ブリッジレポート
(2157) 株式会社コシダカホールディングス

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ブリッジレポート:(2157)コシダカホールディングス vol.18

(2157:JASDAQ) コシダカホールディングス 企業HP
腰髙 博 社長
腰髙 博 社長

【ブリッジレポート vol.18】2015年8月期第1四半期業績レポート
取材概要「第1四半期は、カラオケ事業において、先行投資負担の増加につながる新規出店店舗数が増加したにもかかわらず、損失が減少しており、カーブス事業・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年2月3日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社コシダカホールディングス
社長
腰髙 博
所在地
東京都港区浜松町2-4-1 世界貿易センタービルディング
決算期
8月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年8月 34,515 4,151 4,237 3,072
2012年8月 33,746 4,077 4,096 2,279
2011年8月 29,093 3,356 3,336 2,877
2010年8月 21,932 2,503 2,579 1,125
2009年8月 18,955 1,496 1,427 549
2008年8月 13,649 691 731 421
2007年8月 11,332 535 561 134
2006年8月 8,878 552 560 319
2005年8月 6,360 403 400 233
2004年8月 3,552 340 337 192
2003年8月 2,037 104 99 57
株式情報(1/15現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
2,019円 18,954,640株 38,269百万円 20.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
30.00円 1.5% 138.95円 14.5倍 663.39円 3.0倍
※株価は1/15終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
コシダカホールディングスの2015年8月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
“総合余暇サービス提供企業”を標榜し、「アミューズメント」、「スポーツ・フィットネス」、「観光・行楽」、「趣味・教養」の4分野で「既存業種新業態」戦略を推進。安定成長を続けるカラオケ事業と高い成長を続けるフィットネス(カーブス)事業を二本柱に、上場以来、増収・増益を続けており、新規事業として温浴事業を育成中である。尚、「既存業種新業態」戦略とは、既に社会に存在し誰もが知っている業種において、視点や取り組み方を変え、従来と異なる新たな顧客層をターゲットとする事で全く新しいサービスや運営手法を生み出し、独自のビジネスモデルを確立していく事業手法。
 
【事業セグメントとグループ】
事業は、「カラオケ本舗まねきねこ」(郊外中心)やひとりカラオケ専門店「ワンカラ」(都心や地方都市の繁華街で展開)を運営するカラオケ事業、“女性専用30分健康体操教室”として中高年齢層をターゲットに女性専用フィットネスクラブ「Curves(カーブス)」を展開するカーブス事業、新規事業として育成中の温浴事業(各種温浴設備を備えた施設の運営。「居抜き出店方式」のノウハウを活用し店舗展開)、及び不動産管理事業等のその他に分かれる。14/8期の売上構成比は、カラオケ事業52.6%、カーブス事業42.5%、温浴事業4.1%、その他0.8%。利益構成比は、カラオケ事業33.2%、カーブス事業69.0%、温浴事業 △5.0%、その他2.8%。

尚、「カラオケ白書2014」によると、2013年度(13年4月1日~14年3月31日)の国内カラオケ市場は3,957億円(12年度3,912億円)。09年以降、概ね3,800億円~3,900億円で推移している。また、新聞報道等によると、フィットネスクラブの市場規模は4,100億円程度で、ここ数年は横ばいの状態が続いているという。
 
 
※ 14年9月1日付けで(株)北海道コシダカが、経営効率の向上と更なるサービス強化を目的に、首都圏中心に関東でカーブス25店舗を直営展開していた(株)シュクランを吸収合併し、(株)ハイ・スタンダードに商号を変更した。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、14年8月15日現在の東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の13年度のROEは、金融を除く全産業8.58%(前期は5.30%)、製造業8.47%(同4.78%)、非製造業8.74%(同6.04%)。同社は、薄利多売による売上の拡大ではなく、高い利益率を維持した上で高い総資産回転率を実現する事で上場企業の平均を大きく上回るROEを実現している。また、カラオケ事業やフィットネス事業を手掛ける上場企業との比較でも、ROEの高さは群を抜いている。カラオケ事業における同社の強みは“居抜き方式を中心にした出店とローコストながらユーザー満足度の高い店舗運営”であり、カーブス事業における同社の強みは“手軽に何歳までも長く続けられるように開発された1回わずか30分のカーブスプログラムとコミュニティ機能重視の店舗運営”。こうした強みが高いROEを実現する原動力となっている。

過去5年間の推移をみてみると、先行投資による資産効率の低下とレバレッジの低下でROEが低下傾向にある(11/8期のROEが特に高いのは特別利益の計上が要因)。この間のROEを、売上高当期純利益率、総資産回転率、及びレバレッジの3要素に分解すると、売上高当期純利益率は特別利益の計上で振れが大きいが、営業利益率は11~12%で安定している。総資産回転率の低下は、ボウリング事業(13/8期に子会社を売却)・温浴事業といった新規事業の育成やカラオケ事業の海外展開に加え、14/8期に着手した国内カラオケ事業の構造改革が要因。国内カラオケ事業では、競争力の強化を念頭に、店舗のスクラップ&ビルドや改装を加速すると共にオリジナルのカラオケボックス用新システム「すきっと」の導入及び増設を進めている(既存店への導入は14/8期で一巡し、15/8期以降は新店への導入と既存店での増設)。レバレッジの低下は、カーブス事業の買収に伴い増加した有利子負債の削減が進む一方、株主資本が充実したため。14/8期末は積極投資で有利子負債が増加したが、15/8期以降は削減に取り組む考えだ。

14/8期に14.7%だった配当性向が15/8期は21.3%に上昇する見込みだが、自己資本の充実がROE低下の要因の一つと考えられる事や毎期40億円以上の安定した営業CFを確保できている事等を考えると、株主還元のみならず、ROE改善の観点からも、配当性向の引き上げを検討する余地はあるかも知れない。
 
 
上記の他、カラオケ事業を手掛けるシダックス(4837)の14/3期は2.08%(13/3期は11.67%)、フィットネス事業を手掛けるセントラルスポーツ(4801)の14/3期は7.86(同8.91%)。
 
 
2015年8月期第1四半期決算
 
 
前年同期比23.3%の増収、同67.1%の経常増益
売上高は前年同期比23.3%増の99億59百万円。積極的な新規出店と前期に新規出店した店舗の寄与でカラオケ事業の売上が同25.9%増加した他、店舗数の増加と既存店の会員獲得による会員数の増加に加え、プロテイン等の会員向け物販も伸びたカーブス事業の売上が同22.3%増加した。

利益面では、カラオケ事業において、先行投資負担が発生する新規出店が増加したものの、前期に新規出店した店舗(前期通期で6店舗増の33店舗)が収益化してきた事に加え、収益性の高いカーブス事業の利益率も一段と改善し、売上総利益率が23.3%と0.2ポイント改善。販管費の伸びを抑えて営業利益が7億65百万円と同69.8%増加した。固定資産除却損、減損損失、店舗閉鎖損失の増加で特別損失が増加したものの、四半期純利益も3億16百万円と同25.7%増加した。
 
 
カラオケ事業
売上高51億71百万円(前年同期比25.9%増)、セグメント損失1億31百万円(前年同期は2億33百万円の損失)。第1四半期末の国内店舗数は、前期末に比べて9店舗増の375店舗(前年同期末346店舗)。11店舗の新規出店(前年同期8店舗)を行う一方、2店舗を閉店(前年同期に閉店した店舗はなかった)した他、12店舗でリニューアルを実施した(同16店舗)。積極的な新規出店に加え、前期に新規出店した店舗の売上・利益両面での寄与もあり、売上が大きく伸び、損失が減少した(第1四半期の損益は新規出店の店舗数の影響を受ける)。

同社は「顧客獲得競争が一層激しくなりつつある中、店舗網の拡充により積極的に顧客を獲得していく事、そして新しい楽しみ方と新しいサービスを考案し提供していく事により市場の活性化を促す事が重要」と考えており、この一環として、「カラオケ本舗まねきねこ」を中心にした積極的な店舗展開と「すきっと会員」及びワンカラの「シンガーズクラブ会員」の拡大による顧客の固定客化に取り組んでいる。自社開発のカラオケコマンダー「すきっと」においては、搭載する各種アプリのラインナップの充実に努めると共に、カラオケルームにおける楽しみ方の幅を広げるべくコンテンツホルダーとのコラボレーション強化等に取り組んでいる。
 
カーブス事業
売上高43億59百万円(前年同期比22.3%増)、セグメント利益10億99百万円(同34.7%増)。第1四半期末の国内カーブス店舗数は前期末に比べて43店舗増(同2.9%増)の1,518店舗(内グループ直営店50店舗)、会員数は同30千人増(同4.5%増)の671千人。店舗数の増加と既存店舗の会員獲得による会員数の増加に加え、プロテイン等の会員向け物販も伸び、売上が大幅に増加し利益率が一段と改善した。

同社は「一人一人が正しい運動方法を身につけてそれを習慣として継続できる事、そしてそのような仲間を既存の会員と一緒になって着実に増やしていく活動に取り組む事で、急速に進展する高齢化社会において、未病率の改善や健康寿命の延伸に少しでも貢献できれば」と考えている。この考えの下、より顧客視点に立った通いやすい店舗網の構築と、所属する会員の成果実感が溢れ、それを喜び合えるようなコミュニティに各店舗を創り上げていく事を目指して、本部と加盟店が一体となって事業に取り組んでいる。
 
温浴事業
売上高3億49百万円(前年同期比0.3%減)、セグメント損失73百万円(前年同期は78百万円の損失)。カラオケ事業で培った店舗営業力(接客サービス力)の発揮と、更なる省エネ化の実現により、収益性の改善と業容の拡大に努めており、通期では利益を確保できる見込み。

上記の他、不動産管理事業が、売上高78百万円(前年同期比35.4%増)、セグメント利益30百万円(同26.1%増)。
 
 
カラオケ事業での積極的な新規出店や既存店のリニューアルに伴い第1四半期末の総資産は266億55百万円と前期末に比べて7億29百万円増加した。短期的な支払い能力は安全とされる流動比率は122.2%(前期末117.1%)、長期的な財務の安全性を示す固定比率は130.3%(同127.7%)、自己資本比率は47.7%(同48.5%)。
 
 
2015年8月期業績予想
 
 
前期比15.8%の増収、同15.9%の経常増益
売上高は前期比15.8%増の436億85百万円。国内での積極的な新規出店とリニューアルに加え、シンガポール子会社も通期で寄与するカラオケ事業の売上が伸びる他、カーブス事業の売上も店舗及び1店舗当たりの会員の増加とプロテインの売上増で続伸。2店舗を閉鎖する温浴事業も、イベントを通じた集客や東京健康ランドまねきの湯の天然温泉効果で増収が見込まれる。

営業利益は同15.7%増の49億46百万円。カーブス事業の増益が続く中、前期の国内新店やシンガポール子会社の損益改善でカラオケ事業が増益に転じる他、温浴事業も、不振店の売却に加え、省エネ対策の効果と天然温泉化による東京健康ランドまねきの湯の光熱水道費の減少で黒字転換が見込まれる。

配当は1株当たり上期末15円、期末15円の年30円を予定しており、14年9月1日の株式分割を考慮すると、実質2.5円の増配となる。
 
 
(2)日本初のハラル対応カラオケ店を開業
カラオケ事業の中核をなす子会社(株)コシダカが、イスラム教の戒律に沿った「ハラル」に対応した料理と飲み物を提供する日本初(14年12月8日現在)のカラオケ店「カラオケ本舗 まねきねこ 四谷三丁目店」(東京都新宿区)を2014年12月25日にオープンした。
ハラル対応のカラオケ店の開業にあたっては、ハラル認証を取得する必要があるが、同社は14年12月24日に都内にあるハラル審査機関「マレーシアハラルコーポレーション(株)」(以下、MHC)から、店内で提供する料理や飲み物に対して「ローカルハラル認証」を取得している(12月24日に資格の発効)。
 
 
「カラオケ本舗 まねきねこ 四谷三丁目店」のオープンは、ムスリム(イスラム教徒)商圏からのインバウンド需要への対応の一環であり、15年1月15日の日経新聞朝刊がその盛況ぶりを報じている。訪日ビザの緩和等に伴い、インドネシア等ムスリムの多い国からの観光客が増加傾向にあり、同紙によると、人口の6割がムスリムのマレーシアからの訪日客数は14年1~11月で前年比42%増の21万人、同9割のインドネシアは13%増の13万5千人に伸びていると言う。
このため、ハラル市場に商機を見出そうと、食品や化粧品、観光など様々な分野でイスラム教の戒律に沿った「ハラル認証」の取得を急いでおり、商品やサービスの開発が進められている。また、観光客だけでなく、イスラム圏からの留学生も急増しており、全国の多くの大学の学食でハラルメニューが提供されているようだ。

「世界に広がる “KARAOKE(カラオケ)” という日本の余暇文化は、ムスリム圏の方にも楽しんで受け入れてもらえる」と言うのが同社の考え。「先ずは安心してご来店いただける環境づくりをしてみよう」と言うのが今回の新店舗である。
 
 
今後の注目点
第1四半期は、カラオケ事業において、先行投資負担の増加につながる新規出店店舗数が増加したにもかかわらず、損失が減少しており、カーブス事業では、会員数の増加とプロテイン等のフィットネス関連商品販売のシナジーで店舗数や会員数の伸びを大きく上回る売上の伸びを実現した。この結果、上期の業績予想に対する進捗率は、売上高47.2%(実績ベースの前年同期の進捗率46.1%)、営業利益34.6%(同22.4%)、経常利益35.3%(同23.1%)。実績ベースの前年同期の進捗率と比較すると、15/8期は順調なスタートを切った事が良くわかる。