ブリッジレポート
(1433) ベステラ株式会社

プライム

ブリッジレポート:(1433)ベステラ vol.5

(1433:東証マザーズ) ベステラ 企業HP
吉野 佳秀 社長
吉野 佳秀 社長

【ブリッジレポート vol.5】2017年1月期業績レポート
取材概要「従来、鉄鋼への依存度が高かったが、電力との取引が増えており、売上の20~30%を占めるようになってきた。現在、大手電力会社の全てと取引が・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年4月4日掲載
企業基本情報
企業名
ベステラ株式会社
社長
吉野 佳秀
所在地
東京都墨田区江東橋4-24-3
決算期
1月末日
業種
建設業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年1月 3,846 447 464 292
2015年1月 3,060 384 388 219
2014年1月 2,056 176 178 110
株式情報(3/17現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,179円 8,305,200株 18,097百万円 12.8% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
15.00円 0.7% 43.35円 50.3倍 262.89円 8.3倍
※株価は03/17終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
ベステラの2017年1月期決算と2018年1月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
プラント解体のスペシャリストとして、製鉄、電力、ガス、石油等、プラント(金属構造物)の解体工事をマネジメントしている。“プラント解体の工法・技術”をコア・コンピタンスとし、国際特許も含めた15件の特許工法を有する(申請中5件)。エンジニアリング(提案・設計・施工計画)とマネジメント(監督・施工管理)に経営資源を集中しており、実際の解体工事は協力会社に外注するため、工事用重機や工事部隊を保有せず(資産保有リスクを回避)、材料等の仕入・生産取引も発生しない(在庫リスクを回避)。
社名の「べステラ(BESTERRA)」は英語の「Best(goodの最上級)」とラテン語の「Terra(地球)」を合わせたもので「素晴らしい地球を造っていこう」と言う思いが込められている。
 
【企業理念・行動規範】
「柔軟な発想と創造性、それを活かした技術力により地球環境に貢献します」と言う企業理念の下、下記の行動規範を掲げている。
 
行動規範
プロとしての責任を果たします。
我々は常に新しい技術を生み出し、「安全を何よりも優先」し、「より早く、より安く、より安全に」を合言葉に
さらに安心を加えて、お客様に提供します。
 
 
【事業の特徴】
17/1期はプラント解体事業が売上高全体の98.3%を占め、人材サービスが残る1.7%。プラントの解体工事は、製鉄・電力・ガス・石油等のプラントを有する大手企業が施主であり、多くの場合、施主系列の設備工事会社あるいは大手ゼネコンが工事を元請けし、同社が一次下請け、二次下請けとなっている。16/1期は、JFEグループのJFEプラントエンジ(株)、新日鉄住金グループの日鉄住金テックスエンジ(株)、戸田建設(株)、東京電力グループの(株)東京エネシスの上位4社向けの売上が全体の55.9%を占めた。
 
 
工事の進行に伴って発生するスクラップ等の有価物は、同社が引き取ってスクラップ業者に売却する。このため、同社は受注に際して有価物の価値を、材質、量、価格(鉄、ステンレス、銅等の材質毎の相場)等から総合的に見積り、それを反映した金額で交渉し、請負金額を決めている。会計上、有価物の売却額は解体工事に伴う収益の一部と位置付けられており、完成工事高に含めて計上している(16/1期は5億70百万円、売上高の15.1%)。尚、発注者(施主)が独自でスクラップ等の処分(売却)を行う事もある。
 
【強み -優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、特許工法等の知的財産-】
強みは、優良な顧客基盤、豊富な工事実績に基づく効率的解体マネジメント、及び特許工法等の知的財産。
製鉄、電力、ガス、石油等の大手企業のエンジニアリング子会社を中心とした優良な顧客基盤は与信の不安がない一方で、中長期にわたり継続して受注が見込める豊富な案件を有する。また、約40年間の実績に裏打ちされたプラント解体のトータルマネジメントは、これら優良企業から高く評価されており、参入障壁となっている。更に、環境対策工事等で蓄積してきた様々な技術やノウハウも強みであり、発生材の再資源化に関する豊富な知識と共に、顕在的・潜在的な知的財産となっている(特許取得済15件、同申請中5件)。
 
※ 季節的変動について(完成工事高実績)
同社の売上高(完成工事高)は顧客(施主)の設備投資計画に応じた季節性があり、第1四半期(2月~4月)及び第4四半期(11月~1月) に計上される割合が高くなる傾向がある。請負金額50百万円超、工事期間3ヶ月超、かつスクラップ等売却予想金額が工事請負金額の10%以下の工事については、工事進行基準を採用している。ただ、スクラップ等の有価物の引き取りのあるプラント解体工事は、工事の収益が最終のスクラップ売却時まで確定しないため、請負金額や工期にかかわらず完成基準が適用される。四半期業績の変動が投資家をミスリードする可能性があるため、同社は工事進行基準の適用拡大に向け、監査法人と話し合いを進めている。
 
 
進行基準:工事の進捗に応じて収益を計上
完成基準:工事が完成した時に収益を計上

進行基準工事の場合、工事量に応じて収益を計上できるが、完成基準を適用している大型工事が来期完成となった場合、工事を行っていても収益を計上できない。
 
 
2017年1月期決算
 
 
受注残の消化が順調に進み、前年同期比8.3%の増収、同30.8%の営業増益
第4四半期(11-1月)は受注残の消化が順調に進み、完成工事が増加した事で売上高が前年同期比8.3%増加。プラント解体作業の効率化に加え、スクラップ等売却の採算も改善し、売上総利益率が24.1%と前年同期に比べて1.9ポイント改善。人員増強等の先行投資に伴う販管費の増加を吸収して営業利益が2億17百万円と同30.8%増加した。
 
 
 
前期比8.7%の増収、同11.1%の営業減益
売上高は前期比8.7%増の41億82百万円。受注残の消化が進み前期比増収となったものの、売上計上が期ずれした工事が、進行基準適用工事と完成基準適用工事でそれぞれ1件ずつ発生したため期初予想に届かなかった。
進行基準適用工事では、仕様が変更され追加工事が発生した大型工事で追加の受注金額が期末までに決まらなかったため、当該工事で予定していた売上1億40百万円が18/1期に期ズレした。完成基準適用工事では、5億円の売上計上を見込んでいた工事の完成が18/1期にずれ込んだ(いずれも18/1期上期中に売上計上できる見込み)。上記2工事以外の工事合計が期初予想を1億22百万円上回ったが、期ズレの影響を吸収できなかった。

利益面では、上記要因で売上が想定を下回る中、売上計上が18/1期にずれ込んだ進行基準適用の大型工事において既に発生した原価を全て計上したため売上総利益率が21.0%と1.5ポイント悪化。一方、販管費は、人材採用、広告宣伝、3D計測事業の設備等の先行投資を計画通りに進めたため4億81百万円と同14.8%増加した。
尚、期末人員は前期末(47名)に比べて5名増の52名。売上計上ずれ込みの営業利益への影響は、進行基準工事△61百万円、完成基準工事△1億円。
 
 
 
同社の完成工事高は、顧客(施主)の設備投資計画に応じた季節性がある。17/1期は大型の進行基準工事があったため、平準化傾向にあったが、第4四半期に計上された割合(対通期売上比)は比較的高くなった。
尚、18/1期は、第2四半期及び第4四半期に計上される割合が比較的高くなる見込み。
 
 
受注高は前期比44.5%減の30億53百万円(前期の受注高には22億円の大型案件が含まれていた)。足元のプラント解体需要は旺盛だが、前期の受注が大型案件に押し上げられた反動と大型案件を確実に消化するべく受注を抑えた事が減少の要因。また、着工直前に注文書が発行されるケースも多く、受注高が市場動向とかい離する事も少なくないようだ。

一方、完工高は、6億40百万円の期ズレが発生したものかかわらず、41億12百万円と同8.8%増加した。
第4四半期の工事が順調だった事もあり、期末受注残高は23億03百万円と前期末比31.5%減少した。大型案件の進行中は、確実な施工を優先して受注を抑制するため、受注高・受注残高共に減少する。18/1期上期中に大型案件が完工するため、足元では18/1期半ば以降の施工案件の獲得に向け、受注活動のピッチが上がっている。
 
 
期末総資産は前期末に比べて9億99百万円増の42億22百万円。借方では、大型工事の進行で現預金が減少する一方、売上債権やたな卸資産が増加。貸方では、同様の理由で仕入債務が増加した他、大型工事に備えた資金として借入金を積み増した。
流動比率190.9%(前期271.8%)、固定比率18.8%(同20.4%)、自己資本比率51.7%(前期末63.6%)、投下資本利益率10.7%(同16.7%。IPOによる自己資本の充実が低下した要因)。
 
 
営業CFのマイナス幅拡大は前期からの大型工事の受注及び進行によるもの。受注好調時は運転資金の増加で営業CFがマイナスになりがちで(協力会社への支払いは1ヶ月後だが、受注先の支払いは3~4ヶ月後)、工事の端境期には営業CFが黒字になる。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
* ROA = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率
 
2018年1月期業績予想
 
 
前期比36.3%の増収、同41.9%の営業増益
売上高は前期比36.3%増の57億円。期初の受注残高23億03百万円のうち、21億20百万円(大型案件13億80百万円を含む)が売上計上される他、現在、見積提出中で受注確度の高い「有力案件」25億円、及び過去の実績から推定して受注の可能性が高い「予想案件」10億80百万円を織り込んだ。
営業利益は同41.9%増の5億64百万円。利益面では、人件費(期末従業員数57名→79名)、研究開発費(7.6百万円→39百万円)、募集費・採用費(11百万円→26.5百万円)を中心にした販管費の増加を売上の増加とスケールメリットや生産性の向上による売上総利益率の改善で吸収する。
 
前中計目標との差異
売上高は前中計の目標値と同額。前期からの期ズレ分6億40百万円が計上されるものの、協力会社や同社人員が期ズレ分に対応するため新規案件を抑えた他、4億円を見込んでいた人材サービスの売上を1億円に引き下げた。利益面では、期ズレ分の1億61百万円が計上されるものの、人件費、研究開発費、及び募集費・採用費を上積みしたため、40百万円の上振れにとどまる見込み。
 
 
(2)利益配分方針、株主還元
利益配分については、「将来の成長への投資」、「事業基盤強化のための内部留保」、及び「40%を株主様への利益還元(配当)」を3本柱としている。このうち成長投資については、設備投資(ロボット、3D計測機器)、技術開発投資(工法開発、ロボット開発)、システム投資(3Dシステム、BIM・CIM)、及び戦略的事業投資(M&A等)に合理的に配分していく。

また、株主優待として、2018年1月期以降、権利確定日(1月末)に保有する株数に応じて下記の通りQUOカードを贈呈する。この他、2017年2月1日に1:3の株式分割を実施した(2016年2月1日の1:2の株式分割に次ぐ、上場後2度目)。
 
 
(3)資本政策
2017年4月4日に有償ストックオプションを発行する他、同年4月6日から11日にかけて10万株の立会外分売を実施する。 有償ストックオプションは、中長期的な業績拡大及び企業価値の増大を目指すにあたり、より一層の意欲及び士気を向上させ、結束力を更に高める事を目的に役員及び従業員に対して発行される。一方、立会外分売については、株式の分布状況の改善と流動性向上が目的。同社は株式の東京証券取引所本則市場(市場第一部または市場第二部)への市場変更申請準備を進めている。
 
 
中期経営計画 2019(18/1期~20/1期)
 
「日本のプラント解体リーダー」、「世界へのプラント解体技術提案者」を目指す長期ビジョンの下、今回、18/1期から20/1期にかけての3カ年を対象とする「中期経営計画2019」を策定した。最終期の目標として、「売上高84億円」、「営業利益9.75億円」、「ROE20%以上」を掲げ、この目標達成に向け、引き続き基本戦略(成長戦略の推進、制度・仕組みの革新、新しい社会価値の創出)に基づく取り組みを進めていく。尚、同社は経営環境の変化等に柔軟に対応するべく、中期経営計画を毎期改定している(ローリング方式)。
 
【前中期経営計レビュー】
前中期経営計(最終の19/1期目標:売上高70億円、営業利益6.5億円、ROE17%以上)では、特許工法、3D関連(パーフェクト3D・3D解体)、施工管理体制強化、及び営業力強化に取り組み成果を上げた。特許工法では、出願中だった「集合型煙突解体用足場装置およびその装置を用いた集合形煙突の解体方法」と「磁気吸着車両の群移動体」の2件で特許を取得。3D関連では、パーフェクト3D(「計測(視る)、「施工(壊す)」、「管理(IoT・自動化)」の3D化)の一環として、東京スカイツリーから墨田区役所周辺区域の3次元点群データ化を手掛け、3D解体の一環として、京都大学、山口大学、及び特定非営利活動法人国際レスキューシステム研究機構と「点群3D MAP利用ロボット」の共同研究を開始した。また、東京都から建設業許可業種区分「解体工事業」の許可を受け、施工管理体制を強化した他、京葉地区の営業力強化を目的に千葉事務所を新設した。
 
 
今後30年間で建設後50年以上経過する施設の割合が加速度的に増加するが、プラントも同様で、1960年代の高度成長期以降に建設された設備の老朽化が急速に進み、解体・更新の要に迫られる。また、産業競争力強化のための、企業再編、海外移転、リストラクチャリング等で余剰プラントも増加する。加えて、老朽化した設備を把握できなくなっており、設備全体の把握、管理のニーズも増えている。
 
 
高度経済成長期より積み上げられた社会資本ストック(社会インフラの現在価値)は約230兆円あり、老朽化等により解体、更新の必要性が高まっている。プラントも同様で、物理的な老朽化に加え、経済的陳腐化等により、解体、更新需要の増加が予想される。更新費用は今後50年で190兆円を要し、この内約30兆円は更新ができないと推測されている(解体される)。加えて、戦略的アセットマネジメントが重要となり、設備の全体把握のニーズの高まりも予想される。
 
政府も高効率化に向けたプラント業界の再編や再構築を推進
産業競争力強化法及びエネルギー供給構造高度化法の施行やエネルギー使用合理化等事業者支援補助金の増額、建設業の許可業種区分における「解体工事」の新設といったプラントの解体・更新を後押しする各種政策も講じられている。
 
・産業競争力強化法及びエネルギー供給構造高度化法の施行
産業競争力強化法及びエネルギー供給構造高度化法は、高効率化を目的にプラントの再編や再構築を促すもの。両法の施行で老朽化設備や余剰設備の廃棄等の増加が期待できる。
 
・エネルギー使用合理化等事業者支援補助金の増額
エネルギー使用合理化等事業者支援補助金は発電設備の更新等に際して補助金を支給する制度。2015年度補助金410億円、2016年度同515億円、2017年度同510億円。
 
・建設業の許可業種区分に「解体工事」新設
建設業法の改正に伴い、43年ぶりに建設業許可業種区分に「解体工事業」が新設された(これまで「とび・土工工事業」の業種区分の中に含まれていた)。「解体工事業」の新設は解体工事における施工管理体制の強化(安全品質向上)を目的としており、解体工事のトレンドは安全品質重視。同社にとって追い風である。それまでは「とび・土工工事業」の許可を得ていれば解体工事を行う事ができたが、今回の改正に伴い、1件500万円以上の解体工事を実施する場合は、「解体工事業」の許可が必要となる(2016年6月の施行日から3年間は経過措置として、既存の「とび・土工工事業」の技術者を配置しても解体工事の施工が可能)。
 
顧客業界別の動向(同社の独自調査による)
電力業界のプラント・ストックは約13.6兆円(同社試算。以下同じ)。火力の認可・届出発電所数(1,000kW以上)は185箇所、総出力143,286千kW。原子力発電所数59基(廃止、解体中含む)、総出力51,103千kW。この他、水力、風力、太陽等46,233千kW。火力発電所の老朽化は顕著で、特に「環境問題(CO2排出量)」と「発電効率(高コスト)」の観点から、石油火力発電所の解体の増加が予想される(ボイラ、煙突、油タンクの解体増)。加えて、「発電効率」の観点からコージェネレーションや再生可能エネルギー等の利用が促進され、火力、水力、風力等、発電設備のリプレイス需要が予想される他、老朽化により廃炉となる原発の解体等の増加も見込まれる。

製鉄業界のプラント・ストックは約1.7兆円。高炉数32箇所、粗鋼生産量90.4百万トン。電炉数44箇所、普通電炉生産量8.8百万トン、特殊鋼生産量4.2百万トン。製造業の海外移転で合併や再編の渦中にあり、「生産能力の増強」から「余剰設備の合理化」に投資が変化している。

石油・化学業界のプラント・ストックはは約28.5兆円。製油所数23箇所、精製能力5,792(千バレル/日)。石油化学コンビナート14、エチレン生産能力7,210千トン(エチレンを原材料としない工業品のプラントは試算未算入)。省エネ化の進展で国内需要は減少傾向にあり、石油各社は精製能力を削減中。また、エネルギー供給構造高度化法による供給能力適正化も進められている。」

上記の他、製造業の各業界において競争力強化のための海外移転や合併・再編が進みつつある。製紙業界では、王子ホールディングス(王子製紙×本州製紙×神崎製紙)が誕生し、業界2位の日本製紙が大昭和製紙と合併。造船業界では、ユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイマリンユナイテッドジャパンが合併し、マリンユナイテッドが誕生。セメント業界では、秩父小野田と日本セメントが合併し、太平洋セメントが誕生。電機業界では、三菱重工業と日立製作所の事業統合で三菱日立パワーシステムズが誕生した他、シャープや東芝等で家電事業の合理化が進められた。
 
 
工法の充実(プラント解体戦略)
同社は、主要な特許工法であり実用化が進んでいる「リンゴ皮むき工法」の他、「ボイラの解体方法」等、多くの特許工法を保有しており、今後は、プラントを所有する様々な企業に対し、特許工法を使用した解体方法を提案し、実用化に繋げていく考え。また、ロボット工法による安全性、効率性の向上を目的とした産学連携による新型ロボットの開発にも取り組んで行く他、環境関連工法の強みを活かし、今後の要増が見込まれる、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシン、アスベスト等の有害物質が伴う工事の受注拡大にも取り組んで行く。

尚、環境関連工法では、屋外屋内を問わず対応が可能な、無火気工法・準無火気工法をアピールしていく。PCBは、現在、有害物質として全廃されているが、優れた熱安定性や化学的安定性(電気絶縁特性)から、長年、トランス(変圧器)やコンデンサ(蓄電器)に使われてきた。プラントの解体工事に伴いトランスやコンデンサを処理するケースが多いが、PCBを高温で処理するとガス化するため吸引する恐れがあり、解体・撤去に際して火器(ガス溶断等)が使えない。同社はセーバーソー(往復運動する鋸刃により切断する)等による無火気工法・準無火気工法を得意としている(モーター焼きつき対策や刃を再生利用する等の工夫で業界常識を超える厚みを切る事が可能)。
 
事業領域3本柱(工事・3D・人材)の確立
人材サービス、3D計測 BIM、CIMといったプラント解体周辺分野のサービスを拡大する事で、プラント解体トータルマネジメント(戦略的アセットマネジメント)を強化する。
 
 
建造時(数十年以上前)に設計されたプラント構造物はそのほとんどが紙面データにより管理されているが、長期間にわたる改修や経年劣化等の理由により現状設備と紙面データの内容が異なっているものがほとんどである。同社は3D技術を駆使して、設備計測と応用計測(航空レーザー・走行型モービルマッピングシステム・地上型レーザー・港湾部ソナー等を駆使した3D計測)を行い、設計データを再構築すると共に、このデータを解体・改修(3D解体)に活かして行く。

そして、長期的には、プラント3Dマスターを中核とした新しい社会価値の創出に取り組んで行く。プラント3Dマスターでは、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)を中心として、パーフェクト3D(3D点群データ・3DCADデータ)、各種設計図書、2DCADデータ、写真、動画等をクラウド化して一括管理するシステムを構築する。クラウドでプラントの総合データを管理する事により、各現場と本社での共有化やタブレット端末による工程管理等が可能になり、プロジェクト管理のデータベースとして利用できるようになる。また、プラント3Dマスターやパーフェクト3Dのデータを利用し、SLAM(自己位置認識機能・MAPによる自律走行)技術を加える事で、自律行動型ロボットの開発も進めていく。
 
大規模工事施工体制の確立
同社は解体工事の施工管理に特化しており、全ての工事に、工事現場の工程管理、安全管理、行政対応等をマネジメントする監督を配置する必要がある。現状では、工事1件あたりの金額が大型化しているため、増員に頼る事なく増収基調を維持できているが、「中期経営計画 2019」の達成や長期ビジョンの実現には人員の増強を避けて通れない。このため、全社を挙げて採用活動に取り組んでいく。
 
 
M&A等の提携促進
プラントライフサイクルマネジメント、3D計測ノウハウを活かした新ビジネス、海外での新たな事業展開等、様々なシナジーを生み出すべく、18/1期より、M&Aを含めて、提携を具体的に進めていく。提携先としては、設計会社、エンジニアリング会社、測量会社等を想定しているが、M&Aについては慎重に対応していく考え。売上高100億円程度までは、M&Aに頼る事無く、自力で業容を拡大させたいと言う。
 
【利益配分方針・株主還元】
既に説明した通り、「将来の成長への投資」と「事業基盤強化のための内部留保」に配慮しつつ、配当性向40%を目途に配当を実施していく考え。
 
 
今後の注目点
従来、鉄鋼への依存度が高かったが、電力との取引が増えており、売上の20~30%を占めるようになってきた。現在、大手電力会社の全てと取引があり、直接受注も増えていると言う。また、業界再編が進む石油を中心に石油・ガス関連も、売上高の10%程度に上昇しているとの事で、客層が広がっている。加えて、客数も増えているようだ。
また、工事の大型化も昨今の特徴である。全ての工事に工事監督を配置しなければならない同社にとって、大型工事は労働生産性が高く収益性の改善要因となる。また、大型工事の施工実績は更なる大型案件の呼び水となる上、その経験値も大きな財産となる。ただ、昨今増えている直接受注で大型工事を受注すると、受注採算が良い反面、今回のように仕様変更や追加工事が発生した場合、その影響をダイレクトに受ける事になる。仕様変更や追加工事は建設・解体事業者が避けて通れない問題だが、業容を拡大させる事で業績に与える影響をある程度吸収できるようになる。同社は順調に業容を拡大させているが、未だその途上にあるため、当面は17/1期のように仕様変更や追加工事の発生で業績予想の下方修正を余儀なくされるリスクが残る。成長企業であるが故の悩みだが、1960年代の高度成長期以降に建設されたプラントが解体・更新期を迎えるため、良好な事業環境が長期間続く事は明らかで、業界No.1の同社がこの恩恵を受けないはずがない。目先の売上・利益や受注・受注残に一喜一憂するのではなく、長期のトレンドで考える心づもりが必要だ。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書      更新日:2016年04月25日
基本的な考え方
当社では、健全な経営の推進と社会的信頼に十分に応えるべく、コーポレート・ガバナンスを最も重要な経営課題として位置付け、経営の健全性・透明性および公平性を高めることに重点を置き、法令遵守を社内に徹底させることは当然のこととし、役員全員が常に「法令違反は即経営責任に直結する」との危機感を持ち経営に臨んでおります。具体的には、経営の意思決定、職務執行および監督ならびに内部統制等について、適切な体制を整備・構築することにより、法令・規程・社内ルールに則った業務執行を組織全体に周知徹底しております。
また、株主重視の経営に徹するべく、「適正な株価形成」・「株価の持続的上昇」のための経営改革を実現し、経営のチェック機能を強化することでグローバルに通用するコーポレート・ガバナンスを確立することも重要であると考えております。その結果が、社会からの信頼の獲得に繋がることとなり、自ずと企業価値も高まり、株主の皆様にも満足して頂けるものと考えております。
 
<実施しない主な原則とその理由>
当社は、コーポレートガバナンス・コードの各基本原則を実施しております。