ブリッジレポート:(4549)栄研化学 vol.5
(4549:東証1部) 栄研化学 |
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企業名 |
栄研化学株式会社 |
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代表執行役社長 |
和田 守史 |
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所在地 |
東京都台東区台東4-19-9 山口ビル7 |
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決算期 |
3月末日 |
業種 |
医薬品(製造業) |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2015年3月 | 31,014 | 2,826 | 3,013 | 2,100 |
2014年3月 | 30,027 | 3,008 | 3,095 | 1,984 |
2013年3月 | 28,645 | 2,548 | 2,812 | 2,453 |
2012年3月 | 27,702 | 2,363 | 2,543 | 1,460 |
2011年3月 | 27,562 | 2,709 | 2,775 | 1,672 |
株式情報(5/20現在データ) |
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今回のポイント |
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会社概要 |
国内シェア約57%の便潜血検査用試薬を始め、尿検査用試薬や微生物検査用試薬など高シェア製品多数。また独自開発の遺伝子増幅技術「LAMP法」は世界的に高い評価を得ている。便潜血検査とLAMP法の2つを武器にグローバル企業への成長を目指している。 【沿革】
【経営理念】
*経営理念: 「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」
*経営ビジョン:「EIKENグループは、人々の健康を守るために、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。」
*モットー: 「品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”」これらを中心に各ステークホルダーへの考え方として、EIKEN WAYを策定している。 【市場環境】
臨床検査薬市場(検査用機器を含まない)の市場規模は、2013年度で約3,380億円(一般社団法人日本臨床検査薬協会調査)となっている。<国内市場> 行政は増大している医療費を抑制するために特定健診(メタボ健診)やがん検診といった予防医療に力を入れており、今後、高齢化の進展と共に臨床検査数(検体数)の増加が見込まれる。 一方でマイナス面としては少子化による人口減少及び診療報酬改定(引き下げ)の影響がある。ただ、診療報酬改定の対象である保険(検体検査実施料)の推移を見ると、1997年から2006年までの期間に約4割引き下げられたものの、その後はほぼ横ばいないし微減となっている。これは同社の含めた業界全体として予防、検査の重要性を働きかけた結果という事で、中長期的に見れば国内市場は年率3%程度の微増傾向が続くと思われる。 矢野経済研究所による「臨床検査市場の展望2009年版」によると、同社は、シスメックス(6869、東証1部)、ロシュ・ダイアグノスティックス(独ロシュグループの日本法人)、富士レビオ(現 みらかホールディングス。4544、東証1部)、アボットジャパン(米アボットグループの日本法人)につぐ第5位、シェア5.8%となっている。 前述の協会会員115社(2015年4月時点)の内メーカーは約80社で、売上100億円以上の企業は15社程度となっており、大多数は中堅・中小企業という構造。臨床検査は検査項目が多岐にわたっているため企業ごとに得意とする分野が異なり、企業間での棲み分けが出来ている。そのため、他社から原料・製品を仕入れて製造・販売するといった提携が多く見られる。また、そうした棲み分けが出来ている中、市場は小幅ながらも拡大しているため、明確な淘汰は現在のところ起きていないということだ。 <海外市場>
矢野経済研究所「グローバル臨床検査市場の展望2009年版」によれば、2008年の世界の検体検査薬・機器市場は445億USD(約4兆4,500億円。1USD=100円。)で、地域別構成比は米国41.2%、欧州36.9%、アジア・パシフィック12.0%などとなっている。市場規模自体が国内市場の10倍超と巨大であると同時に、先進国では高齢化の進展に伴う検査数の増加、また新興国においては経済成長、所得増加に伴う医療ニーズの拡大などにより、年率7~8%と国内市場を大きく上回る成長が見込まれるため、国内の各関連企業は積極的にグローバル化を進めている。 ただ、グローバル市場においては、ロシュ、アボット、シーメンス、ベックマンなど売上高が2,000~9,000億円にも上る世界的大企業がメインプレーヤーとなっており、日本企業が競争に勝ち抜くためには独自性のある製品・システムの開発など競争力強化が不可欠である。 【事業内容】
1.臨床検査とは
臨床検査には、レントゲン、CT、MRI、心電図、超音波など、医療機器を使用して体を直接調べる「生体検査」と、患者から採取した血液、尿・便、細胞などの生体試料(検体)を調べる「検体検査」がある。同社が取り扱う臨床検査薬とは、検体検査に使用する試薬の事で、例えば感染症の検査や便に含まれた微量の血液の測定など、病気の診断をサポートするもの。これら試薬の大部分は体外診断用医薬品と呼ばれ、医薬品医療機器等法の規制を受け、試薬メーカーなどがPMDA(医薬品医療機器総合機構)に対し申請し、認可を受けたものである。ユーザーは、病院、医院、診療所、受託を受けて検査を行う検査センター、健診センター、保健所、衛生検査所など。 2.主力製品
主として以下の各検査用試薬や機器を製造・販売している。同社は幅広い検査薬を取り扱うために、自社製品に加え他社製品の仕入販売も行っている。 主要な自社製品は、便潜血検査用試薬、微生物検査用試薬、免疫血清検査用試薬、尿検査用試薬、遺伝子検査用試薬など。自社製品と他社製品の売上比率は約60:40。粗利率は自社製品が約55%、他社製品が約35%。 便潜血検査用試薬
大腸がんのスクリーニング検査として糞便中ヒトヘモグロビンを特異的に検出・測定する便潜血検査用試薬・採便容器を主力製品とし、グローバルに販売している。
免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)
自動分析装置用試薬「LZテスト‘栄研’」を始め、感染症、リウマチ、炎症、萎縮性胃炎、前立腺特異抗原などの診断、測定に使用する各種検査用試薬の開発、製造、販売を行っている。また東ソー(株)から、全自動エンザイムイムノアッセイ装置用試薬及び自動グリコヘモグロビン分析装置用試薬を導入・販売している。 微生物検査用試薬
同社は創立以来、感染症及び食中毒の予防を目的とし、生体試料や食品・環境の微生物検査用試薬を開発してきた。現在では、微生物検査用培地、薬剤感受性検査用試薬、迅速検査試薬など、微生物感染症の診断・治療に有用な各種検査用試薬を開発・製造・販売している。
尿検査用試薬
尿中の潜血、たんぱく質、ブドウ糖など多項目の検査が行える尿検査用試験紙「ウロペーパーⅢ ‘栄研’」、全自動尿分析装置用には専用試験紙の「ウロペーパーαⅢ‘栄研’」などを開発・製造・販売している。
生化学検査用試薬
生活習慣病との関連性が注目されている検査項目を中心に、血清や尿を検体とし生体成分を測定・分析する「エクディアXL ‘栄研’」シリーズなど、生化学検査用の試薬を開発・製造・販売している。
器具・食品環境関連培地
食中毒原因微生物の検査などの食品微生物検査用試薬や、作業環境の汚染実態などを把握できる環境微生物検査用試薬及び検査用器具・器材の販売を行っている。
医療機器
各種自動分析装置を販売している。自社試薬を使用する専用装置は製造委託を行っている。便潜血測定装置「OCセンサー」は1989年の発売以来、技術革新と品質向上を重ねている。また、独自技術であるカラーCCDセンサーを使用した尿自動分析装置「US」、臨床検査分野で世界初となる全自動生物化学発光免疫測定装置「BLEIA-1200」、LAMP法リアルタイム濁度測定装置「LoopampEXIA」など取り揃えている。
遺伝子(LAMP法)関連
同社は1998年、新規遺伝子増幅技術LAMP法を独自開発し特許を取得した。このLAMP法は、「簡易、迅速、精確」という特徴を有しており、今後のグローバル展開のための大きな武器となっている。(詳細は後述)
3.販売体制
国内の販売体制は11営業所、2営業部。学術部門が販売促進の支援を行っている。2015年3月期の全従業員662名(連結)中、約290名が営業部門。 ユーザーである病院など医療機関向けチャネルに関する直接の販売先は医療系卸会社で、殆ど全ての卸会社と取引を行っている。 海外販売においては、基本的に1か国・1代理店体制をとっており、販売とメンテナンスを委託している。 輸出先は51ヵ国(2015年3月期)。米国、イタリア、韓国、台湾が海外売上の大半を占めている。 アムステルダム(オランダ)に欧州支店があるほか、中国に関しては連結子会社「栄研生物科技(中国)有限公司」での生産・販売体制の強化を行う他、中国事業室を設置しビジネス拡大を図っている。今後は規模拡大に伴い現地法人化も検討していく。 2015年3月期の海外売上高は2,704百万円。うち便潜血検査用試薬・装置は2,294百万円で構成比は84.8%。 (2013年3月のROEが高いのは、土地売却による特別利益を計上し売上高当期純利益率が上昇したため。) ただ今後はROEの更なる向上を望む声も強まる事も考えられ、同社が重点施策に挙げている高付加価値製品の開発、新規事業・新規市場の創出及び原価率及び販管費率の低減による利益率及び生産性向上を一段と強化する必要がある。 【特徴と強み】
①高シェアの製品群
便潜血検査用試薬の国内シェアは約57%でトップであるほか、尿検査用試薬で約23%(2位)、微生物検査用試薬で約18%(2位)等と多くの自社製品において高いシェアを有している。同社が便潜血検査用試薬で高いシェアを獲得することができた背景としては、1987年に発売した目視判定法用の便潜血検査用試薬「OC-ヘモディア」が、競合品に比べユーザーニーズに合致した製品であったこと、1989年には測定原理に免疫法(ラテックス凝集法)を採用し世界初の全自動分析装置「OC-センサー」を発売したことである。 また、便潜血検査は1992年に老人保健法の改正が行われ、大腸がん検診のスクリーニング検査法として公費で受診が可能(受診者負担が無料)になったのをきっかけに、普及が加速し競争が激しくなったが、同社は、機能を一新した「OC-センサーneo」を2001年に発売し、シェアを拡大してきた。 日本で実施されている免疫法は、ヒトの血液のみ反応する試薬となっており、また、自動化装置による大量処理が可能である。 一方海外では化学法による古いタイプの試薬が使用されており、精度面に課題がある。近年になりようやく欧州の検診ガイドラインで免疫法による自動装置測定が推奨され、大きな市場の変化が表れ始めた。 また、市場が最も大きいアメリカでも化学法が主流であるが、徐々に免疫法へのシフトが始まっており、欧州、北米、アジア・オセアニアの先進国・新興国には未開拓な大きな市場が控えている。 便潜血検査市場は、ニッチな市場であるため、いち早く免疫法を開始した日本企業の技術が最も進んでおり、同社の試薬・装置がグローバルスタンダードとなっている。 ②研究開発に注力
研究開発型企業として独自性のある技術の研究開発と、それをベースとした顧客ニーズに対応したオリジナル製品の開発に注力している。研究開発要員は約100名。顧客の要望は医療のクオリティ向上。具体的には、高感度・高品質による疾患の鑑別精度の向上、検出率の改善といった点が挙げられる。加えて、使用法が簡便であれば医療従事者の負荷軽減につながるため、そうしたニーズへの対応も重要なポイントとなっている。 同社は、1939年の創業以来培ってきた試薬製造の独自技術が蓄積されており、またその試薬の性能を有効に活用するための装置に関しても、便潜血検査用装置や尿自動分析装置、生物化学発光免疫測定装置(BLEIA法)などで他社にはない独自技術が用いられている。 ③アライアンス戦略による多品種・多分野展開
臨床検査薬はその対象、項目は多岐にわたり、すべてを自社で開発・製造・販売を手掛けることは困難である。同業他社の多くは自社の得意な技術・製品に絞っているが、同社は臨床検査薬の総合メーカーとして、収益構造の安定化をめざし、アライアンス戦略を通じて自社の有する強みの拡大、機能の補完、新技術の取得といったシナジー効果を追求しつつ、広範に取扱製品を揃え、医療機関を始めとした顧客、ユーザーのニーズに対応している。多品種・多分野に展開しているもう一つの理由としては、経営理念「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」にあるように国民の健康を守るという責務を達成するためには、幅広い臨床検査に対応することが企業としての社会的責任であるとの想いも根底にある。 ④「LAMP法」の優位性
遺伝子検査の中の過程の一つである遺伝子増幅プロセスにおける現在の主流技術は「PCR法」と呼ばれるもの。これに対し同社は1998年「LAMP法」という独自技術を開発した。「LAMP法」はPCR法と比較して、以下の様な優れた特徴を持ち、簡易で迅速に特異性の極めて高い遺伝子検査を行うことが出来るものである。 同社はLAMP法の地位確立のため感染症検査に注力すると同時に、LAMP法の普及・認知度向上のために、畜産・水産、食品・環境など医療以外の分野での利用を推進しており、実際にLAMP法に基づく製品は2002年以降次々と実現している。 また同様の目的から、LAMP法陣営構築のために外部に対し積極的なライセンス許諾を行っている。 LAMP法を世界的に普及させるための中心的な取り組みの一つが、「FIND」とのアライアンスである。 「FIND」は「Foundation for Innovative New Diagnostics」のことで、2003年5月に開催された国連の世界保健会議の場で設立されたスイス政府認可の非営利財団。当初5年間、Bill & Melinda Gates Foundationからの助成金を受けて活動を本格化している。 途上国における感染症撲滅のために、手頃な価格で、取り扱い易く、先進的な検査・診断方法を開発・導入する事を活動の目的としている。 FINDでは対象とする感染症として、結核、マラリア、アフリカ睡眠病などを上げているが、このうち結核について途上国で実施されている顕微鏡検査(塗沫検査)よりも精度を向上させることを目的として、LAMP法による結核検査の共同研究が同社とFINDによって2005年7月より開始された。 途上国の現場でも利用できるように、前処理工程の簡略化(PURE法)、試薬保存方法の改良(室温保存)、装置の簡略化など、PCR法では実現できない改良が加えられた。 LAMP法を利用したこの製品は2011年に日本で既に販売となっている。 現在、FINDはWHO(World Health Organization、世界保健機構)の推奨獲得のために、途上国14ヵ国での臨床評価を終了し、WHOに提出している。 同社は、結核以外にも前述の疾病のほか、リーシュマニア症及びシャーガス病の検査薬に関して、FINDと共同開発を進めている。 また、同社はLAMP法を利用した次世代の小型全自動遺伝子検査装置および多項目検査チップを開発している。本装置は、検体前処理(核酸抽出・精製)から増幅・検出までを全自動で行え、従来の高純度な核酸抽出・精製を行う装置と増幅・検出装置で合わせて2時間以上を要していた操作時間を、LAMP法の特徴を活かした独自プロトコルの開発により、30分以内に短縮することが可能となる。まず、複数の呼吸器感染症原因微生物の同時検出を目的とした臨床性能試験を実施するが、その使用用途は広い。 同社では、これらの製品はLAMP法の普及を加速させるとともに、新たな市場を構築した中でグローバルスタンダードとしての地位を確立させるものと期待している。 *遺伝子増幅法
遺伝子検査では、検体に含まれる目的の遺伝子量が極めてわずかなため、遺伝子を検出するためにはまず目的とする遺伝子を増幅させなければならず、遺伝子検査において最も重要なポイントが遺伝子増幅となる。
*アフリカ睡眠病
熱帯アフリカの風土病で、トリパノソーマという原虫がヒトに感染して引き起こす重大な熱帯病。ツェツェバエが媒介する。ヒトの血液中のトリパノソーマがツェツェバエに吸血され、その体内で発育、増殖し2~5週で終末トリパノソーマ型となって次の感染源となる。高熱、頭痛、嘔吐などをきたし、ひたすら眠るようになる。食事が摂れなくなるので痩せ、全身衰弱となり、多くは合併症を引き起こして死亡する。
*リーシュマニア症
リーシュマニアという原虫の感染によって引き起こされ、黒熱病といわれる内臓リーシュマニア症、皮膚と粘膜をおかすブラジルリーシュマニア症、皮膚をおかす熱帯リーシュマニア症があり、いずれも吸血昆虫、とくにサシチョウバエが媒介する。内臓リーシュマニア症は約3か月の潜伏期の後、高熱、発汗や下痢が生じ、1か月ぐらいすると肝臓と脾臓が腫れ、貧血が進み、放置すると衰弱し、半年から2年で死亡することもある。
*シャーガス病
米国南部や中南米において哺乳類吸血性であるオオサシガメ亜科のサシガメを媒介とする感染症。すぐには発病せず、一般的に30年ほどの潜伏期間がある。リンパ節、肝臓、脾臓などの腫脹、筋肉痛、心筋炎、心肥大、脳脊髄炎、心臓障害といった症状をもたらす。
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2015年3月期決算概要 |
海外売上が好調で増収・営業増益
売上高は前期比3.3%増の310億円。国内売上は消費税増税に伴う駆け込み需要の反動、診療報酬改定の影響があったものの、同1.1%の微増となった。製品別では、一般検査用試薬、ABC分類関連検査用試薬、便潜血検査用試薬等が貢献した。海外売上は便潜血検査用試薬・装置を中心に同34.1%増と大きく伸びた。粗利率は0.3%上昇したが、研究開発費の増加、栄研中国の業績低迷で営業利益は同6.0%減少した。平成26年度税制改正に伴い法人税等が減少したため、当期純利益は同5.8%の増益となった。 計画に対しては、売上高、営業利益は未達となった。 ○便潜血検査用試薬
国内では大腸がん検診普及活動に引き続き注力した。また、装置の新製品「OCセンサーPLEDIA」を発売した。海外では北米、欧州、アジアともに好調だった。 ○免疫血清検査用試薬(便潜血検査を除く)
東ソー株式会社から導入・販売している「AIA関連試薬」の売上が減少したが、胃の健康度評価(ABC分類)検査(ヘリコバクター・ピロリ検査、ペプシノゲン検査)用試薬の普及促進活動によりカバーした。
○微生物検査用試薬
消費税増税による駆け込み需要の反動減により、薬剤感受性検査用試薬、粉末培地、迅速検査用試薬など全般に前期を下回った。
○尿検査用試薬
目視法用として使用される「ウロペーパーⅢ‘栄研’」は減収だったが、検査方法自動化への流れを受けて、全自動尿分析装置用の専用試験紙「ウロペーパーαⅢ‘栄研’」が国内外で好調で前期比横ばいとなった。また、装置の新製品「US-3500」を発売した。
○生化学検査用試薬
シェア獲得競争に伴う価格低下等により前期に続き減収となった。
○器具・食品環境関連培地
消費税増税による駆け込み需要の反動減、価格競争の激化により前期を下回った。
○医療機器
国内では免疫血清学的検査装置、微生物検査装置が、海外では便潜血検査装置、尿分析検査装置が伸長した。
○遺伝子(LAMP法)関連
遺伝子検査用試薬及びランニング・ロイヤルティが伸張した。
*北米
オバマケアが追い風となり、検査件数が増加し便潜血検査用試薬・装置の販売が大幅に拡大した。
*欧州
同社の便潜血検査法がフランスで大腸がん国家スクリーニング検査に採用されたほか、スペイン・マドリードでの集団検診を落札することができた。また、イングランドなどでの採用に向けた活動を活発化させている。イタリアでは全自動尿分析装置及び専用試験紙の売上が大きく伸びた。
*アジア、その他
タイ、香港、オーストラリア、ニュージーランドなどで便潜血検査の新規採用及び販売拡大に注力した。中国ではLAMP製品、便潜血検査用試薬及び装置の販売促進に注力したほか、LAMP結核製品に関する認可を取得し、販売を開始した。 *FIND事業
FINDとのアライアンスによる事業の進捗は以下の通りだった。
引き続き、WHO推奨取得に向けた途上国の評価を実施した後、データ集計・解析を行った。今上期中での推奨を期待している。販売体制についても準備を始めており、グローバル規模での販売力を有する企業と交渉中。 ②マラリア マラリア撲滅プロジェクトのスクリーニング用試薬を販売した。 ③アフリカ睡眠病 コンゴ民主共和国、ウガンダでの臨床試験を継続して行った。 撲滅プロジェクト用試薬を、ウガンダ、マラウイ、ギニア、コンゴ民主共和国などで販売した。 ④リーシュマニア症、シャーガス病 FINDによる試作品の評価を継続して行った。 流動負債は買入債務増などで微増した一方、固定負債は退職給付債務の減少等で同995百万円減少し、負債合計は同862百万円減少した。 純資産は利益剰余金増などで同2,361百万円増加した。この結果、自己資本比率は前期末の66.2%から69.8%へ3.6%上昇した。 |
2016年3月期業績予想 |
海外市場の開拓進み増収・増益
売上高は前期比5.8%増収の328億円の予想。欧州を中心に海外売上が今期も大きく伸長する。営業活動活発化に伴う旅費、荷造費の増加、効率化推進のためのIT投資など販管費も増加するが、増収効果で吸収し、営業利益は同17.8%増の33億円を見込む。生産性の向上と高利益率製品の拡大で営業利益率は1%上昇する。 配当は、前期に比べ中間3円/株、期末2円/株の合計5円/株増配し、40円/株の予定。4期ぶりの増配で、予想配当性向は33.5%。 <国内>
販売強化製品群として、便潜血検査試薬・装置、汎用自動分析装置用試薬「LZテスト‘栄研’シリーズ」、微生物検査用試薬(薬剤感受性検査用試薬、産業分野)、東ソー関連試薬、LAMP製品、迅速検査(POCT)等の販売拡大に取り組む。
<海外>
シェアアップと新規獲得、双方を推進する。海外売上高比率は11.8%と初めて10%台を超える。国家スクリーニングが始まったフランスが今期フル寄与となる事に加え、イングランドも今期後半の入札を見込んでおり、欧州が大きく伸長する。 便潜血検査用試薬においては、ブランド確立と販売拡大、特に前期のフランスのような国家スクリーニングの獲得を目指す。 また、尿試験紙ウロペーパー、中国における汎用自動分析装置用試薬「LZテスト ‘栄研’」シリーズの販売を促進する。 市場としては、ASEAN、インドなど新興市場への展開も進める。 FIND事業では、結核に関するWHOの推奨を見込むほか、マラリア関連製品にも注力する。今期約2億の売上を見込んでいる。 <研究開発>
下記のポイントを中心として強化する。
顧客ニーズの確実な把握と製品開発への適用
LAMP法・POCT(迅速検査)製品群の開発推進
OTC試薬(便潜血検査)の開発
既存技術のブラッシュアップによる製品改良
新規バイオマーカーや新規診断技術の探索研究推進
FIND事業(結核のWHO推奨取得)の推進
中国工場の現地生産・現地販売を進める。中国以外での工場建設は今後の検討課題と考えている。 <生産性の向上>
建物や製造設備の更新による生産能力の拡大と製造原価の低減を図るほか、売上原価率の改善や業務効率化による販管費の削減にも努める。
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和田 守史社長に聞く |
<社長就任1年を振り返って>
前任の現会長が上手くバトンを渡してくれたこともあり、海外売上の拡大等、順調なスタートが切れた。
一方、中期的成長のためのロードマップ作りを進める中で、課題の洗い出しや整理も進めることが出来た。それに基づき、今期以降設備投資を大幅に拡大する。今後の競争を勝ち抜くための基礎体力作りのために不可欠な投資だ。
<海外市場の開拓について>
前期、海外売上を大きく伸長させることができた要因はいくつかあるが、その一つが代理店との関係深化だ。
価格面のみでなく、総体的な品質や今後の戦略に関し、今まで以上に突っ込んだ議論を重ねて意思疎通を図ってきた結果、お互いの信頼関係が深まり、代理店の販売力が一段とパワーアップした。
加えて、これまでに各国関係省庁や自治体、学会などとの関係を着実に構築してきたことも前期の大幅な伸びに繋がった。
今後は、現地採用を中心に人的リソースの強化を進める。また、装置や試薬の海外メーカーとのアライアンスやより有力な代理店の開拓なども進めて行く。
欧米市場はこれまで積み重ねてきたものが花開き始めているが、まだまだ伸びる余地は大きい。また、ASEANは今後の生活水準向上により需要が拡大すると見込まれるので、長期的な視点で今から市場開拓に着手する。
海外売上高比率は今期初めて目標とする2ケタを超える見込みだが、それを踏まえ、次は30%を目標とする。簡単な数字ではないが市場ニーズに対応した新製品の開発等を進め、チャレンジする。
<活力ある会社作りのために>
当社では社内提案制度を設けて、ボトムアップで様々な意見、アイデアを汲み上げている。毎年各部署から生産性向上、環境問題、効率性アップ、顧客満足度向上など様々なテーマについて個人またはチーム単位で数多くの提案が上がってくる。
そうした中から優れた提案を「年間優秀提案賞」として表彰している。また、この他に会社の利益に大きく貢献した個人やチームを「社長表彰」や「統括部長表彰」としてクローズアップしている。
フランクにものの言い合える風通しの良さが当社の企業風土だが、今後は若い社員が自ら情報発信できるこの風土をもっと強めていきたいと考えている。
<投資家へのメッセージ>
当社は、巨大な海外市場の開拓に加え、間接部門を含めた効率性向上の余地も大きく、今期から行う積極的な投資によりさらに飛躍する可能性の高い会社であると考えている。
それを可能性に終わらせず実現に向けて全社一丸となって挑戦していく。
またその過程で、ROE、配当など数値面においても、株主に対して結果を残していく決意だ。是非当社のチャレンジを中長期の視点で応援していただきたい。
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<参考:新経営構想「EIKEN WAY・EIKEN ROAD MAP 2009」> |
【背景】
日本国内では医療費抑制を目的とする医療制度改革の継続基調は変わることなく、診療報酬の改定、製品競争・価格競争の激化により、臨床検査関連企業には、一層の経営の効率化・合理化が求められている。加えて、安全性の確保と法令遵守が更に重要な経営課題となっており、各企業間格差が一段と大きくなると考えられる。 こうした環境下、着実な成長と持続的な企業価値の向上を実現するためには長期的にEIKENグループが目指す方向性を明らかにした上で、経営資源の効率を最大化しつつ、新たな視点をもって環境変化を活かす戦略を、よりスピーディかつ大胆に進めることが必要不可欠であると同社は認識している。 そこで、同社では新経営構想として、堅実な経営を実践するためのよりどころとなる「EIKEN WAY」および長期的な目標を見据えた「勝ち残りの経営」を推進するための基本指針となる“EIKEN ROADMAP 2009”を策定した。 【概要】
1.事業ドメイン
EIKEN グループが保有する技術や強みを活かした事業領域として、『ヘルスケア』の中から「臨床検査事業」、「食品・環境検査事業」の2つを事業ドメインと定め、着実な成長と収益性向上を実現する。また、このドメインの中で次の成長を担う新規事業を創出する。
2.EIKEN ROAD MAP 2009 グランドビジョン
『2018年までに、検査のパイオニアとして人々の健康を守るため、グローバル企業“EIKEN”を実現する。』
3.EIKEN ROAD MAP 2009 行動指針
4.基本方針
5.経営目標
世界的な検査企業入りという未来のため、強固な事業基盤作りとして着実な成長と収益性の向上を目指しており、当面は海外売上高比率10%以上の達成と連結売上高営業利益率10%以上の継続達成を目標としている。
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