ブリッジレポート
(2428) ウェルネット株式会社

プライム

ブリッジレポート:(2428)ウェルネット vol.3

(2428:東証2部) ウェルネット 企業HP
宮澤 一洋 社長
宮澤 一洋 社長

【ブリッジレポート vol.3】2014年6月期業績レポート
取材概要「前回に続き同社及び同業他社の業績、時価総額、株価指標、株価推移を比較してみた。前回は同社のPER、PBRはGMOペイメントゲイトウェイには・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年10月7日掲載
企業基本情報
企業名
ウェルネット株式会社
社長
宮澤 一洋
所在地
東京都千代田区内幸町1-1-7
決算期
6月末日
業種
サービス業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年6月 7,600 1,473 1,488 913
2013年6月 6,866 1,393 1,420 759
2012年6月 6,254 1,198 1,278 728
株式情報(10/3現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
1,722円 9,727,846株 16,751百万円 11.3% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
48.00円 2.8% 95.08円 18.1倍 838.43円 2.1倍
※株価は10/3終値。発行済株式数は直近期決算短信より(発行済株式数から自己株式を控除)。ROE、BPSは前期末実績。
 
ウェルネット株式会社の2014年6月期決算概要、2015年6月期業績見通し、中計の進捗状況等について、ご紹介致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
消費者が商品やサービスを購入した際の電子決済スキームを販売事業者に提供。
「リアルタイム」と「ワンストップ」をキーワードに、商品やサービスを購入する消費者には時間と場所の制約を受けずに、いつでもどこでも欲しいものを購入できる「利便性」を、直接の顧客である販売事業者には「販売機会の極大化」を可能とする「快適な直売プラットフォーム」を提供することを基本コンセプトに事業を展開。
主力サービスであるマルチペイメントサービスは、国内大手航空会社、大手高速バス会社、大手通販会社等豊富な導入実績を誇る。創業以来、常にチャレンジを続ける企業DNAも大きな特徴。
 
【沿革】
北海道のガス、燃料販売会社の(株)一高たかはしの、新規事業開発をミッションとした子会社として誕生。
当時すでにコンビニエンスストアの店頭での公共料金の支払い取り扱いは始まっていたが、これが通信販売に拡大するとの動きを捉えて事業化に着手した。
請求書の印刷・発送から収納情報の処理まで一貫運用する「請求書発行代行サービス」、コンビニエンスストアの店頭で24時間365日支払が可能な「コンビニ収納代行サービス」を開発。販売事業者にとっては多額な開発コストのかかる収納システムを無償で配布したことにより、同社システムは急速に普及した。
続いて、紙の請求書を使用せずリアルタイムで電子請求・電子決済を同社1社との接続で実現できる、現在の中心システムを開発。利便性及び様々な収納機関と接続するための開発や契約が不要な点が評価され、航空会社、バス会社等による導入が進み、業績は順調に拡大。2004年JASDAQに上場した。
その後も、Amazon、ヤフーショッピング、楽天オークション、LCC(格安航空会社)といった大手企業への「マルチペイメントサービス」提供が進んでいる他、数多くの実績を誇るケータイチケットサービスの提供等、近年急速に進んでいる電子チケットサービスにも注力している。
 
 
【市場環境】
経済産業省の「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(2013年9月27日発表)によれば、日本の消費者向け電子商取引市場(B to C)の市場規模は2012年9.5兆円で、前年に比べ12.5%の増加となった。2007年の5.3兆円から毎年10%内外の伸び率で着実に拡大している。
 
 
また(株)野村総合研究所が公表している、2017年度までのIT主要市場の規模とトレンドついての展望(2012年11月21日発表)によると、2012年から2017年までの「B to C市場」の年平均成長率は11.1%で、2017年の市場規模は17.3兆円(2012年10.2兆円)と予測している。

一方経産省調査によれば、EC化率(商取引のうちどの程度がインターネットを通じて行われているか)は小売・サービス業全体で3.11%とまだまだ小さい。
これらのことから、電子商取引の伸び率は当面年率10%程度のスピードで拡大していくと見られている。
 
 
【事業内容】
「リアルタイム」と「ワンストップ」をキーワードに、サービスや商品を購入する消費者には時間と場所の制約を受けずに、いつでもどこでも欲しいものを購入できる「利便性」を、同社の直接の顧客である販売事業者には「販売機会の極大化」を可能とする快適な「直売プラットフォーム」を提供している。

提供するサービスは①マルチペイメントサービス、②オンラインビジネスサービス、③電子認証サービスの3サービスから成る。
 
(1)マルチペイメントサービス
「売上高7,056百万円、売上構成比92.8%(2014年6月期実績)」
 
 
必要なソフトウェアは同社が無償で提供するため、顧客である販売事業者はシステム開発に係る経費と時間を大幅に軽減できる。
同社の受取手数料(売上高)は、初期設定料、月額基本料金、1決済毎の手数料などで構成されている。また手数料は固定制と従量制で構成されているため、事業者の初期投資を低減させている。
 
①E-Billing(電子決済)サービス
Billingサービスとは異なり、決済に必要な請求書の作成及び郵送を行うことなく、ウェルネットサーバとコンビニエンスストアに設置されているKIOSK端末、POSレジ、ATMでの現金決済や、ネットバンキング、クレジットカード、電子マネー等を利用して決済を行うサービス。
 
<各利用方法>
◎KIOSK端末の場合
消費者がインターネット等で注文や予約をし、その際に示された決済番号を端末に入力すると、注文内容が画面表示される。その内容が正しければ「確認」ボタンを押すと、バーコード付受付票が出力されるので、その後その受付票を持ってレジで代金を支払う。
◎POSレジ&ATMの場合
レジで店員に「オンライン決済」と告げるとPOSレジのタッチパネルにテンキーが表示される。そこに消費者が決済番号を入力すると、画面に注文内容が表示される。内容が正しければ「確認」ボタンを押して代金を支払う。ATMの場合もほぼ同様の画面操作を行い、現金またはキャッシュカードで代金を支払う。
 
<メリット&特徴>
請求書や払込票を作成、送付する手間とコストを掛けること無く、リアルタイムの電子請求・電子決済を同社1社との接続によりワンストップで実現できる。
販売事業者は様々な収納機関(コンビニ、銀行、郵便局等)と接続するための開発や契約を個別に行う必要がなく、同社との契約のみでさまざまな決済手段を消費者に提供できる。
情報授受用モジュールは同社が無償提供。
最新の決済システムの開発や対応は同社が行うので、都度のシステム開発が不要。
延滞金や追加購入した場合等、収納内容(金額)に変更があった場合でも、同社の特徴である「リアルタイム」での対応により最新の金額による決済が可能。
2000年5月にサービス提供が開始されたこのサービスは、後述のように国内主要航空会社、主要高速バス会社、電力会社、大手通信販売会社等で利用され豊富な実績を誇っている。
 
②Billing(コンビニ収納代行・請求書発行代行)サービス
A:コンビニ収納代行サービス
同社のバーコード付払込取扱票付請求書を発行するシステムと同社が契約するコンビニなどの請求代金回収経路を通じて、売掛金の回収業務を代行するサービス。
コンビニ・郵便局で支払可能なバーコード付払込取扱票付請求書は、同社が開発した払込取扱票発行・収納情報受信ソフト「コンペイ君」を使用することで、販売事業者自身が自ら簡単に印刷することができ、かつ入金情報受信及び入金消込も「コンペイ君」で行うことができる。
収納情報は、支払いがあった翌営業日(郵便局からの振込は2営業日後)に配信され、入金消込処理が自動化される。
現在、通信販売をはじめ燃料代金・各種会費等の主として後払い代金収納に利用されている。
 
<メリット&特徴>
全国のコンビニエンスストア(16チェーン。2014年6月時点)で24時間365日支払可能なので、郵便局・銀行の営業時間を気にする必要が無い。
パッケージソフトウェア「コンペイ君」を無償で提供するため、販売事業者は約1か月で運用開始可能。
自社で払込取扱票を印字でき、収納データもバーコードの数字だけなので顧客情報漏洩の心配が無い。
 
B:請求書発行代行サービス
同社がバーコード付払込取扱票付請求書(銀行振込の場合は払込依頼書付請求書)の印刷・封入・封緘・郵送までを代行し、かつ入金確認及び入金消込まで、トータルに請求書発行・収納業務をサポートする。
特に物流を伴わないサービス等(ガス料金、各種会費)の代金収納に利用されている。
また、情報授受と収納情報授受を自動的に行うサービス(請求書発行・収納代行パッケージ「ところくん」)も提供している。
 
③ネットDE受取(送金)サービス
キャンセルに伴う返金など、販売事業者から消費者への振込をインターネットを利用して、より効率的に行うサービス。
消費者は販売事業者から受け取ったIDを利用して専用サイトにアクセスし、振込みを受けるための口座情報を入力する。
 
<メリット&特徴>
消費者が入力した情報をもとに口座確認が行われ、自動的に振込処理が行われるため、販売事業者自らが口座確認を行う必要が無く、事務負担が軽減される。
返金処理の当日対応が可能なため、販売事業者にとっては顧客満足度向上につながる。
販売事業者は返金システムの開発が不要。
口座情報を保持する必要もないため、個人情報保護に関するリスクを低減できる。
 
④コンビニ現金受取(送金)サービス
「ネットDE受取サービス」同様、販売事業者から消費者へキャンセルに伴う返金などを行うサービスだが、「ネットDE受取サービス」と異なり、銀行口座が不要。
ローソンの店頭KIOSK端末「Loppi」に消費者が販売事業者から交付された現金受取番号とIDを入力し、発行された引換券を店頭レジへ持参すると現金を受け取ることができる。
 
<メリット&特徴>
販売事業者は消費者の口座情報を持つリスクを回避できる。
郵便振替や銀行振込の手数料が発生しないことから、コスト削減が可能。
口座情報の誤りによる差し戻しなども発生せず、スムーズに返金を受け取ることができる。
 
⑤その他サービス
マルチペイメントサービスを特定の販売事業者向けにカスタマイズし、運用まで含めたサービス提供を行っている。
 
(2)オンラインビジネスサービス
「売上高500百万円、売上構成比6.6%(2014年6月期実績)」
 
①PINオンライン販売サービス
コンビニの店舗に設置されているPOSレジ・KIOSK端末と同社サーバー間のネットワークを利用し、携帯電話・国際電話・電子マネーなどのプリペイドカードをオンラインで販売するサービス。
 
②プリペイド方式のギフトカード販売サービス
コンビニの店舗に設置されているギフトカードモールで取り扱う、POSレジでPINをアクティベートすることで使用可能になるゲームや音楽購入用のギフトカード販売サービス。
 
<メリット&特徴>
オンライン販売により、従来のようにあらかじめカード形式のプリペイドカードを仕入れる必要がない。
販売時点の仕入となるため、キャッシュ・フローを大きく改善させると同時に欠品がなくなる。
取り扱うカードの増加、変更などが容易となるなど、オンラインシステムならではのメリット多数。
 
③各種申込サービス
コンビニに設置されているKIOSK端末を利用し、漢字検定、英語検定といった検定試験や大学受験、模擬試験などの各種申込を行うことができ、決済までをあわせてワンストップで行うことができるサービス。
 
(3)電子認証サービス
「売上高43百万円、売上構成比0.6%(2014年6月期実績)」
 
①電子チケットサービス
スマートフォンや携帯電話の画面に表示される二次元コードをチケットなどに利用できるシステム。
マルチペイメントサービスと一緒に利用すると、申込~決済~チケット受取の全てをスマートフォンや携帯電話、PCで完結できる。
消費者がインターネットでチケット等を予約しマルチペイメントサービスで決済を済ませると携帯電話にメールが配信される。メールに記載されたURLにアクセスすると、二次元コードのチケット画面を取得でき、取得した二次元コードをコードリーダーにかざすことで入場認証を行う。
 
<メリット&特徴>
紙のチケット・クーポン・会員証の製作及び送付が不要。
受付からチケット発行までがオンラインで処理できるため開催まで間際まで販売できる。
ペーパーレスなので環境に優しい。
入場記録が残るのでマーケティングデータとしての利用が容易。
同社では、航空券用QRコードを日本で初めて実用化。以降、Jリーグ、札幌ドーム向けの大規模入場認証システムに豊富な実績がある。
 
②「SUPER SUB」サービス
チケット発行・決済・認証をワンストップで提供するオンラインチケットソリューション。
個別開発やサーバのつなぎ込といった複雑なステップが不要なため、企業のみならず一般個人も主催者登録が可能。
航空会社、バス会社といった既存の大口事業者に加え、低コストで効率的に利用事業者数を増大させることを狙い、2012年6月に提供を開始した。
 
<メリット&特徴>
イベント等の主催者は、開催期間、会場、チケット単価など基本的情報を同社が提供する登録画面に入力するだけで、簡単にイベント受付、チケット受付・販売ページを作成することができる。(現在はPCサイトのみ)
同画面のリンクを自分のイベントページに設置するだけでチケット販売を開始できる。
参加申込者はPC、スマートフォン、携帯電話からチケットを購入できる。
発券されたチケットにはQRコードが付き、専用のアプリで入場認証を行う。確実に認証でき、スムーズなイベント運営をサポートする。
マルチペイメントサービス同様、豊富な決済手段を提供している。
申込から導入、チケット発売までおおよそ3週間程度と短期間で稼動させることができる。
初期費用、月額基本料は無料。コストはチケット発行手数料の5%のみで、運用コストは格安。
 
常設施設の入場券のみならず、期間限定イベント、ライブ、講演会・セミナー、地域イベント、有料パーティー、同窓会など、10~5,000人規模のイベントに適している。
 
 
同社のROEは市場平均を上回り高水準である。レバレッジが2倍を上回っており(自己資本比率は前期38.2%)、これが要因と見られるかもしれないが、同社の場合、収納代行預り金が現預金と流動負債に両建で計上されているためであり、これを考慮すると財務は極めて安定しており、高ROEの主要因はその高い売上高純利益率である。

後述のように、同社は2016年6月期、営業利益20億円、ROE15%を目標として掲げている。
2014年6月期末の自己資本は8,156百万円、当期純利益が913百万円であった。
913百万円の50%にあたる456百万円が自己資本から流出すると、自己資本は77億円となる。
今期、来期ともに利益を全て還元すると自己資本が積み上がることはないため、2016年6月期の営業利益が20億円となれば、当期純利益は12億円程度と試算され、ROEは約15%になると会社側は説明している。
 
 
特徴と強み
 
①豊富な導入実績&強固な顧客基盤
同社のマルチペイメントサービスは、導入時の開発費および収納機関との個別契約が不要というハードルの低さが評価され、下記の様に業界を代表するリーディングカンパニーに導入されている。
特にリアルタイム性が求められる航空会社、バス会社からの評価の高さは同社にとって大きな財産となっている。
この強固な顧客基盤は同社を支える重要な「見えざる資産」と評価できるだろう。
 
 
②常にチャレンジを続ける企業DNA
E-Billingサービス、Billingサービス、各種送金サービス、ケータイチケットサービスなど、同社の開発した様々なシステムはほぼ全てが日本で初めて実用化されたものとなっており、加えて同システムの優秀さは、上記実績が証明している。
同社は大企業の系列であるわけではなく、ヒト・モノ・カネといった経営資源が決して豊富な状態でスタートした訳ではない。
にもかかわらず電子決済の分野で「デファクトスタンダード」とも言える地位を確立することができた大きな要因の一つには、同社が創業時から生まれ持つ、「常にチャレンジを続ける」という企業DNAがあるのだろう。

宮澤社長は、ビジネスの意味、醍醐味を「自分の可能性を信じ続け、自分があったら便利だなと思う仕組みを自らリスクをとって開発し、すぐに提供できる具体的な形として提供する事」と考えている。
また、インタビューの中でも、「自社でなければできないものを世の中に送り出す事こそが同社の存在意義であり、それが無ければ企業として存在する意味が無い」と述べていた。

社員数は80名弱と小さな所帯ではあるが、後述する「ウェルネットアレテー」に代表される理念、心得をしっかりと掲げていることも企業DNA継承のカギとなっていると思われる。
 
 
2014年6月期決算概要
 
 
マルチペイメントサービスが牽引し、増収・増益。計画も上回る。
売上高は前期比10.7%増収の76億円。EC市場の拡大に支えられ、マルチペイメントサービスが牽引した。
売上原価は同12.5%増、販管費も同9.3%増加したが増収効果で吸収し、営業利益は同5.8%増加の14億円だった。期初計画に対しても、売上・利益とも上回った。
「中期経営3か年計画」にあるとおり、目標配当性向50%を勘案し、1株当たり期末配当を47円とした。従来は40円。前期実績は25円。
 
 
<マルチペイメントサービス>
EC市場の拡大に支えられ、堅調な伸びとなった。
ジェットスター、Peach AviationなどLCC(格安航空会社)に加えJAL、ANAなど大手航空会社も好調。
同社の主要顧客である路線バス会社も好調だった。
2013年10月より新サービスとなる「コンビニ現金受取サービス」を開始した。まずは円滑なオペレーションを行うために取扱額の上限を9,999円としている。定着および収益貢献は今期(2015年6月期)後半からと考えている。
 
<オンラインビジネスサービス>
プリペイド型のPINオンライン(SNSやオンラインゲーム用電子マネー)の販売は減少した。
一方POSでPINをアクティベートする(コンビニなどのレジで金額をチャージする)ギフトカードの新サービスは順調だが、取り扱っているコンビニエンスストアがまだ少ない事などからPINオンラインの減少を埋めることはできなかった。
 
<電子認証サービス>
Jリーグ電子チケットサービスの提供が終了したことに伴い減価償却負担も減少した。電子決済にいかにして付加価値を付け加えるかという観点から、予約から電子決済及びチケット発券までのパッケージである「SUPER SUB」の拡販、シリーズ化に注力した。
 
 
現預金などの増加により流動資産は8億円の増加。現預金には回収代行業務に係る収納代行預り金(翌月には事業者へ送金される。)104億円が含まれている。収納代行預り金は14億円増加。
固定資産はソフトウェア、長期前払費用などの増加で1億円増加し、総資産は9億円増加した。
負債は、営業未払金(PINオンライン販売サービスにおけるPINの券面額に対する債務)の減少、収納代行預り金の増加などで流動負債が8億円増加し、負債合計は7億円増加した。
この結果、自己資本比率は前期末の39.2%から1%低下し38.2%となった。
(ただし、上記収納代行預り金を資産、負債から控除して計算すると、前期末69.8%、当期末74.7%となる。)
 
 
収納代行預り金の減少などで営業CFのプラス幅が縮小。有価証券の取得、定期預金の預入などで投資CFのマイナス幅が拡大し、フリーCFのプラス幅も縮小した。
 
(4)トピックス
◎自己株式の消却
2014年8月14日、資本効率の向上、一株当たりの株主利益増大を目的とし、自己株式30万株(普通株式。消却前発行済株式総数に対する割合2.97%)の消却を決定し、8月29日に実施した。
消却後の発行済株式総数は980万株、自己株式数は72,154株となっている。
 
◎新日本フィルハーモニーの公演チケットの決済・発券に「マルチペイメントサービス」を導入
公益財団法人新日本フィルハーモニー交響楽団が運営する、WEBサイト上で予約される公演チケット代金のクレジット決済、およびコンビニエンスストアにおける決済・発券サービスを開始した。
サービス導入に伴い、コンビニエンスストアでの決済のみならず、クレジットで決済を行った際も、コンビニエンスストアでの発券が選択できるようになった。
 
 
2015年6月期通期業績見通し
 
 
増収・増益を計画。今期も純利益9億円を100%株主に還元。
売上は、前期比7.9%増の82億円。オンラインビジネスは減収が続くが、主力サービスであるマルチペイメントサービスは、航空会社、バス会社等主力顧客を中心に引き続き堅調な成長を見込んでいる。
PIN販売減少の影響を中心に粗利は減少するが、札幌で行っている開発体制を、従来のスピード最優先から競争力強化・効率性向上も重視したものに変革させるため年間3億円程度かけている外注費を縮小し、内製化を進めること等から販管費も減少するため、営業利益は同5.2%の増益を計画している。
同社が注力している「バスIT化プロジェクト」は最後の詰めの部分でやや時間がかかっているが稼動段階に入っている。
中期経営3か年計画の配当方針に従い、純利益925百万円全額を株主に還元する予定。
配当性向を50%とし(前期50.8%)、1株当たり配当は前期比1円増配の48円へ。残額全てを自己株式の取得および消却に充当する。
 
 
 
中期経営3か年計画の中間報告
 
◎中期経営3か年計画の成長戦略
成長を支える両輪として、①次世代を担うビジネススキームの確立、②カイゼン(機能拡充・システムの安定運用・コストパフォーマンスの向上=筋肉質の企業体質作り)の2つを掲げている。
 
次世代を担うビジネススキームの開発(バスIT化プロジェクト)
①バスの革新的直売モデルをバス事業者と一体となって推進
同社は2001年3月、都市間高速バスの予約済みチケットを24時間コンビニで購入できるサービスを日本で初めて実用化し、以降100社を超えるバス事業者と契約、数百路線のバスチケット発券を行っている。また、電子チケット領域においては航空券用ケータイチケットを皮切りに、たとえば札幌ドームなどでチケット発券・認証の実績とノウハウを積み重ねてきた。

これらノウハウの集大成ともいえる大規模な統合モデルを都市間高速バス向けに開発中。
都市間高速バスの市場規模は1~1.5兆円程度と同社では考えている。
このモデルはバス事業者・利用者双方の利便性を飛躍的に高めることができる革新的なサービスで、新たな需要も掘り起こすもの。
バス利用者は、安心・確実に目的地までのバス便を検索・予約できる一方、バス事業者も、効率的な在庫管理をリアルタイムで行い、販売機会の増大と確実な決済を行う事が出来る。
長年培ってきた信頼関係をベースにバス事業者と協働してマーケティング、プロモーションを行っていく。
 ↓
リリースは当初予定よりややずれ込んでいるが稼動段階に入っている。
②コンシューマ向けサービスの開発・提供
同社が手掛けてきた決済サービスのコアは、事業者向けの販売代金回収モデルが主流だが、これに加え便利なコンシェルジュ機能をスマートフォンのアプリケーションとして提供することで、支払者となるコンシューマ側に立った支払代行サービスの提供を開始する。
 ↓
当初計画よりもリリースは遅れている。
 
カイゼン(機能拡充・システム安定運用・コストパフォーマンス向上)
③バリュートランスファープラットフォームの機能拡充(既存サービスの拡充)
指定された銀行口座へ入金することで瞬時に返金できる「ネットDE受取」に加え、銀行口座以外で受取が可能となるような受取手段の拡充を目指す。
これにより銀行口座がなくても送金できるようになるため、送金ニーズに幅広く対応することができるようになる。
マルチペイメントサービスに新たな付加価値が加わることになるため、収納代行の拡大に繋がると考えている。
 ↓
「コンビニ現金受取サービス」をリリース(2013年10月)
④システム安定運用・コストパフォーマンス向上
データセンターが処理するデータ量はここ数年飛躍的に増加。また同社サービスはリアルタイム処理が大きな特徴でもあることから、システムの安定運用は極めて重要と認識している。
そのため、「安定運用」と「運用コスト軽減」を同時に実現する社内体制の整備と教育訓練などを札幌事業所の重点課題として取り組む。
具体的には2年間をかけて開発した「原価構成分析システム」で可視化されたスキーム毎の設備投資効率・原価測定に基づき、運用の自動化・効率化を推進すると共に、必要に応じてサービスの統廃合を行っていく。
 ↓
稼動段階に入っている。
 
◎データセンター移転の進捗状況
上記にあるシステムの安定運用とコストパフォーマンス向上のためのデータセンターの移転は遅れていたが、「2014年10月データベースの移転完了」、「2014年12月マルチペイメント移転完了」を経て、2015年4月に全ての移転を完了させる予定としている。
 
◎成長シナリオ達成に向けた体制・ガバナンス
成長戦略の両輪(「事業開発」と「カイゼン」)を強力かつスピーディーに推進するために、これら関連プロジェクトを社長直轄として推進することとしている。
また、若手社員の積極的な登用とともに、必要な人材は外部にも求め「想いを共有できる人」を採用し、目標を達成できる体制を整え、目的達成へのモチベーション高揚のためにストックオプションなど諸施策も有効に活用する考えだ。

社員教育にも力を入れており、会社としての存在意義と社員の行動指針を“ウェルネットアレテー”として定め実効性のあるガバナンスを実現しているが、これを改めて徹底させる。
(アレテーとはギリシャ語で、「徳」、「優れた者」、「卓越したもの」を意味する。)
 
*ウェルネットアレテー
“あったら便利なしくみ”を作り続けることで社会に貢献します。
その「しくみ」を広く世の中に提案・普及させます。
そこから得た「利益」を社員、株主、次の投資として配分します。
*ウェルネット社員アレテー
既成概念にとらわれず発想します。
まず自分の頭で考え、全体最適な提案をします。
議論はオープンに行い「決めるべき人」が決め、組織として実行します。
「誰が」「何を」「いつまでに」を常に明確にします。
実行結果を検証し、さらに改善、を繰り返します。
報告は正直、正確、迅速に行います。
提供役務と対価を文書化して合意後に取引を行います。
清廉を旨とし、接待、贈り物を受けません。
 
◎数値目標
1年目、2年目に戦略的投資を実施し、最終年度2016年6月期営業利益20億円達成を目指している。
2014年6月期の期初目標は14.5億円だったが、実績は14.7億円と上回った。
達成に向け全社一丸で取り組んでいるということだ。
 
 
◎株主還元
○株主へ中期経営計画中の利益を100%還元
信用力維持、中核事業の拡充、新規事業開発の原資として今後も必要十分な手元資金は維持していくが、すでに財務面の健全性は十分に備わったと判断しており、今後は、株主への還元を今まで以上にダイナミックに行うこととし、中期経営計画中の利益は100%株主に還元する。

具体的には下記の2施策を実行する。
A) 中期経営計画中の配当性向を特殊要因は除いて、従来の33.3%から50%に引き上げ、株主への安定的で高い配当利回りを目指す。
B) 税引後利益のうち、配当後残額のすべてを自己株式の取得・消却に充当し、利益の100%を株主に還元する。
現状保有する自己株式は売渡請求用の自己株式、株式給付信託「J-ESOP」等を除き消却し、新たに取得した自己株式は、用途を目標達成のためのストックオプション等に限定し、その他は消却する。

○ROE目標15%(2016年6月期)
成長戦略の着実な推進、収益力の強化、配当額増加、自己株式の取得・消却を実施し、ROEの向上およびEPSの増加を目指す。
 
 
今後の注目点
前回に続き同社及び同業他社の業績、時価総額、株価指標、株価推移を比較してみた。
前回は同社のPER、PBRはGMOペイメントゲイトウェイには及ばないものの、電算システム、東証1部の加重平均を上回っていたが、直近ではPER、PBRは電算システムを下回り、時価総額もほぼ同水準となっている。
直近3カ月、6カ月の相対株価もTOPIXをアンダーパフォームしており振るわない。
その要因としては、今期業績の伸び率が他2社に比べ低いこと等があるかもしれない。(GMOペイメントゲイトウェイはその前の急上昇の調整で、直近3カ月程度を見るとウェルネットをアウトパフォームしている。)

ただ、今期は3か年計画最終年度の「営業利益20億円」を達成するための仕込みの年と位置づけられるため、中長期投資家としては同計画の進捗を見守ることが必要だろう。その意味では、やや遅れ気味の「バスIT化プロジェクト」の正式リリースがいつになるかが大いに注目される。