ブリッジレポート
(3667) 株式会社enish

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ブリッジレポート:(3667)enish vol.13

(3667:東証1部) enish 企業HP
安徳 孝平 社長
安徳 孝平 社長

【ブリッジレポート vol.13】2015年12月期業績レポート
取材概要「15/12期に取り組んだ人員の効率化や海外拠点の整理・縮小で損益分岐点売上高がだいぶ下がっているようだ。(株)インベストメントブリッジで・・・」続きは本文をご覧ください。
2016年3月1日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社enish
社長
安徳 孝平
所在地
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年12月 6,452 149 151 22
2013年12月 6,624 1,109 1,078 653
2012年12月 4,430 666 654 373
2011年12月 2,590 526 523 298
2010年12月 415 64 71 55
2010年1月 22 -40 -41 -41
株式情報(2/17現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
480円 7,187,880株 3,450百万円 - 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
未定 - - - 224.35円 2.1倍
※株価は2/17終値。
 
enishの2015年12月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランII」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」、カードバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」等の人気作品を有するソーシャルゲームの企画・開発・運営会社。Link with Funというスローガンのもと、「世界中にenishファンを作り出す」ことをミッションとして掲げており、社名の「enish(エニッシュ)」は、人と人との縁(えん、えにし)に由来している。

14年3月には実質的創業者である安徳孝平(アントク コウヘイ)氏が代表取締役社長に就任。ブラウザアプリの収益性を維持しつつ、ネイティブアプリでヒットを創出し、国内とアジアを中心にしたグローバル配信で業容拡大を図っていく考え。

尚、ネイティブアプリとは端末にダウンロードして楽しむアプリで、主にスマートフォン向けに提供されている。一方、ブラウザアプリはダウンロードせず、GREE、mixi、Mobage等のプラットフォームにアクセスしてブラウザ上で楽しむ。いずれも無料で楽しむ事ができるが、アプリを進める上で有効なアイテム等を購入した場合、課金が発生する。ブラウザアプリでは、ユーザへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。
 
 
【事業内容】
事業はソーシャルアプリ事業の単一セグメント(ゲームはアプリのカテゴリーの一つ)。ブラウザアプリを収益基盤にネイティブアプリを育成している。ゲームは無料だが、ゲームを展開する上で有効なアイテム等を購入すると課金が発生する。ブラウザアプリの場合、ユーザへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。

尚、「ぼくのレストランII」、「ガルショ☆」(共にブラウザアプリ)等の経営シミュレーションゲームは女性に人気があり、いずれもロングセラー。女性ユーザは長期継続型のユーザが多い。
 
リリース後の「運営」が事業成否のポイントとなるソーシャルゲーム
ソーシャルゲームは、①ゲームを通してプレイヤー同士がコミュニケーションを図る、②基本的には無料でゲームを進めながらアイテム等で課金、③原則無料のためスマートフォンさえあれば気軽に遊べる、④ゲームにゴールがない、⑤リリース後ゲーム進行に合わせて新機能の追加実装、⑥キャラクターやアイテムを追加して運営していくスタイル、といった特徴を有し、パッケージで提供されるゲームと異なり、「リリース」よりもリリース後の「運営」が事業成否のポイントとなる。

「運営」とはゲーム内イベントの運営であり、そのゲームの育成対象となるアイテムやキャラクター等を獲得できる収集イベント、キャラクターを成長させるための育成イベント(育成専用のアイテムの配布等を実施)、及び育成したアイテムやキャラの力を試す活用イベントの3つ。中でも、他のユーザとの戦いや協力でゲームが進行し、リアルタイムでのランキング表示もある活用イベントは、ユーザの注目度も高く、最も売上が大きくなる。
 
【基本方針】
新規ネイティブアプリの投入、グローバル展開、及び安定した収益基盤の維持、を基本方針として事業を進めている。新規ネイティブタイトルは、男性向け、女性向けを問わず、多様なゲームジャンルへの展開を図ると共に、開発計画遵守を徹底する。また、グローバル展開は日本でのリリース後の結果いかんだが、リスク軽減を図るべく現地パートナーと連携して進めていく。
一方、安定した収益基盤の維持では、運営力を活かし、既存ブラウザアプリの収益維持を図る考えで、新機能の追加やコンテンツの投入に継続的に取り組んでいく。
 
【主要タイトル】
 
 
 
2015年12月期決算
 
【15/12期は16/12期の成長に向けた事業基盤の整備に注力】
15/12期はブラウザが堅調に推移した模様だが、品質向上ために、注力しているネイティブのリリースを延期した。このため、9億64百万円の営業損失計上を余儀なくされたが、16/12期の成長に向けた取り組みで一定の成果を上げる事ができた。

具体的には、(1)売上高の拡大、(2)進捗管理体制の強化、(3)海外拠点の整理・縮小、及び(4)コスト管理の徹底、の4つの課題に取り組み、(3)海外拠点の整理・縮小及び(4)コスト管理の徹底が完了し、(1)売上高の拡大及び(2)進捗管理体制の強化については、16/12期も引き続き取り組みを進めていく。また、(4)コスト管理の徹底については、継続的に取り組んでいく考え。
 
(1)売上高の拡大
ブラウザアプリにおいて機能追加及び運営品質の改善に取り組み収益基盤の強化を図ると共に、ネイティブアプリにおいて・開発中のタイトルの開発早期化と開発計画の厳守に取り組んだ。リリースを延期した4タイトルのうち、2タイトルのリリースが16/12期にずれ込んだものの、2016年1月下旬から2月上旬にかけてリリースを完了した。16/12期も引き続き取り組みを進めていく考え。
 
(2)進捗管理体制の強化
マイルストーン管理の徹底と、進捗モニタリングを社内委員会にて推進した他、プロトタイピングによる早い段階での品質確認を徹底した。16/12期も引き続き取り組みを進めていく考え。
 
(3)海外拠点の整理・縮小
海外配信の方針を自社単独から現地パートナーとの連携に変更し、この一環として、中国の3Dスタジオを縮小した他、その他の海外拠点を整理した。また、タイのCS拠点を国内に移管し、固定費の変動費化を図った。
 
(4)コスト管理の徹底売上高の拡大
人員数の最適化、役員報酬減額、全ての科目におけるコスト圧縮を実施した他、不採算が見込まれるタイトルについて、リスクを早期に摘み取るため凍結した。コスト圧縮については、更なる管理体制の強化により、16/12期も引き続き取り組みを進めていく。
 
 
営業損失ながら、修正予想を上回る着地
第4四半期(10-12月)にリリースを予定していた 2タイトル(「12オーディンズ」及び「クルトン」)のリリースが16/12期の期初にずれ込んだため売上高が予想を下回ったものの、コストコントロールの徹底と2タイトルのリリース時に予定していた広告宣伝費が未使用となったため予想ほど損益が悪化しなかった。

売上高は前期比15.0%減の54億82百万円。漸減傾向ながら、ブラウザアプリが売上貢献したものの、ネイティブアプリの苦戦が響いた。
一方、売上原価は54億04百万円と同6.8%増加。配信元に払う支払手数料が3億円強減少したものの、アプリの開発や運用に伴い、労務費が3億円強、外注費が4億円弱、それぞれ増加。販管費については、支払手数料が1億円強増加したものの、広告宣伝費が1億円強、人件費、採用費が、それぞれ50百万円程度、その他が1億円減少した。
 
 
売上高は第3四半期比1.7%減の12億89百万円。10月にネイティブアプリ「ゆるかみ!」をリリースしたものの、売上の大半はブラウザアプリによるもの。ブラウザアプリは総じて漸減傾向にあるものの、底堅く推移しており、「ガルショ☆」や「魁!!男塾」に限っては第3四半期比で売上が増加した。尚、既に説明した通り、ネイティブアプリ2タイトル(「12オーディンズ」及び「クルトン」)のリリースが16/12期の期初にずれ込んだ。

コスト面では、不採算タイトルのMG76百万円(一時的な費用)を保守的に原価計上したものの、人員数の最適化及び海外拠点の閉鎖を実施したため、売上原価、販管費共に第3四半期比で減少した。一時的な費用を除いた実質的な営業損失は95百万円。
 
 
 
期末総資産は前期末と比較して12億02百万円減の22億53百万円。CFや業績を反映して、現預金や純資産が減少した他、取り崩しで繰延税金資産も減少。新たに短期の借り入れを起こし、成長資金を取り込んだ。自己資本比率71.6%(前期末82.9%)。
 
 
損益の悪化で営業CFのマイナス幅が拡大したものの、投資の抑制や海外拠点の閉鎖で投資CFのマイナス幅が縮小した。
 
 
2016年12月期業績予想
 
【業績予想の開示を見合わせ】
「ソーシャルアプリ事業を取り巻く環境の変化が激しく、当社の業績も短期的に大きく変動する可能性があること等から、信頼性の高い半期及び通期の業績予想数値を算出することが困難となっている」として、業績予想の開示を見合わせた。決算業績及び事業の概況のタイムリーな開示に努めていく考え。
 
(1)第1四半期(1-3月)
第1四半期のテーマ  「新規タイトルのリリースと適切な運営」、「安定した収益基盤の維持」
第1四半期のテーマとして、「新規タイトルのリリースと適切な運営」と「安定した収益基盤の維持」を掲げており、利益確保への道筋をつけるべく事業を展開していく考え。
新規タイトルについては、既にネイティブアプリ2タイトルをリリースした(通期で4タイトル程度を計画)。具体的には、みんなで×つなげるバトルRPG「12オーディンズ」のAndroid版を2016年1月26日に、iOS版を同年1月28日に、それぞれリリースした他、同年2月2日に菜園シミュレーションゲーム「クルトン」の配信を韓国「カカオゲーム」で開始した。いずれも順調な立ち上がりを見せており、今後はゲーム内イベントの開催や機能追加で収益性を高めていく。現在の収益基盤であるブラウザアプリにおいても、同様の取り組みが必要であり、並行してコストコントロールを徹底する事で安定した収益基盤として維持していく考え。
 
アプリ別の取り組み
ネイティブアプリ
リリースした2タイトルの立ち上がりは順調。広告宣伝費は、リリース時に50~60百万円を投下し、その後はKPIを見ながら機動的に投下していく。
 
みんなで×つなげるバトルRPG「12 オーディンズ」
世界を滅ぼしかけた魔龍の爪あとが残るウルザールを舞台に、プライヤーは「約束の地」を求めて旅立つ。個性豊かなキャラクターとの出会い、交錯する思いと人間模様、徐々に明らかになっていくストーリー。ジョブシステムと多彩な装備やスキルを駆使した戦略性と共に、派手なエフェクトと3Dで表現される爽快なリアルタイムバトルを堪能できる。Android版を2016年1月26日に、iOS版を同年1月28日に、それぞれリリースした。2月17日現在、28万ダウンロードを突破する等、想定を上回る立ち上がりとなっている。
 
 
菜園シミュレーションゲーム「クルトン」
韓国最大のゲーム プラットフォーム「カカオゲーム」にて2016年2月2日より配信を開始した(2月17日現在、50万ダウンロードを突破)。不思議ないきもの「クルトン」と一緒に楽しむ菜園シミュレーションゲーム。プレイヤーは、海辺で拾った小さなボトルに吸い込まれてしまった事をきっかけに、不思議ないきもの 「クルトン」と出会う。感情豊かで愛くるしい「クルトン」と野菜や果物を収穫したり、動物を育てたり、300種類以上ある豊富なデコアイテムでお気に入りの菜園を作る事も。困った時は友だちと助け合いながら、自分だけの菜園ライフを楽しもう。
 
 
ブラウザアプリ
ブラウザアプリは根強いファンが多く、運用も順調ためCash Cowになっている。引き続き、「ハローキティ」、「マイメロディ」、「クロミ」、「スヌーピー」、「チョコボ」等と実施したようなコラボレーションも強化し、収益維持に努める。
 
 
新たな取り組み「EDIST CLOSET」
「ぼくのレストラン」や「ガルショ☆」等の女性向けタイトルの開発・運用で培ったノウハウを活かし、新事業「EDIST CLOSET」を立ち上げた。「EDIST CLOSET」は人気スタイリストやアパレルとコラボした厳選コーデセットを月額で提供する事業であり、「ソーシャル × ファッション」による新規領域への挑戦である。
 
 
(2)通期
第2四半期以降の新規タイトルは、2本程度を予定している。「12オーディンズ」の開発において、開発スキルとミドルヒットを狙えるノウハウの獲得が進んだ。この経験値を活かして、本数を絞り、ひとつひとつを丁寧に作り上げていく考え。また、人員効率化や海外拠点の整理・縮小といった構造改革が一段落し、成果が出始めている。新作タイトルを計画通りにリリースすると共に、引き続きコストコントロールにも取り組む事で、営業損益を黒字化させたい考え。
 
 
今後の注目点
15/12期に取り組んだ人員の効率化や海外拠点の整理・縮小で損益分岐点売上高がだいぶ下がっているようだ。(株)インベストメントブリッジでは、四半期ベースで15億円程度だった損益分岐点売上高が13億50百万円程度に低下したと考えている(新作タイトルへの戦略的な広告宣伝費の投下を考慮せず)。運営の強化でブラウザアプリ中心に前期並みの売上を確保できれば、損益が均衡する計算だ。既にリリースした2タイトルも含めた4本程度の新作タイトルで、どれだけ売上・利益を上積みできるか、が今期業績のポイント。
尚、ゲーム業界は競争が激化しており、大ヒットを飛ばした同業他社も、その後の新作は苦戦している感がある。同社は、新作タイトルについて、少数精鋭部隊により、本数を絞り、ひとつひとつを丁寧に作り上げていく考えだが、新作タイトルの業績貢献を予想する事は難しい。このため、今期の業績予想を非開示としたのも止むを得ないところだ。