ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.37

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
渡邉 陽一郎 社長
渡邉 陽一郎 社長

【ブリッジレポート vol.37】2017年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「同社の17/3期第3四半期連結累計期間の決算は、前年同期比8.9%の増収、216.4%の経常増益と非常に好決算となった。ASA COLOR LED、RFIDタグ用ゴム・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年2月21日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
渡邉 陽一郎
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 5,976 237 235 131
2015年3月 6,059 114 122 328
2014年3月 5,677 286 296 160
2013年3月 4,789 135 139 76
2012年3月 5,010 243 211 72
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
株式情報(2/9現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,012円 4,493,248株 4,547百万円 3.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 1.3% 71.89円 14.1倍 792.79円 1.28倍
※株価は2/9終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
 
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
 
 
 
 
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、17/3期第3四半期の売上構成比は、それぞれ80.5%、19.5%。今後は、RFIDタグ向け新製品、マイクロTAS製品などの新製品の販売拡大が期待される。
 
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。
 
ASA COLOR LED
 
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。
 
プレフィルドシリンンジ向けガスケットのイメージ
 
・マイクロ流体デバイス
DNAやウイルスなどを分析するために使われる生化学分析デバイス。独自の分子接着・接合技術を生かし、DNAの抽出、増幅、解析という複数の工程をワンストップで行うことが可能な製品。現在、販売先の動きを待ちつつ、次期開発の方向性のを待っている状況にある。
 
マイクロ流体デバイス
 
・RFIDタグ用ゴム製品
RFIDタグ用ゴム製品は、溶剤を使わずに接着させる“分子接着・接合技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のIC タグを提供。
 
RFIDタグ用ゴム製品イメージ
 
 
 
・色と光のコントロール技術
シリコーンゴムに着色剤や蛍光体を配合し、様々な色と光を出すことのできる色調管理技術を有し、ばらつきを調整し、顧客が望む細かい色調を実現。また、透明なシリコーン樹脂を材料とし、耐熱性、対紫外線性に優れ、集光・拡散といったレンズ機能を実現。ASA COLOR LEDなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、自動車内装、照明分野とコア技術を応用したスイッチ分野の拡大を図る方針。
 
・表面改質及びマイクロ加工技術
接着剤を使わずに、ゴムとゴムや金属、樹脂を接着させる分子接着・接合技術を有する。接着させる表面を改質処理し、化学反応で結合。これにより、有害な溶剤の廃棄処理が不要となり、耐熱性、耐水性もクリア。耐水性、耐候性に優れており、RFIDタグ用ゴム製品やマイクロ流体デバイスでこの技術が生かされている。また、数十ミクロンから数ミクロン単位の表面加工を行うマイクロ加工技術を確立。医療用ゴム製品である薬液混注ゴム栓の薬液注入口の形成と薬液漏れの防止や、充電して使用できる二次電池の内圧管理にもこのマイクロ加工技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、高性能製品や新たな分野を開拓する方針。
 
・素材変性技術
ゴムをはじめとするソフトマテリアルは、素材に添加物を配合することで求める機能を持たせることができる。更に、ナノ・分子レベルで成形することによりその機能をパワーアップすることも可能。卓球ラケット用ラバーなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、医療分野を支える製品を提供する方針。
 
 
中期経営計画
 
新中期経営計画を策定するにあたり、独自の新製品開発による成長を描くため、中期3ヶ年の2回分である2020年を見据えたビジョン「AR-2020VISION」を制定。
AR-2020VISION
・技術革新を基盤に、新しい価値を創造し続ける企業になる。
・現在の仕事に慢心せず、常に変革を求め、経営環境の変化に応じ継続的に磨きをかける。
・人財こそが、事業運営の要とし、人材の育成を行う。
このビジョンの実現に向けて、最初のステージである15/3期~17/3期の中期経営計画(V-1計画)を作成。
中期経営方針として、①既存事業の質・量の持続的成長、②新市場・新分野への事業展開、③2020年に向けた事業基盤の強化と整備と定め、最終年度である17/3期に数値目標である、売上高80億円、営業利益8億円の達成を目指す内容といていた。
しかし、同社は、ライフサイエンス分野のマイクロ流体デバイス製品について、最終年度の連結売上高目標を12.5 億円としていたものの売上比率を高く設定していた主力案件の受注が大幅に少なくなる見込みとなったことや、他の開発案件の量産開始も遅れる見込みとなったことにより、2016年2月23日に中期経営計画(V-1計画)の見直しを発表した。
 
当初のV-1計画と今期会社見通しとの差異
自動車分野
当初のV-1計画の連結売上高目標37億円に対し、17/3期の会社目標も37億円と達成の見込み。主力ASA COLOR LEDは、上期に引き続き受注が好調に推移する見込み。月次生産量で過去最高を更新。通期で24億円の見通し(前期比5.3%増)。11月11日に累計出荷10億個を達成した。
 
 
医療分野
当初のV-1計画の連結売上高目標13億円に対し、17/3期の会社目標は11.8億円と達成が難しくなったものの、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットや採血用・薬液混注用ゴム栓の新機種の受注が好調に推移する見込み。
 
 
ライフサイエンス分野
当初のV-1計画の連結売上高目標16.5億円に対し、17/3期の会社目標は3.5億円と達成が難しくなった。マイクロ流体デバイスは、2017年3月期売上高は13百万円を見込む。次期開発は方向性の回答待ち。分子接着・接合技術によるマイクロ流体デバイスなどの複合製品の生産拠点として、白河工場(福島県白河市)の隣接地に新工場の建設を決定。完成は来年春を目指す。工場と生産設備は福島県の「平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金」の補助対象として採択を受ける。交付金額は最大7.5億円。
 
 
その他分野
当初のV-1計画の連結売上高目標13.5億円に対し、17/3期の会社目標は10億円と達成が難しくなった。主力RFIDタグ用ゴム製品は、顧客の在庫調整が終了。新タイプの生産もスタートし。今期売上高は4億円となる見込み(前期比33.3%増)。
 
 
 
2017年3月期第3四半期決算
 
 
前期比8.9%の増収、同216.4%の経常増益
売上高は、前年同期比8.9%増の47億59百万円。売上面では、工業用ゴム事業の売上高が同7.6%増加。自動車内装照明向けのシリコーンゴムキャップ付きLED「ASA COLOR LED」の受注が海外向けを中心に好調に推移した他、卓球ラケット用ラバー及び、RFIDタグ用ゴム製品の受注が増加した。また、医療・衛生用ゴム事業の売上高も同14.7%増加。プレフィルドシリンジ用ガスケット及び採血用・薬液混注用ゴム栓の販売が堅調に推移した。
営業利益は、前年同期比193.5%増の3億55百万円。工業用ゴム事業のセグメント利益は、同79.7%の増益となった。加えて、医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益も同132.2%増加した。販売の増加、原価低減活動の継続が寄与し、売上総利益率は、27.1%と前年同期比3.5ポイント上昇。また、売上高対販管費率も同1.2ポイント低下した。その他、為替差益(19百万円)が発生したことなどもあり、経常利益の増益率は営業利益の増益率を上回った。その他、固定資産圧縮損を中心に特別損失(24百万円)が発生したものの、補助金収入による特別利益(16百万)が発生した。
 
 
17/3期第3四半期は、前2四半期と比較し、売上と営業利益ともに増加した他、過去4年間の比較でも売上と営業利益は高水準となった。
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。
 
 
 
 
16年12月末の総資産は16年3月末比11億33百万円増の99億81百万円。資産面では現預金と有形固定資産等が、負債・純資産面では電子記録債務と短期借入金と長期借入金等が主な増加要因。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
前期比8.3%の増収、同97.2%の経常増益予想
17/3期の会社計画は、2月7日に上方修正された。新しい会社計画は、売上高が前期比8.3%増収の64億73百万円、経常利益が同97.2%増益の4億65百万円。
売上面では、ASA COLOR LEDをはじめとした自動車関連製品、RFIDタグ用ゴム製品、卓球ラケット用ラバー、医療・衛生用ゴム製品などの受注の好調が継続する見込み。
利益面では、売上の増加による利益増加、継続した原価低減活動の実施によるコスト削減等により営業利益が増加する。売上総利益率は、2.3ポイント上昇の26.4%、売上高対販管費率は、0.6ポイント低下の19.5%の会社前提。この結果、営業利益は、前期比89.6%増益の4億51百万円となる見込み。為替相場が円高基調に転じたことも業績修正の支援材料となった。また、売上高と経常利益は過去最高を更新する見通し。
一方、1株当たりの配当は、16/3期と同額の年間13円(上期末3円、期末10円)の期初計画を据え置き。
 
 
通期会社計画の上方修正は、ASA COLOR LEDをはじめとした自動車関連製品の売上が海外向けに好調に推移したことが寄与した。また、利益面は売上増と生産性向上の取り組みが進んだことに加え、為替相場が円安基調に転じたことも貢献した。
 
 
今後の注目点
同社の17/3期第3四半期連結累計期間の決算は、前年同期比8.9%の増収、216.4%の経常増益と非常に好決算となった。ASA COLOR LED、RFIDタグ用ゴム製品,卓球ラケット用ラバー、医療用ゴム製品などの受注が好調に推移し、16/3期第4四半期からの回復が継続していることが確認された。利益面でも原価低減活動の成果により収益性が着実に向上していることが鮮明となった。中でも、売上総利益率が3.5ポイントも大幅に上昇した点と売上の大幅な増加にも関わらず販管費の増加が抑制できている点が驚きである。四半期ベースの売上と営業利益を稼ぐ力が着実に高まっており、来期の更なる業績拡大が期待される。来期の業績拡大に向けて、どこまで四半期の業績規模を拡大できるのか、今第4四半期の売上と営業利益の動向が注目される。こうした一方で、これまでの同社の業績を振り返ると、主要顧客の在庫調整や新製品への切り替えなどにより、突然業績が悪化することがあったのも事実である。現在好調が継続しているASA COLOR LED、RFIDタグ用ゴム製品,卓球ラケット用ラバー、医療用ゴム製品などの受注がピークアウトする局面で、いかに業績の落ち込みを抑えるのか、今後の収益安定化のための取り組みにも注目したい。その鍵を握るのが、付加価値の高い新製品の開発・育成と思われる。今期でV-1計画が終了することから、今後新中期経営計画の発表が行われる可能性が高い。今後いかに付加価値の高い新製品を開発・育成していくのか、新中期経営計画で確認したい。