ブリッジレポート
(6050) イー・ガーディアン株式会社

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ブリッジレポート:(6050)イー・ガーディアン vol.15

(6050:東証マザーズ) イー・ガーディアン 企業HP
高谷 康久 社長
高谷 康久 社長

【ブリッジレポート vol.15】2014年9月期業績レポート
取材概要「同社グループは投稿監視・カスタマーサポートにおいてトップクラスの実績を有するが、継続的な事業の拡大には市場の拡大と共に多様化する・・・」続きは本文をご覧ください。
2015年1月6日掲載
企業基本情報
企業名
イー・ガーディアン株式会社
社長
高谷 康久
所在地
東京都港区麻布十番1-2-3
決算期
9月 末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年9月 2,487 188 228 129
2012年9月 2,232 83 110 51
2011年9月 1,907 176 161 88
2010年9月 1,340 204 212 119
2009年9月 858 123 123 116
2008年9月 461 0 0 -5
2007年9月 362 15 15 -6
2006年9月 606 -9 -17 0
2005年9月 684 6 3 -133
2005年3月 1,425 79 77 43
株式情報(12/14現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,550円 1,613,853株 2,501百万円 12.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 88.61円 17.5倍 680.34円 2.3倍
※株価は12/14終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。
 
イー・ガーディアンの2014年9月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
ソーシャルWebサービス(SNSやブログ等のソーシャルメディアや、ソーシャルゲーム、ソーシャルコマース等の双方向のコミュニケーションが介在する全てのインターネットメディア)の健全な運営や活性化に寄与するべく、メディアの監視やカスタマーサービス、更には広告審査業務や広告枠管理等のアド・プロセスサービスを提供している。
実際のサービスは、厳格に設定された基準の下、厳選されたオペレーターによる高品質な目視による監視と投稿監視システム「E-Trident」等を駆使したシステムによる監視のハイブリッドで提供されており、社会通念上不適切と考えられるコメントや犯罪を誘引するようなコメントに目を光らせている。また、24時間365日の稼働を強みとする監視センターは、同社が運営する東京(2拠点)、大阪、宮崎の3都市4拠点と、2012年6月に子会社化したイーオペ株式会社(宮城県仙台市)が運営する宮城の2拠点。

グループは、同社の他、ローコストオペレーションを強みとし低単価案件の収益化能力に優れるイーオペ(株)、14年9月に100%子会社化した人財紹介・派遣サービスの(株)パワーブレイン、及び、社内業務の独立により14年10月に設立したデバッグ業務等を手掛けるトラネル(株)の4社。
 
 
【事業区分と成長戦略】
事業は、ソーシャルサポート、ゲームサポート、アド・プロセスの3業務に区分され、いずれも件数に応じた課金体系を採用しており(一部サービスを除く)、高品質なサービスをリーズナブルな価格で提供している。
 
 
ソーシャルサポート
ソーシャルネットワークサービスは利用者の増加が続いており、利用率も上昇傾向にある。同社は、こうした市場拡大への対応はもちろん、市場の変化にも適合した各種サービスの提供と、自動識別型画像フィルタリングシステム(14/9期第4四半期にリリース)の拡販により事業を拡大させていく考え。
 
 
既にサービスを提供している投稿監視システム「E-Trident」は言語の監視を行うシステムだが、近年、動画や静止画のWebでの利用が一般化しており、これらの投稿に対する監視の必要性が高まっている(言い換えると、動画・画像解析によるフィルタリングシステムのニーズが増えている)。
14/9期第4四半期(7-9月)にリリースした自動識別型画像フィルタリングシステムは、こうしたニーズに対応したもので、東京大学原田研究室との共同開発の成果である。同研究室の画像認識技術、アノテーション技術(※)、及び追加学習機能と、国内NO.1の監視ノウハウを有する同社の大量かつ正確な教師データ(※)を融合する事で低コストかつ高品質なシステムを実現した。このシステムをベースにビッグデータ解析や児童ポルノ取り締まり等、サイト毎に最適なフィルタリングシステムを構築する事ができる。

また、将来的には、ウェアラブルデバイスのツール、グーグルグラスのコンテンツ技術、更には自動運転の技術への応用も期待されている。
 
 
人による目視監視(ヒューマンリソース)とITシステムの活用により、サービス価値の最大化を図り、海外展開を進めていく。
 
※ アノテーション技術とは、データに注釈となる情報をメタデータとして追加する技術
※ 教師データとは、機械学習の仕組みを構築する際の初期学習のデータの事。(いずれも同社資料より)
※ Demand-Side Platform(DSP)とは、広告主(購入者)側の広告効果の最大化を支援するツール
 
ゲームサポート
優良新規プレイヤーの獲得と既存顧客のフォローにより、監視、CS、アクティブサポート、更には多言語対応等の既存サービスを拡大させると共に、ソーシャルゲーム市場の拡大に伴い多様化する顧客ニーズに対応するべく新たなサービスの育成も取り組んでいく。この一環として、10月1日付けで新設分割により トラネル(株)を設立した。イー・ガーディアン(株)のデバッグ(プログラムの「バグ」と呼ばれる「誤り」を探し、取り除く事)業務を独立させたもので、ユーザーニーズに応えていく。また、将来的には、資本業務提携先である日本マルチメディアサービス(株)とのシナジーを活かして、遊戯機系にも展開していく考え。
 
 
※ 日本マルチメディアサービス(株)との資本業務提携
セガサミーホールディングス(株)傘下で10年を超える大規模コールセンター運営の実績を有する日本マルチメディアサービス(株)千葉県浦安市)と14年5月に業務提携した。Web投稿監視やCSサポート業務の経験と国内6拠点で24時間365日稼働する監視センターを有するイー・ガーディアン(株)と日本マルチメディアサービス(株)のインフラとノウハウを融合して相互活用する事で、多様化・複雑化している、ソーシャルアプリケーションやオンラインコールセンター等の顧客対応業務のサービス品質の向上とコスト低減を図っていく。この業務提携を促進するために、日本マルチメディアサービス(株)は、イー・ガーディアンの発行済普通株式の3%程度を市場買付等により取得した。

・新規顧客開拓や既存顧客での販路拡大
・両社が保有するコールセンターおよび監視センターのインフラ相互活用を推進することでコスト低減
 
アド・プロセス
広告審査業務、広告枠管理、入稿管理、及び広告ライティング等の既存サービスに加え、ネット広告市場の成長に合わせた新商材の開発に取り組んでいく。
 
 
人財事業の育成
上記の他、14年9月に子会社化した(株)パワーブレイン(東京都千代田区)を核に人財事業を育成していく。(株)パワーブレインは、イー・ガーディアンに代わり人財を採用・育成し、顧客先常駐(派遣型)ニーズに応える事で規模拡大を図っていく。
 
 
2014年9月期決算
 
 
前期比0.7%の減収、3.2%の経常増益
売上高は前期比0.7%減の24億71百万円。一部大口顧客向けの売上が落ち込んだものの、新規顧客の開拓と既存顧客の深耕で吸収した(一部大口顧客を除く売上は同15%弱増加の24億40百万円)。利益面では、サービス拡充や営業強化に伴い販管費が増加したものの、監視業務の宮崎センターへの移管が進んでいる事に加え、受注案件の利益率も総じて改善傾向にあり、営業利益が同5.9%増加した。

尚、14年5月に、大規模コールセンター運営の実績を有する日本マルチメディアサービス(株)(代表取締役社長 秋庭孝俊、千葉県浦安市)と資本業務提携した。また、テキストから動画・画像投稿へのシフトにより画像動画投稿に対する監視の必要性が高まっている事を踏まえ、第4四半期(7-9月)に「自動識別型画像フィルタリングシステム」をリリースした。
 
 
 
 
 
期末総資産は前期末と同水準(6百万円減)の14億23百万円。M&Aを含めた積極的な事業展開に伴い固定資産や売掛金が増加する一方、現預金が減少した。自己資本比率は前期末に比べて3.2ポイント改善の77.1%。同社は流動性に富み、かつ長期的な安定性にも優れた財務体質を有し、短期的な支払い能力を示す流動比率は368%、長期的な財務の安全性を示す固定比率は21%。また、調達した資金でどれだけ効率的に利益を稼いだかを示す投下資本利益率は18.2%。
 
 
税金費用の増加(△15百万円→△1億29百万円)を含めた運転資金の増加で営業CFが減少する中、M&A等で投資CFのマイナス幅ンが拡大したが、21百万円のフリーCFを確保した。財務CFがマイナスになったのは、自社株買いと配当金の支払いによる。
 
 
*ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ(自己資本比率の逆数)
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記レバレッジは必ずしも一致しない)。
 
東証発表の「決算短信集計」によると、東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の14/3期のROEは、金融を除く全産業8.65%(前期は4.99%)、製造業8.55%(同4.53%)、非製造業8.79%(同5.67%)。6ヶ月のタイムラグはあるものの、同社は13/9期、14/9期と東証上場企業の平均を上回る高いROEを実現している。
デバッグ・検証とネット監視を手掛けるポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス(3657)との比較では売上当期純利益率の差が大きい。ネット監視は互角以上だが、デバッグ・検証とのシナジーで差を付けられており、企業規模や利益水準の差にもなっている。システム化・自動化で先行する監視業務はもちろん、子会社を設立して強化するデバッグ業務の今後の展開にも期待したい。
 
 
 
2015年9月期業績予想
 
 
前期比13.7%の増収、同6.1%の経常増益予想
引き続き一部大口顧客向けの売上減少が見込まれるものの、その影響は前期に比べて大きく低下。新規顧客開拓と既存顧客深耕の効果等が売上の伸びに反映されてくる。前期第4四半期に連結子会社化した(株)パワーブレイン(14/5期は14百万円の営業損失)や期初に社内のデバッグ業務を分離して設立したトラネル(株)の体制整備等で営業費用が増加するものの、売上の増加と原価率の改善で吸収。営業利益が2億14百万円と同6.9%増加する見込み。
 
 
今後の注目点
同社グループは投稿監視・カスタマーサポートにおいてトップクラスの実績を有するが、継続的な事業の拡大には市場の拡大と共に多様化するニーズを取り込んでいく必要がある。(株)パワーブレインの連結子会社化とトラネル(株)の設立は、この一環であり、(株)パワーブレインは強みである人財の採用・育成ノウハウを活かして顧客先常駐(派遣型)ニーズを取り込んでいく。一方、トラネル(株)の事業領域であるデバッグは、カスタマーサービスとのシナジーが期待できる上、ユーザー自身の対応が可能なカスタマーサービスと異なり社外のリソース活用が一般的なため市場も大きい。例えば、デバッグ・検証とネット看視(イー・ガーディアンの3業務に相当)を2本柱とするポールトゥウィン・ピットクルーホールディングス(3657)の14/1期は、デバッグ・検証が売上108億円・連結調整前利益19.7億円、ネット看視が売上30億円・同1.8億円だった。一方、イー・ガーディアン(株)の14/9期は連結ベースで売上24.7億円・営業利益2億円。ここ数年は一部大口顧客向けの売上減で売上全体が伸び悩んでいたが、利益面では、ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスの連結調整前利益1.8億円(セグメント利益)に対して営業利益2億円と、収益性と付加価値案件の取り込みでリードしている事がわかる。しかし、デバッグの差により、会社全体の事業規模や利益水準では大きく水をあけられている。デバッグ事業が軌道化すれば、同社のポテンシャルも大きく高まろう。同社は、多言語対応等、顧客のグローバル展開ヘの対応力を既に有している事に加え、遊戯機器分野で日本マルチメディアサービス(株)という有力パートナーも有する事から今後の展開が期待される。