ブリッジレポート:(8130)サンゲツ vol.12
(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ |
|
||||||||
|
企業名 |
株式会社サンゲツ |
||
社長 |
安田 正介 |
||
所在地 |
名古屋市西区幅下1-4-1 |
||
決算期 |
3月末日 |
業種 |
卸売業(商業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2017年3月 | 135,640 | 7,572 | 8,368 | 6,570 |
2016年3月 | 133,972 | 9,112 | 9,463 | 6,393 |
2015年3月 | 132,050 | 8,031 | 8,506 | 4,402 |
2014年3月 | 131,978 | 8,952 | 9,475 | 5,459 |
2013年3月 | 123,150 | 8,020 | 8,393 | 4,806 |
2012年3月 | 118,518 | 7,095 | 7,180 | 4,151 |
株式情報(8/17現在データ) |
|
|
今回のポイント |
|
会社概要 |
【沿革】
1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社山月堂商店として株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。 【企業理念】
新たなステージに臨む同社では、変革のチャレンジを進める上で、2016年4月、新ブランド理念を含めた企業理念を再構築した。以下の、「社是」、「企業使命」、「サンゲツ三則」に新しい「ブランド理念」を合わせ、企業理念としている。 <社是> 誠実 <企業使命> インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与します。 <サンゲツ三則> 創造的デザイン・信頼される品質・適正な市場価格 <ブランド理念> ブランドステートメント「Joy of Design」を掲げ、ブランドパーパスとして「私たちは、新しい空間を創りだす人々にデザインするよろこびを提供します。」と謳っている。 インテリア商品の作り手と使い手、同社に関連する全てのステークホルダーとともに、新しい価値創造のよろこびを分かち合うことを目指す考えだ。 【市場環境】
◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。
一方、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2017年4月26日発表)によれば、民間非住宅建設投資の対前年度伸び率は、2014年度(見込み)9.4%増、2015年度5.6%増(見込み)と好調であったのに対し、以降は2016年度(見込み)0.6%増、2017年度(見通し)1.2%減とスローダウンするとの予想である。 着工床面積も16年度(見通し)は事務所が12.1%増と好調なものの、店舗は8.8%減、17年度(見通し)は、事務所、店舗ともに0.0%と横這いが予想されている。 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、民間非住宅市場は堅調な市場推移が続くとの見方が中心だが、足下は不透明感が増している。 ◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の3社が挙げられる。
【事業内容】
壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。
主力の壁紙で商品数は約4,200点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見本帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で30~40%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。 ◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、53か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として9か所のショールームを有している。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。 そのため、同社では見本帳、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、法人営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約450名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。 ◎物流体制
全国13か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。東・名・阪・福はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.14%(約70点程度)となっている。当該地区での欠品であり、周辺の物流センターから即座にカバーする事で、納期待ちを依頼する事はレアケースである。内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。仕入先は約100社と広範囲に亘っている。 ②「エクステリア事業」
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。
(2017年3月期 売上高 14,778百万円、営業利益 402百万円) ③「照明事業」
2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。
(2017年3月期 売上高 4,205百万円、営業利益 23百万円) ④「海外事業」
中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」の事業戦略において、海外を重点注力市場と位置付けて連結経営管理することとしたため、2018年3月期第1四半期より新たに設けられたセグメント。2016年11月に買収したKoroseal Interior Products Holdings,Inc.および2016年4月に設立した山月堂(上海)装飾有限公司の2社で構成される。 自己資本の削減に加え、収益性向上のための取り組みが欠かせない。 【特徴と強み】
①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。また、商品数12,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。
②「創る」・「提案する」・「届ける」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。昭和40年に初のオリジナル壁紙を発売。「創る」 昭和48年に制定以降、現在も守り続けられているサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。 同社で様々なデザインをベースに約25名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。 商品ラインアップは他社には例を見ない約12,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する約30種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。 「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約450名で、業界最大である。全国61拠点で前述のような、提案営業を展開している。9か所のショールームには約45名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが約40名おり、その提案力も業界最高水準となっている。 「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。 通常、壁紙は1ロール50m。30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。 |
2018年3月期第1四半期決算概要 |
増収も販管費増で減益
売上高は前年同期比16.3%増の378億円。インテリア事業、エクステリア事業が増収だったほか、前期買収したKoroseal社、子会社化したフェアトーン社の売上が寄与した。売上総利益は同20.1%増と増収率を上回り粗利率も1%上昇したが、上記2社の販管費に加え、物流拠点整備、基幹システムの再構築準備、人件費および物流コストの上昇などで、販管費は同34.8%増となったため増加分を吸収できず営業利益は同35.2%の減益となった。 なお、2017年6月末現在において、Koroseal社の買収時における資産及び負債の時価算定等が終了していないため、この第1四半期では暫定評価によるのれん金額に基づき、のれん償却額を計上している。 ①インテリア事業
増収、減益だった。<壁装材> ホテルやオフィスなど非住宅向けの見本帳「FAITH」において、同分野に特化した営業部門との連携により、市場への浸透が進み増収となった。また、展示会への出展や壁紙デザインアワードの開催など、暮らしの中でインテリアを楽しむ、「Joy of Design」に繋がる情報発信も継続した。 <床材> 非住宅向けの床材見本帳「Sフロア」に収録している「永久ワックスフリー」商品が、長期使用やメンテナンス性を求めるニーズにマッチし伸長した。また、ホテルの改修需要における特注カーペットの納品が進んだほか、賃貸住宅市場においては、フロアタイルの採用が好調だった。 <ファブリック> カーテン専門の販売会社として株式会社サンゲツヴォーヌを2017年4月に設立(5月より営業開始)し、主に住宅市場のカーテン分野において、より付加価値の高い提案・販売サービスを提供する体制構築を進めている。 カーテンでは、住宅向けカーテンは苦戦したが、堅調に推移する非住宅市場への営業強化により、コントラクト施設向けカーテン見本帳「コントラクトカーテン」が伸長した。 専門特化した営業体制に組織変更をした椅子生地は増収に転じた。 ②エクステリア事業
増収、増益だった。営業体制の再構築と工事力の強化に加え、高付加価値商品の拡販に努めた。エクステリア市場では、ガーデンルームや人工木デッキといった空間デザインの商品の売上が増加。さらに、新築住宅着工数の伸び悩みが見込まれる中で、既存住宅のリノベーション需要も高まっており、防犯や安全機能を持った門扉やフェンスなど、「便利さ」や「快適さ」に繋がる商品の拡充に努めた。 ③照明事業
減収、損失計上。照明事業を担う山田照明ではサンゲツとの連携により、施主や大手設計への組織的な営業活動を強化するなど、シナジーを高めるビジネスモデルの構築に努めている。重点戦略市場である非住宅市場では、宿泊施設やホテルの新築・改修等が活況を呈する一方で、首都圏の大規模オフィス供給をはじめとする大型物件は端境期となった。 ④海外事業
今1Qより設けられた新セグメント。主な売上を占めるKoroseal社は市況の伸びを受け堅調に推移した。中国で事業を行う山月堂(上海)は、5種類のオリジナル壁紙カタログを軸に、商品を現地在庫し、積極的な拡販に努めている。 |
2018年3月期業績見通し |
業績予想に変更無し。2桁増収も、営業利益は横這い。
業績予想に変更は無い。売上高は前期比15.0%、203億円増の1,560億円を予想。新築住宅着工は微減を見込む。非住宅分野での壁装、床材の営業活動を強化し、見本帳の新企画や新商品投入効果による増収を目指す。増収分のうちインテリア事業に関してはフェアトーン株式会社の連結開始を含め30億円強、海外事業に関しては2016年11月に買収したKoroseal社の損益連結開始と増収により167億円を見込んでいる。粗利益はKoroseal社の買収による70億円を含む89億円増加し、粗利率も1.8%上昇するが、販管費が、Koroseal社の増分54億円を始め、のれん償却6億円増、政策的経費増など合計88億円増加するため、営業利益は同0.4%増の76億円にとどまる。 配当は中間、期末とも27.5円の合計55円/株を予定。予想配当性向は67.0%。 |
|
<参考1:中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」概要> |
◎ビジョン
「社是:誠実」、「ブランド理念:Joy of Design」のもと、中期経営計画(2017-2019)「PLG 2019」においては、「多様な商品と機能と高い専門性を持ち、国内外で強固な市場を持つ企業グループ構築をする。」ことを目指していく。PはPersonal。専門性を持ったプロ人材となる。社外との強い人的関係を結ぶ。 LはLocal。各地域での強固な市場ポジションを確立する。 GはGlobal。商品・デザインのグローバル化。 売上高目標の内訳は、以下の通り。 ◎テーマ
基本方針として「、内装材事業(企画・調達・物流・販売)の地理的拡大、機能強化」を掲げ、以下の5つの基本施策を推進する。
(1)成長の為の事業戦略
①安定的かつ基礎的収益源である日本市場において、バリューチェーンでの機能強化・取組領域の拡大により収益の安定的成長を実現
「国内外有力サプライヤーとのアライアンスを通じた材料・原料を含めた商品開発・調達」、「インテリアコーディネーション提案・施工力の強化」、「代理店との連携・協業強化」、「社内営業体制の見直し」などを進める。
②成長力のある海外市場での活動を強化、地理的な展開を拡大するとともに商品面・機能面での拡充を実行
北米(米国・カナダ)、アジア(中国・東南アジア)を重点注力市場と位置付け、各市場でのローカルな物流・営業体制を拡充・強化する。
③デザインのグローバル化、製造メーカーのグローバル化に呼応し、グローバルな商品の企画・調達体制を構築
日本・米国・中国のローカル拠点間の連携を深め、「海外有力メーカーとの国内外での連携」や「ヨーロッパデザイン・和のデザインの共同展開や商品の共同マーケティング」に取り組む。
④地域での事業を担う関係会社・機能を担う関係会社・専門市場を担う関係会社を統合的に経営し、トータルシナジーを生む為の連結経営体制を強化
事業シナジーの最大化や収益管理体制の明確化のために主管部制度を導入するほか、管理部門による横断的なチェック・サポート体制を構築する。連結経営課を新設し、全体管理や牽制機能を持たせる。 加えて、実効性を上げるために定期的なモニタリングや対話制度も導入する。 ⑤次期中期経営計画を睨み業態の転換の試行を重ねる。
現在のグループ各社の経営資源や特長をより一層活用してシナジーを追求するために、業態転換の試行・検討を進める。
(2)人的資源の強化
真のプロフェッショナル育成のために、グループ各社および本体各組織において、①プロ人材の育成、②能力主義の徹底、③ダイバーシティの推進、④働き方改革、⑤健康経営の推進に取り組む。
(3)収益管理体制の強化
①販売管理費の削減と管理の徹底
Chief Cost Controllerを任命する。販管費管理手法を整備する。サンゲツ単体では総人員を縮小する。
②グループ各社へのCCC管理の導入
連結ベースでのデュポン分析によるROEおよびCCCの目標を設定し、進捗をフォローする。
③サンゲツ各事業部・各支社での経営管理指標の明確化と進捗管理
各支社社員数ベースでの売上・総利益目標を設定する。
(4)ESG/CSR方針
①E:環境
☆サンゲツグループの事業全体の環境負荷を把握し、地球温暖化防止や持続可能な資源循環に向けての体制を構築する。・CO2ゼロエミッションに向けた計画の立案など。 ②S:社会
☆グループ各社の多様な従業員の活躍を支援するとともに社会的弱者の就労支援・女性管理職比率15%以上を達成する。(17年3月期実績 10.6%) ・障がい者雇用率目標3%実現(現在2.3%)、など ☆サプライチェーンにおける社会的責任の推進 ☆社員が主体的となった社会貢献活動の拡大 ・児童養護福祉施設の内装工事支援(目標 20件以上/年) ③G:ガバナンス
☆コーポレートガバナンスの透明性の維持と向上、コンプライアンスの徹底・株主、投資家、従業員、取引先などあらゆるステークホルダーとのコミュニケーション向上 (5)資本政策
①資本効率向上に向けた財務方針
資本市場の状況を鑑みつつ、引き続き自己株式取得と安定的増配を行い自己資本を1,050~1,000億円への削減を目指す。(17年3月期 1,088億円)
②中期経営計画期間中の株主還元政策
・3年間トータルの連結総還元性向は100%超とする。・長期安定的な増配の基本方針に基づき、安定的増配を継続する。 ・株式市場の状況に応じて機動的に自己株式を取得する。 以下のような資金調達及び資金配分を計画している。 |
<参考2:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年7月5日<実施しない主な原則とその理由> 同社はコーポレートガバナンス・コードの各原則を実施している。 |
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) 2024 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |