ブリッジレポート
(6089) 株式会社ウィルグループ

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ブリッジレポート:(6089)ウィルグループ vol.1

(6089:東証1部) ウィルグループ 企業HP
池田 良介 社長
池田 良介 社長

【ブリッジレポート vol.1】2015年3月期第2四半期業績レポート
取材概要「今上期実績の通期予想に対する進捗率は売上高46.1%、営業利益36.9%と一見すると低く感じるが、前期と比較するとほぼ同水準であり、さほど・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年1月7日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社ウィルグループ
社長
池田 良介
所在地
東京都中野区本町1-32-2
決算期
3月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 26,798 808 774 384
2013年3月 22,174 618 631 289
2012年3月 19,049 478 472 161
株式情報(12/17現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,225円 4,710,318株 5,770百万円 20.7% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
9.25円 0.8% 109.48円 11.2倍 531.61円 2.3倍
※株価は12/17終値。発行済株式数は直近期決算短信記載の期末発行済株式数から自己株式を控除。
ROEは前期実績。BPSは前期実績BPS。(14年9月1日付株式分割(1:2)を考慮。)
 
株式会社ウィルグループの会社概要、特長と強み、成長戦略等についてご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
販売支援スタッフ、コールセンターオペレーター、食品を中心とした製造ラインスタッフの人材派遣、人材紹介等を手掛ける持ち株会社。フィールドサポーターと呼ばれる社員が現場に常駐する「ハイブリッド派遣」が特長。現場第一主義を掲げ他社との差別化を図る。中期的に売上高1,000億円を目指し新規市場創出にも注力。
グループ会社は、セールス及びコールセンターのアウトソーシングを手掛ける(株)セントメディア、製造業に特化したサービスを手掛ける(株)エフエージェイなど、国内4社、海外3社。
 
【沿革】
同社グループの前身は、1997年1月に大阪市北区において設立されテレマーケティング業を営んでいた、現在は連結子会社である(株)セントメディアである。一方、同じく1997年8月、大阪市浪速区に短期型の業務請負業を手掛ける(株)ビッグエイドが設立され、現在の代表取締役社長池田良介氏は創業メンバーの一人として同年10月に(株)ビッグエイドに入社した。2000年2月、テレマーケティング業と業務請負業の相乗効果を図ることを目的として、両社が(株)セントメディアを存続会社として合併し、池田良介氏が合併後の会社の社長に就任した。
以降、(株)セントメディアを中核会社として人材サービス分野の事業を展開し、市場の変化に対応する形で新規事業の創出や既存事業の再編を重ねてきた。
2006年4月に純粋持株会社として(株)ウィルホールディングス(2012年6月、(株)ウィルグループに
商号変更)を設立し、事業会社の専門性の向上と経営資源の最適化を図るべく、グループ経営体制に移行した。
2013年12月に東証2部に上場後、1年後の2014年12月、東証1部に上場した。
 
 
【経営理念など】
 
池田社長はITバブル崩壊後の苦難の時期、ある著名な上場企業の創業経営者に、そうした際にどんなVISIONやMISSIONを掲げれば部下や社員が付いてきてくれるかを相談したところ、「まだその若さであれば、言葉を掲げるのではなく、自分の仕事の現場に没頭しなさい。何年かそうやって必死にやっていれば本当に自分の言葉によるVISIONやMISSIONが生まれてくる。それからでも遅くない。」とのアドバイスを受け、派遣の現場でスタッフと共に仕事に邁進したという。
多くの苦労もしたが、そうした経験の中から、自らの価値を磨いて自信を付け、自分を成長させ前向きに進めば、自分の周りの人間をも前向き、ポジティブにすることができるという事を学んだ。そうした、自分の周りの人間はもとより自らがかかわる組織にもポジティブな影響を与えることが、池田社長及び同社の社会的存在意義であると確信し、MISSION、VISION、VALUEを自らの言葉として掲げることとした。
 
【市場環境】
◎市場動向
厚生労働省の「労働者派遣事業報告書の集計結果」によれば、一般派遣、特定派遣を合計した「労働者派遣事業に係る売上高」はリーマン・ショックによって大きく減少したが、足元は5兆円台で安定して推移している。
 
 
円安の進展による個人消費への影響などが懸念されるが、企業収益の拡大に伴い人材派遣サービスに対する需要は短期的には底堅く推移すると見込まれている。また、2020年東京オリンピックの開催も、景気を支える大きなファクターと見られている。
 
一方、中期的な観点からは、人材派遣業界における「2018年問題」が指摘されている。
 
2018年4月は、2013年4月に施行された「改正労働契約法(有期労働契約)」の5年目に当たる。有期労働契約の「5年ルール」により、有期雇用で5年を迎えた労働者は、本人の申込みにより、無期雇用(無期労働契約)への切り変えが可能になる。
また、衆議院解散総選挙により今秋の国会では成立しなかった「労働者派遣法改正案」だが、重要な改正点としては、2015年4月の施行後、「同一労働者が同一職場で派遣就労する上限を3年とし、それを超える場合、派遣事業者は正社員として雇用するか派遣先での直接雇用を促す」としていた点があげられる。
同時に、この改正は「専門26業務」にのみ認めていた期間制限の無い派遣(それ以外は3年上限)を無くし、全ての業務において、3年ごとに派遣労働者を代えれば、派遣先企業は労働組合の意見を聞くことを条件に、派遣に仕事を任せ続けられるようになる。
こうした要因により、無期雇用への転換を希望する労働者がどの程度出てくるのか、派遣労働者の意識がどう変化するのかは極めて不透明であるが、派遣会社としては請負業務や人材紹介への取り組みなどを強化する必要が出てくることが予想される。
また、無期雇用への切り替えや正社員としての雇用は中小派遣会社には財務的に難しいため、上場企業を中心とした大手によるM&A等を通じた寡占が進むとも言われている。
 
◎同業他社
売上の4割を占めるセールスアウトソーシング事業における顧客先での競合は、バックスグループ(非上場)、ヒト・コミュニケーションズ(3654、東証1部)、ジェイコムホールディングス(2462、東証1部)の3社がほとんど。
セールス支援を行っているP&Pホールディングス(6068、JASDAQ)も含めて、業容、株価評価などを比較した。
 
 
高いROEは目を引くが、株価評価には結びついておらず、更なる認知度の向上などが必要だろう。
 
【事業内容】
「セールスアウトソーシング事業」、「コールセンターアウトソーシング事業」、「ファクトリーアウトソーシング事業」の3つが中心事業。各事業とも、市場を上回るスピードで成長してきた。
この他、次の成長の柱として、様々な人材関係ビジネスの種蒔きを行っている。
 
 
①セールスアウトソーシング事業
売上高11,172百万円、営業利益497百万円(2014年3月期実績)
 
家電量販店、携帯ショップ等における販売業務を通して、顧客の商品・サービスの拡大を支援している。
取り扱い商品は、スマートフォン等のモバイルデバイスやブロードバンドが中心であり、接客、商品説明、申込み等の販売業務、販売スタッフのマネジメント、販売情報の収集・報告等の業務に従事するスタッフをチーム型で派遣(ハイブリッド派遣)するほか、一般派遣や業務請負を行っている。
また近年では対象分野拡大のため、アパレル業界への派遣にも取り組んでいる。
2015年3月期第2四半期末の稼働スタッフ数、取引顧客数はそれぞれ5,893名、283社。
 
②コールセンターアウトソーシング事業
売上高6,975百万円、営業利益295百万円(2014年3月期実績)
 
コールセンターを運営する企業やテレマーケティングサービスを展開する企業に対してオペレーターを派遣している。
コールセンターの中でも、通信会社向けを中心としており、情報提供、配送、アフターサービス、相談、苦情の受付、処理、解決等の業務に従事するスタッフをチーム型で派遣(ハイブリッド派遣)または一般派遣している。
また、自社でコールセンターを保有し、顧客のテレマーケティングの業務請負も行っている。
2015年3月期第2四半期末の稼働スタッフ数、取引顧客数はそれぞれ3,254名、141社。
 
③ファクトリーアウトソーシング事業
売上高6,287百万円、営業利益148百万円(2014年3月期実績)
 
製造業の生産過程において、技術や人材管理ノウハウを提供し、顧客の生産性の向上を実現するサービスを提供している。同事業を行っている(株)エフエージェイでは、製造業の中でも、比較的景気変動の影響が少ない食品製造業を中心に、製造、検査、品質管理、仕分け、梱包等の業務に従事するスタッフをチーム型で派遣(ハイブリッド派遣)するほか、一般派遣や業務請負を行っている。
2015年3月期第2四半期末の稼働スタッフ数、取引顧客数はそれぞれ3,164名、227社。
 
 
 
同社のROEは東証1部平均及びサービス業を大きく上回っている。また決してレバレッジで引き上げられているものでもない。売上高当期純利益率の改善は期待したいところである。
 
 
特徴と強み
 
(1)フィールドサポーターを核とした「ハイブリッド派遣」
<ハイブリッド派遣の概要>
人材派遣業界において同社を特長づけ、成長のドライバーとなっているのが「ハイブリッド派遣」というシステム。
 
人材派遣とは、派遣会社と雇用契約を締結したスタッフを、派遣会社が労働者派遣契約を締結した顧客企業に派遣することをいう。雇用関係と指揮命令関係が分かれていることが特徴で、派遣会社は、労働者派遣契約に基づき派遣先企業から派遣料金を受領し、雇用契約に基づき派遣スタッフに給与を支払う。
また派遣先では顧客企業の担当者の指揮命令に従って派遣スタッフは働くことになる。
 
一般派遣では、複数の派遣会社から派遣されたスタッフが現場に入り交じっているケースが多く、顧客企業の現場担当者が派遣スタッフに的確に指揮命令したり、情報を共有するのが複雑になってしまう傾向がある。
派遣会社にはコーディネーターという職種の正社員が、派遣スタッフのフォローを行うのが一般的だが、コーディネーターは現場にいるわけではないので、家電量販店の現場やコールセンターの電話ブース等で日々起こる様々な問題に正社員が即応することはできない。
また、派遣先の職場環境や職種、スタッフ個々の資質等の条件によって違いはあるが、一般派遣の場合はスタッフのロイヤリティやチームワーク意識の低さが、スタッフの高離職率やトラブル発生の頻度の高さに繋がりやすく、顧客企業、派遣会社双方にとって課題が多い面もある。
 
これに対し、同社の「ハイブリッド派遣」では、フィールドサポーター(FS、現場常駐社員)と呼ばれる同社の正社員が現場に入り派遣スタッフと一緒に同じ仕事をすると共に、同社の派遣スタッフを現場で日々管理・指導・教育している。FSをリーダーとしたチームで業務に取り組むというシステムだ。
 
 
顧客担当者は、FSに指揮命令すれば、各スタッフ個々に指導する必要は無いため、指揮命令がスムーズになると共にスピーディーな情報共有も可能になるため、業務を効率的に進めることが出来る。
一方同社においては、同じ現場に正社員が常駐することで派遣スタッフの士気が向上するため、良いチームワークが生まれ、派遣スタッフの責任感も強くなる。
加えて、即時に顧客のニーズへの対応ができるため、現場の急な増員計画にも柔軟に対応することができるなど、顧客企業からの評価も高まり、オーダーの増加等の新たな人材派遣の引き合いや、さらには業務請負契約に進むケースも多く見られる。
また、優秀なスタッフには、派遣先顧客企業から直接雇用の要望があることもあり、その場合は人材紹介を行うなど、事業機会の拡大にも繋がっている。
 
「1人のFSに平均して約50名のスタッフ」というのが平均的なチームの形だが、同社が有望顧客と考える先には、その後のビジネス拡大のために少数からスタートし、「ハイブリッド派遣」のメリットを理解してもらい、その後のオーダー拡大につなげることもある。
 
2014年9月末のFS数は198名で前年同期に比べ17名増加させることができた。今後も拡大を続けていく。
 
<ハイブリッド派遣を可能にするもの>
同社を特徴づける「ハイブリッド派遣」ではあるが、「他社でもやろうと思えばできるのではないか?」という疑問を投資家であれば当然抱くだろう。
それに対する池田社長の説明は以下の様なものであった。
 
派遣の現場というのは、実にいろいろなことが起こる。スタッフのミスに対し、謝罪、改善策の提案、実行の繰り返しといって良い。また、スタッフの性格や人間性なども多種多様でそれを取りまとめ、仕事を進めて行くのは苦労も多いのは確かだ。
そうした派遣の現場でハイブリッド派遣の力を発揮するためには、優秀なFSが不可欠なのは言うまでもない。
「現場で正社員であるFSがスタッフとしても一番になったうえで、現場を指導する。」という形にしなければチームを機能させることはできない。当社の場合、創業時から私も含め全員が現場に入ってきた。現在の部長やマネージャーのほとんどは新卒で入社し、スタッフとして現場で働き、派遣の現場で起こることを全て経験している。そうした人間がFSを育成しているわけで、この「現場第一主義」がハイブリッド派遣を可能にするカギと言える。
逆に、こうした現場感覚の無い人間がチームという形を整えるために上司として現場に入っても、課問題解決にはつながらない。スタッフがすぐ辞める、現場に入った正社員がスタッフ化してしまう(本社に対するロイヤリティを低下させる。)といった問題が起きるのは明らかだ。
同業他社がチームという形だけ整えても当社と同じクオリティを顧客に提供するには数年はかかるだろう。
ただ、現時点で当社が先行はしているが、他社がこれから本気で取り組めばできない話ではないので、当社としては派遣スタッフの早期育成・戦力化を進めるための仕組み作りにいち早く取り組んでいる。
 
(2)さまざまなカテゴリーに特化して事業を展開
同社は3つの主要事業で9割以上の売上を占めているが、それぞれの事業においてカテゴリーを特化している。
 
 
セールスアウトソーシング事業では現在のモバイル端末販売に加え、現在アパレル分野もカテゴリーに加え強化を行っている。
それぞれの事業において、特化したカテゴリーの現場を熟知している強みを活かし、特徴を持った取り組みにより顧客企業の事業拡大に貢献している。
 
 
2015年3月期第2四半期決算概要
 
 
全セグメント好調で大幅な増収・増益
売上高は前年同期比22.2%増加の151億円。主要3セグメント全て2桁の増収だった。販管費も同23.2%と増加したが、増収効果で吸収し、営業利益以下2桁の増益となった。
セールスアウトソーシング事業において派遣先から派遣スタッフの直接雇用の申し入れがあり、人材紹介を行ったため、人材派遣売上が計画を下回り、人材紹介売上が計画を上回った。売上には大きく影響はなかったが、利益率の高い人材紹介売上が伸びたため、売上総利益が計画を上回った。販管費はシステム改修費などが第3四半期にずれ込んだものがあったため、計画を下回った。この結果利益は修正計画を大きく上回って着地した。
 
 
①セールスアウトソーシング事業
業務請負中心に好調だった。
利益率の高い業務請負の拡大で利益率も向上し、人件費増を吸収して大幅増益となった。外部採用媒体を用いない入社(口コミ、リピート採用など)を増やすなど採用効率が向上している。
 
②コールセンターアウトソーシング事業
新規顧客の開拓に注力し、人材派遣の拡大を中心として2桁の増収だった。
ただ、テレマーケティングエージェンシーの有望顧客との長期契約獲得を前提とした短期契約の増加で、採用費が増加したため利益は減少した。
 
③ファクトリーアウトソーシング事業
人材派遣の拡大を中心として好調だった。
食品メーカーからの安定した需要を取り込んでいる。利益はほぼ倍増となった。
 
④その他
オフィスなどへの人材派遣が前年同期の613百万円から882百万円へと大きく伸びた。
また、介護士派遣、ネット人材紹介、海外事業という有望分野が大きく伸長した。8月に取得したシンガポール子会社の売上も寄与した。
成長のための先行投資を継続している。
 
 
ハイブリッド派遣の売上構成比が減少しているのは、ハイブリッド派遣の派遣先において業務請負への移行需要が高まったため。
 
 
現預金は減少したが、売上増に伴う売掛金増加などで、流動資産は前期末に比べ72百万円増加した。固定資産は、シンガポール子会社取得でのれんが同240百万円増加したため、同346百万円増加。資産合計は同419百万円増加した。負債合計は、派遣スタッフ増加による未払金の増加などで、同201百万円増加した。
純資産は利益剰余金の増加などで、217百万円増加した。
この結果自己資本比率は、前期末より0.3%低下の40.8%となった。
 
 
営業CFは売上債権増加幅の縮小、未払費用の増加などでプラスに転じた。投資CFは有価証券の取得、子会社株式の取得などによりマイナス幅は拡大したが、フリーCFのマイナス幅は大きく縮小した。
財務CFは短期借入金の減少、配当金の支払額増加などでマイナスに転じた。
キャッシュポジションは上昇した。
 
(4)トピックス
◎シンガポールの人材サービス会社を買収
同社グループは次の成長の柱の1つとして海外事業の拡大に力を入れており、ASEAN地域での事業拡大と事業機会発掘の効率化を目的として、2014年2月にWILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.を設立。
2014年8月には、連結子会社のWILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.が、シンガポールの人材サービス会社「Scientec Consulting Pte. Ltd.」の株式60%を取得し子会社とした。
Scientec Consulting Pte. Ltd.は2001年10月の創業以来、シンガポールに地域統括会社を設置する大手多国籍企業を対象にエグゼクティブサーチ、人材紹介などを行っており、特にヘルスケア産業やライフサエンス産業における人材の供給に強みを持っている。
WILL GROUP Asia Pacific Pte. Ltd.はScientec Consulting Pte. Ltd.のヘルスケア産業やライスサイエンス産業への人材サービスのノウハウを得るだけでなく、体系化された研修プログラムや、エグゼクティブサーチのノウハウも取得する事が出来ると考え、株式を取得することとした。
 
 
30万株、60%の株式をのれん、アドバイザリー費用を含み、3,978千シンガポールドル(約322百万円)で取得した。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
業績予想に変更無し。2桁の増収・増益へ。
通期業績予想に変更は無い。子会社化したScientec Consulting Pte. Ltd.が売上高、売上総利益に寄与する見込みだが、セールスアウトソーシング事業で第3四半期以降に見込んでいた人材派遣売上が第2四半期の人材紹介売上に切り替わったため、計画通りに推移すると見ている。利益に関しては、第2四半期に未消化だった費用が下期に消化される見通し。
売上高は前期比22.8%増の329億円。前期に続き20%を超える増収率を見込んでいる。各セグメント共に2桁の増収を計画。利益率は若干低下するものの、2桁の増益率を予想している。
人材派遣の安定性と、人材紹介・業務請負の収益性をバランスよく実現することを目指していく。
配当は前期と同じく9.25円/株の予測。(前期は普通配当18.50円/株、記念配当7.50円/株で、2014年9月1日付で1:2の株式分割を実施している。)
予想配当性向は8.4%。
 
 
各事業とも2桁の増収を計画している。
主要3事業の収益性は向上する。その他事業も大きく伸長するが先行投資段階であり赤字幅は前期より拡大する見込み。
 
 
成長戦略
 
中期的に「グループ売上高1,000億円」を目指している。そのために既存事業の更なる拡大と共に、新市場の創出に取り組んでおり、以下の3つの戦略を掲げている。
 
 
一般派遣から、顧客企業にとってもメリットの大きいハイブリッド派遣への移行を進める。一現場ごとのオーダーを増加させ、派遣先でのシェアを拡大する。
また、顧客の信頼を得て、業務請負への移行も推進する。
 
 
主要3事業共に、まだ未進出の地域があるため、既存拠点を強化しながら、地域を選別し戦略的な出店を進める。
セールスアウトソーシング事業では、同業他社が多く進出していながら、同社がまだ出店していない地域に拡大余地が大きいと考えている。
また、ファクトリーアウトソーシング事業は食品製造業を中心に地方へ積極的に進出していく。
 
③新市場の創出
(1)非正規から正規へ ~キャリアパス市場の創出~
今後の法制度の動向にもよるが、現在非正規雇用市場と正規雇用市場は分断されており、正社員で働きたいと考えている非正規労働者が希望通りにキャリアをアップさせるのは難しいのが現状だ。
 
一般社団法人日本人材派遣協会の実施した「派遣社員WEBアンケート調査(2014年1月15日発表)」によると、約7割が「当面は今の派遣先の派遣社員として働く」ことを希望しているが、数年後には「正社員として働きたい」と考えている希望者は約5割に上っている。
 
 
ところが、派遣先企業から直接雇用を打診されたことのある経験者は約4割で、その他の約6割の派遣社員はそういうチャンスを与えられていないという。
 
こうした状況に対し同社は、派遣スタッフを教育し、実務経験を積んでもらった上で派遣先顧客企業に派遣期間終了とは関係なく正社員として紹介する人材紹介事業を更に強化していく。
 
顧客企業にとっては実際に自社の現場で働いてもらってから採用を判断できるため、ミスマッチが少ないというメリットがある。
また、同社にとっては、より収益性の高い事業が展開できるほか、正社員への道が開いている派遣会社という評価がスタッフ確保に繋がる、定着率も向上するというメリットが期待できる。
スタッフの能力によっては現在の派遣先ではなく、もっと活躍の可能性の高い別の職場、企業への紹介も行う。
今までになかった新たな「キャリアパス市場の創出」を通して、派遣スタッフ、顧客企業、同社それぞれがメリットを得る「三方良し」の関係構築を目指している。
 
(2)新分野の拡大
人材サービスは、契約が継続し、収益性は高くないが安定した収益に繋がる「ストック型(人材派遣、業務請負等)」と、契約は単発だが収益性の高い「フロー型(人材紹介、エグゼクティブサーチ等)」の2つに分類されると同社は考えている。
現在の主要3事業に加え、早期に次の柱を確立すべく以下の様な分野での人材サービスを展開している。
 
 
それぞれ先行投資を行いながら今後の成長余地を探っているが、ストック型では介護士派遣、フロー型ではネット人材紹介及び海外関連が期待できるということだ。シンガポールのScientec Consulting Pte. Ltd.買収はまさにこのための投資である。
 
 
池田良介社長に聞く
 
池田社長に今後の戦略、投資家へのメッセージなどを伺った。
 
<成長戦略について>
現在300億円の売上を、早期に500億円に乗せ、その先1,000億円を目指しているが、その実現のためには現在の3本柱に加え、4つ目、5つ目の柱が必要だ。
そのために持株会社であるウィルグループは、従来の子会社統括機能中心から一歩進めて、新規事業の立上げ及び育成機能の強化に注力している。
1つはM&A。8月に取得したシンガポールの子会社は世界的大手製薬会社等が顧客であり、ライフサイエンスに力を入れているシンガポールでの実績も豊富で、グループの海外展開の大きな足掛かりとなる。
新規事業の発掘・育成は専任の担当者が日々活動している他、「ビジネスコンテスト」の開催も始めた。グランプリには賞金100万円を贈呈するだけでなく、当社から事業化のための出資やJV設立なども検討している。シナジーのあるビジネスを発掘したい。
 
<当社の強み>
「ハイブリッド派遣」で明らかなように、「現場第一主義」が当社の特長であり、強さの源泉であると理解していただきたい。
正社員がスタッフと一緒に最前線で仕事をする派遣会社は、当社以外ほとんどない。また当社はただ現場でスタッフと一緒に仕事をすればいいのではなく、スタッフの中でも一人前で、最も優秀と思われると事まで成長することを正社員の目標と設定している。
現にお客様企業のコールセンターや家電量販店が行うスタッフ表彰で最優秀賞を受賞するのが当社の正社員であることも多数ある。
現場が一番大事。現場で一番になれない人間は営業もコーディネーターもものにならない。この企業文化が当社の強さだ。
ハイブリッド派遣の肝となるフィールドサポーターは育成というより資質のある人間をいかに採用できるかが重要だ。8割くらいは採用で決まると感じている。
採用の基準は「熱い」、「賢い」、「気持ちいい」の三つ。
「熱い」はまさに情熱。情熱を持って仕事に取組み、どんな困難なことも自分で切り開く気概があるかがポイントで、メンタルタフネスも重要だ。
「賢い」は現場でお客様からの質問に的確に回答することのできるスマートさがあるか。コミュニケーション能力の高さが重要だ。
最後の「気持ちいい」は素直さ。派遣の現場で起こった失敗に対し素直にすぐ謝ることが出来るかを資質として判断する。
採用に際しこの点に関しては上場前からずっとこだわってノウハウを蓄積してきたおかげで、この売り手市場の中でも計画通り新卒社員を採用することが出来ている。
 
<経営理念浸透のために>
採用の際に、MISSION、VISION、VALUEに関する理解促進は徹底して行っているが、入社後もこれらが記載された「グループ手帳」をグループ全社員に配布し、ミーティングやディスカッションの場で利用している。
また経営幹部が繰り返しメッセージを発信している。
社員のロイヤリティに加え、スタッフの当社に対するロイヤリティももっと高めていきたいと考えている。
「employability」つまり「雇用され得るだけの能力、スキル」をスタッフには習得させてあげたいので、今後希望者には無料で勉強できるような環境を整えていきたい。現在OJTとオフJTの組み合わせや、e-ラーニングなどによる正社員育成システムを構築中で、先々はスタッフにも適用して行こうと考えている。
ハイブリッド派遣を行っている当社の場合、顔の見える派遣会社ともいえ、一度勤務したスタッフとのリレーションは他社よりも強いと言える。そのため、人員が必要なときFSが直接スタッフに電話するとスタッフも顔がわかる人間からの依頼なので、入社がスムーズに進むケースも多い。
またそうしたことから当社の場合、媒体を使用しない口コミやリピートでのスタッフ採用など「媒体外入社」の割合も多いため、同業他社に比べ採用費もさほど上昇していない。この「媒体外入社」件数は当社の重要なKPIとなっている。
 
<投資家へのメッセージ>
当社は中期的目標売上高1,000億円を目指してチャレンジを続けている。既存事業で500~600億円、新規事業で400~500億円というビジョンだ。
そのため先行投資も必要であるため現在の配当性向は10%に満たないが、売上・利益の拡大と企業価値の向上で株主の皆様の期待に応えていきたい。
また更なる成長やブランド力増強を目指し、上場1年で東証1部にステップアップした。もちろんこれがゴールであるはずもない。これからも中長期の視点で当社の成長を応援していただきたい。
 
 
今後の注目点
下記のグラフは同社の売上高及び営業利益の上・下構成比を前期実績と今期見通しで示したもの。
今上期実績の通期予想に対する進捗率は売上高46.1%、営業利益36.9%と一見すると低く感じるが、前期と比較するとほぼ同水準であり、さほど気にすることはないようだ。
 
 
また下のグラフは前述した同業他社及び日経平均との相対株価(1年)である。昨年の東証2部上場後大きくアンダーパフォームしていた同社株だが、現時点ではかなりキャッチアップしてきた。
東証1部に上場し、他2社(ヒト・コミュニケーション、ジェイコムホールディングス)と同じステージに立った同社が、ハイブリッド派遣という強みを活かしてどう戦っていくのかを、新規事業育成の進捗と共に注目したい。