ブリッジレポート:(2437)シンワアートオークション vol.21
(2437:JASDAQ) シンワアートオークション |
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企業名 |
シンワアートオークション株式会社 |
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社長 |
倉田 陽一郎 |
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所在地 |
東京都江東区有明3-7-26 有明フロンティアビル |
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決算期 |
5月末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2015年5月 | 1,093 | 30 | 32 | -9 |
2014年5月 | 1,169 | 150 | 144 | 125 |
2013年5月 | 1,248 | 36 | 47 | 35 |
2012年5月 | 1,359 | 45 | 57 | 76 |
2011年5月 | 1,213 | 89 | 85 | 131 |
2010年5月 | 737 | -259 | -255 | -279 |
2009年5月 | 1,077 | -198 | -191 | -279 |
2008年5月 | 1,621 | 194 | 201 | 98 |
2007年5月 | 2,228 | 449 | 451 | 256 |
2006年5月 | 2,334 | 562 | 567 | 311 |
2005年5月 | 1,940 | 440 | 410 | 235 |
2004年5月 | 1,680 | 319 | 311 | 174 |
2003年5月 | 1,222 | 234 | 231 | 122 |
2002年5月 | 1,158 | 139 | 129 | 70 |
2001年5月 | 1,105 | 200 | 202 | 38 |
株式情報(8/2現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
【沿革】
1987年8月に発足した、美術品の業者交換会「親和会」が前身。1990年9月に、第1回シンワアートオークション近代日本絵画オークション(現 近代美術オークション)を開催。1991年6月に商号をシンワアートオークション株式会社とした。その後、1996年 第1回近代日本陶芸オークション(現 近代陶芸オークション)、1997年 第1回茶道具特別オークション、1999年 第1回絵画・版画・工芸(現 近代美術PartIIオークション)など様々なオークション開催実績を積み重ねて業容を拡大。2005年 4月、大阪証券取引所ニッポン・ニューマーケット 「ヘラクレス」(現 東証JASDAQ市場)に上場した。 2013年4月に、エーペック株式会社を株式取得により子会社化したほか、シンワメディカル株式会社(現 シンワメディコ株式会社)を設立するなど、オークション事業を中心事業と位置付けつつ、同社の重要な顧客資産である富裕層を対象とした収益の多角化も進めている。 【市場環境】
下のグラフにあるように、国内美術オークション市場規模(落札総額)はバブル崩壊後の1992年には14億円まで縮小したが、1999年には公開オークションが始まった1990年の水準を抜き、2007年には218億円まで拡大した。リーマンショックの影響により2011年には100億円割れまで減少した後、2015年には148億円まで回復してきたものの、2007年のピークにはまだ及ばない。後で述べるように、同社では日本美術品は極端に過小評価されていると考えており、「日本近代美術再生プロジェクト」によって市場規模を最低でも1,000億円まで拡大させることを目指している。 【事業内容】
オークション関連事業、エネルギー関連事業、その他(医療機関向け支援事業)の3事業を展開している。
①オークション関連事業
オークション事業とオークション関連その他事業により構成される。
(1)オークション事業
取り扱い作品・価格帯により、近代美術オークション、近代陶芸オークション、近代美術PartIIオークションを定期的に開催している他、ワインや西洋美術等のオークションも随時開催している。また、2013年10月に設立した子会社Jオークション株式会社では、ブランド雑貨、時計、宝飾品のオークションを開催している。 売上高の主たる構成要素は、落札価額に対する手数料収入(落札手数料及び出品手数料)。落札手数料は、落札価額の200万円以下に対し15.0%、200万円超5,000万円以下に対し12.0%、5,000万円超に対し10.0%、出品手数料は、落札価額の10.0%(いずれも別途消費税)となっている。 また、同社が仕入れた後に、同社の在庫商品としてオークションやプライベートセールで売却する場合もある。この場合は、オークションでの落札価額またはプライベートセールでの販売価格を商品売上高としてそのまま売上高に計上する。このため、在庫商品の取扱高の増減が、売上高変動のひとつの要因となる。 その他、カタログの販売、出品者から徴収するカタログ掲載料等で構成されるカタログ収入、有料会員から徴収する会費収入がある。 (2)オークション関連その他事業
プライベートセールを中心に展開している。プライベートセールは、オークション以外での相対取引の総称で、プライベートセールでの販売も、オークション取引と同様に、販売価格をベースに出品者(販売委託者)及び購入者から手数料を徴収する場合と、同社が作品を買取り、その在庫商品を購入希望者に販売する場合がある。 その他、貴金属等買取サービスや時計・宝飾品やブランドバッグの小売販売等もある。 ②エネルギー関連事業
エーペック株式会社で、富裕層及び法人向けに50kW級の低圧型太陽光発電施設の分譲販売を行っている。また、高圧型太陽光発電施設の分譲販売も行い、一部を自社保有して売電事業を行っている。 ③その他:医療機関向け支援事業
エーペックの子会社であるシンワメディコ株式会社がシンワアートオークションの重要な顧客資産である「富裕層」を対象として、医療ツーリズムの事業化を進めている。高度医療サービス、高度再生医療サービス、高度医療健診を提供する医療機関と提携し、日本を含めたアジアの富裕層にこれらのサービスを紹介する。また、同時に医療コーディネーター業務や医療通訳養成講座を開始した。2016年5月期より保険事業を開始した。 また太陽光発電所の開発は、少なからず樹木の伐採を伴う。同じくエーペックの子会社であるシンワ・ミャンマーはグローバルな視点で、農業や林業に従事するミャンマーの人々を支援することをミッションとしている。 【特徴と強み】
①国内最大のオークション会社
2,000万円以上の高額落札作品市場における同社シェアは2015年で51.4%と2位を大きく引き離している。同社には近代美術に精通している鑑識眼の高いエキスパートが複数名在籍しているため、出品作、特に高級品の適格な評価が可能で、「高級品ならシンワ」というブランディングが確立されており、そのポジショニングに揺るぎは無い。 また唯一の上場企業でもあり、信頼性の高さという点でも他社を大きく引き離している。 ②富裕層との強固なネットワークを活かした事業展開
オークションの参加者である主要顧客は出品者、落札者共に富裕層が大多数である。富裕層は、資産運用、節税、相続など様々なニーズを有している。同社は27年に亘って培ってきた約2万人を超す富裕層のデータベースを有しており、オークション以外にも多様なビジネスチャンスが展開可能な事業基盤を有している。 エネルギー関連事業、医療機関向け支援事業は、そうした事業基盤の上で展開しているものであり、今後も、様々な事業の構築を進めて行く。 |
2016年5月期決算概要 |
オークション関連事業は微増収も、エネルギー関連事業が好調で大幅増収増益。
売上高は前期比32.2%増の38億98百万円。オークション関連事業は微増収だったが、エネルギー関連事業が同5割の増収。営業利益は同4.5倍の3億56百万円。オークション関連事業、エネルギー関連事業双方とも利益を大きく増加させた。 2016年7月、売上、利益を上方修正、好調な業績を背景に配当も6円/株の予定から7円/株に引き上げた。 ①オークション関連事業
合計30回のオークションを開催した。(前期は28回)
Ⅰ)オークション事業
主力の近代美術オークションは、前期比で出品点数21.9%減、落札点数20.4%減とともに減少し、平均落札単価も同10.4%減少したが、エスティメイト(落札見積価格)下限合計額に対する落札価額の伸び率は平均で139.3%と高水準で推移した。2010年以降、近代美術オークションの中で取り扱ってきた戦後美術及びコンテンポラリーアートを独立させ、単独のオークションとして2回開催したので、近代美術オークションの取扱高、売上高、出品点数及び落札点数は、前期比では減少している。
近代陶芸オークションは、出品点数同1.0%減、落札点数同0.9%減となったが、2回の古美術を含むオークションが好調であったため、平均落札単価は同20.4%増と大きく増加した。またエスティメイト下限合計額に対する落札価額の比率も平均で144.0%と高水準で推移した。
近代美術PartIIオークションは、出品点数同2.9%増、落札点数同0.1%増と微増だった。平均落札単価は同42.5%増と大きく増加。また、エスティメイト下限合計額に対する落札価額の比率も平均で152.5%と高水準で推移した。
その他オークションでは、ワインオークションが前期の実績を大きく上回った。戦後美術&コンテンポラリーアートオークションの開催も収益に貢献した。
II)オークション関連その他事業
プライベートセール部門では、積極的な取り扱いに努めた結果、高額作品の成約があり、取扱高は前年比47.2%増、売上高は前年比44.9%増とともに大きく増加した。その他、貴金属等買取サービスも積極的に行い、取扱高、売上高ともに前期に比べ大きく増加した。
②エネルギー関連事業
50kW級の低圧型太陽光発電施設を101基販売した。前期から見込んでいた生産性向上設備投資促進税制が浸透し、即時償却を目的とした需要により、販売数は優遇税制措置を受けられる期限の2016年3月末まで順調に推移した。4月以降は、同税制により受けられる優遇税制措置は50%の特別償却となるため、需要の伸び悩みを予想していたが、4月以降も依然として強い需要があり、販売数を積み増すことができた。 なお、2016年5月期に開始した日本ロジテック協同組合との電力共同購買事業(エコサブ)において、日本ロジテック協同組合が経営破綻したため、エーペックが保有する売掛債権について、その回収可能性を慎重に判断した結果、当期に貸倒損失48百万円を特別損失として計上した。 その他、エーペックが保有していた穂北太陽光発電所の売却、同じくエーペック保有の太陽光発電施設による売電事業等により、大幅な増収増益となった。 ③その他
医療機関向け支援事業では、診療報酬債権ファクタリング事業を一旦凍結し、新たに医療周辺事業として、日本を含めたアジアの富裕層に最先端の医療技術やより良い品質の医療サービスを紹介する医療ツーリズムを収益の柱とするべく、高度医療サービスや高度医療健診を提供する医療機関や提携医療機関等との具体的な折衝を行っている。当期は、香港で孫会社を取得し、香港での中国銀聯カードの決済機能を保有するCoporate Business Network Limitedと孫会社との間で業務提携を締結し、新たに合弁会社を設立した。これは、主に日本の医療サービスを利用する中国・アジアからのインバウンド旅行者の獲得を目的としたものであり、合弁会社の設立は、その決済プラットフォームを構築することを目的としたもの。 その他、医療コーディネーター業務や医療通訳養成講座を開始した。加えて、新たな事業として、保険事業を開始した。 事業開発は終了したため、今期より売上、利益への落とし込みをスタートさせる。 短期借入金の増加などで流動負債は同4億60百万円の増加。負債合計は同4億66百万円増加の21億86百万円。 利益剰余金の増加で純資産は同1億32百万円増加の17億72百万円となった。 この結果、自己資本比率は前期末比3.9%低下し、44.6%となった。 貸付金の回収による収入の増加、定期預金の払戻額の増加などで投資CFのマイナス幅は縮小したが、フリーCFはマイナスに転じた。 短期借入金の増加などで財務CFはプラスに転じた。 キャッシュポジションは上昇した。 (4)トピックス
エーペック株式会社が、埼玉県秩父市の太陽光発電施設を取得することとした。◎メガソーラーを取得 エーペック(株)はエネルギー関連事業として、低圧型太陽光発電施設の販売事業を行うとともに、現在、約900kWの太陽光発電施設を自社保有し売電収入を得ているが、更なる安定的な売電収入を得ることを目的として、埼玉県秩父市の太陽光発電施設を取得することとした。 今回取得する太陽光発電施設も、良好な立地条件を有しており、グループ収益に貢献する事を見込んでいる。 2016年10月完工で、11月より売電を開始する予定。 |
2017年5月期業績予想 |
2桁の増収・増益
売上高は前期比10.3%増の42億99百万円の予想。各事業とも堅調な拡大を見込んでいる。営業利益は同17.1%増の4億17百万円の予想。売上高営業利益率は0.6%上昇する。 配当は前期と同じく7.00円/株を予定。予想配当性向は17.8%。 (2)今期の取り組み
各事業以下のような点に注力する。
<オークション関連事業>
引き続き「近代美術再生プロジェクト」を推進する。富裕層の深耕を狙い、プライベートセール事業を拡大する。 アジア富裕層ネットワークとの連携を進める。 <エネルギー関連事業>
太陽光発電施設開発・販売のための積極的な権利取得を推進する。太陽光発電施設の販売に代わる新たな事業を模索する。 <医療機関向け支援事業>
A|A|A|A(Asian Anti-aging Alliance)活動(サプリメント販売)を推進する。医療ツーリズムの実現に向け香港に設立した合弁会社での決済プラットフォームの本格稼働を目指す。 上半期は、日本の医療機関及びクリニックの加盟件数獲得に注力し、下半期は中国を中心としたアジアからの医療ツーリズムを目的としたインバウンド旅行者の獲得を実現する。 この他、富裕層向けに、海外での再保険会社の設立を組み合わせた火災保険・地震保険等の商品の販売を本格的に開始する。 |
グループ事業戦略 |
その為の根幹は以下の2つである。 ①日本近代美術再生プロジェクト
「世界最高峰の質を有する日本近代美術作品の評価があまりにも低すぎる。」との想いから、同社が日本近代美術の盟主として、資本力・経験・ネットワークを用いて日本近代美術を再生させるための取組み。芸術的価値および経済的価値の向上に寄与する啓蒙活動を継続するとともに、収益性を高めて、現在100~150億円程度の市場規模を10年後には最低1,000~2,000億円まで拡大、下支えする事を目指しているが、実現のためには、特に資本力の必要性を強く意識している。 デフレサイクルでも底堅く市場を支える事できるプラットフォームを確立するには、市場規模の10%程度の資金を安定化のために使う必要があることから、1,000~2,000億円の市場を維持・発展させるためには、最低でも100億円以上の純資産を確保する事が必要と考えている。 そのためには企業規模の拡大が不可欠で、現在16億円のグループ純資産を2023年には最低でも150億円、連結経常利益もオークション事業利益50億円、グループ経常利益100億円まで拡大させることが必要と考えている。 アベノミクスによるインフレの追い風の下、オークション事業の収益力を強化するとともに時機を見て公募増資も実施し、企業規模の拡大を進めていく。 ②富裕層ネットワークの活用
日本近代美術の再生を企業の使命として銘じている同社が、オークション関連事業の収益力強化に加え、富裕層という顧客資産を有効に活用した様々な事業を展開した、グループ収益力の拡大が必要と考えている。美術品オークションを通じて27年間にわたり培ってきた富裕層ネットワークを活用し、オークション以外の富裕層関連ビジネスを展開する。 同社の中心事業の一つに育ったエーペック株式会社によるエネルギー関連事業(太陽光発電システムの分譲販売)に加え、シンワメディコ株式会社が手掛ける医療ツーリズムも本格的な取り組みを開始する。 また、前述の様にエーペック(株)が再保険関連事業を開始したほか、新規事業の開発を進めている。 <エネルギー関連事業>
50kW級低圧型太陽光発電所の販売実績は2016年5月までで累計165基。今期は前期を大幅に上回る開発・販売を予定している。 また20年固定買取制度を利用して安定収益を拡大させるため自社保有太陽光発電所を拡大させる。前述の様に秩父の発電所は11月より売電の予定。 さらに、大分県には自社保有の19kWの風力発電所を建設し7月1日より売電を開始した。 <保険代理店事業>
地震保険キャプティブ設立コンサルを開始した。加入し難いと考えられている地震保険をカスタムメイドで様々なオプションを提案している。キャプティブとは、事業者が自らのリスクを専門的に引き受けるために設立する事業者所有の再保険会社のこと。 通常の損害保険の世界では、事業者は保険会社に自社のリスクを移転する為に各種保険を手配し、そのコストとして保険料を支払う。 これに対し、「キャプティブ」は、自らが加入している火災保険、動産総合保険、賠償責任保険などの損害保険を、日本国内の損害保険会社を通じて再保険として専門的に引き受け、自家保有するとともに必要に応じて再々保険として再保険市場へ手配を行う。 キャプティブを設立してリスクを自家保有することにより、事業会社は事故低減活動等のリスクマネジメントを通じて「損害率の低減=保険コストの低減」を図ることが可能であるとともに、投資収益面でのメリットも見込むことができるため、日本でも多くの企業がキャプティブを設立している。 ただ、一般の事業会社が自社でキャプティブを設立するには、相応の保険料規模が必要であるなど多額の初期投下資本と非常に専門的な知識が必要であり、課題も多い。 そうした場合に用いられるの「セル・キャプティブ」という仕組み。 これは、自社でキャプティブを設立せず、キャプティブを運営している会社から「セル=部屋」を借りることで、キャプティブの機能を享受するというものである。 エーペック(株)は、希望する顧客企業等に対し、自社でキャプティブを設立するよりも一般的に安価で容易に、かつ比較的短期間で再保険事業を行うことが可能となる海外のセル・キャプティブ設立の提案と海外のセル・キャプティブ設立・運用に関する専門家の紹介を行い、また、それに伴う日本の元受保険会社の提供する保険商品の販売代理店として保険商品の販売を行っている。 <医療機関向け支援事業>
アンチエイジングのセレクトショップにおけるサプリメントの販売に加え、高度で緻密な日本の医療を紹介する医療ツーリズムを展開する。シンワメディコが手掛ける医療ツーリズムは以下のような特長を持っている。 |
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<参考:コーポレートガバナンスについて> |
◎コーポレートガバナンス報告書
同社はコーポレートガバナンス・コード適用以降のコーポレートガバナンス報告書を2015年11月24日に提出している。<実施しない主な原則とその理由> 同社は、JASDAQ上場会社として、コーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施している。 |
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) 2024 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |