ブリッジレポート
(9837) モリト株式会社

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ブリッジレポート:(9837)モリト vol.7

(9837:東証2部) モリト 企業HP
一坪 隆紀 社長
一坪 隆紀 社長

【ブリッジレポート vol.7】2016年11月期第2四半期業績レポート
取材概要「増収増益予想から一転して減収減益予想となった。修正後の通期予想に対する第2四半期実績の進捗率も売上高で約5割、利益で約4割とやや低調な・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年10月4日掲載
企業基本情報
企業名
モリト株式会社
社長
一坪 隆紀
所在地
大阪市中央区南本町4-2-4
決算期
11月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年11月 43,293 1,721 1,871 1,432
2014年11月 35,862 1,429 1,729 1,270
2013年11月 33,145 1,390 1,699 1,081
2012年11月 31,521 1,389 1,405 787
株式情報(8/12現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
802円 28,451,000株 22,817百万円 4.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
16.00円 2.0% 35.11円 22.8倍 1.081.23.円 0.7倍
※株価は8/12終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。
 
モリト株式会社の2016年11月期第2四半期決算概要等について、ご紹介します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
靴・衣類などに紐を通す穴に取り付ける環状の金具である「ハトメ」をはじめとし、ホック、マジックテープ®などの服飾の付属品や、自動車の内装品等の企画・開発から製造に加え、卸・流通までを一貫して手掛ける専門商社。
創業100年を超す歴史の中で培われた高い信頼性、高シェア、グローバルネットワークなどが強み。
2016年5月末現在、連結子会社は国内4社、海外10社の合計14社。
 
【沿革】
大阪の呉服商で奉公人として働いていた創業者・森藤寿吉氏が、1908年(明治41年)に独立し、ハトメ、ホックの仲買商「森藤商店」を一人で開業。大正時代に入りファッションの洋装化が進むのに伴い、靴の需要も拡大し、急成長を遂げる。1937年にはホックをスマトラ、ジャワへ、靴ひもをヨハネスブルグ(南アフリカ)、イギリスへ輸出するなど国際化も進めた。太平洋戦争後は、カラーナイロンファスナーやマジックテープ®の販売を開始したほか、1990年代に入り汎用資材の拡販を目指し、自動車の内装品、カメラのストラップなど生活産業資材関連事業にも進出し事業ドメインを拡大した。海外事業も積極的に展開。1989年、大阪証券取引所第2部に上場し、2013年7月の東証・大証の統合に伴い東京証券取引所第2部に移行。
 
 
【ビジョンなど】
1.創業理念
「積極・堅実」
創業期より培われてきた同社の精神。「自ら進んで判断・行動することで確実に成果を上げることが出来る」という意味を表す。
また、「他人に勝つためには常に他人の意表をつくアイデアが必要。日頃から何かないかと考えながら商売せよ。」という、創業者・森藤寿吉氏の精神が同社事業のバックボーンとなっている。
 
2.経営理念
「パーツでつなぐ、あなたとつながる、未来につなげる」
(1)多彩なパーツを全世界に供給し、ジャンルを超えた無限の市場作りを追求します。
(2)お客様の要望を形にし、人々の豊かな暮らしにつながる本物のもの造りを実現します。
(3)ファッション性、機能性、快適性、安全性といったトータルな視点で価値創造力を発揮し、全ステークホルダーと一体になって未来創りに貢献します。
 
 
3.経営ビジョン
『存在価値を創造する、あたらしい「モリトグループ」の実現』
 
4.企業行動指針
 
【事業内容】
ハトメ、ホック、バックル、ファスナーなど服飾の付属品を扱う「アパレルコンポーネント事業」、マットエンブレム、ドアグリップなど自動車の内装品、新幹線の座席ネット、カメラ・携帯端末用のストラップ、靴の副資材や靴の中敷きなどフットケア商品を扱う「プロダクト事業」の2事業で構成される。
どちらの事業においても、ファッション性、機能性、快適性、安全性等を勘案し、市場や顧客ニーズに沿った商品の企画、開発からはじまり、製造、流通、販売までを一貫して手掛けている。
報告セグメントは、日本、アジア、欧米の3セグメント。
 
 
ハトメ、ホック、バックル、ファスナー、リベットなど服飾品やフットウェアの付属品を、主として卸、商社、代理店などを通じて同社の最終顧客である国内外のアパレルメーカー等に納入している。
ファーストリテイリング、GAPなどとは直接取引を行っている。
海外における同社の知名度は高く、GAP、H&M、ZARAといったメーカーとは10年から20年以上という長い取引関係にある。
 
 
 
マットエンブレム、ドアグリップ、アームレストといった自動車の内装品、新幹線の座席ネット、カメラ・携帯端末用のストラップ等を自動車部品メーカー、映像関連の電機メーカー等に納入しているほか、靴の副資材、靴の中敷き、靴クリームなどフットケア商品は同社オリジナル製品として自社ブランドで販売している。

売上構成は輸送機器事業が約2割、パソコン周辺グッズ等を含めた映像機器資材事業が約6割、フットケア事業が約2割となっている。
輸送機器事業では自動車関連が約9割を占める。内半分がトヨタ系顧客向けで、次いで日産系3割、ホンダ系1割となっている。
映像機器資材事業では、キヤノン向け35%、ニコン向け30%などとなっており、その他、オリンパス、京セラ等が顧客となっている。
 
【特長と強み】
①安定した業績推移
沿革でも触れたように、創業以来ハトメ、ホック、マジックテープ®などを中心にアパレルコンポーネント事業を展開してきた同社だが、汎用資材の用途拡大を進め、プロダクト事業をスタートさせ、現在では両事業の構成比は概ね半々となっている。
この事業ポートフォリオは同社の業績に安定性をもたらしており、戦後2度の石油ショック、世界的な経済危機「リーマンショック」を含めても赤字に陥ったことが無い。
 
②多くのアイテムで高いシェア
下表の様に様々な商品アイテムにおいて高いシェアを有している。
価格のみで見れば同社よりも低価格で供給する新興国の企業もあるが、企画・開発から製造、流通にわたり一貫し、加えて様々な状況にも適切に対処できる対応力、長い歴史の蓄積の中で培った安全性も含めた品質の高さ等で発注元からの信用、信頼度は高く、それが高シェアにつながっている。

例えば、同社では顧客のサンプル製作段階から適切な技術的アドバイスを提供したり、顧客の要望に合わせた微妙な色味の調整を何度も繰り返すほか、本生産に入ってからも定期的にチェックを繰り返すなど、単に完成品を販売するのではなく、取引開始に至るまで多くのハードルをクリアし、川上から川下までの全工程を仕組みとして顧客に提供している。こうした付加価値の提供が海外の有名ブランドを中心とした顧客から高く評価されている。
 
 
③グローバルネットワーク
企画・開発は主として日本で行う一方、欧州、北・中・南米、アジア太平洋、アフリカに製造・販売の拠点を多数有している。
 
 
同社ではグローバル成長企業を目指しグローバルな生産拠点、販売網の拡充とグローバル経営を支える内部体制の構築を進めている。
これが計画通りに進捗し、より強固なグローバルネットワークが構築されれば、同社の競争優位性は一段と強固なものとなるだろう。
以上の3点に加え、「ユニークなポジショニング」も同社の特徴の一つと言って良いだろう。
同社が取り扱う品目一つ一つをとれば競合先もあるが、これだけ多彩な品目を取扱いながら、その企画・開発から製造、流通、販売までを一貫して手掛け、売上高300億円を超すというボリュームを実現している企業は世界的にも他に見当たらないということだ。
 
 
第6次中期経営計画の最終年度である2015年11月期は「ROE 5%」を目標としていたが、実績は前期を上回ったものの、5%には達しなかった。
第7次中期経営計画では目標数字は明示していないものの、引き続きROEの向上に取り組む。マージンおよび資産効率性の改善がカギとなる。
 
 
2016年11月期第2四半期決算概要
 
 
減収減益
売上高は前年同期比5.1%減の203億32百万円。円高による海外子会社の売上高・各段階利益額の目減りの影響が大きく、日本、アジア、欧米共に減収だった。
粗利率は0.3%上昇したが減収により粗利額は減少。人件費減などで販管費も減少したが、営業利益は同19.2%減の7億6百万円となった。前期の為替差益66百万円が為替差損150百万円に転じ経常利益は同43.5%減少の5億80百万円となった。関係会社整理損3億1百万円を特別損失に計上したことなどから、当期純利益も同31.1%減少した。
 
 
◎日本
前年同期比1.9%減収、22.4%減益。

<アパレルコンポーネント>
大手量販店向け付属品、アウトドア、スポーツアパレルメーカー向け付属品が増収だった。

<プロダクト>
映像機器向け付属品、サポーター等の健康関連向け付属品・製品、マジックテープ、中敷等の靴回り商品、自動車内装品が減収だった。
代理店の絞り込みなど利益率改善策が一定の効果を示した。
 
◎アジア
前年同期比10.4%減収、14.0%減益。
<アパレルコンポーネント>
香港での欧米ベビー服メーカー向け付属品、上海での日系アパレルメーカー向け付属品が減収だった。

<プロダクト>
タイでの日系自動車メーカー向け自動車内装品は増収だったが、タイでの映像機器向け付属品、上海での日系自動車メーカー向け自動車内装品が減収だった。
 
◎欧米
前年同期比12.0%減収、20.2%減益。
<アパレルコンポーネント>
アメリカでの医療用服飾付属品が増加したが、米国小売生産調整のためアメリカ内需向け付属品が減収だった。

<プロダクト>
欧州での欧州自動車メーカー向けの自動車内装品および映像機器向け付属品が減収だった。米国日系自動車メーカー向け売上は為替の影響により微減となったが、外貨建てでは17%増と堅調だった。
 
 
現預金、売上債権の減少等で流動資産は前期末比14億87百万円減少した。有形固定資産の減少等で固定資産は同40億3百万円減少し、資産合計は同54億71百万円減少の418億59百万円となった。
短期借入金の減少で流動負債は同52億74百万円減少した一方、社債の発行で固定負債は同9億27百万円増加し、負債合計は同43億47百万円減少の118億70百万円となった。利益剰余金の増加、自己株式の増加、円高に伴う為替換算調整勘定の減少などで純資産は同11億24百万円減少の299億89百万円。この結果、自己資本比率は前期末に比べ5.9%上昇し71.6%となった。
 
 
営業CFは利益減、法人税等の支払額増などで前年同期よりもプラス幅は縮小した。
投資CFは有形固定資産の売却等でプラスに転じ、フリーCFもプラスとなった。
財務CFは社債の発行はあったものの短期借入金の減少などでマイナスに転じた。
現金及び現金同等物残高は前期末に比べ20億円増加した。
 
 
2016年11月期業績予想
 
 
業績下方修正、減収減益
円高による海外子会社の減収、暖冬、熊本地震の影響による売上の減少とそれに伴う利益の減少を理由として通期業績見通しを下方修正した。
売上高は前期比5.3%減少の410億円、営業利益は同7.0%減の16億円。
配当予想は16.00円/株で変わらず。予想配当性向は45.5%。
 
 
中期経営計画の進捗状況
 
①グループ収益基盤の拡大強化
北米自動車市場向けの生産拠点を中米に開設する準備を進めている。
また、BtoCビジネスへの取り組みも検討しているほか、IoTに対応した産学連携も視野に入れており、従来の発想の延長線上ではないビジネスの実現を目指す。
 
②資本政策
最適資金調達方針の策定とともに、物流拠点の再構築を進めていく。
 
③内部統制の強化
現在も様々な制度を導入しているが、男性社員の育休制度、残業時間の更なる削減など、人材の活性化につながる制度の導入、ダイバーシティ経営の推進に注力する。
コーポレートガバナンス・コードについては、自社らしさを把握してしっかりと適切に対応していく。
 
 
今後の注目点
増収増益予想から一転して減収減益予想となった。修正後の通期予想に対する第2四半期実績の進捗率も売上高で約5割、利益で約4割とやや低調な推移となっている。
ただ、地域別セグメントでは3地域とも減収ではあったが、アパレルコンポーネント事業のアジア売上は数量ベースでは前年を上回っており、米国における日系自動車メーカー向け売上も外貨建てでは前年比2桁増となっており、実体的な事業環境は決して悪くないとも見ることができる。年度後半に向けてどういった施策で巻き返していくのかを注目したい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社は最新のコーポレートガバナンス報告書を2016年3月10日に提出している。