こう3~4年の間、マイルストーン収入や開発サポート料で12億50百万円の収入を得る事ができる。また、「軟骨再生シート」については、競合する再生医療品の開発が進められているが、同社製品の強みは、患部に定着しやすいシート上である事と再生が難しい硝子軟骨として膝の軟骨を再生できる(臨床研究で確認されている)事。6月に参加した米国BIO International Conventionのようなアピールする機会を増やす事で、「軟骨再生シート」についても海外展開の余地が広がっていくものと思われる。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書       更新日:2017年04月05日
基本的な考え方
当社は、技術革新と創造性を発揮し、質の高い優れた製品とサービスの提供を通じ人々の健康と福祉に貢献していくことを使命とし、全ての企業活動において品質を高めるべく企業統治の整備を進めています。
今後につきましては、ディスクロージャーの透明性を高めるため一層説明責任を充実するとともに、さらなる経営のチェック機能強化を図ってまいります。
 
【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】
当社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施しております。