ブリッジレポート
(4709) 株式会社IDホールディングス

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ブリッジレポート:(4709)インフォメーション・ディベロプメント vol.51

(4709:東証1部) インフォメーション・ディベロプメント 企業HP
舩越 真樹 社長
舩越 真樹 社長

【ブリッジレポート vol.51】2015年3月期業績レポート
取材概要「同社は以前から「ダイバーシティの推進」に積極的に取組んでおり、「2020年女性社員比率50%」、「2020年女性管理職比率30%」、「2018年多・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年6月9日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インフォメーション・ディベロプメント
社長
舩越 真樹
所在地
東京都千代田区二番町 7-5
決算期
3月
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2015年3月 18,868 966 998 508
2014年3月 17,578 735 765 372
2013年3月 16,446 427 448 -490
2012年3月 16,137 629 659 365
2011年3月 16,450 839 892 447
2010年3月 17,263 850 864 155
2009年3月 18,458 1,057 1,109 563
2008年3月 18,032 1,200 1,191 594
2007年3月 14,692 1,024 1,024 550
2006年3月 13,028 851 845 430
2005年3月 11,378 550 557 119
2004年3月 11,203 625 628 203
2003年3月 11,668 598 591 274
2002年3月 11,081 548 546 272
2001年3月 9,738 756 735 242
株式情報(5/27現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
911円 7,196,911株 6,556百万円 8.1% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 3.3% 80.59円 11.3倍 934.31円 1.1倍
※株価は5/27終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
インフォメーション・ディベロプメントの2015年3月期決算概要等についてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
金融向けITアウトソーシングに強みを持つ独立系の情報サービス会社。システム運営管理とソフトウエア開発・保守を二本柱とし、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理等の複数のサービスを提供するBusiness Operations Outsourcing(BOO)戦略を推進しており、好不況の波の大きいIT業界にあって、相対的に業績の変動が小さく、高配当を継続している。尚、2013年12月17日、JASDAQから東証2部に市場変更。2014年9月8日、東証1部に上場した。
 
【事業セグメント】
事業は、システム運営管理、ソフトウエア開発・保守、及びその他に分かれ、各事業の概要と売上構成比は次の通り。
 
システム運営管理  (15/3期売上構成比59.7%)
1,000名規模の技術者を擁する専門部隊が、ミドルウエアのカスタマイズからハードウエアの保守、24時間体制のオペレーションまで、トータルかつ高付加価値のアウトソーシングを実現している。
 
ソフトウエア開発・保守 (15/3期売上構成比37.0%)
500名を超える技術者が、顧客の開発ニーズに合わせたシステム構築をサポート。金融機関、エネルギー、運輸をはじめとする幅広い分野のお客様へ、多くの開発実績を築いている。
 
その他 (15/3期売上構成比3.3%)
BPO、セキュリティ、コンサルティングなどを展開している。海外の大手ベンダーと提携し、各種セキュリティ製品の提供からコンサルティング、セキュリティ環境の構築・導入・運用・サポートまで一貫したサービスを提供している。

また、顧客別では、メガバンク、有力地銀、生損保、農林系等の金融機関が53.2%、SIer、情報通信機器ベンダー、或いは通信キャリア系情報サービス大手等の情報・通信・サービスが29.3%、製造、輸送、公共団体、エネルギー等のその他が17.5%。
 
 
【IDグループ】
グループは、2015年3月末現在、同社の他、国内外の連結子会社7社。このうち国内(4社)は、システム運営管理を手掛ける(株)日本カルチャソフトサービス(出資比率100%。以下、CS)、ソフトウェア開発を手掛ける(株)ソフトウエア・ディベロプメント(同100%、SD)、情報システム・コンサルティング等の(株)プライド(同85.9%)、障がい者雇用を促進するための子会社愛ファクトリー(株)(同100%)。一方、海外(3社)は、中国でソフトウエア開発、システム運営管理等を手掛ける艾迪系統開発(武漢)有限公司(同100%、ID武漢)、シンガポールでソフトウエア開発やシステム運営管理等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT SINGAPORE PTE. LTD.(同100%、IDシンガポール)、及びアメリカで人材採用・育成、現地市場調査、情報収集等を手掛けるINFORMATION DEVELOPMENT AMERICA INC. (同100%、IDアメリカ)。
このほか、ミャンマーに現地企業との合弁会社、Infinity Information Development Co., Ltd. (IDシンガポール出資比率49%)を有している。
2015年7月1日付でCSとSDを吸収合併する予定。また同じく7月にはインドネシアに子会社を設立する予定。
 
 
【IDグループのサービスの特徴  - i-Bos24®(ID's Business
 Operations-Outsourcing Service 24)-】
同社グループはコンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理、クラウド・セキュリティ、BPOまで、トータルなITアウトソーシングサービスを「i-Bos24®」のブランドで提供している。ソフトウエア開発事業ではユーザーの立場に立った柔軟な発想と姿勢でシステムを構築し、システム運営管理事業では24時間365日システムをノンストップで運営管理。セキュリティ事業ではセキュリティ製品の販売やネットワークセキュリティに関わる業務を行う。更にクラウドサービス「iD-CLOUD」では、コンテンツやセキュリティの運用・遠隔監視、Web会議システムの導入等のニーズに応え、BPO事業ではITを活用した事務作業を代行する事で顧客の業務効率化に貢献する。
 
 
【情報サービス業の動向と同社の業績推移】
(1)情報サービス業の動向
 
内閣府が5月20日に発表した15年1-3月の国内総生産(GDP)第1次速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算で2.4%増と2四半期連続のプラスとなった。一方、情報サービス産業との関連性が深い民間企業設備(実質)の前期比は、1.8%増と4四半期ぶりの増加となったが、内閣府では「ソフトウェア等への支出は減少に寄与したとみられる。」と述べている。
また、経済産業省発表の「特定サービス産業動態統計調査」(15年5月21日発表。3月分確報値)を見ると、情報サービス全体、受注ソフトウエア、システム等管理運営受託ともに売上高は好調に推移している。
 
(2)同社の取り組み
キーワードは、「BOO戦略」、「グローバル推進」、及び「iD-CLOUD」。具体的には、一つの顧客に対し、コンサルティングからソフトウエア開発、システム運営管理、BPOまで、複数のサービスを提供する「Business Operations Outsourcing」を“i-Bos24®” のブランドで展開し、既存顧客1,000社から抽出した13企業グループを深耕する。また、「グローバルの推進」では、ITの導入支援から運用・保守までのワンストップサービスを日本仕様で提供する事でグローバル展開を進める日本企業のニーズを取り込んでいく。この一環として、100%子会社 ID武漢が、武漢、上海、無錫及び東京を活動拠点とし、日本と中国において、ソフトウエア開発からシステム運営管理、BPOまでのトータルITサービスを提供している他、米国、シンガポールでの子会社設立、英国における支店設立、業務提携に加え、2015年2月にミャンマーに合弁会社を設立、同年7月にはインドネシアに子会社を設立予定など、グローバルなITサポート体制の構築を進めている。

一方、顧客企業のIT投資額に占めるクラウドコンピューティングへの投資比率は今後ますます増加することが予想されるため、「iD-CLOUD」の拡大に積極的に取組んでいく。
特に、クラウドの採用にあたり顧客企業が注視するのはセキュリティレベルの高さであるため、新しいセキュリティ商品、技術を積極的に取り入れ、クラウドおよびセキュリティとオペレーションを組み合わせた、より専門的なサービス提供を機動的に推進していく。
また、クラウド環境の設計・構築に欠かせないプラットフォーム系開発業務においては、要員育成による体制強化を進め、売上拡大を目指す考えだ。なお、プラットフォーム系開発業務とは、ハードウエア、OS、ミドルウエアの機能を最適な手段で活用し、低コストかつ信頼性の高いシステム稼働環境を設計・構築するサービスのこと。

中長期的な経営戦略として「継続的成長」という基本的考え方のもと、重点戦略として①ダイバーシティの推進、②BOO戦略の推進、③クラウドサービスの推進、④グローバル推進、⑤グループ経営の効率化と業務プロセス改善を掲げる。18/3期に売上高235億円、営業利益率8.0%を目指す。
 
 
これまでの業績推移と今後のイメージ
 
 
2015年3月期決算概要
 
 
前年同期比6.2%の増収、同25.3%の経常増益
売上高は前期比7.3%増の188億68百万円。システム運営管理、ソフトウエア開発共に好調で過去最高を更新した。
増収効果に加え、要員配置の最適化による生産性向上の結果、労務費率が減少したことにより営業利益は同31.3%増の9億66百万円。経常利益、当期純利益ともに大きく増加した。
計画に対してもほぼ予定通りの着地となった。データセンターは安定して稼動し、不採算案件もゼロだった。また時間外労働も前年並みで計画内に収まっている。
 
 
システム運営管理事業の売上高は前期比5.7%増の112億71百万円。金融系の大型案件、既存案件が順調に推移した。また、企業のIT投資回復を背景に、プラットフォーム系開発業務や、顧客先でのクラウド導入の支援案件も好調だった。

ソフトウエア開発・保守事業の売上高は前期比10.8%増の69億77百万円。引き続き金融系の案件が好調に推移し、オフショアを活用した一括受託サービスの提供等でも売上を伸ばした。また、公共系も制度改正、法改正対応等によって受注案件が増加して好調だった。年度末に集中する受託案件も増加した。

その他事業の売上高は前期比0.6%増の6億20百万円。製品販売の売上が減少したものの、コンサルティングがこれを補った。
 
 
第4四半期(1-3月)は、賞与積立てを行ったため営業利益が前3Qよりも減少したが、過去2年間では高水準で推移した。
 
(2)その他概況
子会社の7社は全て増収。CS、SD、プライド、ID武漢は営業利益も大きく伸ばした。
顧客別では、みずほファイナンシャルグループ、農林中央金庫など金融機関が2桁の増収だった一方、情報通信サービスは微増収だった。
受注高は、システム運営管理、ソフトウェア開発共に前期に比べ増加した。ただ、受注残高はソフトウェア開発が同約3割減少し、全体でも3.6%の減少となった。
 
 
15/3期末の総資産は前期末比6億32百万円増の103億3百万円。売上債権、投資その他の資産などが増加した。
負債は前期末比41百万円減の35億42百万円。退職給付に係る負債が無くなった。純資産は前期末比6億74百万円増の67億60百万円。利益剰余金および円安に伴い為替換算調整勘定が増加した。自己資本比率は65.3%と前期末比4.2ポイント改善した。
 
 
前期に比べ、未払金減少額の縮小、未払費用の増加、未払消費税の増加などで営業CFはプラスに転じた。貸付による支出、差入保証金の差入による支出が前期よりも増加し、投資CFのマイナス幅は拡大したが、フリーCFはプラスに転じた。
財務CFは短期借入金を増加させたためマイナス幅が縮小した。キャッシュポジションは若干低下した。
 
(4)トピックス
◎株式信託制度を導入
取締役および執行役員に対する新たな株式報酬制度「株式給付信託(BBT(=Board Benefit Trust))」を導入することとした。
(2015年6月18日開催予定の第47期定時株主総会の決議よって正式に導入が決定される。)

<導入の背景>
取締役等の報酬と同社の業績および株式価値との連動性をより明確にし、取締役や執行役員が株価上昇によるメリットのみならず、株価下落リスクまでも株主と共有することで、中長期的な業績の向上と企業価値の増大に貢献する意識を高めることを目的としている。

<概要>
同社が拠出する金銭を原資として設定された信託が同社株式を取得。同社が定める役員株式給付規程に従って、取締役や執行役員の業績達成度等に応じて同社株式が信託を通じて取締役・執行役人に給付される。
株式の給付を受ける時期は、原則として退任時となる。

まず、2016年3月期から2020年3月期の5年間に関し、同社は1億円を上限として拠出し、信託は112,000株を上限に取得する。
業績達成度合いに応じて各取締役・執行役員に1ポイント=1株換算でポイントが付与され、退任時までに付与されたポイントに、退任事由別に設定された所定の係数を乗じて「確定ポイント数」を算出。退任後に信託から株式の給付を受ける。

中立性確保の観点から、信託が保有する株式の議決権は一切行使しないこととしている。

対象には社外取締役、監査役は含まない。
 
 
2016年3月期業績予想
 
 
連続して増収増益を見込むが伸び率は低下
売上高は前期比6.0%増の200億円を予想。引き続き金融機関の統合化案件等、顧客のIT投資は拡大することが期待される。エンジニアの確保状況次第だが、200億円は堅めの予想としている。
営業利益は同7.6%増の10億40百万円を予想する。今期中の本社オフィス移転を予定しており、営業利益率の改善幅は前期比0.1ポイントにとどまるが、今期を含む3か年の中で6%超を実現し、2018年の8.0%の足場を固める。不採算案件の防止とデータセンターでのオペレーション円滑化により一層注力する。
配当については、前期は記念配当2円を含めて30円/株だったが、今期は普通配当のみで30円/株の予定。予想配当性向は37.2%。
 
(2)3か年計画に向けた取り組み
今期の売上高目標200億円は通過点と考え、着実な実現を目指す。
2018年3月期の営業利益率目標を8.0%としている。ソフト開発中心の事業構造ではないので10%、20%を目標とするのは現実的ではないが、チャレンジする。
その為には、生産性向上、業務プロセス改善を含めた構造改革が不可欠であり、子会社CSおよびSDの吸収合併もそのためのアクション。
経営戦略における重点施策は①ダイバーシティの推進、②BOO戦略の推進、③クラウドサービスの推進、④グローバル推進、⑤グループ経営の効率化と業務プロセス改善の5つだが、今期のポイントは①ダイバーシティの推進と④グローバル推進と考えている。
 
 
今後の注目点
同社は以前から「ダイバーシティの推進」に積極的に取組んでおり、「2020年女性社員比率50%」、「2020年女性管理職比率30%」、「2018年多国籍社員比率15%」といった具体的な目標を掲げ、進捗状況を確認している。
ダイバーシティの推進は組織活性化に加え、様々な知恵が生まれることが大きな利点であると舩越社長は説明していた。
良好な事業環境の下、最高売上高連続更新に向けた今期業績の推移に加え、中期的な視点から上記目標の進捗も注目したい。