ブリッジレポート
(7839) 株式会社SHOEI

プライム

ブリッジレポート:(7839)SHOEI vol.43

(7839:東証1部) SHOEI 企業HP
山田 勝 会長
山田 勝 会長
安河内 曠文 社長
安河内 曠文 社長
【ブリッジレポート vol.43】2015年9月期業績レポート
取材概要「16/9期の業績予想はネガティブな材料を全て織り込んだ。例えば、北米での在庫調整を想定しているが、足元で顕在化しているわけではなく、前期の・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年12月15日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社SHOEI
会長
山田 勝
社長
安河内 曠文
所在地
東京都台東区上野5-8-5
決算期
9月 末日
業種
その他製品(製造業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年9月 13,406 2,765 2,646 1,669
2013年9月 11,158 1,340 1,299 799
2012年9月 8,606 97 143 65
2011年9月 9,047 395 371 217
2010年9月 10,078 898 978 638
2009年9月 10,300 1,047 1,335 837
2008年9月 14,995 3,608 3,532 2,214
2007年9月 13,586 2,942 2,751 1,630
2006年9月 11,796 2,310 2,117 1,248
2005年9月 10,661 1,581 1,510 890
2004年9月 9,725 1,364 1,282 732
2003年9月 9,575 757 703 381
2002年9月 8,700 379 190 85
2001年9月 9,088 694 592 359
株式情報(12/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,569円 13,771,911株 35,380百万円 21.0% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
62.00円 2.4% 124.89円 20.6倍 733.47円 3.5倍
※株価は12/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
SHOEIの2015年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
世界ナンバーワンのヘルメット・メーカー。オートバイ用を中心に、航空機用や戦車用等の官需用のヘルメットを製造している。販売網は日本のみならず、ヨーロッパやアメリカをはじめ世界約60ヵ国を網羅。「SHOEI」ブランドはその安全性と機能性、そして造形の美しさが世界各国で高い評価を受け、高級ヘルメットの代名詞となっている。独自の技術とノウハウ、優れたデザイン力を持つ。
また、「商品戦略」、「生産戦略」、「市場戦略」を融合させた三位一体の事業戦略も同社の特徴。三位一体の事業戦略を進める事で、顧客満足度、株主及び役職員の満足度向上に努めている。グループは、同社の他、米国、独(2社)、仏、伊の連結子会社5社。
 
経営方針  3つの世界一を実現
「世界一の品質」     … Made In Japanのグローバルブランド
「世界一のコスト競争力」 … ヘルメット業界唯一のトヨタ生産方式でコスト管理
「世界一の楽しい会社」  … お客様、株主の皆様、並びに従業員、役職員の満足度を追及
 
【事業内容】
売上高の約90%を占める二輪乗車用ヘルメットでは、高品質・高付加価値の「プレミアムヘルメット」に特化し、茨城工場(茨城県稲敷市)、岩手工場(岩手県一関市)の国内2工場で生産。国内生産にこだわる事で、高い品質の維持と技術の流出防止を実現している。
 
【欧州を中心に海外売上が75%】
世界72カ国に展開しており(前年に比べてキプロス、レバノン、アフリカ9カ国の11カ国増)、15/9期の地域別売上高は、日本25%、欧州46%、北米23%、その他地域6%。最も売上構成比の大きい欧州は、ドイツ、フランス、イタリアの子会社3社と現地代理店によるネットワークでカバー。北米やその他地域は代理店経由で販売している。
決済通貨は、北米は米ドル建、その他地域は円建。
 
 
 
【トップシェアを支えるモノづくりへのこだわり  茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産】
世界各国のライダーに称賛され、グローバルなブランドとして認知されているプレミアムヘルメット。優れた空力特性等、ヘルメットとしての高い機能性とファッション性に富んだ製作難度の高い形状。それでいて安全性が高く長時間走行でも疲れ難い。「使った人がいかに心地よいか」を追求する同社の“こだわり” が、トップシェアの原動力となっている。
 
 
人の命を守るヘルメットは、日本、欧州、北米と言った市場毎にそれぞれの安全規格がある。このため、同社では、茨城工場が主に国内製品、岩手工場が主に海外製品と、原則工場毎に仕向け先を一本化して生産性を上げている。
 
【沿革】
1954年、ポリエステル加工メーカーとして創業。59年3月に昭栄化工(株)として法人組織に改組すると共に、ポリエステルの加工技術を活かしヘルメット市場に参入した。翌60年1月に二輪乗車用ヘルメットの生産を開始し、68年7月にはアメリカに子会社を設立し海外展開を開始。87年7月には子会社を設立してフランスへも進出したが、国内でのバブル崩壊の余波を受け、92年5月に会社更生手続開始を申立。同年9月に三菱商事の商社マンだった山田勝氏(現会長)が管財人となり更生手続きを開始した(93年12月に更生計画が認可)。更生手続き中の94年3月に子会社を設立してドイツに進出する等、経営の立て直しが順調に進み、98年3月、会社更生計画認可から4年3ヶ月という短期間で会社更生手続を終結した。同年12月には社名を(株)SHOEIに変更。04年7月、JASDAQに株式を上場し、07年9月に、東証第2部に上場(JASDAQは上場廃止)、15年10月には東証第1部に上場した。現在、プレミアムヘルメットのグローバルカンパニーとして国内外で高い評価を受けている。
 
 
【中長期的安定成長と安定利益の実現に向けた基本方針】
(1)自分の会社は自分で守る
(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)
(3)健全な財務内容の堅持
(4)投資の継続(新製品開発,コストダウン,品質向上,より確かな安全)
(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指す
(6)新市場開拓と既存市場の深堀り
(7)利益の公平、公正な分配(50%配当性向,従業員への配分、会社への分配
   (内部留保))
 
短期的な支払い能力を示す流動比率が533.5%(15/9期末。以下同じ)、長期的な財務の安全性を示す固定比率が21.3%、無借金経営で自己資本比率78.5%。(1)自分の会社は自分で守る、(3)健全な財務内容の堅持、が着実に実行されている事が貸借対照表からみてとれる。

また、茨城及び岩手の国内2工場で全量を生産する事で(2)Made in Japanと雇用の維持(ものづくりの伝承)を実現し、(4)投資の継続(新製品開発、コストダウン、品質向上、より確かな安全)及び海外子会社と一体になって進める(6)新市場開拓と既存市場の深掘りにより、(5)世界中のプレミアムヘルメット市場でナンバーワンを目指している。

尚、(4)投資の継続(新製品開発、コストダウン、品質向上、より確かな安全)については、長期にわたり安定した経営とその成果を実現する事を目的とした大型投資第2弾が15/9期にスタートした。06/9期から09/9期にかけて成長のための大型投資第1弾(大型風洞実験施設への投資が中心)に次ぐもので、5年間で総額40億円の投資を予定。16/9期の設備投資は11億13百万円を予定しているが、24億56百万円の営業キャッシュ・フローが見込まれており、大型の設備投資を吸収して13億6百万円のフリー・キャッシュ・フローを確保できる見込み。
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
リーマン・ショック以降、主力の欧州市場の落ち込みと急激な円高で業績が悪化したが、12/9期を底に業績はV字回復しており、ROEもこれを反映した動きになっている。

米系大手総合情報サービス会社によると、東証1部上場企業の14年度(15年3月末)のROEは8.15%(13年度:8.56%)。6カ月のタイムラグがあるものの、同社は東証1部上場企業の平均を大きく上回るROEを実現しており、15/9期はROEを一段と向上させた。

同社は、盤石な財務基盤を有するためレバレッジは低いが、プレミアムヘルメット事業は限界利益率が高いため、売上の増加で利益率の改善が加速する。総資産回転率については、15/9期に「長期にわたる安定した経営とその成果の実現を目指した大型投資第2弾」がスタートしたため、目先、低下傾向が続く可能性がある。
 
 
2015年9月期決算
 
 
前期比6.2%の増収、同16.9%の経常増益
売上高は前期比6.2%増の142億44百万円。現地代理店の積極的な仕入れで北米向けが同27.3%増と伸びた他、消費税率引き上げに伴う駆け込みの反動が懸念された国内もインバウンド需要による押し上げで同5.9%増加した。一方、主力の欧州は、独、仏、伊の子会社の販売が堅調に推移したものの、ユーロに対する円高もあり、全体では同1.6%の増加。在庫調整によるオーストラリアの落ち込みで、その他地域は15.9%減少した。

利益面では、給与・賞与の引き上げや減価償却費の増加、カナダ市場での販促強化やレーサー契約金の増加等で営業費用の伸びが大きくなったものの、増収効果と対ドルでの円安による利益の押し上げ等で売上総利益が同11.7%増と伸びて吸収。営業利益は32億10百万円と同16.1%増加した。イタリア代理店との訴訟和解金(49百万円)や固定資産除却損(21百万円)を特別損失に計上したものの、法人税率の引き下げや政策減税等による税負担の減少で当期純利益は19億96百万円と同19.6%増加した。
為替の期中平均レートは、1USドル=120.04円(前期102.96円)、1ユーロ=137.48円(同139.34円)。営業外費用に前期と同額の1億17百万円の為替差損を計上した。

期末配当は1株当たり12円増配の72円を予定。同社は連結配当性向50%を目処に配当を実施している。
 
 
2015年シーズン投入の新製品  「HORNET ADV(日・欧)/ HORNET X2(北米)」、「J-FORCE IV」
2015年シーズン投入の新製品は、欧州、北米、及び日本の世界3極で発売したSport Utility Helmet「HORNET ADV(ホーネット エーディーブイ)/ HORNET X2(ホーネット エックス 2)」と日本にフォーカスしたプレミアムオープンフェイス「J-FORCE(ジェイ フォース)」シリーズの新製品「J-FORCE IV」。

「HORNET ADV/ HORNET X2」は、“クロスカントリーでの走行を可能にする力強さと機能性”、“オンロードを軽快に走る美しさと快適性”、という従来であれば相反するコンセプトを融合した同社にとって新たなカテゴリーのヘルメット。同社は、このカテゴリーのヘルメットを「シーンを選ばないスポーティな走り」を追求したSport Utility Helmet(SUH:スポーツライディング用多目的ヘルメット)と定義している。
 
販売地域       :ヨーロッパ(HORNET ADV)
メーカー希望小売価格 :ドイツ・フランス EUR519.00~619.00(税込み)
販売地域       :北米(HORNET X2)
メーカー希望小売価格 :US$594.99~715.99(税抜き)
販売地域       :日本( HORNET ADV)
メーカー希望小売価格 :48,000円~58,000円(税抜き)

「HORNET ADV」は、デザイン、フィッティング、首への負担、着脱式バイザー等が高い評価を受けており、初年度の販売目標を達成した。
(同社資料より)
 
一方、日本限定販売の「J-FORCE IV」はプレミアムオープンフェイス「J-FORCE」シリーズの新製品。高速域でその真価が更に発揮される先進の空力性能と涼しさを極めたベンチレーションシステム、エッジの効いたフォルム、そしてSHOEIの安全性・快適性の追求と細部にまでこだわったデザインを融合した。
 
販売地域       :日本( J-Force IV)
メーカー希望小売価格 :45,000円(税抜き)
(同社資料より)
 
 
期末総資産は前期末に比べて13億89百万円増の128億67百万円。借方では、業容の拡大で流動資産が増加した他、設備投資で有形固定資産も増加(売上債権の増加は北米向けの入金の期ずれの影響も大きかった)。貸方では、仕入債務や純資産が増加した(退職関連引当金の増加は退職給付債務の計上方法変更の影響を受けている)。流動比率533.5%(前期500.5%)、固定比率21.3%(同19.2%)、自己資本比率78.5%(同77.8%)、投下資本利益率22.6%(同21.2%)。
 
 
北米向けを中心にした売上債権(入金のずれ)、たな卸資産、及び税金費用の増加等で運転資金が増加したものの、20億05百万円の営業CFを確保した。投資CFのマイナス幅が拡大したのは、大型設備投資第2弾の実施に伴うもの。フリーCFは期初予想(10億38百万円)を上回る10億89百万円を確保した。設備投資は9億23百万円(前期5億25百万円)、減価償却費5億09百万円(同3億97百万円)。
 
 
大型設備投資第2弾は、長期にわたり安定した経営とその成果を実現する事を目的とした投資であり、具体的には、新製品の為の投資(新モデル用金型投資)、危機管理の為の投資(塗装ブースの空気調和機の増強とチラーの設置等、安全と環境改善への投資)、品質向上の為の投資(成型プレス機の更新)、生産性向上の為の投資(レーザー加工機、プリフォームマシンの更新、CAM裁断機の導入等)、及び全社的な業務の改善と合理化に向けた全社管理システム(IT)の改善投資を実施する考えで、15 /9期からの5年間で総額40億円の投資を予定している(16/9期がピークになる)。

15/9期の設備投資は既に説明した通り9億23百万円。空気の温度・湿度を調節して供給する空気調和機(エアハンドリングユニット:AHU)の増設と空気冷却用チラー(温度を一定に保つための装置)の設置等を中心に、危機管理の為の投資を行った(今後、夏場の作業環境の大幅な改善による生産性向上とケミカルの品質安定が期待できる)。
16/9期は設備投資11億13百万円を予定しており、減価償却費として6億30百万円を計上する予定(15/9期5億09百万円)。13億06百万円のフリーCFを見込んでいる。
 
 
茨城工場の塗装ブースの作業環境改善に向けたAUHの増設とチラーの導入。
左が増設されたAUH、右が新たに導入されたチラーのタンク等。
(同社資料より)
 
 
2016年9月期業績予想
 
 
前期比1.2%の増収、同17.5%の経常減益
売上高は前期比1.2%増の144億20百万円。拠点を開設して販売を強化する中国の寄与でその他地域の売上が伸びる他、欧州の売上もわずかに増加する見込みだが(数量は横ばい)、前期の出荷が好調だった北米で在庫調整を見込んでおり、国内も微減を想定している。

営業利益は同22.1%減の25億円。賃上げに伴う労務費・人件費増の増加(57百万円、前期と同様の4%の賃上げを想定)、北米市場の深掘りに伴う広告宣伝費の増加(1.79億円)、対円でのユーロ安に伴う欧州子会社の原価増(1億円、在庫評価額の増加)、減価償却費の増加(1億20百万円)、未実現利益の減少(0.7億円)等を織り込んだ。
営業外損益が改善するのは、期初予想には為替差損を織り込まないため。一方、法人税率の引き下げ及び政策減税を織り込み、最終利益は17億20百万円と同13.9%の減少にとどまる見込み。

想定為替レート(期中平均)は、1USドル=120.00円(前期120.04円)、1ユーロ=132.00円(同137.48円)。ただ、ユーロについては、所要額の約1/2にあたる700万ユーロを138.25円で予約済みである(USドルについては予約していない)。設備投資11億13百万円、減価償却費6億30百万円。

CFの面では、税引前利益が減少するものの、たな卸資産、売上債権、及び税金費用の減少等で前期を上回る24億56百万円の営業CFを確保できる見込み。投資CFは設備投資の増加で11億50百万円のマイナス。この結果、フリーCFは13億06百万円となる見込み。

配当は1株当たり期末62円を予定している。
 
 
(2)事業環境と同社のポジション
同社製品と相関性の高い2輪車新車の2015年の販売動向は、国内は前年の駆け込み需要の反動がみられるが、世界的には概ね前年を上回る販売が続いている。具体的には、国内が6.5%減(1-7月累計)、欧州では、スペイン(1-10月累計19%増)、イギリス(同18%増)、イタリア(同14%増)が高い伸びを示しており、ドイツも5.6%増(1-10月累計)と堅調。一方、回復を期待したフランスが3%減(同)。北米は、米国が6%増(1-9月累計)、カナダが3%弱の増加(1-7月累計)。

一方、市場を2分するライバルメーカーとの海外向けの比較では(14年10月-15年9月の財務省貿易統計を基にした推計)、アジアを除く輸出全体で同社のシェアは74.2%。2013年から2014年にかけてのGT-Air、NXRのヒットで特に高かった13年10月~14年9月は76.3%を下回ったものの高水準を維持した(11年10月~12年9月:70.8%、12年10月~13年9月:74.8%)。地域別では、欧州向け73.3%(13年10月~14年9月77.2%)、北米向け76.4%(同74.9%)、その他地域向け70.6%(同73.6%)、と各地域で圧勝した。
ただ、昨年から統計の発表を開始したアジア向けは33.6%(同38.0%)にとどまり、分が悪い事がわかった。原因は、ユーザーへのアピールが足りなかった事。このため、需要の取り込みに向け、アモイを中心に中国全土に8拠点を展開する代理店と契約した(これまでは北京の代理店1社に依存していた)。
 
 
(3)2016年シーズンの勝負モデル
2016年のバイクシーズンに向けた勝負モデルは、同社のフラッグシップレーシングモデルとして日米欧の3極で投入する「X-14(北米、日本)/X-Spirit III(欧州)」と同社にとって新しいカテゴリーのモデルとして日欧で投入する「J・O」の2つ。
 
X-14(北米、日本)/X-Spirit III(欧州)
「X-14(北米、日本)/X-Spirit III(欧州)」は、あらゆる妥協を排除してレーシングに最適のモデルを追求。オンロードフルフェイスタイプで、同社のフラッグシップレーシングモデルとの位置付けである。MOTO GPチャンピオンのマルケスをはじめ、ほぼ全ての契約レーサーがテスト走行に参加したが、一様に出来栄えを称賛しており、特にマルケスは空力性能を高く評価したと言う。その他のレーサーからも、空力性能に対する評価はもちろん、ベンチュレーション、フィッティング、ノイズレス、広い視界等が評価されたようだ。10月に米国フロリダで開催されたAmerican International Motorcycle Expo(AIM Ezpo)でも大きな反響を呼んだと言う。

欧州では、「X-Spirit III」として2016年3月の販売開始する予定で(船積予定:2016年1月)、メーカー希望小売価格(ドイツ・フランス)は699.00~869.00ユーロ(税込み)。北米では、「X-14」として、2016年2月に販売を開始する予定(船積予定:2016年1月)で、メーカー希望小売価格は681.99~839.99USドル(税抜き)。日本では、「X-14」として2016年の春の販売開始を予定している(メーカー希望小売価格未定)。
 
 
J・O
「J・O」はインナー収納シールド付きオープンフェイスタイプのヘルメットで、ターゲットはカスタムバイクやクラシックバイクのユーザー。バイクメーカーがレトロ調の新モデルを相次いで発表している潮流をとらえて開発したモデルであり、同社にとって新しいカテゴリーのモデルである。“軽量、コンパクト、ファッションオリエンティッド” と言う、従来のSHOEIにないコンセプトを掲げている。このため、11月にイタリア・ミラノで開催された「EICMAショー(ミラノショー)」では、驚きと好感を持って迎えられたと言う。

欧州では、2016年3月の販売開始を予定しており(船積予定:2016年1月)、メーカー希望小売価格(ドイツ・フランス)は329.00~379.00ユーロ(税込み)。日本では、2016年春の販売開始を予定している(メーカー希望小売価格は未定)。
 
 
 
今後の注目点
16/9期の業績予想はネガティブな材料を全て織り込んだ。例えば、北米での在庫調整を想定しているが、足元で顕在化しているわけではなく、前期の出荷を踏まえての想定である。今期は北米での大規模な販促を予定しており、広告宣伝費の増加を業績予想に織り込んだ。また、労務費・人件費の増加も織り込んだ。また、同社は基本方針の7番目に、「利益の公平、公正な分配(50%配当性向、従業員への配分、会社への分配(内部留保)」を挙げており、この一環として、15/9期の予想配当を当初の60円から72円に引き上げた(前14/9期は60円)。社員への配分では、15/9期に4%の賃上げを実施しており、16/9期も4%の賃上げを予定し、過去9年間で実に28%の引き上げである。業績予想に労務費・人件費の増加を織り込んだが、「利益の公平、公正な分配」を受けて社員の会社に対するロイヤリティは高く、高品質を誇る「100%Made in Japan」の原動力となっている。
一方、業績予想には織り込まれていないものの、足元の生産は好調で、2016年の5~6月までフル生産が続く見込み。また、対ユーロで円高が進むとみているが(1ユーロ=132.00円を想定)、所要量の約1/2の700万ユーロは前期の実績(同137.48円)をも上回る水準(同138.25円)で予約済みである。

もっとも、2016年の勝負ヘルメットの一つである「X-14(北米、日本)/X-Spirit III(欧州)」は、同社のステータスを象徴するモデルと言え、日米欧の3極でブランド力が一段と強まる事は確実だが、今期の業績に目に見える形で大きく貢献するものではないかも知れない。「X-14/X-Spirit III」は、プレミアムヘルメットでも、ボリュームゾーンではなく、トップの中のトップとも言うべき最上位のゾーンを狙ったもので、このゾーンで圧倒的なシェアNo.1を獲るために投入したモデルである。このため、足元の為替で換算すると、メーカー希望小売価格は、欧州が税込み9万円程度、北米で税抜き8万円台半ばになる見込みで、数が出るものではない。

また、今回新たに開示された統計データで、中国を中心にアジアではライバル企業に負けている事がわかった。これまでは、北京の代理店1社に依存していたが、広い中国では無理があったようだ。また、中国は電動バイク市場であり、大型バイクには規制もあるのだが、中国に進出した日本のバイクメーカーの大型2輪事業は好調だ。このため、プレミアムヘルメット市場も広がりを見せている可能性が高い。同社はこの反省に立ち、16/9期からは中国全土をカバーする代理店と契約し販売を強化していく事は既に説明した通り。数年内のシェア逆転を目指している。