ブリッジレポート
(9837) モリト株式会社

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ブリッジレポート:(9837)モリト vol.8

(9837:東証1部) モリト 企業HP
一坪 隆紀 社長
一坪 隆紀 社長

【ブリッジレポート vol.8】2016年11月期業績レポート
取材概要「第2四半期に通期業績予想の下方修正を行い、修正後予想に対しても第2四半期実績の進捗率は利益で約4割と低調な推移となっていたが、結果的には予・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年2月28日掲載
企業基本情報
企業名
モリト株式会社
社長
一坪 隆紀
所在地
大阪市中央区南本町4-2-4
決算期
11月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年11月 40,086 1,767 1,647 1,181
2015年11月 43,293 1,721 1,871 1,432
2014年11月 35,862 1,429 1,729 1,270
2013年11月 33,145 1,390 1,699 1,081
2012年11月 31,521 1,389 1,405 787
株式情報(1/30現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
924円 28,451,000株 26,288百万円 3.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
28.00円 3.0% 105.44円 8.8倍 1,027.96円 0.9倍
※株価は1/30終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。
 
モリト株式会社の2016年11月期決算概要等について、ご紹介します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
靴・衣類などに紐を通す穴に取り付ける環状の金具である「ハトメ」をはじめとし、ホック、マジックテープ®などの服飾の付属品や、自動車の内装品等の企画・開発から製造に加え、卸・流通までを一貫して手掛ける専門商社。
創業100年を超す歴史の中で培われた高い信頼性、高シェア、グローバルネットワークなどが強み。
2016年11月末現在、連結子会社は国内4社、海外12社の合計16社。
 
【沿革】
大阪の呉服商で奉公人として働いていた創業者・森藤寿吉氏が、1908年(明治41年)に独立し、ハトメ、ホックの仲買商「森藤商店」を一人で開業。大正時代に入りファッションの洋装化が進むのに伴い、靴の需要も拡大し、急成長を遂げる。1937年にはホックをスマトラ、ジャワへ、靴ひもをヨハネスブルグ(南アフリカ)、イギリスへ輸出するなど国際化も進めた。太平洋戦争後は、カラーナイロンファスナーやマジックテープ®の販売を開始したほか、1990年代に入り汎用資材の拡販を目指し、自動車の内装品、カメラのストラップなど生活産業資材関連事業にも進出し事業ドメインを拡大した。海外事業も積極的に展開。1989年、大阪証券取引所第2部に上場し、2013年7月の東証・大証の統合に伴い東京証券取引所第2部に移行。2016年12月、東証1部に上場した。
 
 
【ビジョンなど】
1.創業理念
「積極・堅実」
創業期より培われてきた同社の精神。「自ら進んで判断・行動することで確実に成果を上げることが出来る」という意味を表す。
また、「他人に勝つためには常に他人の意表をつくアイデアが必要。日頃から何かないかと考えながら商売せよ。」という、創業者・森藤寿吉氏の精神が同社事業のバックボーンとなっている。
 
2.経営理念
「パーツでつなぐ、あなたとつながる、未来につなげる」
(1)多彩なパーツを全世界に供給し、ジャンルを超えた無限の市場作りを追求します。
(2)お客様の要望を形にし、人々の豊かな暮らしにつながる本物のもの造りを実現します。
(3)ファッション性、機能性、快適性、安全性といったトータルな視点で価値創造力を発揮し、全ステークホルダーと一体になって未来創りに貢献します。
 
 
3.経営ビジョン
『存在価値を創造する、あたらしい「モリトグループ」の実現』
 
4.企業行動指針
 
【事業内容】
ハトメ、ホック、バックル、ファスナーなど服飾の付属品を扱う「アパレルコンポーネント事業」、カメラ・携帯端末用のストラップ、靴の副資材や靴の中敷きなどフットケア商品を扱う「プロダクト事業」、マットエンブレム、ドアグリップなど自動車の内装品を中心とした「輸送事業」の3事業で構成される。
どの事業においても、ファッション性、機能性、快適性、安全性等を勘案し、市場や顧客ニーズに沿った商品の企画、開発からはじまり、製造、流通、販売までを一貫して手掛けている。
報告セグメントは、日本、アジア、欧米の3セグメント。
 
 
2016年11月期の売上構成比45%。
ハトメ、ホック、バックル、ファスナー、リベットなど服飾品やフットウェアの付属品を、主として卸、商社、代理店などを通じて同社の最終顧客である国内外のアパレルメーカー等に納入している。
ファーストリテイリング、GAPなどとは直接取引を行っている。
海外における同社の知名度は高く、GAP、H&M、ZARAといったメーカーとは10年から20年以上という長い取引関係にある。
 
 
 
2016年11月期の売上構成比44%。
カメラ・携帯端末用のストラップ等を映像関連の電機メーカー等に納入しているほか、靴の副資材、靴の中敷き、靴クリームなどフットケア商品は同社オリジナル製品として自社ブランドで販売している。
映像機器資材では、キヤノン向け45%、ニコン向け35%などとなっており、その他、オリンパス、京セラ等が顧客となっている。
 
 
2016年11月期の売上構成比11%。
主としてマットエンブレム、ドアグリップ、アームレストといった自動車の内装品を中心に取り扱っている。
自動車関連が約9割を占める。内半分がトヨタ系顧客向けで、次いで日産系3割、ホンダ系1割となっている。
 
【特長と強み】
①安定した業績推移
沿革でも触れたように、創業以来ハトメ、ホック、マジックテープ®などを中心にアパレルコンポーネント事業を展開してきた同社だが、汎用資材の用途拡大を進め、輸送事業を含むプロダクト事業をスタートさせ、現在ではアパレルコンポーネント事業で約半分、プロダクト事業および輸送事業で約半分となっている。
この事業ポートフォリオは同社の業績に安定性をもたらしており、戦後2度の石油ショック、世界的な経済危機「リーマンショック」を含めても赤字に陥ったことが無い。
 
②多くのアイテムで高いシェア
下表の様に様々な商品アイテムにおいて高いシェアを有している。
価格のみで見れば同社よりも低価格で供給する新興国の企業もあるが、企画・開発から製造、流通にわたり一貫し、加えて様々な状況にも適切に対処できる対応力、長い歴史の蓄積の中で培った安全性も含めた品質の高さ等で発注元からの信用、信頼度は高く、それが高シェアにつながっている。

例えば、同社では顧客のサンプル製作段階から適切な技術的アドバイスを提供したり、顧客の要望に合わせた微妙な色味の調整を何度も繰り返すほか、本生産に入ってからも定期的にチェックを繰り返すなど、単に完成品を販売するのではなく、取引開始に至るまで多くのハードルをクリアし、川上から川下までの全工程を仕組みとして顧客に提供している。こうした付加価値の提供が海外の有名ブランドを中心とした顧客から高く評価されている。
 
 
 
③グローバルネットワーク
企画・開発は主として日本で行う一方、欧州、北・中・南米、アジア太平洋、アフリカに製造・販売の拠点を多数有している。
 
 
同社ではグローバル成長企業を目指しグローバルな生産拠点、販売網の拡充とグローバル経営を支える内部体制の構築を進めている。
これが計画通りに進捗し、より強固なグローバルネットワークが構築されれば、同社の競争優位性は一段と強固なものとなるだろう。
以上の3点に加え、「ユニークなポジショニング」も同社の特徴の一つと言って良いだろう。
同社が取り扱う品目一つ一つをとれば競合先もあるが、これだけ多彩な品目を取扱いながら、その企画・開発から製造、流通、販売までを一貫して手掛け、売上高400億円を超すというボリュームを実現している企業は世界的にも他に見当たらないということだ。
 
 
16年11月期のROEは、売上高当期純利益率および総資産回転率の低下により前期に比べ0.8%低下した。
第7次中期経営計画において目標数値は掲げていないが、マージンおよび資産効率性の改善が期待される。
 
 
2016年11月期決算概要
 
 
円高影響で減収・営業増益
売上高は前期比7.4%減の400億86百万円。地域別には日本、アジア、欧米共に減収だったが、円高の影響が減収幅の80%以上を占めている
粗利率は1.2%上昇したが減収により粗利額は減少。人件費および一般管理費の減少で営業利益は同2.7%増の17億67百万円の増益となった。前期の為替差益48百万円が為替差損155百万円に転じ経常利益は同12.0%減少の16億47百万円となった。前期の関係会社整理損4億95百万円が無くなったが、投資有価証券売却益および固定資産売却益が減少したため、当期純利益も同17.5%減少した。
修正予想に対して売上高は未達だったが、営業利益、経常利益は上回った。
 
 
◎日本
前期比1.1%減収、11.4%増益

<アパレルコンポーネント>
大手量販店向け付属品、アウトドア、スポーツアパレルメーカー向け付属品が増収だった。一方でレディースアパレル向け付属品は減少した。

<プロダクト>
映像機器向け付属品は好調だったが、サポーター等の健康関連向け付属品・製品、マジックテープ、中敷等の靴回り商品が減収だった。
代理店の絞り込みなど利益率改善策が一定の効果を示した。

<輸送>
自動車メーカーの生産台数の減少、熊本地震による影響などから減収。前期好調だった軽自動車向け付属品も減収だった。
 
◎アジア
前期比19.9%減収、4.5%増益。
<アパレルコンポーネント>
香港での欧米ベビー服メーカー向け付属品、上海での日系アパレルメーカー向け付属品が減収だった。

<プロダクト>
タイでの映像機器向け付属品が減少した。

<輸送>
タイでの日系自動車メーカー向け自動車内装品は増収だったが、上海での日系自動車メーカー向け自動車内装品が減収だった。
 
◎欧米
前期比19.0%減収、46.6%減益。
<アパレルコンポーネント>
米国小売生産調整のため、アパレル、スポーツグッズなどアメリカ内需向け付属品が減収だった。

<プロダクト>
欧州で映像機器向け付属品が減収だった。

<輸送>
欧州自動車メーカー向けの自動車内装品(マットエンブレム)の企画が詩集に変更になり減少した。
また、米国日系自動車メーカー向け売上も為替の影響により減収となったが、外貨建てでは前年比17%増と堅調だった。
 
 
現預金、売上債権の減少等で流動資産は前期末比10億39百万円減少した。有形固定資産の減少等で固定資産は同54億56百万円減少し、資産合計は同64億77百万円減少の408億53百万円となった。
短期借入金の減少で流動負債は同49億81百万円減少した一方、社債の発行で固定負債は同3億57百万円増加し、負債合計は同46億24百万円減少の115億92百万円となった。利益剰余金は増加したが、自己株式の増加、円高に伴う為替換算調整勘定の減少などで純資産は同18億52百万円減少の292億60百万円。この結果、自己資本比率は前期末に比べ5.9%上昇し71.6%となった。
 
 
営業CFは利益減、法人税等の支払額増などで前期よりもプラス幅は縮小した。
投資CFは有形固定資産の売却等でプラスに転じ、フリーCFのプラス幅は拡大した。
財務CFは社債の発行はあったものの短期借入金の減少などでマイナス幅は拡大した。
現金及び現金同等物残高は前期末に比べ5億円減少した。
 
 
2017年11月期業績予想
 
 
増収増益
売上高は前期比7.3%増の430億円の予想。各地域とも増収予想で、アジアは2桁の増収を見込んでいる。
営業利益は同1.8%増の18億円を予想。為替レートは106円/USDの前提。
第7次中期経営計画の2年目にあたる今期は、日本発付加価値商品の開発とグローバル展開による収益拡大を要とし、ASEAN、中国、欧米のみならず未開拓市場での事業についても取組みを加速させる。
 
 
株主還元については、前期までは継続的配当の実現をベースに「配当性向30%、連結自己資本配当率(DOE)1%維持」を基本方針としていたが、今期より、「配当性向50%以上、DOE1.5%維持」に引き上げる。
今期の配当は、中間14.00円/株、期末14.00円/株の年間合計28.00円/株の予想。(中間、期末にはそれぞれ3.00円/株の東証1部上場記念配当が含まれている。)
配当性向は26.6%となるが、記念配当を除いた普通配当22.00円/株と特別な損益等を除いた親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向は50%以上となる。
また、2017年1月25日には上限70万株、7億円の自己株式取得を行うと発表した。取得期間は2017年1月25日から2017年2月21日。

一方で、株主還元の中心を配当と位置付け、株主優待の廃止も決定した。
 
 
中期経営計画の進捗状況
 
①グループ収益基盤の拡大強化
スコーヴィルに次ぐM&Aを検討中。規模拡大やシナジー効果を追求する。
北米自動車市場向けの生産拠点を中米に開設する準備を進めているほか、米国西海岸での事業拡大を進める。
加えてBtoCビジネスへの取り組みも検討しているほか、IoTに対応した産学連携も視野に入れており、従来の発想の延長線上ではないビジネスの実現を目指す。
 
②資本政策
最適資金調達方針の策定とともに、その調達資金による物流拠点の再構築を進めていく。
 
③内部統制の強化
現在も様々な制度を導入しているが、男性社員の育休制度、残業時間の更なる削減など、人材の活性化につながる制度の導入、ダイバーシティ経営の推進に注力する。
コーポレートガバナンス・コードについては、自社らしさを把握してしっかりと適切に対応していく。
 
 
スコーヴィルとの取り組み
 
2014年にM&Aしたスコーヴィルについては着実にその効果が現れている。
2016年11月期においてはヨーロッパ倉庫の統合および香港事務所の統合が完了した。今期から年間で約3,000万円のコスト削減につながる。またシナジーによる売上高は1.5百万USDであった。
2017年11月期のシナジーによる売上高は前期を大きく上回る4.5百万USDを目標としている。
今後はモリトとスコーヴィルの拠点の統廃合を進め、更なる効率化を進めていく考えだ。
 
 
今後の注目点
第2四半期に通期業績予想の下方修正を行い、修正後予想に対しても第2四半期実績の進捗率は利益で約4割と低調な推移となっていたが、結果的には予想を上回る着地となり、年度後半は巻き返すことができたようだ。
今期もその流れを受けて前期は揃って減収となった3地域とも増収を見込んでおり、東証1部上場、株主還元強化もあり、一方で株主優待を廃止したものの、株価は堅調な展開となっている。
今期の営業利益は前期に続き過去最高更新を予想しており、その進捗を注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
更新日:2016年8月31日