ブリッジレポート
(3667) 株式会社enish

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ブリッジレポート:(3667)enish vol.8

(3667:東証1部) enish 企業HP
安徳 孝平 社長
安徳 孝平 社長

【ブリッジレポート vol.8】2014年12月期第3四半期業績レポート
取材概要「国内ソーシャルゲーム市場はブラウザゲームの成熟で成長率が鈍化しているものの、ネイティブアプリをけん引役に市場拡大が続くとみられて・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年11月25日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社enish
社長
安徳 孝平
所在地
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
決算期
12月末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2013年12月 6,624 1,109 1,078 653
2012年12月 4,430 666 654 373
2011年12月 2,590 526 523 298
2010年12月 415 64 71 55
2010年1月 22 -40 -41 -41
株式情報(11/14現在データ)
株価 発行済株式数 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,991円 6,932,640株 13,802百万円 32.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
- - 0.00円 - 434.39円 4.6倍
※株価は11/14終値。
 
enishの2014年12月期第3四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
レストラン経営シミュレーションゲーム「ぼくのレストランⅡ」やアパレルショップの経営シミュレーションゲーム「ガルショ☆」、カードバトルゲーム「ドラゴンタクティクス」等の人気作品を有するソーシャルゲームの開発会社。14年3月には実質的創業者である安徳孝平(アントク コウヘイ)氏が代表取締役社長に就任。ブラウザアプリの収益性を維持しつつ、ネイティブアプリでヒットを創出し、国内とアジアを中心にしたグローバル配信で業容拡大を図っていく考え。

尚、ネイティブアプリとは端末にダウンロードして楽しむアプリで、主にスマートフォン向けに提供されている。一方、ブラウザアプリはダウンロードせず、GREE、mixi、Mobage等のプラットフォームにアクセスしてブラウザ上で楽しむ。いずれも、アプリは無料だが、アプリを進める上で有効なアイテム等(「ぼくのレストランⅡ」の場合、店を繁盛させるために必要なレシピや店舗を飾るアイテム等)を購入した場合、課金が発生する。ブラウザアプリでは、ユーザへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。
 
【事業内容】
事業はソーシャルアプリ事業の単一セグメント(ゲームはアプリのカテゴリーの一つ)。ブラウザアプリを収益基盤にネイティブアプリを強化している。ゲームは無料だが、ゲームを展開する上で有効なアイテム等(「ぼくのレストランⅡ」の場合、店を繁盛させるために必要なレシピや店舗を飾るアイテム等)を購入した場合、課金が発生する。ユーザへの課金及び料金回収はSNSを運営するプラットフォーム事業者に委託し、同社はその対価としてシステム利用料等を支払っている。
 
【沿革】
 
【カテゴリー別・プラットフォーム別売上構成】
 
「ぼくのレストランⅡ」、「ガルショ」等の経営シミュレーションゲームは女性に人気があり、いずれもロングセラー。一方、男性向けのバトルゲームは「魁!! 男塾」が苦戦しており、14/12期第3四半期の売上構成比低下の要因になった。
 
【主要タイトル】
 
 
2014年12月期第3四半期決算
 
 
既存タイトルの下げ止まりで、第2四半期比増収・増益
売上高は第2四半期比5.3%増の15億69百万円。運用体制の再構築に取り組んだ効果で既存主要タイトル(ブラウザアプリ)の売上が増加。ブラウザ版を投入した新タイトル「バハムートクライシス」も、マルチプラットフォーム展開が進み、増収に寄与した。営業利益は第2四半期の10百万円から63百万円に拡大。売上の増加に伴う支払手数料(変動費)の増加等で原価率が81.1%と第2四半期と比べて1.8ポイント上昇したものの、増収効果と広告宣伝費を中心にした販管費の減少で営業利益率が改善した。広告宣伝費の減少は、新作タイトルのプロモーションが本格化していないため。
 
タイトル別売上高の推移
 
運用体制の強化で主要タイトルの売上が増加
 ・各種ノウハウの教育と共有
 ・アートワーク品質の向上
 ・イベントバランスの修正
 ・新プラットフォーム展開

 ぼくのレストランⅡ  前四半期比  2.7%増
 ガルショ☆       同     6.4%増
 ドラゴンタクティクス  同     8.5%増
 魁!!男塾        同    16.1%減
 
14年5月にiOS版の配信を開始した同社初のネイティブアプリ「ぼくのレストラン3」は、現在、処理速度の向上も含めてチューニングを実施中であり収益貢献は来期以降になる見込み。一方、同年6月にブラウザ版を投入した「バハムートクライシス」は、マルチプラットフォーム展開(d-game、GREE、mixi、mobage、mobcast、entag)が進み順調な立ち上がり。11月にはネイティブアプリ第2弾として「千年の巨神」の配信を開始した(iOS版、Android版)。
 
 
 
前年同期比0.5%の減収、同72.3%の経常減益
既存タイトルの健闘で前年同期並みの売上を確保したものの、今期投入の新タイトルの開発費及び来期投入予定の新タイトルの開発費(労務費及び外注費)を中心に売上原価が同21.0%増加。人件費及び採用費の増加で販管費も同11.1%増加し利益を圧迫した。もっとも、労務費、外注費、人件費、及び採用費の増加は予算の範囲内であり、コストコントロールは機能している。

尚、第3四半期末(14年9月末)の全従業員数は190名(うち業務委託等17名)。構成比は、エンジニア28%、デザイナ33%、ディレクタ24%、管理等15%。効率的配置を念頭に人員の最適化を進めると共に、引き続き厳選しつつも積極的な採用を実施していく考え(従来、採用は紹介会社に依存していたが、足元、社員紹介プログラムの導入等で採用費抑制効果が顕在化しつつある)。
 
 
 
第3四半期末の総資産は前期末に比べて6億円減の34億21百万円。借方では、予定納付による未払法人税の支払い等で現預金が減少する一方、本社移転や貸付金の増加で固定資産が増加した。借方では、未払法人税等が減少。第3四半期末の自己資本比率は88.0%と前期末に比べて3.6ポイント改善した。
 
 
2014年12月期業績予想
 
 
第4四半期(10-12月)は来期の業績を見据えて先行投資を積み増し
ブラウザアプリ市場が縮小傾向にある事を踏まえて既存タイトルの第3四半期比減収を想定しているが、「バハムートクライシス」のブラウザ版が伸びる他、プロモーションを本格化させる「千年の巨神」や配信を開始するネイティブ版「バハムートクライシス」の寄与が見込まれる。一方、損益面では、引き続きコストコントロールに努めるものの、来期の飛躍に向け、先行投資が増加する。具体的には、開発関連費用と広告宣伝費(新規タイトルに集中)が計5億程度増加する見込みで、内訳は開発費関連費用が1~2億円、広告宣伝費が2~3億円(効果を踏まえて柔軟に増減させる考え)。
 
 
上記の結果、通期業績予想に変更はなく、売上高65億円、営業損益の均衡を見込んでいる。配当は未定。
 
(2)第4四半期のタイトル別見通し
タイトル別では、既存のブラウザアプリについては、運用体制の一段の強化で収益の向上を図るが、市場が縮小している事を踏まえて漸減傾向が続くとみている。一方、新規タイトルについては、14年7月に事前登録を開始したネイティブアプリ「千年の巨神」が配信を開始した(事前登録数は10万を突破)。また、14年6月にブラウザ版の配信を開始した「バハムートクライシス」は、第4四半期にネイティブ版(iOS、Android)の配信開始を予定している。一方、14年5月にiOS版の配信を開始したネイティブアプリ「ぼくのレストラン3」は大型アップデートとチューニングを実施中。完了後にAndroid版の配信を開始して、プロモーションを本格化する予定。本格的な収益貢献は15/12期以降になる見込み。
 
(3)海外展開  国内での課金開始後に、第1弾として「千年の巨神」の配信を開始
 
海外での配信は、ローカライズを進めている「千年の巨神」から実施する予定で、日本でのKPI(マネジメントする上で重視している指標。)を確認した後、速やかに配信を開始する予定。また、現在開発中のネイティブアプリについては、韓国・中国以外のアジア市場へも順次展開していく計画で(グローバル配信)、地域・ジャンルに応じて、大手パブリッシャー経由での配信を考えている。

尚、オフショア開発と現地でのアプリ配信及び運営を目的に、2013年11月に韓国子会社(ソウル)を、2014年4月に中国子会社(上海)を、それぞれ設立した。現在、韓国子会社が2タイトル、中国子会社が1タイトルを開発中である。ちなみに、日中韓3カ国合計のモバイルゲームマーケットは、今後数年以内に、世界のモバイルゲームマーケットの半分を占めると言われている。
また、14年7月には、CSQA(CS = Customer Service、QA = Quality Assurance)の実施による品質向上及びコスト削減を目的にタイ子会社を設立した。子会社3社は連結決算の対象となっていないが、今後、「重要性の原則」の観点から、必要に応じて連結決算に取り込んでいく考え。
 
 
 
今後の注目点
国内ソーシャルゲーム市場はブラウザゲームの成熟で成長率が鈍化しているものの、ネイティブアプリをけん引役に市場拡大が続くとみられている。同社は、豊富な経験値を持つブラウザアプリで足元を固めつつ、ネイティブアプリの育成により市場の成長力を取り込んでいく考え。
上期(特に第2四半期)はブラウザアプリの主要タイトルで売上が急減し業績予想の下方修正を余儀なくされたが、これは市場環境によるものではなく、内部要因によるもの。実績のある開発要員を新タイトル(ネイティブアプリ)にシフトさせたが、ナレッジや各種ノウハウの共有が不十分だったため、女性ユーザの比率が高いシミュレーション系アプリにおいて継続率の維持向上に不可欠なアートワークの品質が低下した他(いかに可愛く見せるか等)、課金率に影響するイベントバランスも悪かった。このため、「各種ノウハウの教育と共有」、「アートワーク品質向上」、及び「イベントバランス修正」といった社内体制の安定運用体制の再構築に取り組んだ。
短期間で課題を克服し、第3四半期決算において、ブラウザアプリのテコ入れの成果を示す事ができた。第4四半期は、“成長軌道に回帰するためのエンジンとなるネイティブアプリで成果をあげる事ができるか” に注目したい。