ブリッジレポート
(6050) イー・ガーディアン株式会社

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ブリッジレポート:(6050)イー・ガーディアン vol.16

(6050:東証マザーズ) イー・ガーディアン 企業HP
高谷 康久 社長
高谷 康久 社長

【ブリッジレポート vol.16】2015年9月期第1四半期業績レポート
取材概要「一部大口顧客との取引減少の影響がほぼ一巡し、実力通りの売上の伸びを確認できるようになった。コミュニティサイトを含むインターネットメディア・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年2月10日掲載
企業基本情報
企業名
イー・ガーディアン株式会社
社長
高谷 康久
所在地
東京都港区麻布十番1-2-3
決算期
9月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年9月 2,487 188 228 129
2012年9月 2,232 83 110 51
2011年9月 1,907 176 161 88
2010年9月 1,340 204 212 119
2009年9月 858 123 123 116
2008年9月 461 0 0 -5
2007年9月 362 15 15 -6
2006年9月 606 -9 -17 0
2005年9月 684 6 3 -133
2005年3月 1,425 79 77 43
株式情報(2/4現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,640円 1,613,853株 2,647百万円 12.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 88.61円 18.5倍 689.43円 2.4倍
※株価は2/4終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
イー・ガーディアンの2015年9月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソーシャルWebサービス(SNSやブログ等のソーシャルメディアや、ソーシャルゲーム、ソーシャルコマース等の双方向のコミュニケーションが介在する全てのインターネットメディア)の健全な運営や活性化に寄与するべく、メディアの監視やカスタマーサービス、更には広告審査業務や広告枠管理等のアド・プロセスサービスを提供している。
実際のサービスは、厳格に設定された基準の下、厳選されたオペレーターによる高品質な目視による監視と投稿監視システム「E-Trident」等を駆使したシステムによる監視のハイブリッドで提供されており、社会通念上不適切と考えられるコメントや犯罪を誘引するようなコメントに目を光らせている。また、24時間365日の稼働を強みとする監視センターは、同社が運営する東京(2拠点)、大阪、宮崎の3都市4拠点と、2012年6月に子会社化したイーオペ株式会社(宮城県仙台市)が運営する宮城の2拠点。

グループは、同社の他、ローコストオペレーションを強みとし低単価案件の収益化能力に優れるイーオペ(株)、14年9月に100%子会社化した人財紹介・派遣サービスの(株)パワーブレイン、及び、社内業務の独立により14年10月に設立したデバッグ業務等を手掛けるトラネル(株)の4社。
 
 
【事業区分と成長戦略】
事業は、ソーシャルサポート、ゲームサポート、アド・プロセスの3業務に区分され、いずれも件数に応じた課金体系を採用しており(一部サービスを除く)、高品質なサービスをリーズナブルな価格で提供している。
 
ソーシャルサポート 14/9期売上高12億83百万円(売上構成比52%)
ソーシャルネットワークサービス(SNS)等のソーシャルメディアに対して、投稿監視やCS(ヘルプデスク等)に加え、多言語対応、運用、分析等の関連サービスを提供。人による目視監視(ヒューマンリソース)と、投稿監視システム「E-Trident」や自動識別型画像フィルタリングシステム「ROKA SOLUTION」(14/9期第4四半期にリリース)といったITシステムの活用によりサービス価値の最大化と幅広いニーズの取り込みを図っている。
 
自動識別型画像フィルタリングシステム「ROKA SOLUTION」
既にサービスを提供している投稿監視システム「E-Trident」は言語の監視を行うシステムだが、近年、動画や静止画のWebでの利用が一般化しており、これらの投稿に対する監視の必要性が高まっている(言い換えると、動画・画像解析によるフィルタリングシステムのニーズが増えている)。
14/9期第4四半期(7-9月)にリリースした自動識別型画像フィルタリングシステムは、こうしたニーズに対応したもので、東京大学原田研究室との共同開発の成果である。同研究室の画像認識技術、アノテーション技術(※)、及び追加学習機能と、国内NO.1の監視ノウハウを有する同社の大量かつ正確な教師データ(※)を融合する事で低コストかつ高品質なシステムを実現した。このシステムをベースにビッグデータ解析や児童ポルノ取り締まり等、サイト毎に最適なフィルタリングシステムを構築する事ができる(将来的には、ウェアラブルデバイスのツール、グーグルグラスのコンテンツ技術、更には自動運転の技術への応用も期待されている)。
 
※ アノテーション技術とは、データに注釈となる情報をメタデータとして追加する技術
※ 教師データとは、機械学習の仕組みを構築する際の初期学習のデータの事。(いずれも同社資料より)
 
拡大するニーズの取り込みで事業拡大を図る
ソーシャルネットワークサービスは利用者の増加が続いており、利用率も上昇傾向にある。同社は、こうした成長市場への対応はもちろん、強みであるITシステムの活用も含め、市場の変化に対応した各種サービスの提供や海外展開にも取り組む事で事業を拡大させていく考え。
 
 
ゲームサポート 14/9期売上高8億87百万円(売上構成比36%)
ソーシャルゲームの運営に不可欠な監視、CS、アクティブサポートに加え、多言語対応等のサービスも提供している。10%を超える市場の成長力を取り込むと共に、優良新規プレイヤーの獲得と既存プレイヤーの深耕によるシェアアップ、更には新たなサービスの育成による多様化するニーズの取り込みで事業を拡大させていく考え。足元、新規プレイヤーの獲得と既存プレイヤーの深耕が順調に進んでおり、新たなサービスの育成では、14年10月1日付けで戦略子会社トラネル(株)を設立した。トラネル(株)はイー・ガーディアン(株)のデバッグ(プログラムの「バグ」と呼ばれる「誤り」を探し、取り除く事)部門を独立させたもので、かねてからユーザーニーズが強かったデバッグ業務を本格化させる。また、将来的には、資本業務提携先である日本マルチメディアサービス(株)とのシナジーを活かして、遊戯機器系のデバッグ業務にも展開していく考え。
 
 
日本マルチメディアサービス(株)との資本業務提携
セガサミーホールディングス(株)傘下で10年を超える大規模コールセンター運営の実績を有する日本マルチメディアサービス(株)千葉県浦安市)と14年5月に業務提携した。Web投稿監視やCSサポート業務の経験と国内6拠点で24時間365日稼働する監視センターを有するイー・ガーディアン(株)と日本マルチメディアサービス(株)のインフラとノウハウを融合して相互活用する事で多様化・複雑化しているソーシャルアプリケーションやオンラインコールセンター等の顧客対応業務のサービス品質の向上とコスト低減を図っていく。この業務提携を促進するために、日本マルチメディアサービス(株)は、イー・ガーディアンの発行済普通株式の3%程度を市場買付等により取得した。
 
資本業務提携のポイント
 ・新規顧客開拓や既存顧客での販路拡大
 ・両社が保有するコールセンター及び監視センターのインフラ相互活用によるコスト低減
 
アド・プロセス 14/9期売上高2億99百万円(売上構成比12%)
広告審査業務、広告枠管理、入稿管理、及び広告ライティング等のサービスを手掛けており、広告入稿管理業務を円滑に実施するためのシステム開発とのセット販売等で競合他社との差別化に成功している。また、ネット広告市場の成長に合わせた新商材の開発や顧客へ常駐し業務を実施する常駐型案件の獲得にも注力している。
 
 
人財事業の育成
上記の他、14年9月に子会社化した(株)パワーブレイン(東京都千代田区)を核に人財事業を育成していく。(株)パワーブレインは、イー・ガーディアンに代わり人財を採用・育成し、顧客先常駐(派遣型)ニーズに応える事で事業を拡大させていく。
 
【優れた財務体質と上場企業の平均を大きく上回るROE】
(1)財政状態
投稿監視におけるパイオニアとしての実績や、投稿監視システム「E-Trident」及び自動識別型画像フィルタリングシステム「ROKA SOLUTION」によるIT化での差別化に加え、流動性に富み、かつ長期的な安定性にも優れた財務体質も同社の強みの一つである。短期的な支払い能力を示す流動比率は368%、長期的な財務の安全性を示す固定比率は21%、自己資本比率は77.1%。また、調達した資金でどれだけ効率的に利益を稼いだかを示す投下資本利益率は18.2%。
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、14年8月15日現在の東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の13年度のROEは、金融を除く全産業8.58%(前期は5.30%)、製造業8.47%(同4.78%)、非製造業8.74%(同6.04%)。6ヶ月のタイムラグはあるものの、同社は13/9期、14/9期と東証上場企業の平均を上回る高いROEを実現している。

デバッグ・検証とネット監視を手掛けるポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス(3657)との比較では売上当期純利益率の差が大きい。ネット監視は互角以上だが、デバッグ・検証とのシナジーで差を付けられており、企業規模や利益水準の差にもなっている。システム化・自動化で先行する監視業務はもちろん、子会社を設立して強化するデバッグ業務の今後の展開にも期待したい。
 
 
 
2015年9月期第1四半期決算
 
 
前年同期比13.8%の増収、同3.7%の営業増益
売上高は前年同期比13.8%増の6億96百万円。既存顧客との関係強化やコンシューマー向けゲーム大手からの新規案件獲得でゲームサポートの売上が同9.7%増加した他、ソーシャルサポートも、監視・CSだけではなく運用や分析といった多種多様な新サービスや自動識別型画像フィルタリングシステム「ROKA SOLUTION」による高付加価値サービスの提供による新規顧客の開拓と既存顧客の深耕、更には競合からのスイッチングが進み、売上が同5.7%増加。この他、新規受注の増加等でアド・プロセスの売上が同20.7%増加した他、昨年9月に子会社化した(株)パワーブレインが手掛ける人材派遣業務(顧客先常駐ニーズへの対応)の売上28百万円を計上した。

利益面では、売上の増加と宮崎センターへの業務移管効果が相まって原価率が69.7%と0.3ポイント改善。前期第4四半期に連結子会社化した(株)パワーブレイン(14/5期は14百万円の営業損失)や期初に社内のデバッグ業務を分離して設立したトラネル(株)の体制整備に伴い販管費が同20.5%増加したものの、売上総利益の増加で吸収して営業利益が64百万円と同3.7%増加した。四半期純利益が同30.3%減の34百万円にとどまったのは、補助金収入の計上なかった事による営業外収益の減少と税負担や法人税等調整額の増加による。
 
 
 
 
第1四半期末の総資産は前期末に比べて22百万円増の14億46百万円。同社は流動性に富み、かつ強固な財務基盤を有しており、短期的な支払い能力を示す流動比率は370.5%(前期末368.0%)、長期的な財務の安定性を示す固定比率は20.9%(同21.3%)、自己資本比率は76.9%(同77.1%)。
 
 
2015年9月期業績予想
 
 
上期業績予想を上方修正、前年同期比12.7%の増収、同4.7%の営業増益を見込む
第1四半期は、ソーシャルサポートやゲームサポートが順調に伸びる中、アド・プロセスの新規受注の増加が予想を上回った他、宮崎センターへの業務移管を加速させた事で原価率の改善が想定以上に進んだ。上期予想はこれを踏まえたもの。
引き続き一部大口顧客向けの売上減少が見込まれるものの、その影響は前期に比べて大きく低下するため、新規顧客開拓と既存顧客深耕の効果等が売上の伸びに反映されてくる。子会社の体制整備等で営業費用が増加するものの、売上の増加と原価率の改善で吸収。営業利益が1億01百万円と同4.7%増加する見込み。
 
 
前期比13.7%の増収、同6.1%の経常増益予想
通期業績については期初予想を据え置いたが、同社グループの関連市場である掲示板やブログ・SNS等のコミュニティサイトを含むインターネットメディアは引き続き市場の成長が予想され、同社の下期の業績も堅調な推移が見込まれる。
 
配当は未定
同社は、企業価値を継続的に拡大し、株主への利益還元を行う事を重要な経営課題として認識している。また、利益配分については、「企業価値の継続的な拡大を念頭に株主への利益還元と内部留保充実のバランスを総合的に判断し、業績と市場動向に応じて、継続的かつ安定的に実施していく」としている。現状では今期の配当は未定だが、財政状態及び経営成績、設備投資計画等を勘案しつつ前向きに検討していくものと思われる。尚、1株当たり配当金の実績は、13/9期が10円、14/9期が12円。
 
 
今後の注目点
一部大口顧客との取引減少の影響がほぼ一巡し、実力通りの売上の伸びを確認できるようになった。コミュニティサイトを含むインターネットメディアの成長が続く中、投稿監視システム「E-Trident」や自動識別型画像フィルタリングシステム「ROKA SOLUTION」による差別化戦略の奏功もあり、ソーシャルサポートやゲームサポートが順調に売上を伸ばしており、相乗効果でアド・プロセスの受注活動が軌道に乗りつつあるようだ。顧客先常駐(派遣型)ニーズへの対応やデバッグ業務が軌道化すれば、同社グループのポテンシャルは一段と高まろう。中期的には、顧客のグローバル展開ヘの対応や日本マルチメディアサービス(株)との連携による遊戯機器分野への展開にも期待したい。