ブリッジレポート:(4634)東洋インキSCホールディングス vol.4
(4634:東証1部) 東洋インキSCホールディングス |
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企業名 |
東洋インキSCホールディングス株式会社 |
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社長 |
北川 克己 |
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所在地 |
東京都中央区京橋2丁目2-1 |
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決算期 |
3月末日 |
業種 |
化学(製造業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2016年3月 | 283,208 | 18,470 | 18,697 | 12,190 |
2015年3月 | 286,684 | 18,210 | 19,411 | 13,304 |
2014年3月 | 279,557 | 19,728 | 20,553 | 12,260 |
2013年3月 | 248,689 | 17,547 | 18,468 | 8,714 |
株式情報(11/21現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【沿革】
1896年(明治29年)、創業者 小林鎌太郎が東京日本橋で個人経営の「小林インキ店」を開業したのが始まり。1907年(明治40年)に東洋インキ製造株式会社に改組。明治期に入り、読売新聞(1874年創刊)、朝日新聞(1879年創刊)を始めとした多数の新聞や雑誌が創刊されたほか、富国強兵の下、教育水準向上のための教科書の制作を始めとした政府関係の印刷物も増加し印刷用インキの需要は急拡大していった。当初は輸入品が中心であったが、良質な国産インキへの転換が国策として推し進められる中、高い技術力を持った同社は、民間印刷会社に加え、大蔵省印刷局を始めとした政府機関への納入も拡大し、輸出も増加した。また、原材料の顔料・樹脂から印刷用インキまでの一貫製造にもいち早く取り組んだこと、創業時から、印刷会社最大手の1社となった凸版印刷株式会社との関係が深かったことなども成長の背景として挙げられる。関東大震災、太平洋戦争といった困難な時期を切り抜け、戦後高度経済成長期に再び急成長を遂げ、1961年(昭和36年)東証2部上場を経て、1967年(昭和42年)、東証1部に上場した。 印刷インキにとどまらず、顔料、樹脂など原材料の生産・加工で培った多様な技術を活かし、液晶フィルム部材など他分野に事業領域を拡大している。グループ力の拡大とさらなる成長のため2011年(平成23年)持株会社制度に移行し、社名を東洋インキSCホールディングス株式会社とした。 【経営理念など】
企業グループとしてのブランドの原点を示すとともに、グループの社員各人が常に心に留め、企業人として相応しく行動するための規範として、経営哲学・経営理念・行動指針の三部からなる「東洋インキグループ経営理念」を、1993年4月に制定した。2014年4月には、行動指針に新たに「株主の満足度向上」を追加。すべてのステークホルダーの満足度向上を目指してゆく。 また、海外も含めたグループ企業一体化のためにグローバル社内報を発行しているが、そのトップページには必ず「東洋インキグループ経営理念」を掲載。上記クレドも、「日・英」版に加え、「中・英」版もあり、経営理念の全世界的な共有・浸透に注力している。 【市場環境】
日本の印刷産業の生産金額はデジタル化の進展、活字離れ等の要因を背景に、新聞、雑誌など出版印刷を中心に減少傾向にある。◎概要 (市場動向) 一方で、ポスター、カタログ、チラシ、POPなど商業印刷は底堅く、食品・医薬品などの包装紙、プラスチック容器に使われる包装印刷は2004年から2015年までのCAGR(年平均成長率)は+2.4%と堅調に拡大している。 印刷機のイノベーションが進む中、クオリティーの向上に伴いローカルインキでは対応しきれない部分も多く、優れた日本製インキ需要は今後も高まることが予想されるという事だ。 (印刷会社と印刷インキ会社)
経済産業省「平成26年工業統計表・産業編」によれば、2014年の印刷・同関連業の事業所数は全国で25,843だが、うち98.5%にあたる25,446事業所は従業員数100人未満の中小企業である。
国内約26,000社のうち、殆どの印刷会社は、こうしたソリューション無しにはスムーズに業務を進める事は難しく、印刷産業において印刷インキ会社は極めて重要な役割を担っている。 このため顧客である印刷会社は同社との直接取引を求めており、その結果、同社国内売上の8割近くが顧客への直接販売となっている。こうした顧客との強固な関係性は同社の大きな特徴となっている。 ◎同業他社
インキ事業を展開する主な上場企業は同社を含め6社。(4631)DICは世界規模でトップ企業であるのに対し、同社は国内インキ首位で、各品目別でもほとんどが1位か2位となっている。グローバルベースでは3位にランキングされている。(2位は欧州企業) (4633)サカタインクスは同社の第2位株主で、主に物流面での相互補完を図り2000年に資本業務提携契約を締結している。 【事業内容】
◎「印刷インキ」について
同社の主要製品のひとつである印刷インキについて、「原材料」、「種類と用途」などを以下にまとめてみた。
また、同社は創業以来これら原材料の製造を手掛ける過程で、様々な用途開発を進めて事業領域を拡大してきた。 ◎事業セグメント
「色材・機能材関連事業」、「ポリマー・塗加工関連事業」、「印刷・情報関連事業」、「パッケージ関連事業」の4セグメントで構成されている。このうち、「印刷・情報関連事業」は主に紙への印刷に使用する平版用インキ(オフセットインキ等)、「パッケージ関連事業」は食品包装などフィルムへの印刷に使用するグラビアインキやフレキソインキなど、「色材・機能材関連事業」は印刷インキの原料でもある顔料をコア素材とし展開した製品、「ポリマー・塗加工関連事業」はこれもインキの主原料である樹脂とその設計技術から展開した事業である。 さらに分散加工技術は、有機顔料だけではなくCNT(カーボンナノチューブ)などの無機素材にも展開され、二次電池材料など新たなエネルギー分野への事業拡大にも繋がっている。 食品包装などの分野では消費者の安心・安全のためにインキの水性化など環境に配慮した製品開発にも注力している。 印刷インキの提供だけに留まらず、機械・機器の販売、印刷工程の効率化サポート、カラーマネジメントやカラーユニバーサルデザインに関する支援やツールの提供なども行っている。 ◎海外展開
大きな成長を期待し難い国内市場では高付加価値製品による収益性向上を進める一方、今後成長が期待できる海外市場の開拓に製造、販売両面で積極的に取組んでいる。海外生産体制は前中期経営計画中にほぼ完成し、原料調達、生産共に現地で行っている。 2016年3月末現在、50社の海外子会社、51ヶ所の工場を有し、世界23か国で事業を展開している。 マージンおよび効率性(総資産回転率)の向上によるROEの上昇が望まれる。 【特徴と強み】
①高い技術力
前述の様に、同社は印刷インキの原材料である顔料や樹脂も自社で生産を続けてきた。こうした技術力が高品質な印刷インキ生産のベースとなっているのはもちろんのこと、液晶用カラーフィルター材料や接着剤・粘着剤など、事業領域や製品の拡大に繋がっている。
②優れた課題解決能力
同社が印刷インキ国内首位の地位を築いている大きな背景の一つが印刷会社に対する高い課題解決能力だ。印刷インキの製造・供給のみでなく、版作り、画像など「印刷」に関連する要素全般に関して古くから研究を続けており、これが顧客に対する技術提案力やサービス力、ひいては顧客満足度の向上に繋がっている。 ③環境に対する取り組み
同社では、CO2の削減とともに、Non-VOCインキや水性インキ、UVインキなどの環境調和型インキにもいち早く取り組んできた。新興国においても環境規制は一段と強化されており、ニーズは拡大している。また化学物質管理への取り組みや他社に先駆けたスイス条例対応製品のラインナップ化など安全・安心への取り組みも進んでいる。
④経営戦略の独自性
M&Aについては、同社がもつ技術力を新しい市場に展開するうえで、シナジー効果が期待できる場合には選択肢のひとつとして考えている。また、輸送マイレージの削減、現地品の利用など、効率性向上と社会的貢献の両面から海外市場における「地産地消」のポリシーを印刷インキ業界ではいち早く打ちたてて実践してきた。
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2017年3月期第2四半期決算概要 |
微減収も利益率改善等で営業増益
売上高は前年同期比5.6%減の1,331億円。国内は印刷需要およびLCD関連が低迷、海外は中国景気の減速、為替変動の影響もあり減収となった。営業利益は同4.8%増の88億円。高機能製品の減少、為替変動、販売価格の下落はあったが、原材料価格低下、固定費減などでカバーした。利益率も改善した。 経常利益は同10.0%減の78億円。前期の為替差益12百万円が為替差損12億に転じた。 ☆色材・機能材関連事業
減収・減益。
<化成品>
顔料は印刷分野は低調だったが、塗料・プラスチック着色用途で販売が伸長した。CFペーストは需要が落ち込み減益となった。 <表示材料>
パネル市場の国内は稼働が回復している。中国・台湾も回復の兆しが見られるが、韓国は依然低迷している。パネル用・イメージセンサー用新規開発レジストインキの早期実績化を進めている。 <着色剤>
自動車関連は堅調に推移した。容器関連はシェアが向上し、また飲料関連の需要が旺盛で好調だった。グローバルキーアカウント向け製品の水平展開や評価中の太陽電池関連製品の実績化を確実に進めている。 ☆ポリマー・塗加工関連事業
減収・増益。
<パッケージ>
パッケージ用接着剤の海外への展開が進んだ。製缶用塗料は、拡販継続で堅調だった。紙、フィルム用ラベル用接着剤は、市況の冷え込みで落ち込んだ。 <エレクトロニクス・オプト>
ICT関連用接着剤の新規拡販が進んだ。機能性フィルムは、韓国、中国において拡販が進んだ。新製品が拡販に寄与したが、為替の影響が拡大した。 <自動車/工業用>
自動車、建材など工業材用接着剤の拡販が進んだ。
<ヘルスケア>
2016年7月より貼付型医薬品の事業運営を開始した。
☆パッケージ関連事業
微減収・増益。
<国内>
国内パッケージ市場は堅調に推移した。リジッド容器からパウチ化の拡大と個包装ニーズが高まっている。高性能裏刷、表刷グラビアインキ開発やフレキソ新規参入顧客獲得を確実に進める。 <海外>
世界最高峰の印刷・クロスメディアソリューション専門メッセである「Drupa」で、環境対応製品(水性/EB)のソリューション提案を実施した。水性はVOC規制などを背景にアジアで実績を積んでいる。アジア(インド含む)ではミドルグレードの製品が堅調だった。中国内陸・ブラジルなどの新拠点も業績が拡大している。 ☆印刷・情報関連事業
減収・増益。
<国内>
オフセット市場(商業、出版、新聞)は減少傾向変わらず。全体市場は上期3%減少した。インクジェットインキ。オフセットインキなどは合理化を推進、新拠点を立ち上げたUVインキはさらに拡販を進めた。 LCDコート剤は韓国市場向けOLED-TV用帯電防止HCが大きく伸長した。光学HCは中国市場でスマホ市場の好況を背景に需要が伸長している。 <海外>
オフセット印刷市場は構造的に縮小の一方、UVインキ市場はパッケージ用途、省電力ニーズで成長が続いている。ブラジル、インド工場の生産は拡大している。世界各地でUVインキの生産移管が進んでいる。 長期借入金の減少等で負債合計は同64億円減少の1,393億円。 純資産は利益剰余金が増加したが円高による為替換算調整勘定の減少などで同103億円減少の2,043億円となった。 この結果、自己資本比率は前期末の57.7%から0.1ポイント上昇し、57.8%となった。 有価証券および投資有価証券の取得による支出の減少で投資CFのマイナス幅は縮小した。この結果フリーCFはプラスに転じた。 自己株式の取得増加で財務CFのマイナス幅は拡大した。 キャッシュポジションは上昇した。 (4)トピックス
◎決算期を変更
「世界に役立つサイエンスカンパニー」として、グローバルな事業の一体運営の推進、さらには経営情報の適時・適切な開示による経営の透明化を図ることに加え、他社比較の簡便性を考慮しグループの決算期を現在の3月から世界標準である12月に統一することとした。
2017年12月期を現在の中計「SCC-Ⅲ」(最終年度2017年3月期)の仕上げの年と位置付け、2018年12月期は次期中計の初年度とする。 発表は2017年11月を予定している。 |
2017年3月期業績見通し |
業績予想に変更無し。増収・営業増益
売上高は前期比2.4%増の2,900億円の予想。引き続き厳しい事業環境が続くと予想しているが、全てのセグメントで増収を見込んでいる。営業利益は同5.6%増の195億円。利益についても全セグメントで増加する。 配当は前期比0.50円/株増配の16.00円/株を予定。予想配当性向は39.8%。 ☆ポリマー・塗加工関連事業
「新製品・新市場:エレクトロニクス・オプト、新エネルギー市場、環境対応」、「グローバル拡大」、「新事業:メディカルサイエンス事業参入」の3つを成長戦略の柱に、以下の重点目標を掲げている。
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<参考1:中期経営計画SCC-III> |
(1)中期経営計画SCC-III
同社は、SCC(サイエンスカンパニーチェンジ)と名付けた中期経営計画を2008年4月からスタートさせ、2014年4月からはその3期目にあたる「SCC-III エボリューションプラン」(2014年4月から2017年3月)が始まった。
◎事業ドメインと技術プラットフォーム
SCC-IIIにおいては、「スペシャリティケミカルメーカーからサイエンスカンパニーへの変革」を標榜しており、そのために、3つの事業ドメインと、5つのテクノロジープラットフォームを定め、ホールディングスの持つ研究所「グループテクノロジーセンター」と国内外グループ各社の事業部門が連携して、基礎研究や製品開発を行っていく。
<事業ドメイン>
それぞれの事業ドメインには注力すべき重点分野を設定し、時代の変化や市場のニーズに合わせた製品を継続的に開発し、提供する。現時点での進捗は様々であるが、『サスティナビリティーサイエンス』における二次電池関連部材の開発は今期より実績が出始めているという。
<TPF(テクノロジープラットフォーム)の拡張>
TPF(テクノロジープラットフォーム)とは、新たな開発を進める際の基礎・基盤となる技術集積および基盤技術の事を言う。同社では、現有素材をスペシャリティ素材へと進化させる『スペシャリティマテリアル』、スペシャリティ素材に独自の加工技術で高機能化・高付加価値化を施す『素材プロセッシング』、多様化・高度化市場ニーズに合わせ素材を加工する『部材コンバーティング』の従来の3つのTPFから発展させ、より顧客に近い視点から製品の検証を行い、開発に反映する『モジュールデザイニング』、意匠性、設計、組み合わせなどの提案を行いながら、利用者にとって価値のある製品を作り上げる『ソリューション』の2つを加え5つのTPFに拡張した。 ◎事業セグメント別施策
4事業セグメントをバランスよく拡大させることを目指している。現在営業利益の約4割を占める液晶用カラーフィルター材料を中心とした「色材・機能材関連事業」は、成長性は高い反面、景気動向に影響される部分が大きい。これに対し、印刷インキはさほど大きな成長は期待できないものの、好不況の波は小さい。印刷・情報、パッケージセグメントを海外、特に新興国市場の開拓を「地産地消」により進めて安定収益のベースとしつつ、色材・機能材、ポリマー・塗加工セグメントで高付加価値の新製品を開発・販売し成長を追求してゆく。 ◎海外展開
SCC-IIIでは海外売上高比率50%を目指している。(2015年3月期43%)インドおよびブラジルの印刷インキ現地生産体制は前中計期間中にほぼ完成した。今期以降は生産量拡大を加速させると共に、アジア地域やアメリカにおける接着剤の生産・販売を強化し多角化を進める。 また、新市場開拓においては、メコン川流域やメキシコでのマーケティング、将来的な現地生産を視野に入れたトルコでの営業を展開する。 新興国市場においては、国内同様のハイスペック製品に加え、高品質・環境対応といった同社ならではの特長付けをしたミドルスペックのボリュームゾーン製品もコストダウンを図りながら拡販に取組んでゆく。 また、先進国においては日本製印刷機械の導入が欧米で伸びていることから、同社が強みを持つUVインキの拡販に努める。2013年4月に子会社化したアレッツインターナショナル株式会社(現東洋アレッツインターナショナル株式会社)が強みを持つパッケージ用UVインキも強力な武器となる。 ◎経営基盤の強化
上記のような事業拡大に取り組むと同時に、コストダウンを中心とした「モノづくり強化」、CO2排出量削減などの「環境経営促進」、ダイバーシティ拡大による「人材の育成・活用」、グローバルレベルでの統合システム導入による「経営効率化」など、経営基盤の強化にも努める。
(2)投資家へのメッセージ
当社は経営理念にあるように生活文化創造企業として常に生活者の視点に立った製品開発を目指している。当社の名前をご存じなくても、身も周りの様々な場面で当社製品が使われている事を是非知っていただきたい。 今後も単にインキメーカーとしてではなく、サイエンスカンパニーとして当社の顧客企業のさらに先を見据え、世の中に不可欠とされる製品バリュエーションの幅を拡大していく考えだ。 また、行動指針に昨年より「株主価値の向上」を新たに加えたように、企業、社員の意識変革も大きく進んでいる。 新製品開発と海外展開により着実な成長を目指していく当社を、是非中長期の視点で応援していただきたい。 |
<参考2:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
コーポレートガバナンス報告書を2016年7月5日に更新している。
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