ブリッジレポート
(5162) 株式会社朝日ラバー

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ブリッジレポート:(5162)朝日ラバー vol.35

(5162:JASDAQ) 朝日ラバー 企業HP
渡邉 陽一郎 社長
渡邉 陽一郎 社長

【ブリッジレポート vol.35】2017年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「同社の17/3期第1四半期連結累計期間の決算は、前四半期である16/3期第4四半期からの回復が継続していることが確認できる内容の良い決算と・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年8月30日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社朝日ラバー
社長
渡邉 陽一郎
所在地
埼玉県さいたま市大宮区土手町2-7-2
決算期
3月 末日
業種
ゴム製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2016年3月 5,976 237 235 131
2015年3月 6,059 114 122 328
2014年3月 5,677 286 296 160
2013年3月 4,789 135 139 76
2012年3月 5,010 243 211 72
2011年3月 4,806 161 117 21
2010年3月 4,667 125 91 41
2009年3月 4,904 46 14 -80
2008年3月 6,284 414 325 211
2007年3月 5,314 399 375 176
2006年3月 4,578 366 353 209
2005年3月 4,057 251 251 147
2004年3月 3,449 233 211 112
2003年3月 3,154 172 159 75
2002年3月 2,907 98 85 10
株式情報(8/10現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
533円 4,476,508株 2,386百万円 3.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
13.00円 2.4% 34.44円 15.5倍 792.79円 0.67倍
※株価は8/10終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期実績。
 
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
小型電球やLEDに被せる事で様々な発色を可能にする被覆用ゴム製品を主力とする。自動車の内装用照明を中心に、携帯用通信機器、電子・電気機器、産業機器、スポーツ用等、幅広い分野で利用されている。シリコーン(ゴム状の合成樹脂)材料の配合技術と調色技術に強みを有し(色と光のコントロール技術)、シリコーンゴムに蛍光体を配合したLED用ゴムキャップは、LEDの光を波長変換して色調や輝度を調節できるため、10,000色以上の光を出す事やLEDの課題である光のばらつきを均一化する事が可能。また、医療・衛生用ゴム製品や硬質ゴムと軟質ゴムの複合製品等も配合技術を活かしてそれぞれの用途にあったゴム質を実現している。

グループは、同社の他、ゴム・プラスチック等の研究開発を行う(株)朝日FR研究所、米国の販売会社ARI INTERNATIONAL CORP.、及び工業用ゴム製品の販売を手掛ける朝日橡膠(香港)有限公司、10年7月に設立した工業用ゴム製品の製造・販売を手掛ける東莞朝日精密橡膠制品有限公司、及び12年1月に設立した工業用ゴム製品の開発・設計・販売を手掛ける朝日科技(上海)有限公司の連結子会社5社からなる。
 
 
 
 
【事業内容と主要製品】
事業は、自動車のスピードメーターや内装照明の光源向けの「ASA COLOR LED」や各種センサ向けのレンズ製品「ASA COLOR LENS」、或いは弱電製品に使われる応用製品、更にはスポーツ用ゴム製品(反発弾性、高摩擦抵抗等を追及した高品質の卓球ラケット用ラバー)等の工業用ゴム事業、点滴輸液バッグ用ゴム栓や真空採血管用ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケット等、使い捨てのディスポーザブル用ゴム製品の医療・衛生用ゴム事業に分かれ、15/3期の売上構成比は、それぞれ80.8%、19.2%。 今後は、RFIDタグ向け新製品、マイクロTAS製品などの新製品の販売拡大が期待される。
 
・ASA COLOR LED
ASA COLOR LEDとは、LEDの光と色のばらつきを解消する商品。青色LEDに蛍光体を配合したシリコーン製キャップを被せることで、自動車内装照明用に10,000色以上の均質な光を提供。
 
ASA COLOR LED
 
・医療用ゴム製品
点滴輸液バッグ用ゴム栓、真空採血管ゴム栓、薬液混注ゴム栓、プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)向けガスケットなど、医療現場で用いられるディスポーザブル商品に使用さる。安全性の高い材料を開発し、独自のコーティング技術で“漏れない”と“滑る”を両立し、注射速度の微妙な調節が可能。
 
プレフィルドシリンンジ向けガスケットのイメージ
 
・マイクロ流体デバイス
DNAやウイルスなどを分析するために使われる生化学分析デバイス。独自の分子接着・接合技術を生かし、DNAの抽出、増幅、解析という複数の工程をワンストップで行うことが可能な製品。
 
マイクロ流体デバイス
 
・RFIDタグ用ゴム製品
RFIDタグ用ゴム製品は、溶剤を使わずに接着させる“分子接着・接合技術”を応用し、IC チップやアンテナ部をゴム素材で覆い、折り曲げに強く、耐水性、耐熱性に優れた、柔らかい小型のIC タグを提供。
 
RFIDタグ用ゴム製品イメージ
 
 
 
・色と光のコントロール技術
シリコーンゴムに着色剤や蛍光体を配合し、様々な色と光を出すことのできる色調管理技術を有し、ばらつきを調整し、顧客が望む細かい色調を実現。また、透明なシリコーン樹脂を材料とし、耐熱性、対紫外線性に優れ、集光・拡散といったレンズ機能を実現。ASA COLOR LEDなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、自動車内装、照明分野とコア技術を応用したスイッチ分野の拡大を図る方針。
 
・表面改質及びマイクロ加工技術
接着剤を使わずに、ゴムとゴムや金属、樹脂を接着させる分子接着・接合技術を有する。接着させる表面を改質処理し、化学反応で結合。これにより、有害な溶剤の廃棄処理が不要となり、耐熱性、耐水性もクリア。耐水性、耐候性に優れており、RFIDタグ用ゴム製品やマイクロ流体デバイスでこの技術が生かされている。また、数十ミクロンから数ミクロン単位の表面加工を行うマイクロ加工技術を確立。医療用ゴム製品である薬液混注ゴム栓の薬液注入口の形成と薬液漏れの防止や、充電して使用できる二次電池の内圧管理にもこのマイクロ加工技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、高性能製品や新たな分野を開拓する方針。
 
・素材変性技術
ゴムをはじめとするソフトマテリアルは、素材に添加物を配合することで求める機能を持たせることができる。更に、ナノ・分子レベルで成形することによりその機能をパワーアップすることも可能。卓球ラケット用ラバーなどにこの技術が生かされている。今後もこれら技術を活用し、医療分野を支える製品を提供する方針。
 
中期経営計画
 
新中期経営計画を策定するにあたり、独自の新製品開発による成長を描くため、中期3ヶ年の2回分である2020年を見据えたビジョン「AR-2020VISION」を制定。
AR-2020VISION
・技術革新を基盤に、新しい価値を創造し続ける企業になる。
・現在の仕事に慢心せず、常に変革を求め、経営環境の変化に応じ継続的に磨きをかける。
・人財こそが、事業運営の要とし、人材の育成を行う。
このビジョンの実現に向けて、最初のステージである15/3期~17/3期の中期経営計画(V-1計画)を作成。
中期経営方針として、①既存事業の質・量の持続的成長、②新市場・新分野への事業展開、③2020年に向けた事業基盤の強化と整備と定め、最終年度である17/3期に数値目標である、売上高80億円、営業利益8億円の達成を目指す内容といていた。
 
中期経営計画(V-1計画)の見直し
同社は、ライフサイエンス分野のマイクロ流体デバイス製品について、最終年度の連結売上高目標を12.5 億円としていたが、売上比率を高く設定していた主力案件の受注が大幅に少なくなる見込みとなったことや、他の開発案件の量産開始も遅れる見込みとなったことにより、2016年2月23日に中期経営計画(V-1計画)の見直しを発表した。
 
 
(1)今後の事業戦略と新しい売上目標
自動車分野
17/3期の売上高目標は当初の37億円から36億円へ修正。主力ASA COLOR LEDは、新タイプによる材料費削減で利益率を改善させる。加えて、接点ラバー、Oリングは、海外向けのスイッチ用ラバー、スイッチ用防水カバーの受注拡大を図る。
 
 
医療分野
17/3期の売上高目標は当初の13億円か11億円へ修正。プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットなどの拡大を図る。前期までに設備投資を行った分野であり、V-1計画では新製品の開発期間と位置付け、今後の成長に向けた要素技術の深を進める他、ライフサイエンス分野とのシナジー効果を生み出す。
 
 
ライフサイエンス分野
17/3期の売上高目標は当初の16.5億円から4億円へ修正。卓球ラケット用ラバーは、顧客の要求に着実に応えていく。マイクロ流体デバイスは、診断医療用チップを研究・開発する各社との事業化準備は継続的に進行中。中期V-1計画立案段階よりも2~3年ほど量産化時期が後倒しになっているものの、今期から一部の新規顧客と診断分野の製品で量産がスタートする予定。
 
 
その他分野
17/3期の売上高目標は当初の13.5億円から10億円へ修正。主力RFIDタグ用ゴム製品は、新タイプの生産がスタートし、今期は3.5億円の売上げ見通し。(前期実績3億円)。その他、白色レジストインクなどシリコーン応用製品の受注が増加する見込み。
 
 
 
2017年3月期第1四半期決算
 
 
前期比3.6%の増収、同141.2%の経常増益
売上高は、前年同期比3.6%増の14億46百万円。売上面では、工業用ゴム事業の売上高が前期比3.7%増加。自動車内装照明向けのシリコーンゴムキャップ付きLED「ASA COLOR LED」の受注が海外向けを中心に好調に推移した他、卓球ラケット用ラバーの受注が増加した。また、医療・衛生用ゴム事業の売上高も前年同期比3.2%増加。プレフィルドシリンジ用ガスケット及び採血用・薬液混注用ゴム栓の販売が堅調に推移した。
営業利益は、前年同期比209.3%増の82百万円。工業用ゴム事業のセグメント利益は、同59.9%の増益となった。加えて、医療・衛生用ゴム事業のセグメント利益も同195.4%増加した。販売の増加、原価低減活動の継続が寄与し、売上総利益率は、27.5%と前年同期比3.5ポイント上昇。また、売上高対販管費率も同0.4ポイント低下した。その他、前年同期は為替差益(3百円)だったものが、今四半期は為替差損(11百万円)となったことなどが影響し、経常利益以下の増益率は営業利益の増益率を下回った。
 
 
17/3期第1四半期は、16/3期第4四半期と比較し、売上と営業利益が減少したものの、過去数年の第1四半期の中では売上高と営業利益の水準が高い四半期となった。
※15/3Qと4Qは、取締役2名逝去による役員退職慰労引当金繰入額等の特殊要因が影響。
 
 
 
海外売上は前年同期比16.0%の減少となったものの、国内売上が同7.2%増加した。
 
 
16年6月末の総資産は16年3月末比5億20百万円増の93億68百万円。資産面では現預金と有形固定資産等が、負債・純資産面では短期借入金と長期借入金等が主な増加要因。
 
 
17/3期第1四半期連結累計期間の営業利益は、上期(第1四半期連結累計期間)の会社計画に対して、約70%の進捗率と高水準となっており、会社計画の達成に向けて順調に推移している。
 
 
2017年3月期業績予想
 
 
前期比3.7%の増収、同2.4%の経常減益予想
17/3の会社計画は、売上高が前期比3.7%増収の62億円、経常利益が同2.4%減益の2億30百万円と期初予想から変更なし。
売上面では、ASA COLOR LEDをはじめとした自動車関連製品、RFIDタグ用ゴム製品、卓球ラケット用ラバー、白色レジスト材などのシリコーン応用製品などの受注が増加する他、医療・衛生用ゴム事業の受注も増加する見込み。
利益面では、売上の増加による利益増加、継続した原価低減活動の実施によるコスト削減等により営業利益が増加する。売上総利益率は、0.5ポイント上昇の24.6%、売上高対販管費率は、0.2ポイント上昇の20.3%の会社前提。この結果、営業利益は、前期比14.0%増益の2億71百万円となる見込み。一方、為替差損等の影響により経常利益は減少する予想。
また、1株当たりの配当も、16/3期と同額の年間13円(上期末3円、期末10円)の計画を据え置き。
 
 
 
 
新工場「白河第二工場」建設による設備投資額8億40百万円を計画。
今期の設備投資計画12億50百万円の事業分野別内訳は、自動車分野1億77百万円、医療分野1億25百万円、ライフサイエンス20百万円、その他分野50百万円、システム等37百万円、新工場8億40百万円。
また、法人別では、同社12億円5百万円、東莞朝日精密橡膠制品45百万円の予定。
 
(3)新工場「白河第二工場」の建設
2016年6月着工、2017年2月竣工の予定。「平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金」の補助対象事業として採択され、補助金の交付を受ける。医療分野向け解析・診断用製品が製造できる工場として完成させるとともに、医療機器やライフサイエンス分野への積極的な深耕により主力工場へ育てる計画。
 
 
 
白河第二工場の竣工により、今後、コア技術と生産場所の再配置が可能となる。今後の同社製品の付加価値と競争力の向上に貢献するものと期待される。
 
 
今後の注目点
同社の17/3期第1四半期連結累計期間の決算は、前四半期である16/3期第4四半期からの回復が継続していることが確認できる内容の良い決算となった。主力ASA COLOR LEDや卓球ラケット用ラバーの好調に加え、プレフィルドシリンジ用ガスケット及び採血用・薬液混注用ゴム栓の販売も堅調に推移しており、同社の事業環境が上向きにあることが再確認された。こうした環境下、原価低減活動の実施によるコスト削減の強化により、利益率を大幅に改善させている点は、高く評価されるべきであろう。売上が増加する中でのコスト削減と売上が減少する中でのコスト削減では、その後の利益の拡大ペースに大きな差が出ることが多い。17/3期第1四半期連結累計期間の営業利益は、上期(第1四半期連結累計期間)の会社計画に対して、約70%の進捗率と高水準となっており、今後の業績拡大への期待が高まっている。一度下がった株式市場の評価を取り戻すためには四半期毎の決算でしっかりと期待以上の数値を継続して上げることが要求される。業績回復傾向を示せるのか、17/3期第2四半期の業績動向が注目される。ASA COLOR LEDをはじめとする主力製品に加え、収益性の高いRFIDタグ用ゴム製品や白色レジストインクなどシリコーン応用製品などの販売動向にも注目していきたい。
また、早期の事業拡大が難しくなったマイクロ流体デバイスではあるが、診断医療用チップを研究・開発する各社との事業化準備は引き続き進行している。また、17/3期から一部の新規顧客と診断分野の製品で量産が開始となる予定である。引き続き将来性の大きな事業であることには変わりない。今後のマイクロ流体デバイスの量産化に向けた動きを見守りたい。
 
 
 
<参考:コーポレートガバナンスについて>
 
 
◎コーポレートガバナンス報告書
同社は最新コーポレートガバナンス報告書を2016年6月30日に提出している。

<実施しない主な原則とその理由>
同社は、JASDAQ上場企業としてコーポレートガバナンス・コードの基本原則をすべて実施している。