ブリッジレポート:(3633)GMOペパボ vol.1
(3633:JASDAQ) GMOペパボ |
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企業名 |
GMOペパボ株式会社 |
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社長 |
佐藤 健太郎 |
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所在地 |
東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー |
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決算期 |
12月末日 |
業種 |
情報・通信 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2014年12月 | 4,533 | 724 | 742 | 410 |
2013年12月 | 4,165 | 725 | 743 | 408 |
2012年12月 | 3,809 | 686 | 699 | 396 |
株式情報(2/16現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
既存のストック事業の安定収益に加え、2012年にスタートしたハンドメイド作品のCtoCオンラインマーケットサービス「minne」(ミンネ)による更なる成長を目指している。 【沿革&社長プロフィール】
2003年1月、同社創業者である家入 一真(いえいり かずま)氏が個人向けホスティング事業を目的とし、有限会社paperboy&co.を設立した。当時日本におけるインターネット環境は既に草創期から普及期に入ってはいたものの、ウェブサイトを通じて情報を発信するためには自らサーバーを持たないと活動ができない時代で、各種サービスは法人向けが主流で価格も高額であり、個人が気軽に利用することは難しかった。 そうした中同社は、「自己を表現したい個人」にインターネットのインフラを安価に提供することを目指し、月額数百円でのホスティングサービスを開始した。また1年後には、ドメイン取得代行サービスを開始するなど、インターネットを利用して情報発信、自己表現をしたい個人ユーザーのニーズを多角度から捉えて事業は順調に拡大した。 また当時米国で普及の兆しが見えていたブログにもいち早く注目して日本語で利用できる環境を構築したことも、成長の大きな原動力となった。 2004年3月にはGMOインターネット株式会社(当時:グローバルメディアオンライン株式会社)を割当先とした第三者割当増資を実施し、GMOグループの一員となった。 当時、paperboy&co.に対しては複数の大手インターネット企業が強い関心を持ち、資本参加を申し入れていたが、法人中心にサービスを展開していたGMOグループが、シナジー効果や新サービスの作り易さ等から最適と判断した。 その後も、オンラインショップ構築ASPサービス、クリエイター向けレンタルサーバー提供サービス等の新サービスを相次いでリリースし業績は順調に拡大。2008年12月、JASDAQ市場に上場した。2014年4月、現社名に商号を変更した。 佐藤 健太郎社長は1981年1月生まれ。自らHPの制作などを行い、学生時代から家入氏に乞われ同社の前身会社の手伝いをしていた同氏は、2003年1月同社設立に参加。社長室長、代表取締役副社長経営企画室長などを務めた後、2009年3月に代表取締役社長に就任した。GMOインターネット社の取締役でもある。 【経営理念など】
以下のような、経営理念やミッションを掲げ、個人ユーザーに対しより魅力的でより使いやすいインターネット環境を提供する事を目指している。
【事業内容】
以上の、経営理念やミッションの下、「インターネットで何かを始めたい」個人ユーザーに対し様々なインターネットサービスを利用しやすい価格で提供し、インターネットを通じた個人の表現活動を支援している。事業は「ホスティング事業」、「EC支援事業」、「コミュニティ事業」の3分野を中心に構成されている。 (2016年1月より、EC支援事業内のサービスの1つであったCtoCハンドメイドマーケット「minne」を「ハンドメイド事業」として独立させる。) <ホスティング事業>
ウェブサイトやホームページを開設するためのサーバーや各種機能、ドメイン等を提供。各サービスの利用料が主な売上となっている。
<EC支援事業>
電子商取引(EC)の運営を支援するオンラインショップ構築サービス、オンラインショッピングモール運営、店舗ホームページ構築サービスを格安の料金で提供。サービスの利用料金や手数料を主な売上としている。
◎ハンドメイド作品のCtoCオンラインマーケットサービス「minne」(ミンネ)
これらのサービスのうち、現在同社が育成に最も注力しているのがハンドメイド作品のCtoCハンドメイドマーケット「minne」である。
<概要>
2012年にスタートしたminneは、自分が制作したハンドメイド作品を発表・販売したい作家と、一点ものや個性豊かな作品を購入したい消費者をインターネット上でつなぐ CtoCオンラインマーケット。2015年12月末現在、登録作家数17.4万人、出品作品数209万点と国内最大のCtoCハンドメイドマーケットとなっている。今後もさらに拡大のスピードを上げ、圧倒的なNo.1を目指している。 成長スピードを加速させるための様々な新企画を社内で検討している中で、「自己表現者を支援する」という同社の方向性に合致していることから、同サービスの開発に着手した。 <市場規模と成長の背景>
インターネットを介して消費者間でモノの売買やサービスの提供を行う「CtoC」ビジネスが急速に拡大している。オークション、フリーマーケット、チケット売買、民泊など扱うモノやサービスは様々であるが、minneが取り扱う国内ハンドメイドの市場規模及び推移を同社では以下の様に推定している。 *CtoC市場成長の背景
CtoC市場の成長には、主に以下の3つの背景があると言われている。①スマートフォンの普及 PCを用いて作家が自分の作品を出品する場合、作品の撮影、PCへの画像取り込み、説明原稿の入力・アップといった作業が必要となるが、現在は多くのサービスがスマホに最適化しているため、スマホのカメラで写真を撮影し、必要なテキストをフォームに入力するだけで簡単に出品することができ、出品のハードルが大きく下がっている。 ②所有からシェアへの意識の変化 大量生産・大量消費の時代から、環境やサステナビリティなどモノを大切にする考え方が普及し始めたことで、自分が所有していても使わないものをシェアする「シェアリングエコノミー」が拡大しており、オークション、フリーマーケットなどはまさにそうした流れに対応したものである。 ③個人が実力を発揮できる場 インターネットは世界中と繋がることが出来るため、個人でも実力さえあれば無名でも、著名人や大手企業等と同等の活躍することが可能であることが多くの事例で明らかになっている。そうした流れに刺激を受けてCtoC市場での自己表現や活躍を目指す個人が増加している。「minne」に出品する作家もまさにそうした個人である。 *海外のハンドメイドマーケットプレイス
世界最大のハンドメイドマーケットプレイス運営会社Etsy, Inc.(NASADQ上場、ETSY)の概要を知ることは、minneの今後を見る上で参考となるだろう。
一方、2012年にスタートしたminneの流通額は4年目の前期2015年12月期44.6億円を受け、5年目となる今2016年12月期は100億円を目標としており、ここまでの流通額推移は非常に似たものとなっている。 グローバルマーケットを対象とするEtsyとの単純な比較は難しいが、CtoCマーケット成長の波に乗りminne流通額も飛躍的に拡大する素地は整っているということができるだろう。 売買が成立した際、同社は販売金額の10%を手数料として引いた金額を売主(作家)へ支払う。 販売代金のやりとりに関しては、「買主:商品を受け取ってから、代金を支払いたい。」および「売主:代金を受け取ってから、商品を発送したい。」双方のニーズを満たすために同社が仲介を担うエスクローサービスを採用している。 <minneの進捗>
同社は2015年10月よりminneのアプリダウンロード数及び流通額の月次ベースでの状況開示を開始した。2016年1月の流通額は年末年始休暇による注文件数減で前月を下回ったが、対前年同月比では+286.9%となっている。 <コミュニティ事業>
ブログなどインターネット上でのコミュニケーションを軸としたサービスを提供しており、無料サービスについては広告掲載料、有料サービスについては利用料金や手数料が主な売上となっている。
【特徴と強み】
【事業内容】の項にあるように、同社は極めて多様なサービスを提供しており、この点が同業他社に比べた大きな違いとなっている。1.内製化による多様なサービス提供 佐藤社長によれば、こうしたサービスの多様性は、開発のみでなくデザインやマーケティングまで全てを内製化できる仕組みを有しているからこそ可能で、これはスピードやクオリティにおける優秀性にも繋がっており、インターネットビジネスを成功させる上で極めて重要なポイントであるということだ。 2.独自の企業文化
同社は「自己表現したい個人」を応援することをミッションとしているが、そのためには同社自身も表現者でなければならないと考えており、インターネットを通じた積極的なアウトプットを行う事が企業文化として定着している。(詳細は、「佐藤社長に聞く」を参照。) |
2015年12月期決算概要 |
増収も「minne」への積極投資により営業損失
売上高は前期比25.7%増加の56億97百万円。既存のストック型事業において順調に契約件数が増加した。売上総利益は同27.2%増加し粗利率も上昇したが、広告宣伝など「minne」への積極投資により販管費は同118.7%増加し、営業利益は前期の7億24百万円から6億21百万円の損失に転じた。 広告宣伝費は前期比537.4%増の17億95百万円。うち「minne」向けが15億25百万円だった。アプリのダウンロード数最大化を目指したため、当初想定よりも増加した。 ①ホスティング事業
増収・増益となった。レンタルサーバーに関する各サービスでプランの拡充や様々なキャンペーンを継続して展開し、新規顧客の獲得を図った。加えて、サーバー環境の改善、ウェブサイト高速化、セキュリティの強化などを行ったことで、期末のレンタルサーバー契約件数は前期末比13,000件増の423,000件となった。 また、レンタルサーバーを中心に契約件数が順調に増加したことから、ドメインサービスも堅調で、登録ドメイン数は同108,000件増加の1,058,000件となった。 2014年4月の消費税増税にかけて低下した顧客単価も上昇が続いている。 ②EC支援事業
増収・減益となった。オンラインショップ構築ASPサービス「カラーミーショップ」において上期を中心に積極的な広告やキャンペーンなどによる新規顧客の獲得を図るとともに、ネットショップ運営の支援・啓蒙活動として電話サポートをはじめ、日本各地でのECセミナーの開催など直接的なアプローチを行った。この結果、期末の「カラーミーショップ」契約件数は同1,800件増の44,200件となった。 「minne」においては前述の通り積極的な戦略投資を行い、プロモーションの強化とスマホアプリの拡大・充実に取り組んだ。 広告に関しては、TV、WEB、屋外広告等様々な媒体を利用。アプリインストール1件当たりの獲得単価が高騰する中で出稿量の調整も行った。 広告以外では、minne関連書籍の出版、minneのアトリエ開設、販売イベントの開催のほか、4月に東京ビッグサイトで開催された第40回2016日本ホビーショーではminneのハンドメイドマーケットを同時開催した。 また、壊れやすい作品を安全に出荷できるようヤマト運輸と協力しminneオリジナルBOXを開発した。 2015年の目標は「作家数 20万人、作品数200万点、アプリダウンロード数500万」だったのに対し、実績はそれぞれ17.4万人、209万点、441万DLと、作品数は達成したものの、作家数とダウンロード数は未達であった。 ただ、ダウンロード数は2016年1月7日には450万DLを突破し順調に拡大している。 流通額は2015年年間44億円で前年比4.2倍となり、アプリ経由流通額も同11.2倍と急速に増大している。 ③コミュニティ事業
増収・増益だった。無料ブログサービス「JUGEM」において、スマートフォンユーザーの利便性向上などを図った結果、無料会員数が堅調に増加した。また、広告売上の拡大を図るとともに運用の効率化を継続的に行い、利益の最大化を図った。 未払金の増加などで流動負債は同7億46百万円増加の30億38百万円となり、負債合計は同7億43百万円増加の30億50百万円となった。 利益準備金の減少で純資産は同10億95百万円減少の10億12百万円となった。 この結果自己資本比率は前期末より23.6%低下し24.2%となった。 前期には無かった有価証券の償還による収入および匿名組合出資金の払戻しにより投資CFはプラスに転じたが、フリーCFはマイナスとなった。 新株予約権の行使による株式の発行による収入が無くなったため、財務CFのマイナス幅は拡大した。 キャッシュポジションは5億51百万円低下した。 |
2016年12月期業績予想 |
今期も「minne」への積極投資を継続。
売上高は前期比20.2%増の68億50百万円を予想。既存事業のストックおよび「minne」の流通額が増加する。今期も「minne」への積極投資を行うため、営業利益以下は収支均衡を予想。 今期も無配を予定。 minneの急成長を受け、今期より新セグメント「ハンドメイド」を設ける。 (2)今後の取り組み
今期以降、主として「有料契約件数増×顧客単価アップ」と「minneへの積極投資」という2つのテーマに注力する。
①有料契約件数増×顧客単価アップ
既存のストック型事業においては顧客満足度の向上を通じて「有料契約件数増×顧客単価アップ」を進め、売上、利益の着実な拡大を図る。*ホスティング事業 ウェブサイト高速化を目指す次世代ホスティングにおいては更なる技術開発により競争力を向上させる。 また、電話サポートを拡張するなどユーザーサポートをよりきめ細かなものとすると同時に、既存大口ユーザーへのフォロー、イベントやセミナー開催強化なども進める。 *EC支援事業 カラーミーショップ大賞などイベントの開催によるPR強化を進める。 また、ユーザーの継続率向上を図るために、セミナーやイベント開催によるショップ支援、ショッピングカートの改善によるコンバージョン率(※)の向上を図る。 ※コンバージョン率:ウェブサイトへのアクセス数またはユニークユーザーのうち、何割が商品購入などの、ウェブサイト上から獲得できる最終成果に至るかの割合を示す指標
②minneへの積極投資
国内ハンドメイドCtoC市場の拡大に加え、「お買い物体験の最大化」をテーマに作家と購入者双方へ向けた各種プロモーション及び機能開発等を進める事でminneの流通額を拡大させ、今期は流通額100億円を目指している。*市場拡大 前述のように国内ホビー市場は2015年で1,037億円、ハンドメイドサイト流通額は前年比倍増以上の78億円と推定されており、今期以降も急速な拡大が見込まれている。 そうした中、同社ではハンドメイド作品の既存カテゴリーの最適化と新規追加を進める。 新規カテゴリーとしてはパン、焼き菓子、ジャム、コーヒー、紅茶といった日持ちのする加工食品を検討。2016年上期中に追加する。 取り扱うカテゴリーは、今後も継続して拡大を目指す。 *お買い物体験の最大化 購入者と作家の双方に向けたプロモーション及び新しいテクノロジーの開発によるバックエンドの強化により、minneだから提供できる、販売・購入体験を作り出すことを目的としている。 購入者向けには、ユーザーの行動ログ、購入情報等を基にしたデータ解析を行い、パーソナライズやレコメンド機能により「minneだから欲しいものに出会える、見つかる。」という買い物の楽しさを体験してもらう。 一方作家向けには、システム機能向上のほか、アトリエ勉強会の実施や販売支援により販売が楽しいという体験の機会を提供する。特に、アトリエ勉強会はminneだけが提供できる作家支援であり強力な差異化が図れると考えている。 *将来展望 今期流通額100億円を達成した後、中長期的には「日本のものづくりを集めた巨大な経済圏を構築」することを目指している。 |
佐藤社長に聞く |
<各事業の特長>
売上高の約6割を占めるホスティング事業は当社の大きな収益の柱だ。個人向けのホスティングを手掛けている企業は淘汰が進み、当社は先行者利益を享受することが出来ている。今後もキャッシュ・カウとして安定的に成長すると考えている。今後は中小企業を中心とした法人マーケットへのシフトも進めていきたい。
EC支援事業もホスティング事業同様「ストック型」のビジネスであり、安定的に成長していくだろう。ショッピングカートASPサービスは有料契約件数では国内最大の規模となっている。ただ、開店時に利用してくれた個人ユーザーが、規模が拡大するとショッピングモールに移行してしまうケースもあり、今後はシステムの高度化や運営をきめ細かくフォローする仕組みなども整備し、より長く使って貰えるサービスに磨きをかけていく。
こうした安定収益をベースに更なる成長を目指して取り組んでいるのが「minne」だ。既に国内最大のハンドメイドマーケットプレイスだが圧倒的No.1のポジションを目指して積極投資を続けていく。
<当社の企業文化>
当社では「働く価値観」は以下の3点であると考えている。
まず、「仲良くする」。インターネットを通じてサービスを提供する当社は、直接お客様と接する機会は少ないが、お客様に最良のサービスを開発・提供しなければならない。そのためには会社の仲間と仲良く仕事をする事が不可欠であり、ネットを通じたコミュニケーションに加え、様々なイベントを開催し仲良く働ける環境作りに力を入れている。
次に「ファンを増やす」。お客様や仕事のパートナーに限らず、当社と関わる全ての人に当社のファンになってもらいたい。誰へだてなくしっかりと挨拶をすること、常に謙虚であることを心がけている。
最後は「アウトプットを行う」。「自己表現したい個人」を応援することをミッションとしている当社は、自らも表現者でなければならない。社員にはネットを通じて積極的にアウトプットすることを奨励しており、企業文化として定着している。約300名のスタッフ全員がインターネット上の何かしらで繋がっており、仕事でもプライベートでも様々な話題をアウトプットし外部に表現することに努めている。
平均年齢約32歳と若い集団だが、フラットで大変仲の良い会社、組織だと自分でも感じている。
経営理念「もっとおもしろくできる」、ミッション「インターネットで可能性をつなげる、ひろげる」実現のベースとなるこの企業文化は更に発展・強化させていきたいと考えている。
<投資家へのメッセージ>
ホスティング事業、EC支援事業による安定性はあるものの、「成長性」をどう獲得するかがここ数年の課題であったが、「minne」を次の収益の柱へ育てることで更に大きく成長するというコーポレートストーリーが描けるようになった。
minneを国内CtoCハンドメイドマーケットにおいて圧倒的No.1に育て上げることで企業規模、企業価値を更に拡大・向上させ、2019年までに東証1部へのステップアップを実現する考えだ。
株主や投資家の皆さまにはぜひ当社の挑戦を応援していただきたい。
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