ブリッジレポート
(6184) 株式会社鎌倉新書

プライム

ブリッジレポート:(6184)鎌倉新書 vol.4

(6184:東証マザーズ) 鎌倉新書 企業HP
清水 祐孝 社長
清水 祐孝 社長

【ブリッジレポート vol.4】2017年1月期第3四半期業績レポート
取材概要「紹介数が順調に伸び、成約率も向上している。物販に伴う収益であるお墓事業と仏壇事業は単価が低下したが、再びデフレ色が強まりを見せる中・・・」続きは本文をご覧ください。
2017年1月10日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社鎌倉新書
社長
清水 祐孝
所在地
東京都中央区八重洲1-6-6 八重洲センタービル7F
決算期
1月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年1月 1,147 225 211 125
2015年1月 917 12 27 10
2014年1月 778 57 58 30
株式情報(12/16現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
964円 8,394,400株 8,092百万円 27.5% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 23.69円 40.7倍 310.82円 3.1倍
※株価は12/16終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。BPSは上期前期末実績。
 
鎌倉新書の2017年1月期第3四半期決算と通期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
「人と人とのつながりのお手伝い」をコンセプトに、ライフエンディング市場にフォーカスした事業展開を進めている。ライフエンディング市場とは、死別後に備えた事前準備から、葬儀、仏壇、墓、更には遺族の生活の再構築に関わる市場の事。葬儀社・斎場・火葬場検索サイト「いい葬儀」、霊園・墓地・墓石店検索サイト「いいお墓」、及び仏壇・仏具店検索サイト「いい仏壇」等のポータルサイト運営を中心に、日本初で唯一の供養業界を網羅したビジネス誌である月刊「仏事」やライフエンディングに関連する書籍の制作・販売を手掛けている。
 
【企業理念】
企業理念は、“私たちは、人と人とのつながりに「ありがとう」を感じる場面のお手伝いをすることで、豊かな社会づくりに貢献します”。
「親切」と「ありがとう」の交換は、豊かな社会を形成する土台である、との考えの下、人生の様々な局面で「ありがとう」を感じる瞬間を社会の中に増やしていく事、そのために鎌倉新書は存在していきたい、としている。
 
【沿革】
1984年4月、仏壇仏具業界向け書籍の出版を目的に設立されたが、清水祐孝氏の代表取締役就任を機に、「本を買う人は、紙の印刷物が欲しいのではなく、そこに書かれている情報を求めている」との考えの下、「自分たちの提供する価値は“情報”である」と改めて定義。情報加工業という視点から、事業領域を「インターネットビジネスを含めた情報ビジネス」として、2000年10月に全国の葬儀社や葬儀マナー等に関する情報サイト「いい葬儀」を開始した。
 
 
【事業内容】
事業は、マッチングプラットフォームとなるポータルサイト運営を中心としたライフエンディングサービス事業と、ライフエンディングに関わる書籍の企画・制作・賑売を行うライフエンディング関連書籍出版事業に分かれる。16/1期の売上構成比は、ライフエンディングサービス事業79.1%、ライフエンディング関連書籍出版事業20.9%。
 
ライフエンディングサービス事業
終活から葬儀、仏壇、墓、遺産相続といったライフエンディング全域をカバーするポータルサイト群を通してサービスや商品の情報を発信すると共に、お客様センターで問合せや相談に応じる事で、サイト利用者の意思決定をサポートしている。一方、ポータルサイトに掲載される葬儀社、仏壇仏具店、石材店、寺院霊園等の事業者に対しては、販売支援サービスの提供や掘り起こした見込み客の紹介を行う。サイト利用者には無料でサービスを提供し、紹介した見込み客と事業者との間で契約がまとまった時に成約報酬を受け取る(成約金額の10~20%程度)。事業者にしてみれば、“後払いの広告宣伝費”と考える事ができ受け入れやすい。16/1期の売上の内訳は、墓63.6%、葬祭25.7%、仏壇10.7%。
同業者としては、葬儀サービスでは、流通大手イオングループのイオンライフ(株)、「小さなお葬式」や「葬儀本.com」等を展開する(株)ユニクエスト・オンライン等があり、墓では、「もしもドットネット」を運営する首都圏石材協同組合、メモリアルアートの大野屋、(株)日本仏事ネット等を挙げる事ができる。
 
KPI(重視する経営指標) 成約報酬 = 紹介数 × 成約率 × 販売単価 × 手数料率
成約報酬の拡大に向け、同社は紹介数の増加と成約率の向上に取り組んでおり、その結果としてのシェア拡大を手数料率の引き上げにつなげていきたい考え。紹介数の増加には、コンテンツの充実、導線の改良、デザインの改良、広告等の活用がポイントであり、成約率の向上には、サイトユーザーとのコミュニケーション強化や事業者との連携強化が必要となる。
 
 
 
ライフエンディング関連書籍出版事業
供養業界の事業者に向けたビジネス情報誌である月間「仏事」(年間購読料:税込み16,200円)等、葬儀や墓・仏壇等、供養に関連する様々な出版物を発行している。出版社としての知名度や信頼感、業界ネットワーク、コンテンツ生成力がインターネットサービスにも活かされている。売上や利益では測れない、シナジーを有する事業である。
 
 
【社会的背景と鎌倉新書の役割】
核家族化が進み、前の世代からの慣習や知議等の引き継ぎが減っているため、消費者は、ライフエンディング全般に、「誰に頼めばいいかわからない」、「どうすべきかわからない」、「選ぶ基準がわからない」、「費用が適正化どうかわらない」といった悩みを抱えており、インターネットで情報検索するケースが増えている。

一方、事業者は、「集客やセールスのコストがかかり過ぎる」(仏壇の製造販売を手掛ける上場企業の15/3期は、売上総利益率が63.5%と高かったが、販管費率も58.1%と高く、営業利益率は5.4%にとどまった)、「信頼感をもたれていない」といった悩みを抱えている。このため、10~20%程度の成功報酬で顧客開拓できる鎌倉新書のポータルサイト活用は魅力的であり、信頼感と言う点では、業界誌の発行体として30年以上の実績を有する同社が仲介する意義は大きい
 
 
東京圏人口を中心に三大都市圏人口の割合が上昇しており、三大都市圏以外の人口の割合が低下している。こうした人口動態も、慣習や知議等の前の世代からの引き継ぎがなされない要因の一つとなっている。
 
 
2017年1月期第3四半期決算
 
 
前年同期比17.8%の増収、同54.0%の営業増益
売上高は前年同期比17.8%増の9億88百万円。収益性重視の観点から利益率を維持しつつ効率化を図っている書籍他の売上が減少したものの、主力のWebサービスの売上が同28%増と大きく伸びた。Webサービスでは、お墓事業が同23%増、葬祭事業が同41%増、仏壇事業が同34%増と全ての事業で売上が高い伸びを示した。

営業利益は同54.0%増の2億54百万円。紹介数の増加と成約率の上昇による成約数の増加や料率変更による葬祭事業の単価上昇に加え、継続的な原価の見直しによる書籍等の原価低減もあり、売上総利益が同36.9%増加(売上総利益率が8.4ポイント改善)。人件費、広告宣伝費、及び業務委託費の増加や本社移転(10月)費用等による販管費の増加を吸収した。
 
 
 
 
第3四半期(累計)の売上高は前年同期比23%増の5億36百万円。単価が前年同期を下回って推移したものの、紹介数の前年同四半期比二けた成長が続いており、累計では同20%増。個別相談会やアンケートによるコミュニケーション強化が成果を上げ、成約率も前年同四半期を上回って推移した結果、累計の成約数が同39%増加した模様。
 
 
第3四半期(累計)の売上高は前年同期比41%増の2億28百万円。紹介数が各四半期で順調に増加し、累計では同34%増。手数料率の変更により単価が各四半期で10~20%上昇し、累計期間を通して40%を超える成約率を維持した。累計の成約数は同38%増加した模様。
 
 
第3四半期(累計)の売上高は前年同期比34%増の90百万円。単価が前年同四半期の実績を下回って推移したものの、紹介数は各四半期で20~30%増加し、累計では同26%増。四半期ベースの成約率も前年同四半期を上回って推移した。累計の成約数は同42%増加した模様
 
 
第3四半期末の総資産は前期末に比べて2億43百万円増の11億12百万円。貸方では、好業績を反映して現金収入が増加し現預金が増加した他、本社移転に伴う、建物、建物付属設備や敷金の増加で固定資産も増加。借方では、未払法人税・未払消費税等が減少する一方、純資産が増加した。第3四半期末の自己資本比率は76.7%(前期末71.7%)。
 
(4)トピックス
Webサービスを主力とする同社だが、日本全国での「終活セミナー」や「お墓の個別相談会」といった、リアルでの広告宣伝活動にも力を入れた。情報発信力強化の一環として日本全国で展開した「終活セミナー」は、同社代表取締役の清水氏をはじめプロフェッショナルな講師陣による終活セミナーを大手証券会社や高齢者施設等で開催した。人生の最期に向けた総合的な支援を念頭に、終活に関する情報発信力を更に高め、認知度の向上や見込み客の獲得につなげて行く考え。また、「お墓の個別相談会」では、同社社員(お墓アドバイザー)による、顧客個々の要望に応じた柔軟な対応が好評だった。今後もインターネットという枠に捉われる事なく、終活の手伝いをする事で成約率の向上を図っていく考え。
 
 
 
2017年1月期業績予想
 
 
通期予想に変更はなく、前期比14.6%の増収、同41.8%の営業増益
2Q(5-7月)に続き、3Q(8-10月)も売上高、営業利益共に想定を上回った。4Q(11-1月)も引き続き、お墓事業、葬祭事業、仏壇事業の3事業で紹介数の高い伸びと成約率の改善が見込まれるものの、単価下落リスク等を鑑みて通期予想を据え置いた。

通期予想の前提は、収益性の改善に取り組む書籍他の売上が2億06百万円と同13.8%減少するものの、墓、葬祭、仏壇の全てが順調に伸び、Webサービス売上が11億08百万円と同22.2%増加。いずれも紹介数の高い伸びと成約率の改善を見込んでいる。利益面では、人件費や売上高の10%程度を目処に投下していく広告宣伝費等の増加を増収効果と書籍他の収益性改善で吸収。株式公開費用等がなくなり営業外損益の改善も見込まれる。
 
 
 
今後の注目点
紹介数が順調に伸び、成約率も向上している。物販に伴う収益であるお墓事業と仏壇事業は単価が低下したが、再びデフレ色が強まりを見せる中で紹介数を伸ばし成約率を高めるためには、ある程度の単価下落は止むを得ないのではないか。3本柱による事業体制を盤石なものにするためには、葬祭事業に対して事業規模で出遅れ感のある両事業のトップラインを引き上げる必要がある。
一方、戦略的な手数料率の引き上げを実施した葬祭事業は紹介数が3事業の中で最も大きな伸びを示し、他の2事業よりも高い成約率が一段と向上した。同社に成約報酬を払うのは葬祭事業者であり、その課題は集客・セールスコストの削減だが、従来の集客・セールスコストに比べると同社に支払う成約報酬は負担が軽く、しかも成功報酬である。このため、紹介数が増加するのであれば、手数料率の引き上げを厭わない葬祭事業者は少なくない。このため葬祭事業では、紹介数をコミットする事で料率の引き上げを実現した。紹介数をコミットする事は同社にとってリスクだが、それまでのマーケティングの結果を踏まえてのもので、根拠に基づくものだ。
 
 
 
<参考:コーポレート・ガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書       更新日:2016年04月25日
基本的な考え方
当社は、企業価値を向上させ、株主利益を最大化するとともに、ステークホルダーと良好な関係を築いていくために、コーポレート・ガバナンスの確立が不可欠なものと認識しております。  具体的には、代表取締役社長以下、当社の経営を負託された取締役等が自らを律し、その職責に基づいて適切な経営判断を行い、当社の営む事業を通じて利益を追求すること、財務の健全性を確保してその信頼性を向上させること、説明責任を果たすべく積極的に情報開示を行うこと、実効性ある内部統制システムを構築すること等が重要であると考えております。
 
<実施しない主な原則とその理由>
当社はコーポレートガバナンス・コードの基本原則について、全て実施いたします。