ブリッジレポート
(4709) 株式会社IDホールディングス

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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.58

(4709:東証1部) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.58】2017年3月期業績レポート
取材概要「同社は、システム運営管理を中心とするストック収益の比率が高いことから、不況抵抗力が強く、比較的増収傾向を維持しやすい優れた収益構造・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年6月27日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区 五番町 12-1 番町会館
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2017年3月 21,554 1,105 1,133 654
2016年3月 20,082 970 964 548
2015年3月 18,868 966 998 508
2014年3月 17,578 735 765 372
2013年3月 16,446 427 448 -490
2012年3月 16,137 629 659 365
2011年3月 16,450 839 892 447
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
株式情報(6/11現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,326円 10,921,841株 14,482百万円 9.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
37.00円 2.8% 89.73円 14.8倍 666.68円 2.0倍
※株価は6/11終値。発行済株式数は前期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2017年3月期決算概要等についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社。システム運営管理とソフトウェア開発・保守を二本柱とし、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウェア開発、システム運営管理等の複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing(BOO)戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。尚、2013年12月17日、JASDAQから東証2部に市場変更。2014年9月8日、東証1部に上場した。
 
【事業セグメント】
事業は、システム運営管理、ソフトウェア開発・保守、及びその他に分かれ、各事業の概要と売上構成比は次の通り。
 
システム運営管理    (17/3期売上構成比56.0%)
1,200名規模の技術者を擁する専門部隊が、ミドルウェアのカスタマイズからハードウェアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。金融機関をはじめ、情報、通信、製造など、さまざまな業種に対応し、長年にわたる顧客からの高い信頼を獲得している。
 
ソフトウェア開発・保守 (17/3期売上構成比39.9%)
500名を超える技術者が、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。グループ内にオフショア(海外子会社に委託開発)、ニアショア(地方事業所での開発)体制を構築しており、多数の高度な専門技術者が高品質なサービスを実現し、金融機関、エネルギー、運輸をはじめとする幅広い分野の顧客へ、多くの開発実績を築いている。
 
その他         (17/3期売上構成比4.1%)
BPO、セキュリティ、コンサルティングなどを展開している。海外の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。
 
 
また、顧客別の17/3期売上構成比は、メガバンク、有力地銀、生損保、農林系等の金融機関が52.8%、SIer、情報通信機器ベンダー、或いは通信キャリア系情報サービス大手等の情報・通信・サービスが28.5%、製造、輸送、公共団体、エネルギー等のその他が18.7%。
 
 
その他、契約形態別の17/3期売上構成比は、金融機関、情報・通信・サービス、その他(製造、輸送、公共団体、エネルギー等)の直接契約が77.7%、大手ベンダーの戦略パートナーが22.3%と直接契約の比率が高い。
 
【IDグループ】
IDは、2015年7月1日付で、国内子会社であった(株)日本カルチャソフトサービスと(株)ソフトウエア・ディベロプメントを吸収合併した。現在の国内外の連結子会社は8社。このうち国内(3社)は、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド(出資比率85.9%)、ITソフトウェアの受託開発を手掛ける株式会社テラコーポレーション(出資比率100%)、障がい者雇用を促進するための子会社愛ファクトリー(株)(同100%)。一方、海外(5社)は、中国でソフトウェア開発、システム運営管理等を手掛ける艾迪系統開発(武漢)有限公司(同100%、ID武漢)、シンガポールでシステム運用コンサルティングやセキュリティサービス等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT SINGAPORE PTE. LTD.(同100%、IDシンガポール)、及びアメリカで人材採用・育成、現地市場調査、情報収集等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC. (同100%、IDアメリカ)。また、2015年8月にシステム運営管理の企画ならびに運用を手掛けるPT. INFORMATION DEVELOPMENT INDONESIA(IDシンガポール51%、ID49%、IDインドネシア)を設立した。
このほか、2016年5月には、ミャンマーでITトレーニングアカデミーの運営等を行うIDM Information Development MYANMAR Co., Ltd. (ID83.9%、IDシンガポール出資比率16.1%)を子会社化。同月、欧州におけるパートナー候補(資本提携、業務提携先)の調査や、金融機関の運用管理ビジネスに関わる情報収集、有望なコンテンツの発掘を目的として、アムステルダムに駐在員事務所を設立した。
 
 
【IDグループのサービスの特徴 - i-Bos24®
 (ID's Business Operations-Outsourcing Service 24)-】
同社は、コンサルティングからソフトウェア開発、システム運営管理、クラウド・セキュリティ、BPOまで、トータルなITアウトソーシングサービス「i-Bos24®」を提供している。
 
 
 
内閣府が6月8日に発表した17年1-3月の国内総生産(GDP、季節調整済み)2次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%増(年率換算で1.0%増)となった。第1次速報値からは下方修正となったものの、5四半期連続のプラス成長を維持しており、内閣府は「緩やかな回復基調が続いている」との景気認識を維持している。また、情報サービス産業との関連性が深い民間企業設備(実質)も前期比+0.6%と、16年10-12月の+1.9%を下回ったものの2四半期連続のプラスとなり回復基調を維持している。
更に、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(17年6月8日発表。4月分速報値)によると、4月の情報サービス産業売上高、受注ソフトウェア売上高、システム等管理運営受託売上高、ともに回復傾向を示しており、明るさを取り戻しているようである。
 
【中期経営計画「I-vision50」】
1.概要
同社グループでは、2016年4月に策定した中期経営計画「I-vision 50」(2017年3月期~2019年3月期)のもと、「より高い品質のサービスをより早くお客さまに」を経営ビジョンに掲げ、「2019年3月期 売上高240億円、営業利益16.8億円」の達成に向けて、各種施策に取り組んでいる。
「I-vision 50」は、3つの基本方針(「徹底した業務プロセスの改革(BPR)」「新たな成長分野の構築」「グループのガバナンス強化」)と、7つの重点施策(①構造改革、②働き方改革、③新技術の利活用推進、④ダイバーシティの推進、⑤グローバルの推進、⑥連結経営のガバナンス強化、⑦BOO戦略の推進)から成り、向上した収益を社員の賃金増に繋げることで、より高い業績目標へチャレンジする好循環を生み出し、社員以外のステークホルダーに対しても、公正な還元を可能とする環境を整えることを目指している。
 
 
2.重点施策の取り組み状況
①構造改革
過去の慣習にとらわれず仕事のやり方を抜本的に変革し、新たな業務プロセスの創造を進める。また権限委譲、ITシステム化を進めることで、組織全体の生産性向上を図る。
②働き方改革
生産性向上、および優秀な人財確保のため、ワークライフバランスを重視し、魅力ある職場づくりを通じた「働き方改革」に全社をあげて取り組んでいる。(当社は、社員が会社の重要な財産の1つであるとの考えから、「人材」を「人財」と表記している。)
③新技術の利活用推進
既存サービスの競争力強化、生産性および品質向上のため、新技術の取り込みを積極的に進めている。これらの取り組みにより社員のパワーアップ、およびグループの総合力の結集を実現する。
④ダイバーシティの推進
グローバル戦略を確実に推進していくための人財育成、および人財の多様化を通じて、変化し続けるビジネス環境への対応力強化や組織の活性化を図っている。
⑤グローバルの推進
日本企業の海外展開への対応、およびグローバル競争力強化のため、積極的に海外展開を進めている。より高い品質の商品やサービスを海外に向けて打ち出し、9つの海外拠点を通じて24時間365日体制でのサポートを提供する。
⑥連結経営のガバナンス強化
国内外あわせて12拠点間との密なコミュニケーションにより、それぞれのソリューションを結集し、企業価値最大化を図っている。各拠点が持つ人財やノウハウ、営業状況などを含めた、経営情報をスピーディに把握し、グループ全体で顧客の課題解決に努める。
⑦BOO戦略の推進
同社のサービス内容は、システム運営管理、ソフトウェア開発、クラウド・セキュリティ、BPO、コンサルティングと多岐にわたる。BOO戦略とは、一つの顧客に対して幅広いサービスを提供することであり、同社の様々なサービスを日本国内のみならず、海外でも提供する。
 
 
 
 
2017年3月期決算概要
 
 
前期比7.3%の増収、同14.0%の営業増益。
売上高は前期比7.3%増の215億54百万円と5期連続増収で過去最高を更新した。金融系プラットフォーム開発業務が既存顧客の深耕拡大により大きく増加したことなどによりシステム運営管理が増加した。また、制度改正や法令改正対応で公共系ソフトウエア開発の売上が大きく増加した他、システム統合や更改対応により金融系ソフトウェア開発も増加した。その他業務でも、セキュリティ販売や海外子会社の売上が増加した。
営業利益は同14.0%増の11億5百万円。前期に発生した本社移転費用が減少した他、同じく前期に発生したソフトウエア開発における不採算案件の収束が寄与した。一方、退職給付制度変更にともなう退職給付費用(売上原価及び販管費で2億18百万円)の増加や一部外注費単価の上昇などが影響した。売上高総利益率は、同1.3ポイント低下18.5%、売上高対販管費比率は、1.6ポイント低下13.4となった。また、経常利益は同17.5%増の11億33百万円。親会社株主に帰属する当期純利益純利益は同19.2%増の6億54百万円。特別損失で固定資産売却等による減損損失(1億47百万円)などが発生したものの、退職給付制度の変更により、確定拠出企業年金制度への移行部分についての退職給付債務減少による特別利益として退職給付制度終了益(2億7百万円)を計上した。
同社は、2017年1月1日を効力発生日として普通株式1株につき1.5株の株式分割を実施。17/3期の1株当たりの配当は、株式分割にともなう調整を行わず37円の予定。これは株式分割前1株当たり期末配当に換算すると55円50銭となり、実質的に20円50銭の増加となる。
 
 
システム運営管理事業の売上高は前期比3.0%増の120億70百万円。金融系のプラットフォーム開発業務も既存顧客の深耕拡大により売上が大幅に増加した。

ソフトウェア開発事業の売上高は前期比14.5%増の86億9百万円。制度改正や法改正対応等によって公共系の売上が大幅に増加した他、システム統合や更改対応により、金融系の売上も増加した。

その他事業の売上高は前期比4.3%増の8億75百万円。セキュリティ販売と海外現地法法人の売上が増加したものの、コンサルティングの売上高が減少した。
 
 
17/3期末の総資産は前期末比2億32百万円増加の105億52百万円。資産面では現預金や(株)テラコーポレーションの株式取得に伴う投資その他の資産増が、負債・純資産面では利益剰余金や退職給付制度の一部終了などによるその他の包括利益累計額の増加が主な要因。自己資本比率は69.0%と前期末比6.3ポイント上昇した。
 
 
前期に比べ、賞与引当金の増加、売上債権の減少、未払消費税等の増加などにより営業CFのプラス幅が拡大した。また、有形固定資産の取得による支出の減少などにより投資CFのマイナス幅も縮小し、フリーCFはプラスに転じた。財務CFは短期借入金を減少させたためマイナス幅が拡大した。期末のキャッシュポジションは若干高まった。
 
(3)トピックス
◎「Seceon (セキオン)OTM」販売開始
同社は、米国Seceon Inc.(本社:米国ウエストフォード、Founder & CEO:Chandra Pandey 以下Seceon)のAI(人工知能)・機械学習を活用した最先端セキュリティソリューション「Seceon OTM」の販売を開始した。AIセキュリティの普及が先行する米国では2015年のSeceon創業以来50社以上の企業に「Seceon OTM」が導入されている。今後、日本においても銀行や保険、教育機関、医療、小売りなど、幅広い業種・規模の企業の要望に応えていく方針。
「SeceonOTM」は、AIや機械学習、外部の脅威情報連携、ビッグデータの高速解析など、さまざまな機能や情報を駆使してネットワーク内の状況を把握し、侵入した脅威をいち早く検知する。AIによる最適化は、サイバーセキュリティ専門家による面倒で難解なチューニングを必要としないばかりか、対策が難しい内部不正やIoTデバイスのセキュリティ対策にも適している。加えて、「SeceonOTM」は、これまでSOC(Security Operation Center)にて手作業で行っていたセキュリティ運用を自動化し、顧客のセキュリティ対策コストを大幅に削減できる。更に、従来のセキュリティ製品ではウイルスプログラムの未定義により検知できなかった未知の脅威も、そのプログラムの振る舞いからリアルタイムに脅威を検知し、被害を最小化することが可能。
 
◎スマートグラスの業務活用開始
同社は、社内の定例業務におけるスマートグラスを活用した業務支援システムの運用に成功した。ウェアラブル端末の1つであるスマートグラスに注目し、現時点で業務活用可能なものを複数選定し、それを用いた業務支援システムを構築。具体的な業務内容は、サーバなどのメンテナンス業務の遠隔支援。遠隔地にあるデータセンターでの出張メンテナンスを1名の初級技術者と、1名の本部支援・再鑑技術者(ベテラン)の体制で実現。
これにより、以下の効果が期待できる。
①経費削減-出張作業人員を2名から1名に削減。
②生産性向上-作業者の視点で現場の状況を共有(ハンズフリーなので作業が中断しない)。
③作業ミスの最小化-状況に応じた正確な作業指示などを伝えることが可能。
④業務改善-現場での作業にマニュアルや作業指示書を持参する必要がない。
⑤人材育成-ベテランの後方支援により、新人でも作業が可能。
 
 
2018年3月期業績予想
 
 
前期比5.1%の増収、同28.0%の経常増益の計画
売上高は前期比5.1%増の226億50百万円の計画。引き続き金融機関を中心に顧客のIT投資の拡大が期待される。また、今後セキュリティ対策への投資の加速も予想される。こうした中、BOO(既存顧客に対し、コンサルティングからソフトウェア開発、システム運営管理、クラウド・セキュリティまで、複数のサービスを提供すること)の推進により、既存顧客の推進を図るとともに、新規顧客の獲得を目指す。
営業利益は同32.9%増の14億70百万円。不採算案件を防ぐ取り組みなどにより、収益性の改善を図る計画。売上高対営業利益率は、同1.4ポイント上昇の6.5%の計画。
1株当たりの配当は、期末37円と前期と同額の予定。予想の配当性向は41.2%。
 
 
今後の注目点
同社は、システム運営管理を中心とするストック収益の比率が高いことから、不況抵抗力が強く、比較的増収傾向を維持しやすい優れた収益構造を有している。一方で、同社が属する情報サービス業界は、好調な業界環境が継続しているものの、不採算案件の発生、外注費の増加、時間外労働の増加などのリスクが増大しており、予期せぬ大規模な費用の発生により業績が悪化するリスクも絶えずはらんでいる。こうした中、同社ではリスク回避の施策として、①社員とパートナーのパワーアップによる生産性の向上、②働き方改革、③徹底したプロジェクト管理を掲げている。これらリスク回避策の徹底により、市場が期待する利益成長を成し遂げることができるのか、今後のリスク回避策の成果が注目される。
また、世界中でサイバー攻撃や情報漏えい事件が発生している中、AIを活用したセキュリティ対策への注目が増している。様々なセキュリティベンダーが最先端のAIセキュリティ製品を開発し、アメリカを中心に導入が進んでいる。今後AIセキュリティが普及していく中、「Seceon OTM」がどのようなポジションを築いていけるのかについても注目していきたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
最終更新日:2017年3月13日