ブリッジレポート
(8275) 株式会社フォーバル

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ブリッジレポート:(8275)フォーバル vol.47

(8275:東証2部) フォーバル 企業HP
大久保 秀夫 会長
大久保 秀夫 会長
中島 將典 社長
中島 將典 社長
【ブリッジレポート vol.47】2015年3月期第1四半期業績レポート
取材概要「同社の今第1四半期決算を振り返ると営業利益が前年同期比70%以上増加するなど非常に好決算となった。既存3事業において全てのセグメント利益が・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年9月16日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社フォーバル
会長
大久保 秀夫
社長
中島 將典
所在地
東京都渋谷区神宮前 5-52-2 青山オーバルビル
決算期
3月
業種
卸売業(商業)
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年3月 39,443 1,481 1,486 1,110
2013年3月 35,193 1,180 1,232 791
2012年3月 34,695 843 846 587
2011年3月 32,287 681 665 464
2010年3月 32,206 523 478 449
2009年3月 34,358 112 17 -1,879
2008年3月 34,323 -933 -1,264 -532
2007年3月 26,216 -1,878 -2,012 -1,390
2006年3月 27,500 3 14 1,063
2005年3月 40,089 1,962 1,962 1,174
2004年3月 32,981 1,446 1,360 660
2003年3月 37,402 1,522 1,334 443
2002年3月 44,411 -860 -1,027 -4,756
2001年3月 52,045 1,026 699 86
2000年3月 54,668 1,278 1,281 1,122
株式情報(8/28現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
901円 13,263,125株 11,950百万円 18.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
22.50円 2.5% 83.71円 10.8倍 450.63円 2.0倍
※株価は8/28終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROEは前期末実績。
 
フォーバルの2015年3月期第1四半期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
中小・中堅企業を対象とした経営コンサルティングサービスや海外進出支援サービスの他、ITを活用し経営を高度化・効率化する手段として、オフィス向けの光ファイバー対応IP電話サービスやFMCサービス(固定通信と移動体通信を融合したサービス)、ならびにそれらとネットワークセキュリティを融合したIP統合ソリューションなどの通信・インターネット関連サービスを提供するほか、OA・ネットワーク機器の販売・工事、携帯端末の取次ぎ、Web構築、太陽光システムやオール電化製品の販売・工事などのサービスを提供している。社名のFORVAL(フォーバル)は、「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業を目指す」という経営理念が込められている。

事業は、(株)フォーバルを中心に、中小法人向けOA・ネットワーク機器の販売、サービスの取次、コンサルティングサービス等を手掛けるフォーバルビジネスグループ、(株)フォーバルテレコムを中心に、VoIP・モバイル等の通信サービス、インターネット関連サービス、普通印刷、及び保険サービス等を手掛けるフォーバルテレコムビジネスグループ、(株)リンクアップを中心にモバイルショップにおいて携帯端末の取次等を手掛けるモバイルショップビジネスグループ、14/3期に新たに子会社化した(株)アップルツリーがオール電化・エコ住宅設備の卸・工事請負業を営む総合環境コンサルティングビジネスグループの4セグメントに分かれる。加えて、報告セグメントに含まれないその他の事業セグメントとして人材・教育コンサルティングがある。

近年のハード販売における付加価値の低下を踏まえ、現在、差別化が可能で付加価値も高いコンサルティングサービスへのシフトを進めており、08年4月にサービスを開始したITコンサルティングサービス「アイコン」がその中核となっている。また、コンサルティングサービスの一環として、中小企業の情報化の支援やASEAN展開の支援にも取り組んでおり、前者ではIP統合ソリューションを展開。後者では、10年5月にFORVAL(CAMBODIA)CO.,LTD.(カンボジア・プノンペン)を設立し、以後、11年7月のPT FORVAL INDONESIA(インドネシア・ジャカルタ)及び同年8月のFORVAL VIETNAM CO., LTD.(ベトナム・ホーチミン)の設立、更には12年3月のミャンマー駐在員事務所(ミャンマー・ヤンゴン)、その他ベトナム2番目の拠点となるハノイ支店の開設とネットワークの拡充を進めている。
平成26年1月24日に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)から市場第二部へ市場変更となった。
 
 
 
成長戦略
 
同社は、「『情報通信コンサルタント』として企業経営を支援する集団となり、中小・中堅企業の利益に貢献する」というグループのビジョンを掲げ、機器販売からコンサルティングを中心にした経営支援へビジネスモデルの転換を進めている。機器販売を中心とした保守・サポートビジネスは参入障壁が低く、周辺事業へのビジネスチャンスも限られてしまう。そこで、同社グループが取り組んでいるのは、ARPUの上昇とビジネス範囲の拡大が期待できる、ITコンサルティングサービス「アイコン」を通しての進化であり、企業経営そのものを支援する。「アイコン」においては様々なサービスを提供しているが、特に情報通信の知識・技術を駆使した経営コンサルと強みである独自の海外進出ノウハウを活用した経営コンサルに注力し顧客企業の経営支援をしながら関係強化に取り組んでいる。
更に、M&Aを通じて、新規事業である人材・教育コンサルティングと環境コンサルティングを事業ポートフォリオに加えたことで、経営コンサルティングカンパニーへの基盤が強化された。
 
 
同社は国内の中小・中堅企業経営者に対し、下記の経営コンサルを提供している。
・情報通信の知識・技術を駆使した経営コンサル
・総合的な経営コンサル
・独自の海外進出ノウハウによる経営コンサル
・社内の人材問題に対応する経営コンサル
・環境に対応する経営コンサル
 
(1)情報通信コンサルティング(アイコンサービス)
「アイコンサービス」開始以降、利用する顧客数やアイコン関連の売上高は順調に拡大している。また、よろず経営相談の件数も増加しており、情報通信コンサルタントとしての同社の認知度も高まっている。アイコンサービスの増加は、よろず経営相談の増加につながり、更には、本格的な経営コンサルの増加へつながり、差別化、顧客囲い込み、高付加価値化などにつながる可能性が高い。
 
 
よろず経営相談件数は14/3期に2,000件を超えるまで増加。

また、同社では、アイコン事業の更なる拡大・強化のためBRMC(Business Restructuring & Management Consulting)というアイコンのOEMによるネットワーク作りに注力している。同社の差別化された新しいビジネスモデルのノウハウの提供を通じて、パートナー数とアイコンユーザー数の拡大を目指す。14/3月末時点のBRMC経由のアイコン導入件数は、前期末比3.7倍と大幅に増加した。更に、情報処理技術者試験対策を中心としたIT教育サービスを提供する株式会社アイテックを買収するなど、アイコンに足りないコンテンツは今後も積極的にM&Aを活用し補完する方針である。
 
 
(2)海外コンサルティング(グローバルアイコンサービス)
同社の大久保会長は、十分な教育の機会が無いカンボジアにおいて、自らが設立し理事長を務める公益財団法人CIESF(シーセフ)を通して、教育インフラの構築から人材教育に至る広範な支援活動に取り組んできた。
ASEAN進出支援事業は、このCIESFの活動を通じて培った経験や人脈が活きている。「同社グループ及び顧客である中堅・中小企業の事業の成長を考える上で、アジア地域の成長を取り込む事が重要」と言う考えの下、既に、カンボジア(10年5月)、インドネシア(11年7月)、及びベトナム(11年8月)に現地法人を設立しており、12年3月にはミャンマーに駐在員事務所を開設した。
更に、現地での支援体制の更なる充実・強化を図るために13年2月に現地法人の認可を取得し準備を進めてきたミャンマーでは、14年4月より事業活動が本格化した。
 
 
同社のASEAN進出支援事業である「グローバルアイコンサービス」は、海外進出前と進出後の様々な問題や障害を、ワンストップでサポートするビジネスモデルである。現在はカンボジアとベトナム、インドネシア、ミャンマーの4ヶ国で展開。情報提供から始まり、FS支援、現地法人の設立代行、人材採用・人材教育支援、バックオフィス整備支援、ネットワーク環境支援、現地パートナー開拓支援等をトータルサポートすることで、同社が最も得意とする情報通信技術を活用した日本と変わらない快適なオフィス空間を提供するビジネスヘつなげていく。日本と現地の両国で、トータルサポートを実施。
また、同社は、国内の行政機関、地域金融機関や海外の行政機関、各国工業団地などとのアライアンスを積極的に拡大することで、「グローバルアイコンサービス」の潜在顧客を発掘・育成している。
 
 
海外進出支援件数は順調に増加。
 
(3)人材・教育コンサルティング
子会社である(株)クリエイティブソリューションズは、IPネットワーク及びセキュリティ分野の管理者や技術者を通信キャリアやメーカーへ派遣している。加えて、東南アジアへ進出予定の企業に対する在日留学生の人材紹介を行っている。また、13年10月に子会社化した(株)アイテックは、情報処理技術者試験対策を中心にIT教育サービスを提供している。今後は、東南アジア進出日系企業や現地企業に対しアジア共通統一試験(ITPE)合格者の紹介を手始めに、現地で枯渇しているIT人材の育成を行う。今後、これら2社とフォーバル海外グループとの連携を図りシナジー効果を追求する。
 
(4)環境コンサルティング
13年12月に子会社化した(株)アップルツリーは、販売店約400社、その顧客(推計)約12万戸に対して、太陽光システムやオール電化製品の卸・工事請負業を行っている。今後は、フォーバルグループの顧客層への働きかけを強化し、代替エネルギー問題など経営者の環境に対する様々な悩みに応えていく。
 
 
2015年3月期第1四半期決算
 
 
前年同期比14.2%の増収、同47.4%の経常増益
売上高は前年同期比14.2%増の99億87百万円。経常利益は、同47.4%増の2億90百万円。売上面は、アイコンサービスが順調に拡大した一方で、不動産関連の子会社で前年同期にあった大口案件がなくなった影響によりフォーバルビジネスグループで同1.1%減少した。また、通信サービスが減少したほか、商業印刷物の企画等を手掛ける子会社の売上が減少したフォーバルテレコムビジネスグループで同2.3%減少した。更に、スマートフォン等の携帯販売台数が前年同期と同程度となったモバイルショップビジネスグループで同0.1%減少した。一方、オール電化・エコ住宅設備の卸・工事請負業を営む株式会社アップルツリーを新たに子会社化したことにより総合環境コンサルティングビジネスグループで増加した。また、IT教育サービス事業を営む株式会社アイテックを新たに子会社化したその他事業グループでも同24.4%増加した。

利益面は、収益性の高いアイコンサービスなどが増加したフォーバルビジネスグループで前年同期比387.0%の増益となった他、回線系からネット系へと売上構成比が変化したことで利益率が高まったフォーバルテレコムビジネスグループも同10.6%増加した。また、携帯電話の累計販売台数が積み上がったことによりストック収益が増加したモバイルショップビジネスグループで同236.2%増加した。加えて、新たに連結した子会社の寄与で、総合環境コンサルティングビジネスグループ及びその他事業グループのセグメント利益も増加した。アイコン等が順調に拡大したものの、新たに子会社化した企業の影響などにより売上総利益率は、前年同期横ばいの28.8%にとどまった。一方、事業拡大に伴う人件費の増加等があったものの、その他の経費の抑制に努めたことにより、販管費の伸び率が同9.6%増に抑制され、売上高営業利益率は3.0%と同1.0ポイント改善した。その他、持分法による投資損失41百万円の計上などにより経常利益は同47.4%の増益、前年同期に計上した投資有価証券売却益1億64百万円が無くなった影響により、四半期純利益は同46.5%の減益となった。
 
 
収益性の高いアイコン事業の増加や経費の削減により、第1四半期(4-6月期)の業績は拡大傾向。
 
 
14/6月の総資産は14/3期末比29億62百万円減の148億42百万円。資産の減少は、売上債権や未収入金が主な要因。負債純資産の減少は、仕入債務と未払金が主な要因。14/6月末の自己資本比率は40.3%と前期末から4.8ポイント上昇し、財務体質の健全性が高まった。また、14/6月末の有利子負債(リース債務含まず)も3億55百万円と前期末から40百万円減少した。同社は、無借金かつ自己資本比率50%を目標に、財務体質の強化を進めている。
 
 
2015年3月期業績予想
 
 
前期比11.6%の増収、同7.7%の経常増益予想
15/3期の会社計画は、売上高が前期比11.6%増の440億円、経常利益が同7.7%増の16億円の期初予想から変更なし。企業経営を支援する「情報通信コンサルタント」集団として、IP統合商品の更なる普及促進、ビックデータ活用による新サービスの創出、スマートフォンなどの情報通信の活用促進、太陽光発電などの総合環境コンサルティングの提案や東南アジア諸国への進出支援を通じて、売上の拡大を目指す。
売上面は、14/3期中に子会社化した2社が通年で寄与する他、フォーバルビジネスグループにおいてもアイコンサービスなどの経営コンサルティング分野の売上が増加する見込み。モバイルショップビジネスグループは、消費税増税前の駆け込み需要の反動により若干の減収を予想。
利益面は、主としてフォーバルビジネスグループにおける売上高増加による営業利益と経常利益の増加を見込んでいることに加え、総合環境コンサルティンググループも通年で寄与する。利益率の高い「アイコン」の売上構成比が上昇することや、更なる効率化による販管費抑制により営業利益率が若干改善する計画で、営業利益は17億円と同14.8%の増益。当期純利益は、前期に投資有価証券売却益や子会社株式売却益などを中心に特別利益を3億17百万円計上した反動。
配当も、前期と同じ1株当たり年間22.5円の予想を据え置き。
 
 
今後の注目点
同社の今第1四半期決算を振り返ると営業利益が前年同期比70%以上増加するなど非常に好決算となった。既存3事業において全てのセグメント利益が前年同期比増加した。フォーバルビジネスグループにおいては「アイコンサービス」の拡大が、フォーバルテレコムビジネスグループにおいてデータ通信関連の収益の伸びが、モバイルショップビジネスグループにおいてはストック収益の伸びが、セグメント利益の増加に貢献した。同社が拡大を目指している収益性の高い事業の売上が順調に増加しており、プロダクトミックスの変化による利益率の向上が確認された。有言実行で、企業体質を改善させているマネジメント力は評価すべきであろう。一方で、今第1四半期は既存3事業の全ての売上が前年同期比減少する結果となった。フォーバルビジネスグループは不動産関連の子会社の売上減少が、フォーバルテレコムビジネスグループは従来型の通話系の課金収益の減少が、モバイルショップビジネスグループは携帯販売台数の伸び悩みが売上減少の原因となっている。構造改革の過渡期であり、売上の一時的な落ち込みは致し方ないと思われるものの、売上の拡大を伴わない利益の拡大には限界があり、株式市場の評価にも限界があると考えられる。今後の売上拡大には、更なる「アイコンサービス」の拡大、大手販売パートナー戦略による従来型の通話系ストック収益の反転、スマートフォンを中心とする携帯販売台数とストック収益の増加などが必要と思われる。引き続き同社の利益率改善の取り組みに加え、今後は既存3事業の売上動向にも注目したい。
また、前期に子会社化した効果で、今第1四半期に売上が増加した総合環境コンサルティングビジネスグループ及びその他事業グループであるが、現状利益の増加にはあまり貢献していない。既存事業とのシナジー効果で今後事業規模の拡大を目指す新事業であるが、今後の収益性向上の取り組みにも注目していきたい。