ブリッジレポート
(8130) 株式会社サンゲツ

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ブリッジレポート:(8130)サンゲツ vol.2

(8130:東証1部,名証1部) サンゲツ 企業HP
安田 正介 社長
安田 正介 社長

【ブリッジレポート vol.2】2015年3月期第3四半期業績レポート
取材概要「四半期ベース(10-12月)では、売上、営業利益共に前年同期を下回り、営業利益は前2015年3月期第2四半期(7-9月)も下回る結果となった。・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年2月17日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社サンゲツ
社長
安田 正介
所在地
名古屋市西区幅下1-4-1
決算期
3月末日
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 131,978 8,952 9,475 5,459
2013年3月 123,150 8,020 8,393 4,806
2012年3月 118,518 7,095 7,180 4,151
株式情報(2/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
3,120円 37,295,426株 116,361百万円 4.6% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
75.00円 2.4% 115.49円 27.0倍 3,146.70円 1.0倍
※株価は2/4終値。発行済株式数は直近期決算短信より。ROE、BPSは前期末実績。
 
株式会社サンゲツの2015年3月期第3四半期決算概要などをご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
壁紙、カーペット、カーテンなどインテリア商品の専門商社最大手。商社ではあるがデザインや機能など製品の企画・開発から手掛ける「ファブレス企業」。安定した業績を生み出すビジネスモデル、主要商品の高いシェア等が強み。中期経営計画において資本コストを上回るROEの早期実現を掲げる。
 
【沿革】
1849年(嘉永2年)、表具(布や紙などを張って仕立てられた巻物、掛軸、屏風、襖、衝立、額、画帖など)を商う「山月堂」創業。1953年、創業家により株式会社サンゲツとして株式会社化。1970年代後半以降、東京、福岡、大阪を始め全国で事業展開。1980年、名古屋証券取引所市場第2部に上場。1996年、東京証券取引所市場第1部上場。海外にも進出し、トータルインテリアを供給するブランドメーカーとしての地位を確立する。
2014年4月、安田正介氏が初めて創業家メンバー以外から代表取締役社長に就任。第1期(創業)、第2期(株式会社化)に次ぐ、第3期(第3の創業)として位置づけ、新たなステージに臨む。
 
【会社理念など】
社是「誠実」を掲げ、以下の「サンゲツ三則」をモットーに、インテリアを通じて社会に貢献し、豊かな生活文化の創造に寄与する事を理念としている。
 
 
【市場環境】
◎概観
同社の主力商品である壁紙や床材の出荷状況は国内建設市場の動向に影響される。人口減少や家族構成の変化による新設住宅着工戸数の減少やデフレ経済における販売の低下で国内インテリア市場は下のグラフの様に、縮小傾向にある。
 
 
一方、下のグラフは、同社売上高、国内インテリア市場、新設住宅着工戸数(国土交通省発表)の推移を比較したもの。
同社の売上高及び国内インテリア市場の動向は、新設住宅着工戸数にほぼリンクしてきたが、リーマンショック後の動きを見ると、市場全体及び新設住宅着工件数はリーマンショック前の水準にまで達していないのに対し、同社売上高は2000年頃の水準にまで回復している。
 
 
これは、民間住宅以外に、非住宅市場の開拓に注力してきたことによるものである。
 
 
国土交通省発表の建設投資の推移によれば、民間住宅投資に比べ、民間非住宅建築投資は、金額は民間住宅投資よりも低いものの、2000年レベル近辺まで上昇している。また、新設の事務所および店舗の床面積も15,000千m2に近づくところまで回復している。
また、一般財団法人 建設経済研究所が発表した「建設経済モデルによる建設投資の見通し」(2014年10月22日発表)によれば、民間非住宅建築投資の対前年度伸び率は2013年度の11.1%増(見込み)に次ぎ、2014年度(見通し)7.6%増、2015年度(見通し)2.4%増と、緩やかな回復傾向が続くと予想されている。

少子高齢化・人口減少の進行で住宅着工戸数は長期的には減少傾向にあり厳しい状況であろうが、2020年の東京オリンピックを控え、民間非住宅市場の開拓に関しては良好な市場環境が当面は続くものと考えられる。
 
◎同業他社
インテリア、内装材を扱う主な同業他社としては以下の3社が上げられる。
 
 
前回レポート時点と比較し、同社のみが時価総額を増大させたが、PBRは依然として低水準にとどまっており、中期経営計画で示したROE改善策が鍵を握っている。
 
【事業内容】
壁紙、床材、カーテン、椅子生地などインテリア商品の企画開発及び販売が中心事業。生産設備を持たない「ファブレス経営」が特色だが、単なる商社ではなく、扱う商品はすべて自社で企画・デザイン・開発を行っている。子会社を通じてエクステリア事業、照明事業も展開している。
 
 
①「インテリア事業」
(2014年3月期 売上高 113,181百万円、営業利益 8,842百万円)
 
商品数は約13,000点と他に類を見ない多彩なラインアップを誇っている。
主力の壁紙で商品数は約5,000点。2年毎に見本帳の更新を行っているが(カーテンは3年毎)、旧い商品を見品帳から外し、新しい商品に入れ替える所謂「改廃率」は壁紙で50~55%程度だが、同業他社では35~40%以下という事だ。商品を入れ替えるのは、容易ではない。廃止されたデザインの商品は破棄しなければならないため無駄が発生してしまうが、見本帳の鮮度もユーザー満足度を高める重要な要素であり、効率と鮮度のバランスを取ることができるのは、同社の体力や長年に亘るノウハウの蓄積によるものだろう。
 
◎営業体制
名古屋の本社の他、全国に8か所の支社、55か所の支店・営業所・事務所を持ち、重要な営業拠点として6か所のショールームを有している。
 
 
最終的に商品を納入し、売上を立て、代金が入金されるのは上図右の川下の内装仕上げ段階で、主な相手先は代理店を通じた内装工事業者やインテリアショップ、建材店となるが、その前工程での商品PRも重要だ。
住宅やビルが竣工するまでには、発注者(施主)、設計事務所、デザイン事務所、ゼネコン、サブコン、ハウスメーカーなど、数多くのプレーヤーがかかわっており、インテリアをデザインや機能から最終的に選択する意思決定は川上から始まっているケースも多数ある。

そのため、同社では見本帳、TVCM、ショールームなど様々な機会を通じて商品のPRを行っている。もちろん「待ち」のみでなく、法人営業部(全国的に法人顧客をカバー)をはじめとした全国の営業員約400名が、各担当先に足を運び情報提供・収集、提案を行っている。

主として代理店を経由した販売スタイルをとっているが(名古屋を中心とした中部地域の一部では直接販売)、顧客数は中部地域だけで約6,000社。代理店を通しているので正確な数字は把握できていないが、全国の顧客数は数万社にのぼる。
 
◎物流体制
全国13か所に物流センターを含めた物流施設を保有している。
東・名・阪・九州はほぼ全商品が常に在庫されており、出荷点数は一日6万点に上るが、欠品率は1日平均で約0.13%(約70点程度)となっている。
内装の工期に合わせた「Just in Time」を全国物流ネットワークによって実現している。
仕入先は約100社と広範囲に亘っている。
 
②「エクステリア事業」
(2014年3月期 売上高 15,018百万円、営業利益 556百万円)
2005年に子会社化した株式会社サングリーンが門扉、フェンス、テラスなどのエクステリア商品を国内で販売している。
 
③「照明事業」
(2014年3月期 売上高 3,820百万円、営業損失 435百万円)
2008年に子会社化した山田照明株式会社がダウンライト、Zライトなどの一般照明器具を国内外で販売している。
 
 
2014年3月期のROEは4.6%と東証1部および卸売業界の平均を大きく下回った水準にとどまっている。
後述のように中期経営計画に基づく資本政策を発表し、「資本コストを上回るROEの早期実現と、中長期的にはより高いROE水準(8~10%)の達成を目指す。」と述べている。
具体的には、「2014年度下期より最短3年間、最長5年間で自己資本の金額を2014年3月末比で100億円~200億円の圧縮を目指す。」ということであるが、2017~2019年度の目標としているROE 8~10%を達成するためには、資本政策の実施と同時に、売上高当期純利益率の一段の向上も必要となるだろう。
 
 
特徴と強み
 
①安定した収益を生み出すビジネスモデル
同社は製造部門を持たない「ファブレス経営」の先駆けとも言うべき存在で、製造部門を持たないため固定費負担が小さい。
また、商品数13,000点、仕入先100社以上、顧客数万件と、多くの面で分散が効いており、建設市場動向に連動する景気敏感型企業でありながら業績変動は決して大きくなく、設立以来赤字決算を行ったことが無い。
 
②各種商品で高いシェア
業界最大手の同社は主力商品で以下の様な高いシェアを有している。
 
 
③「創る」・「提案する」・「届ける」
「創る」
同社は商品の製造を行ってはいないが企画・デザイン・開発は自社で行っている。
先々代の社長時代からサンゲツ三則にある「創造的デザイン」に力を入れており、積極的な投資を行っている。
同社で様々なデザインをベースに約20名の企画担当者が、デザインを練り上げ、同社オリジナルデザインを開発している。担当者育成は海外の展示会への参加、営業の意見のヒアリング、デザイン顧問とのディスカッションなど、OJTで行っている。若い感覚をより積極的に採用していく方針だ。
商品ラインアップは他社には例を見ない約13,000点。また2~3年ごとに定期的に改訂する28種類の見本帳も他社にはない同社の大きな特徴。
 
 
「届ける」
先述の様に、商品の全点常備在庫を行い、内装工期に合わせて「Just in Time」を実現する全国の物流ネットワークを有するのは同社の強みである。
ただ、全点在庫は一方で過剰在庫や低効率につながりかねず、同社の様な注文に応じて正確に加工して出荷する加工物流において、ロス率を上げない正確な加工技術とスピードが重要な要素となる。
1ロール50mの壁紙があり、30mの注文があった場合、同社の場合は正確に30mでカットして出荷し、加工後残った素材は次の注文に合わせ効率的にカットし、なるべく無駄が出ないように加工する。こうした加工技術は同社が長年蓄積してきた貴重なノウハウによるものである。
 
 
「提案する」
同社の営業スタッフ数は全従業員数のおよそ3分の1に当たる約400名で、業界最大である。
全国63拠点で前述のような、提案営業を展開している。
6か所のショールームには64名のショールームスタッフが在籍。また、各商品を組み合わせた室内空間を顧客にイメージしてもらうためのデザインボードを作成するインテリアデザインスタッフが51名おり、その提案力も業界最高水準となっている。
 
 
 
2015年3月期第3四半期決算概要
 
 
営業強化で増収も販管費増で減益。
売上高は前年同期比1.8%増の968.4億円。新見本帳の発行、設計・施主へのきめ細かい営業強化、リフォーム・非住宅分野での新商品開発などにより増収だった。
粗利率が同0.3%改善したものの、運送費の値上がり、人材強化のための人件費増加のほか、事業施設整備に伴う設備修繕費など政策的コストを計上し、販管費が増加したため吸収しきれず、営業利益は同7.7%減の61.0億円。社員寮などの保有不動産売却を前提とした減損損失10.0億円を計上したこと等から四半期純利益は同22.2%減の33.5億円となった。
 
 
 
<壁装材>
収益性改善に向け、4月に発刊した見本帳「リザーブ」を中心に、低価格の量産品より中級価格帯の一般品への転換促進を提案したほか、10月には硬質塩ビタックシート「リアテック」の新見本帳を発刊し、非住宅分野への販売強化に努めた。新設住宅着工戸数の落ち込みなどで数量が減少する中、原材料費などの高騰により利益率も低下傾向にあったが、6月に実施した卸価格の値上げにより利益率は改善傾向にある。

<床材>
9月に発売した各種施設用床材の見本帳「S-FLOOR」が非住宅分野で好評だったほか、フロアタイルも既存の非住宅市場だけでなく、住宅市場の賃貸物件への拡大を図り、売上を拡大させた。また、オフィスビルや商業施設等に使用されるカーペットタイルも引き続き好調だった。

<カーテン>
上半期は、主力見本帳「Mine」、住宅向け見本帳「Wish」の伸長により堅調に推移してきたが、第3四半期に入り非住宅、コントラクト分野で苦戦し増収率は第2四半期累計に比べ低下した。11月には新見本帳「ソレイユ」を発刊し、全国でカーテントレンドセミナーを開催するなど、早期浸透に努めた。
 
②エクステリア事業
主力メーカーの販売促進キャンペーンなど積極的な営業活動を実施し、特に関東地区での新規顧客開拓、販売強化に努めたが、厳しい状況が続いた。
 
③照明事業
株式会社サンゲツと医療、ホテル物件の情報共有を推進するなど非住宅分野への営業強化を図り、付加価値を持つ商品の販売拡大による売上総利益率の向上に注力したほか、また、経営ガバナンスの改善と社員のモチベーション向上策を継続的に実施した。
 
 
現預金、有価証券、たな卸資産の増加などで流動資産は前期末に比べ56億円増加した。一方、投資有価証券の減少で投資その他の資産が同89億円減少し、固定資産は同95億円減少。資産合計は同39億円減少して1,419億60百万円となった。
仕入債務の減少等で、流動負債が同38億円減少して、負債合計も同32億円減少し、228億12百万円となった。
純資産は利益剰余金の減少等で同7億円減章し、1,191億48百万円。
自己資本比率は前期末に比べ1.7%上昇の83.9%となった。
 
 
2015年3月期業績見通し
 
 
業績予想に変更無し。増収・減益を見込む
通期業績予想に変更は無い。売上高は前期比0.8%増の1,330億円を予想。消費税増税の駆け込み需要の反動で今下期は減収となるが通期では若干の増収を見込んでいる。事業基盤整備施策に基づく事務所や物流設備の改善のための本格的な費用や、中期経営計画に基づく種々のコンサルフィーや新見本帳発刊に伴うコストなど販管費を積み増すため営業利益、経常利益、当期純利益はそれぞれ同18.5%、18.7%、19.4%減少する。
配当は前期と同じく75.00円/株の予定。予想配当性向は64.9%。
 
 
各セグメントとも売上高は前期実績を上回る。インテリア事業では、顧客・需要分野・商品に応じ、よりきめ細かな営業手法や商品開発を行い、収益の改善、シェアの維持を図る。山田照明の安定・継続的な収益基盤の確立、サングリーンの関東地区での事業拡大を着実に実行する。
 
 
今後の注目点
四半期ベース(10-12月)では、売上、営業利益共に前年同期を下回り、営業利益は前2015年3月期第2四半期(7-9月)も下回る結果となった。
ただ、下のグラフにあるように、第3四半期までの進捗率を過去実績と比べると売上高はほぼ例年並みだが、営業利益は過去を上回る数字となっており、通期業績は上積みの可能性も大きいと言えるだろう。
5月の決算発表時には、「中期経営計画 Next Stage Plan G」の1年目の振り返り、進捗にも注目したい。
 
 
 
 
 
<参考:中期経営計画 Next Stage Plan G>
 
2014年を「第3の創業」と位置付け、新しいステージに立つ同社の今後のビジョンや方向性を示すため、「中期経営計画(2014-2016) Next Stage Plan G」を策定した。
同計画の目標を、「事業体制の再整備と強化を進め、将来の成長のための仕込みを行い、サンゲツの次のステージを切り拓く3年間」としている。
 
 
 
これに加え、「4)創業以来の理念・社是・考えの継承」の4つを具体的な施策として掲げ進めて行く。
 
 
 
3)ステークホルダーの評価向上
これまで同社は、継続的な企業価値向上が株主への利益貢献の基本であるとの認識のもと、安定的な配当を継続的に実施してきた。(過去5年間合計の配当性向実績は70%を超えている。)
また、売上高、収益性などを重視し、バランスシートについては安全性を優先した経営を行ってきた。
しかし、昨今の国内資本市場の流れを鑑み、今後は安全性と収益の拡大に加え、バランスシートの効率化や資本コストを意識した経営への転換が必要と認識しており、以下のような資本政策を実施することを2014年11月7日に発表した。
 
 
中期的成長のための投資はもちろん必要で、また景気変動に対応した体力を温存しておく必要もあるが、ここ数年内で大規模なM&A等、大型投資を行う可能性は低いと考えている。また、規模の拡大や収益性を高めるために現在のファブレス経営から「製造部門」の保有へ転換する事も長期的にはあり得るが、その場合でも、ここ数年間はマイノリティ出資やパートナーシップ強化など、実力を蓄える時期であり、その意味でも多額の手元資金は不要であるため、株主への還元を積極化する事とした。
ただ、株価のボラティリティを上げることは同社にとっても株主にとっても利益が無いので、一時的ではなく「継続的な株主還元」が重要であるとの考えから期間を最短3年間、最長5年間と設定した。
 
将来の成長のための基盤整備に先行投資を行いつつ、史上最高益の更新を目指す。
 
 
インテリアは、既存事業においてリニューアルや大規模改修、病院や介護関連施設への注力を進めると共に、高付加価値商品へのシフトやカーテン事業の売上回復を見込んでいる。
新規事業や海外事業は仕込みの時期であるため、販管費のみを見込んでいる。
エクステリア事業は限定的な拡大を前提としており、照明事業は安定的な事業基盤の確立を優先するステージであり、収益の拡大は見込んでいない。

◎2017~2019年度 目標
この中期経営計画をベースに、次の中期経営計画の最終2020年3月期には、「新規事業・海外事業・連結会社での本格的な収益の実現」、「インテリア事業収益の着実な拡大」、「新たな資本政策の導入」により、「ROE 8~10%の達成」を目標としている。