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(3633) GMOペパボ株式会社

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ブリッジレポート:(3633)GMOペパボ vol.3

(3633:JASDAQ) GMOペパボ 企業HP
佐藤 健太郎 社長
佐藤 健太郎 社長

【ブリッジレポート vol.3】2016年12月期業績レポート
取材概要「2016年12月期より新セグメントとして計上されることとなった「ハンドメイド事業」だが、売上構成比は2015年12月期の10.2%から17.1%へと拡大し・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年2月28日掲載
企業基本情報
企業名
GMOペパボ株式会社
社長
佐藤 健太郎
所在地
東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年12月 6,890 108 135 153
2015年12月 5,697 -621 -597 -797
2014年12月 4,533 724 742 410
2013年12月 4,165 725 743 408
2012年12月 3,809 686 699 396
株式情報(2/3現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
3,530円 2,634,154株 9,298百万円 14.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 - 0.00円 - 425.47円 8.3倍
※株価は2/3終値。発行済株式数、ROE、BPSは直近期決算短信実績(連結)より。DPS、EPSは子会社吸収合併に伴い個別の数値。
 
GMOペパボの2016年12月期決算概要などをご紹介します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
インターネットを使って自己表現したい個人ユーザーに対し、レンタルサーバー、ドメイン取得、オンラインショップ構築ASPなど各種サービスを提供。内製化による多様なサービス提供、独自の企業文化などが特長・強み。
既存のストック事業の安定収益に加え、2012年にスタートしたハンドメイド作品のCtoCハンドメイドマーケット「minne」(ミンネ)による更なる成長を目指している。
 
【沿革&社長プロフィール】
2003年1月、同社創業者である家入 一真(いえいり かずま)氏が個人向けホスティング事業を目的とし、有限会社paperboy&co.を設立した。
当時日本におけるインターネット環境は既に草創期から普及期に入ってはいたものの、ウェブサイトを通じて情報を発信するためには自らサーバーを持たないと活動ができない時代で、各種サービスは法人向けが主流で価格も高額であり、個人が気軽に利用することは難しかった。

そうした中同社は、「自己を表現したい個人」にインターネットのインフラを安価に提供することを目指し、月額数百円でのホスティングサービスを開始した。また1年後には、ドメイン取得代行サービスを開始するなど、インターネットを利用して情報発信、自己表現をしたい個人ユーザーのニーズを多角度から捉えて事業は順調に拡大した。
さらに当時米国で普及の兆しが見えていたブログにもいち早く注目して日本語で利用できる環境を構築したことも、成長の大きな原動力となった。
2004年3月にはGMOインターネット株式会社(当時:グローバルメディアオンライン株式会社)を割当先とした第三者割当増資を実施し、GMOグループの一員となった。
当時、paperboy&co.に対しては複数の大手インターネット企業が強い関心を持ち、資本参加を申し入れていたが、法人中心にサービスを展開していたGMOグループが、シナジー効果や新サービスの作り易さ等から最適と判断した。
その後も、オンラインショップ構築ASPサービス、クリエイター向けレンタルサーバー提供サービス等の新サービスを相次いでリリースし業績は順調に拡大。2008年12月、JASDAQ市場に上場し、2014年4月、現社名に商号を変更した。

佐藤 健太郎社長は1981年1月生まれ。自らHPの制作などを行い、学生時代から家入氏に乞われ同社の前身会社の手伝いをしていた同氏は、2003年1月同社設立に参加。社長室長、代表取締役副社長経営企画室長などを務めた後、2009年3月に代表取締役社長に就任した。GMOインターネット社の取締役でもある。
 
【経営理念など】
以下のような、経営理念やミッションを掲げ、個人ユーザーに対しより魅力的でより使いやすいインターネット環境を提供する事を目指している。
 
 
【事業内容】
以上の、経営理念やミッションの下、「インターネットで何かを始めたい」個人ユーザーに対し様々なインターネットサービスを利用しやすい価格で提供し、インターネットを通じた個人の表現活動を支援している。
事業は「ホスティング事業」、「EC支援事業」、「ハンドメイド事業」、「コミュニティ事業」の4分野を中心に構成されている。
 
 
<ホスティング事業>
ウェブサイトやホームページを開設するためのサーバーや各種機能、ドメイン等を提供。各サービスの利用料が主な売上となっている。
 
 
<EC支援事業>
電子商取引(EC)の運営を支援するオンラインショップ構築サービス、オンラインショッピングモール運営、店舗ホームページ構築サービスを格安の料金で提供。サービスの利用料金や手数料を主な売上としている。
 
 
<ハンドメイド事業>
現在同社が育成に最も注力しているのがハンドメイド作品のCtoCハンドメイドマーケット「minne」である。
 
 
<概要>
2012年にスタートした「minne」は、自分が制作したハンドメイド作品を発表・販売したい作家と、一点ものや個性豊かな作品を購入したい消費者をインターネット上でつなぐ CtoCのハンドメイドマーケット。
2016年12月末現在、登録作家数30.7万人、出品作品数463万点と国内最大のサービスへと成長しており、今後もさらに拡大のスピードを上げ、圧倒的なNo.1を目指している。
成長スピードを加速させるための様々な新企画を社内で検討している中で、「自己表現者を支援する」という同社の方向性に合致していることから、同サービスの開発に着手した。
 
<市場規模と成長の背景>
インターネットを介して消費者間でモノの売買やサービスの提供を行う「CtoC」ビジネスが急速に拡大している。
オークション、フリーマーケット、チケット売買、民泊など扱うモノやサービスは様々であるが、「minne」が取り扱う国内ハンドメイドの市場規模及び推移を同社では以下の様に推定している。
 
 
規模はまだ小さいものの、市場が急速に拡大する中、「minne」はそれを大きく上回るスピードで流通額が拡大している。
 
*CtoC市場成長の背景
CtoC市場の成長には、主に以下の3つの背景があると言われている。

①スマートフォンの普及
PCを用いて作家が自分の作品を出品する場合、作品の撮影、PCへの画像取り込み、説明原稿の入力・アップといった作業が必要となるが、現在は多くのサービスがスマホに最適化しているため、スマホのカメラで写真を撮影し、必要なテキストをフォームに入力するだけで簡単に出品することができ、出品のハードルが大きく下がっている。

②所有からシェアへの意識の変化
大量生産・大量消費の時代から、環境やサステナビリティなどモノを大切にする考え方が普及し始めたことで、自分が所有していても使わないものをシェアする「シェアリングエコノミー」が拡大しており、オークション、フリーマーケットなどはまさにそうした流れに対応したものである。

③個人が実力を発揮できる場
インターネットは世界中と繋がることが出来るため、個人でも実力さえあれば無名でも、著名人や大手企業等と同等の活躍することが可能であることが多くの事例で明らかになっている。そうした流れに刺激を受けてCtoC市場での自己表現や活躍を目指す個人が増加している。「minne」に出品する作家もまさにそうした個人である。
 
 
*ビジネスモデル、決済手段
売買が成立した際、同社は販売金額の10%を手数料として引いた金額を売主(作家)へ支払う。
販売代金のやりとりに関しては、「買主:商品を受け取ってから、代金を支払いたい。」および「売主:代金を受け取ってから、商品を発送したい。」といった双方のニーズを満たすために同社が仲介を担うエスクローサービスを採用している。
 
<minneの進捗>
同社は2015年10月よりminneのアプリダウンロード数及び流通額の月次ベースでの状況開示を開始した。
下のグラフにあるように、流通額、DL数ともに順調に増加しているが、更なる拡大を追求し各種施策を推進している。
 
 
<コミュニティ事業>
ブログなどインターネット上でのコミュニケーションを軸としたサービスを提供しており、無料サービスについては広告掲載料、有料サービスについては利用料金が主な売上となっている。
 
 
【特徴と強み】
1.内製化による多様なサービス提供
【事業内容】の項にあるように、同社は極めて多様なサービスを提供しており、この点が同業他社に比べた大きな違いとなっている。
佐藤社長によれば、こうしたサービスの多様性は、開発のみでなくデザインやマーケティングまで全てを内製化できる仕組みを有しているからこそ可能で、これはスピードやクオリティにおける優秀性にも繋がっており、インターネットビジネスを成功させる上で極めて重要なポイントであるということだ。
 
2.独自の企業文化
同社は「自己表現したい個人」を応援することをミッションとしているが、そのためには同社自身も表現者でなければならないと考えており、インターネットを通じた積極的なアウトプットを行う事が企業文化として定着している。
 
 
2016年12月期の当期純利益は当初0百万円の予想であったが、153百万円を計上した。会社側は今期も0百万円の予想としているが、インターネット事業を手掛ける同社のベーシックなROEは高水準である。
 
 
2016年12月期決算概要
 
 
増収、営業黒字へ転換
売上高は前期比20.9%増加の68億90百万円。既存のストック型事業において順調に契約件数が増加した。
売上総利益は同27.4%増加し、粗利率も2.9%改善。minneの広告宣伝費を前期比約3割縮小したため販管費の伸びは3.0%にとどまったため、営業利益以下、前期の損失から黒字に転換した。
 
 
 
①ホスティング事業
レンタルサーバーサービス「ロリポップ!」の顧客単価上昇と、ドメイン更新率が高水準で維持できたため増収・増益。季節要因やキャンペーンなどによる変動はあるが堅調に推移した。
「ロリポップ!」の契約件数は前期末比1.0万件、2.7%増の40.3万件と年間1万件以上のペースを維持し、堅調に推移した。また、ドメイン取得代行サービス「ムームードメイン」の登録ドメイン数は前期末比13.5万件、12.8%増の119.4万件となった。
 
◎「ロリポップ!」での取り組み
主力のストック事業の一つである「ロリポップ!」では、有料契約件数の増加と顧客単価上昇が基本戦略。
主要な機能を網羅していながらもリーズナブルにレンタルサーバーが利用できるスタンダードプラン(月額500円より、容量120GB)が人気を集めている。
従来の同プランよりも格段に提供内容が向上しており、共有サーバーでありながらも専有並みにプランのように快適なスピードで使用できる。また、電話サポートも利用できるなど利用者の満足度を高めた結果、ロリポップ!新規契約件数に占めるスタンダードプランの割合は2014年1月の9.3%が2016年12月には42.2%まで上昇。同月の顧客単価上昇(前年同月比5.0%アップ)につながっている。

また、「低価格、高機能、高性能」という特徴がユーザーに認知されにくい原因として、2001年のリリース時からほぼ変わらないデザインがその一因と考え、サイトデザインの再構築でイメージを刷新。リブランディングにより新たなターゲットにロリポップ!の価値を遡及する。
加えて、2016年7月に設立した新技術の創造と実践に取り組む研究開発組織「ペパボ研究所」とのコラボレーションにより、AI、IoT、機械学習などを活用した新サービスの開発に取り組み、価格・機能・性能全ての面で圧倒的な優位性を持ちあらゆるニーズに対応できるサービスであることをユーザーにアピールしていく。
 
②EC支援事業
ASPサービス「カラーミーショップ」のARPU上昇とオリジナルグッズ作成・販売サービス「SUZURI」の売上高拡大により増収・増益となった。
「カラーミーショップ」では、継続的にアップセルやクロスセルの推進に努めたことから、契約件数は前期末比0.1万件、1.9%増の4.5万件と堅調に推移し、顧客単価も上昇した。
「SUZURI」のアイテム数はリリース当初の4種類から14種類に増加した。また、16年5月にはiOSアプリをリリース。著名なクリエイターとのコラボレーション企画や販促キャンペーンなどがSNSを通じて拡散したため認知度が向上し、会員数は順調に増大。2016年12月には13万人を突破し、前期末比142.6%の増加となった。定期的なアイテム追加や販促キャンペーンによりSUZURI売上高は前期比167.7%増と大幅増収となった。
 
◎「カラーミーショップ」での取り組み
「カラーミーショップ」においても、有料契約件数の増加と顧客単価上昇が基本戦略である。
2016年5月にはネットショップの構築・運営において創意工夫を凝らしている店舗を発掘し表彰するカラーミーショップ大賞2016の授賞式を開催するなど認知度の向上に取り組んだ。
一方、提供しているプランのうち、「月額3,240円、フリーページ上限数10,000ページ、1商品当たりの画像枚数50枚」という、中小規模ショップを対象に高機能を提供するレギュラープランが伸長。カラーミーショップ新規契約件数に占めるレギュラープランの割合は2014年1月の11.5%が2016年12月には41.2%まで上昇しており、こちらも顧客単価上昇(前年同月比9.2%アップ)に繋がっている。

常時SSLの提供開始、Amazonログイン&ペイメント、新カゴプロジェクトなど新機能を順次追加しているが、今後も体制を強化して機能開発のスピードアップを進め、高付加価値サービスの提供による差別化を図る考えだ。
 
③ハンドメイド事業
流通額拡大で大幅増収、損失幅は縮小した。
「minne」では、Web広告の積極的な展開に加え、新たな取り組みとして2016年4月に東京ビッグサイトで「minne」のイベントとして、過去最大となる物販イベント「minneのハンドメイドマーケット」を開催するなど認知度の向上を図ったことから、2016年12月末の作家数、作品数はそれぞれ30.7万人(前期比76.1%増)、463万点(同121.2%増)となった。
またアプリの累計ダウンロード数は2016年12月末で679万DL(同53.7%増)となっている。
2016年年間流通額は同83.3%増の83.9億円となった。特に4Qは、ホリデーシーズンに合わせ特集を強化、さらに送料無料キャンペーンを展開した結果、一日の注文金額としては過去最高の5600万円を記録するなど好調で、流通額も四半期ベースで過去最高の23.1億円となった。
ただ、広告宣伝費は前期比29.3%減の10.7億円と抑え気味で推移した。
 
④コミュニティ事業
減収・増益だった。
事業売却やブログサービス「JUGEM」での広告売上の減少が収益に影響したが、コストコントロールによる利益確保に注力し増益を確保した。
 
(3)財務状態とキャッシュ・フロー
 
現預金、売掛金の増加で流動資産は前期末に比べ7億10百万円増加の37億84百万円。固定資産はほぼ変わらず、資産合計は同7億7百万円増加の47億70百万円となった。
未払金の増加などで流動負債は同4億94百万円増加の35億32百万円となり、負債合計は同5億35百万円増加の35億85百万円となった。
利益準備金の増加で純資産は同1億72百万円増加の11億84百万円となった。
この結果自己資本比率は前期末より0.7%低下し23.5%となった。
 
 
税金等調整前当期純利益の増加、その他の流動資産の増加等から営業CFはプラスに転じた。
前期にあった有価証券の償還による収入および匿名組合出資金の払戻しによる収入が無くなったこと等から、投資CFはマイナスに転じた。フリーCFはプラスに転じた。
自己株式の取得が無くなり、配当金の支払額が減少したため財務CFのマイナス幅は縮小した。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
◎選択と集中を推進
生産性の向上とリソースの確保を図るため、下記の様な事業の選択と集中を進めた。
 
 
GMOペパボオーシー株式会社はCtoCハンドメイドマーケットで国内第3位の作品数をもつ「tetote」を運営していたが、GMOペパボが国内第1位の事業規模で「minne」を拡大する中、経営資源の相互活用による経営の効率化、意思決定の迅速化およびマーケティングやオペレーション手法、商品開発ノウハウなど連携向上によるビジネスのさらなる強化を図るため吸収合併することとした。
 
 
2017年12月期業績予想
 
 
今期も「minne」への積極投資を継続。
売上高は前期比11.0%、7億60百万円増加の76億50百万円を予想。
ストック型サービス事業の堅調な拡大、「minne」流通額増加を見込んでいる。
今期も「minne」への積極投資を行いつつコストコントロールも進め、営業利益以下の収支均衡を達成する。
今期も無配を予定。
 
(2)「minne」への取り組み
①2016年に行った取組と結果
ターゲットの増大と買い物体験の最大化をめざし以下のような取り組みを行った。
 
流通額は前期比9割増の83.9億円となったが、期初目標の100億円には達しなかった。
費用対効果を重視した運用を行い広告コストを抑制したため、新規利用者を獲得することができなかったことが主要因と認識している。
 
②今期の取り組み
前述の様に、国内ホビー市場におけるCtoC市場の成長に伴いハンドメイド作品を売買できるプラットフォームでの流通額も拡大し、引き続き成長市場であると同社では考えている。
そこで今期も引き続き投資を継続し、流通額125億円を見込んでいる。
 
 
具体的には以下の3分野で施策を展開する。
 
 
 
今後の注目点
2016年12月期より新セグメントとして計上されることとなった「ハンドメイド事業」だが、売上構成比は2015年12月期の10.2%から17.1%へと拡大し、主力事業の一つであるEC支援事業に迫る勢いとなっている。
ただ、損失額は5.4億円縮小したが、広告宣伝費の減少幅も4.4億円であったことから、実力としての収益性を評価するには更なるスケールの拡大が不可欠だ。
短期的には前期未達となった目標流通額の今期達成を期待したい。また、ブレークイーブンとなる流通額およびその実現時期を会社側がどう見ているのかは、安値圏で横ばいが続く同社株価を前にした投資家としては是非知りたいポイントであろう。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年6月30日に提出している。
またJASDAQ企業として、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施している。