ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

プライム

ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.48

(7839:東証1部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
石田 健一郎 社長
石田 健一郎 社長
【ブリッジレポート vol.48】2016年9月期業績レポート
取材概要「17/9期のプレミアムヘルメットの販売数量計画は、前期比微増を想定している。工場は前期からの受注残もありフル稼働の状態にあり、休日出勤・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年12月20日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
石田 健一郎
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年9月 14,138 3,145 3,244 2,192
2015年9月 14,244 3,210 3,092 1,996
2014年9月 13,406 2,765 2,646 1,669
2013年9月 11,158 1,340 1,299 799
2012年9月 8,606 97 143 65
2011年9月 9,047 395 371 217
2010年9月 10,078 898 978 638
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
株式情報(12/9現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,218円 13,771,850株 30,546百万円 21.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
60.00円 2.7% 120.53円 18.4倍 761.63円 2.9倍
※株価は12/09終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
SHOEIの2016年9月期決算と2017年9月期の見通しについて、ブリッジレポートにてご報告いたします。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメット・メーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界約70ヵ国超を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力を持つ。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。グループは、同社の他、米国、独(2社)、仏、伊の連結子会社5社。
 
経営方針  3つの世界一を実現
「世界一の品質」     … Made In Japanのグローバルブランド
「世界一のコスト競争力」 … ヘルメット業界唯一のトヨタ生産方式でコスト管理
「世界一楽しい会社」   … お客様、株主の皆様、並びに従業員、役職員の満足度を追及
 
【事業内容】
売上高の約90%を占める二輪乗車用ヘルメットでは、高品質・高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県一関市)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、高い品質の維持と技術の流出防止を実現している。
 
【中長期的安定成長と安定利益の実現に向けた基本方針】
(1)自分の会社は自分で守る
(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)
(3)健全な財務内容の堅持
(4)投資の継続(新製品開発,コストダウン,品質向上,より確かな安全)
(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指す
(6)新市場開拓と既存市場の深掘り
(7)利益の公平、公正な分配(50%配当性向,従業員への配分、会社への分配
   (内部留保))
 
短期的な支払い能力を示す流動比率が533.5%(16/9期末。以下同じ)、長期的な財務の安全性を示す固定比率が21.3%、無借金経営で自己資本比率78.0%。(1)自分の会社は自分で守る、(3)健全な財務内容の堅持、が着実に実行されている事が貸借対照表からみてとれる。

また、茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産する事で(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)を実現し、(4)投資の継続(新製品開発、コストダウン、品質向上、より確かな安全)及び海外子会社と一体になって進める(6)新市場開拓と既存市場の深掘りにより、(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指している。
 
【トップシェアを支えるモノづくりへのこだわり  茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産】
世界各国のライダーに称賛され、グローバルなブランドとして認知されているプレミアムヘルメット。優れた空力特性等、ヘルメットとしての高い機能性とファッション性に富んだ製作難度の高い形状。それでいて安全性が高く長時間走行でも疲れ難い。「使った人がいかに心地よいか」を追求する同社の“こだわり” が、トップシェアの原動力となっている。
生産は、茨城工場と岩手工場の国内2拠点。人の命を守るヘルメットは、日本、欧州、北米と言った市場毎にそれぞれの安全規格がある。このため、同社では、茨城工場が主に国内製品、岩手工場が主に海外製品と、原則工場毎に仕向け先を一本化して生産性を上げている。
 
 
 
 
 
2016年9月期決算
 
 
前期比0.7%の減収、同4.9%の経常増益
売上高は前期比0.7%減の141億38百万円。円高の影響等で欧州と北米の売上が減少したものの、国内の好調(同14.2%増)と販売チャネルを強化した中国の伸びでほぼ吸収。プレミアムヘルメットは販売数量の増加(同6.2%増)に加え、新製品投入による継続的な付加価値の向上で平均単価も上昇した。
利益面では、円高の影響(5億21百万円の減益要因)を大きく受けたが、数量効果、単価上昇、及び生産性の改善で売上総利益は同2.9%の減少にとどまり、経費全般の節減で販管費が同3.9%減少。営業利益は31億45百万円と同2.0%の減少にとどまり、期初予想を26%弱上回った。為替差益89百万円(前期は1億17百万円の差損)を営業外収益に計上した事等で経常利益は32億44百万円と同4.9%増加。特別損失の減少や税負担率の低下で最終利益は21億92百万円と同9.8%増加した。

為替は、同社の売上換算レート(期中平均)が、1ドル=109.57円(前期120.04円)、1ユーロ=125.15円(同137.48円)。海外子会社換算レート(2016年6月30日)が、1ドル=102.91円(同122.45円)、1ユーロ=114.39円(同137.23円)。

尚、第3四半期決算発表時に通期予想を上方修正しており(売上高141億円、営業利益28億60百万円、経常利益29億70百万円、当期純利益20億円)、この修正値に対しても利益は大幅な上振れとなった。

配当は1株当たり7円増配の79円を予定。同社は連結配当性向50%を目処に配当を実施している。
 
 
国内は二輪新車販売が減少傾向にあるが、リターンライダーの増加で販売数量が前期比11.6%増加。需要に供給が追い付かない状態が続いている。
欧州では、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン等を中心に二輪新車販売が好調でヘルメット販売も増えている。同社においては、円高の影響で同6.0%の減収となったが、フランスを中心に需要は旺盛で販売数量が同8.6%増加。一方、北米はヘルメット市場が横ばいで推移したものの、現地のディストリビュータ(販売代理店)の在庫調整で販売数量が同17.8%減少。為替の影響もあり、同24.0%の減収となった。
その他地域では、ヘルメット市場が全体的に拡大している。同社においては、中大型二輪車の販売拡大を背景にヘルメット市場が急拡大している中国をけん引役に販売数量が同52.9%増加し、同62.5%と大幅な増収。中国の販売は、これまで北京のディストリビュータ1社に頼っていたが、新たに厦門のディストリビュータと代理店契約を結び2社体制としたところ、厦門のディストリビュータの積極的な販売が北京のディストリビュータに好影響をもたらした。また、現地で中大型二輪車販売を伸ばしている日本の大手メーカーのキャンペーンに協賛した効果も大きかった。
 
 
 
 
期末総資産は前期末に比べて5億85百万円増の134億53百万円。借方では、フリーCFの増加で現預金が増加した他、設備投資で有形固定資産が増加。貸方では、為替換算調整勘定のマイナス幅拡大(△21百万円→△7億61百万円)を吸収して純資産が増加した。自己資本比率78.0%(前期末78.5%)、投下資本利益率19.4%(前期22.6%)。
 
 
税引き前利益の増加と売上債権の回収が進んだ事やたな卸資産の減少等による運転資金の減少で営業CFが31億74百万円と同58.3%増加。有形固定資産の取得額の減少で、投資CFのマイナス幅も縮小した。財務CFがマイナスになったのは配当金の支払いによる。
尚、設備投資は、金型1億71百万円、レーザー加工機89百万円、オープンプリフォーム機57百万円等で8億48百万円(前期:9億23百万円)、減価償却費6億14百万円(同5億09百万円)。
 
 
2017年9月期業績予想
 
【代表取締役等の異動】
2016年10月1日付けで、石田 健一郎氏が同社の代表取締役社長に就任された。石田社長は、1983年4月、三菱商事(株)に入社。2013年5月に(株)SHOEIの参与に転じ、同年12月に同社取締役海外営業部長に就任。欧州を中心に海外販売の指揮を執ってきた。
また、山田会長が2016年12月21日付けで代表取締役会長を退任され、顧問に就任される。(株)SHOEIの経営を側面から支援していく事になる。
 
 
前期比1.9%の増収、同25.4%の経常減益予想
円高の影響を受けるものの、北米を除く各地域で販売数量の増加が見込まれる他、新製品の投入で付加価値を高め単価の引き上げも図る。また、職場環境の改善も含めて、生産性の向上に取り組み生産能力も高めていく。この一環として成形機の更新を前倒しで実施する。設備投資は前期の8億48百万円から11億57百万円に増加する(減価償却費:16/9期6億14百万円→6億58百万円)。

営業利益の主な減少要因は、為替の影響3億75百万円、製造原価の増加1億円(内、労務費30百万円増)、その他の販管費増1億20百万円等。
為替レートの前提は、同社の売上換算レート(通期平均)が、1ドル=105.00円(前期109.57円)、1ユーロ=116.00円(同125.15円)。海外子会社換算レート(2017年6月30日)が、1ドル=105.00円(同102.91円)、1ユーロ=116.00円(同114.39円)。
これまでユーロの為替予約は期初にある程度の予約を済ませていたが、変動が大きい昨今の外国為替市場を鑑みて、今後はデリバリーに合わせて月毎の短期的な予約にとどめる考え(ドルはドル建ての支払いが多いため、予約は短期的な必要最小限にとどめている)。

配当は、1株当たり60円の期末配当を予定している。
 
 
販売数量は足元のフル稼働を踏まえ、微増を前提としている。地域別では、北米が前期比17.0%と落ち込むものの、国内が同4.0%増、欧州が同3.7%増、その他地域が同5.8%増、と北米を除く各地域で増加が見込まれる。米国市場の販売ネットワーク再構築と中国市場を中心にしたアジアでの販売拡大を重点課題として挙げている。
 
(3)2016年シーズン投入の新製品と2017年投入の新製品
2016年シーズン投入の新製品
2016年シーズンは、オンロードフルフェイスタイプ(フラッグシップレーシングモデル)の最高級ヘルメット「X-Spirit III(欧州)/ X-14(北米、日本)」を、日米欧の3市場に投入した他、インナー収納シールド付きオープンフェイスタイプで、カスタムバイクやクラシックバイクのユーザーをターゲットにした新カテゴリーモデル「J・O」を欧州市場と日本市場に投入した(規格の関係で日欧のみ)。
 
X-14(北米、日本) / X-Spirit III(欧州)
販売地域      :ヨーロッパ(X-Spirit III
販売開始      :2016年3月(当社船積:2016年1月)
メーカー希望小売価格:ドイツ・フランス EUR699.00~869.00(税込み)

販売地域      :北米(X-14)
販売開始      :2016年2月(同社船積:2016年1月)
メーカー希望小売価格:US$681.99~839.99(税抜き)

販売地域      :日本(X-14)
販売開始      :2016年4月
メーカー希望小売価格:60,000円~76,000円(税抜き)
(同社資料より)
 
販売地域      :ヨーロッパ(J・O)
販売開始      :2016年3月(当社船積:2016年1月)
メーカー希望小売価格:ドイツ・フランス EUR329.00~379.00(税込み)

販売地域      :日本(J・O)
販売開始      :2016年4月
メーカー希望小売価格:32,000円~40,000円(税抜き)
(同社資料より)
 
「J・O」は新カテゴリーモデルとして販売が注目されたが、1万個の販売計画に対して実際の販売は3万個に達したという。「X-Spirit III(欧州)/ X-14(北米、日本)」、「J・O」に限らず、同社は、過去数年間、新製品を全てヒットさせている。
 
2017年投入の新製品
RYD(欧州、日本) / RF-SR(北米)
販売地域      :ヨーロッパ(RYD)
販売開始予定    :2017年4月(同社船積予定:2017年2月)
メーカー希望小売価格:ドイツ・フランス :EUR399.00(税込み)

販売地域      :北米(RF-SR)
販売開始予定    :2017年4月(同社船積予定:2017年2月)
メーカー希望小売価格:US$399.00(税抜き)

販売地域      :日本(RYD)
販売開始予定    :18/9期
メーカー希望小売価格:未定
(同社資料より)
 
オンロードフルフェイスタイプの「RYD(欧州、日本)/RF-SR(北米)」は、2010年に「webBikeWorld」でヘルメット・オブ・ザ・イヤーを獲得した「QWEST」の後継機種。2016年10月に米フロリダ州オーランドで開催された「American International Motorcycle Expo」と11月に独ケルン市で開催された「INTERMOTショー」で発表した。米国では直後に注文が殺到し、「INTERMOTショー」でもポジティブな評価を受けたと言う。
 
 
今後の注目点
17/9期のプレミアムヘルメットの販売数量計画は、前期比微増を想定している。工場は前期からの受注残もありフル稼働の状態にあり、休日出勤を増やして対応しているが、需要に供給が追いつかない。言い換えると、今期の販売数量は生産数量で決まる。中途・新卒合わせて20名を採用したが、戦力化には1~2年を要する。同社の場合、手作業の工程が多く機械化が難しいため、技術の伝承も含めて、急激な生産拡大が難しい。また、リーマン・ショック後のような急激な需要の落ち込みにも備える必要があるため、生産性向上を第一に、生産能力の増強に取り組んでいく考え。この一環として、FRP成形機の更新を前倒しで実施するが、これにより品質のバラツキがなくなるため、生産性向上が期待できる上、コストダウンも図れる。
一方、販売面では、課題であった米国市場で販売ネットワークの再構築に取り組む。米国もプレミアムヘルメットではシェアが高く、「SHOEI」のブランド力は強いが、これまで大手代理店1社に依存していたため、販売は市場動向よりも代理店の意向に左右される事が多かった。しかし、現在の代理店契約が2017年9月で切れる。このため既に代理店との関係を再構築するべく動き出している。18/9期以降に成果が表れてくる見込みで、販売が順調に拡大している中国を中心にしたアジアでの展開と共に注目していきたい。
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書        更新日:2016年06月17日
基本的な考え方
当社は、法令の遵守に基づく企業倫理の重要性を認識するとともに、変動する社会、経済環境に対応した迅速な経営意思の決定と、経営の健全性の向上を図ることによって株主価値を高めることを経営上の最も重要な課題の一つとして位置づけております。
 
<実施しない主な原則とその理由>
【原則4-2】取締役会の役割・責務(2):経営陣幹部の意思決定の支援とインセンティブ
当社において、役職員の立場は常に公平であり、提案を妨げる環境にはありません。
経営陣幹部(当社においては「参与及び部長」をいいます。)は担当する職務を遂行する上での課題を認識し、経営会議等の議論の場において、問題点とその解決策の提示を行います。
提案者と取締役及び経営陣幹部とは、闊達で公明正大な議論を行っております。
また、経営陣幹部の報酬は、生活給的要素を考慮し、能力並びに前年度の業績貢献等に基づき評価した号俸に応じた固定給としております。
 
【原則4-11】確保のための前提条件
社外監査役のうち、1名が公認会計士であり、長きにわたり会計業務に従事しており、財務・会計に関する適切な助言を行っております。取締役会全体としての実効性に関する分析・評価については、今後検討してまいります。
 
<開示している主な原則>
【原則1-4】政策保有株式
当社は、政策保有株式はもちろん、リスクの高い有価証券投資は行っておりません。
 
【原則1-7】関連当事者間の取引
当社は、子会社との販売代理店取引、代理店管理委託取引、マーケティング委託取引及びこれらに付随関連する取引以外に関連当事者取引を行う予定はなく、過去にもこれらの取引以外の関連当事者取引の実績はありません。また、役職員並びにその関係者の支配する会社との取引を、コンプライアンス規程にある「行動指針」にて公私の区別を厳しくする旨、定めており子会社との取引以外の関連当事者取引に関しては一切行いません。
 
【原則5-1】株主との建設的な対話に関する方針
株主、投資家の皆様には、常に公平な姿勢で接するように努めており、経営陣並びにIR担当部署(経営管理部)による、個人投資家向け説明会の開催並びに機関投資家、マスコミ、金融機関対象の決算説明会を始めワンオンワンミーティング等により、積極的な対話に努めております。
また、外国人投資家の持ち株比率は32.3%(平成27年9月期)であり、外国人投資家との透明度の高い誠実な対話とIR活動を続けております。