ブリッジレポート
(8912) 株式会社エリアクエスト

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ブリッジレポート:(8912)エリアクエスト vol.13

(8912:東証マザーズ) エリアクエスト 企業HP
清原 雅人 社長
清原 雅人 社長

【ブリッジレポート vol.13】2014年6月期業績レポート
取材概要「サブリースが順調に拡大している。同社がターゲットとするサブリース物件は一等地にあるだけに、ビルオーナー等からサブリースの同意を得・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年8月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社エリアクエスト
社長
清原 雅人
所在地
東京都新宿区西新宿六丁目5番1号 新宿アイランドタワー7階
決算期
6月 末日
業種
不動産業
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年6月 1,147 100 102 143
2013年6月 819 49 50 37
2012年6月 646 4 5 19
2011年6月 595 -45 -43 -50
2010年6月 735 12 14 3
2009年6月 879 -182 -179 -381
2008年6月 1,015 -311 -307 -556
2007年6月 1,530 -95 -94 -118
2006年6月 1,580 18 18 -139
2005年6月 2,091 240 236 189
株式情報(8/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
118円 20,997,100株 2,478百万円 25.4% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
0.00円 0.0% 6.86円 17.2倍 28.39円 4.2倍
※株価は8/13終値。発行済株式数は直近四半期末の発行済株式数から自己株式を控除。ROE、BPSは前期末実績。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
“ビルコンシェルジェ”を標榜。東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の駅前商業地において、テナント誘致等の「成功報酬型ビジネス」と、サブリースやビル管理・メンテナンス(清掃、設備保守、警備管理等)を中心に売買仲介や契約更新・契約管理等も手掛ける「ストック収入型ビジネス」を展開。グループは、グループマネジメントが中心の同社の他、テナント誘致等を手掛ける(株)エリアクエスト店舗&オフィス、ビル管理等の(株)エリアクエスト不動産コンサルティング、及び不動産賃貸の(株)まや商会の連結子会社3社。「エリアクエスト」と言う社名には、「地域に根差して(エリア)、不動産の価値を追求する(クエスト)」と言う思いが込められている。
 
 
【沿革】
創業者である清原雅人氏(1991年4月、明治大学法学部卒業)が野村證券(株)を経て、1998年4月に友人と起業。2000年1月に独立してエリアリンク(株)を設立し、01年3月に社名を(株)エリアクエストに変更した。データベースマーケティング重視の営業でテナント誘致を中心とした成功報酬型ビジネスを拡大させ、会社設立からわずか3年1か月で(03年2月)東証マザーズに株式を上場。不動産ファンドの資金流入で不動産業界が活況を呈する中、国道16号線内(東京、神奈川、千葉、埼玉)の商業施設にフォーカスした営業戦略が奏功し、上場後も順調に業績を拡大させ04/6期には経常利益が4億円を超えた。
欧米の不動産市況の減速、米国サブプライムローン問題の顕在化、そしてリーマン・ショックへと続き世界経済が急速に悪化し、その影響が国内の景気や不動産市況にも波及して同社の業績も急角度で下降線をたどった。このため、07/6期以降はグループをあげてのコスト削減と収益構造改革を進め、不動産市況の影響を受けやすい成功報酬型ビジネスから、安定した収益が見込めるストック収入型ビジネスへのシフトを進め、安定成長が可能な収益構造への転換を図った。
 
【成長戦略】
(1)ストック収入型ビジネスと成功報酬型ビジネスを両輪に安定成長を目指す
会社設立から3年で東証マザーズに上場した同社だが、当時はトラブル防止・解決やテナントとの各種折衝を含めたテナント誘致等(現在の成功報酬型ビジネス)が売上のほぼ100%を占めており、ストック収入型ビジネスとして、現在、力を入れているビル管理・サブリースや更新及び契約管理(現在のストック収入型ビジネス)は積極的な営業を行っていなかった。しかし、06/6期以降、事業環境の変化で成功報酬型ビジネスが急激にシュリンクした反省を踏まえて、景気の影響を受け難いストック収入型ビジネスの育成に取り組んだ。

ストックの積み上げは根気のいる作業だが、ストック収入型ビジネスの売上が順調に拡大しており、12/6期に連結ベースの営業損益が黒字転換する原動力となった。今後は、契約の積み上げでストックビジネスを強化すると共に、改めて成功報酬型ビジネスにも力を入れ、ストック収入型ビジネスと車の両輪として収益拡大を加速させていく考え。
 
Only Oneのサービスを強みとするストック型ビジネスの概要
ストック収入型ビジネスの事業拡大の機転となったのが11/6期下期に導入した「パノラマクリーニング」である。「パノラマクリーニング」とは、清原社長が自ら作成したビル清掃業務における作業指示と結果報告のシステム。「パノラマクリーニング」に基づく丁寧な清掃作業と詳細な業務報告がビルオーナー等から高い評価を受け、徐々に営業成果が上がっていった。
同社は、取引開始をきっかけに、消防法上問題となる共用部分の不正使用等、貸主側共通の悩み事の解決にも積極的に対応すると共に、漏水を含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった設備面でのトラブル等に対しては即時対応(問題が発生すればいち早く駆けつけ)で臨んだ。この事がビルオーナー等からの更なる信頼につながり、足元では、同社が物件を借り上げて転貸するサブリース物件の獲得につながっている。

ちなみに、消防法上問題となる共用部分の不正使用等、借主への対応は、テナントの接点がないビルメンテナンス会社等では難しいが、同社グループは仲介業務でテナントとの接点がある事に加え、以前からトラブル防止・解決やテナントとの各種折衝等をテナント誘致サービスの一環として手掛けていたため経験値が豊富だ。
 
 
下請工事会社の対応を一本化し、漏水含む水回り、電気、空調、ガス、エレベーターといった
設備面でのトラブル等への即時対応
営業面での支障など2次的被害の発生を防ぎ、借主の満足度向上はもちろん、貸主の満足度も向上
サブリース物件の獲得とテナントの確保
同社の収益基盤の安定化
 
尚、「パノラマクリーニング」に基づき作業内容が統一され、かつマニュアル化された充実した掃除サービス、賃貸借上のトラブルフォロー、及び設備トラブルへの即時対応の3点からなるサービスを、同社は「ビルコンシェルジェ」としてブランド化すると共に商標登録している。
 
(2)今後の見通し
事業環境  バブル期に竣工したビルのメンテナンスニーズの取り込みで事業拡大
80年代後半から90年代初めにかけてのバブル期に竣工したビルが20年を経過し、エアコンの故障や水漏れ等、トラブルが増えてくる築年数に入ってきが、「トラブルに対して、リーズナブルな価格で迅速に対応してくれるサービス会社が少ない」と言うのが、ビルオーナー等の悩み。
 
 
同社は、トラブルに対してリーズナブルな価格で迅速に対応できる強みを生かして、ビル管理やメンテナンス等の物件を獲得し、更にはサブリースにつなげていく事でストック収入型ビジネスを拡大させていく考え。一方、成功報酬型ビジネスについては、マンパワーの制約に加え、足元、マクロの景況感の改善が成功報酬型ビジネスの事業環境の改善につながっていない事を踏まえて慎重な見通しだが、徐々に収益の拡大ペースが加速していくとみている。
このため、現在進行中の中期事業計画は、成功報酬型ビジネスの見通しを保守的なものに抑え、ストック収入型ビジネスの積み上げを中心にした慎重な計画となっているが、それでも18/6期には経常利益が過去最高を更新する見込み。継続的な収益の拡大で財務内容の改善も進むため、復配も視野に入ってくるものと思われる。
 
 
 
2014年6月期決算
 
 
前期比40.0%の増収、同102.3%の経常増益
ビル管理、更新料、及びサブリース(転貸)等からなるストック型収入ビジネスの順調な拡大で売上高が11億47百万円と前期比40.1%増加。上期決算発表時に上方修正した11億円を4%強、期初予想9億89百万円を16%、それぞれ上回った。

利益面では、不動産賃貸を手掛ける(株)まや商会の子会社化(13年9月に全株式を取得)やストック収入型ビジネスの売上構成比の上昇で原価率が62.7%と3.8ポイント低下したものの、増収効果で売上総利益が同26.9%増加。積極的な人材採用や本社移転等に伴う販管費の増加を吸収して(販管費率は6.6ポイント低下)、営業利益が1億円と倍増。修正予想を7.3%上回った。
当期純利益が1億43百万円と同3.8倍に拡大したのは、投資有価証券売却益84百万円など特別利益96百万円を計上したため。
 
 
安定収益源となるサブリースが順調に増加
ビルオーナー等からの高い評価に加え、“リノベーションサブリース”の提案も成果を上げ、サブリースが順調に拡大している。このため、サブリース契約に連動する長期預り保証金の残高が(10年6月末残高:17百万円)、14年6月末には3億62百万円と、この1年間で69%増加した(13年6月末残高:2億08百万円)。
 
 
同社のサブリースの特徴は、ターゲットを1日の乗降客数が3万人以上の駅に絞り、その周辺の物件で1階部分に限定している事。サブリースは空室リスクを伴うが、同社は、人の流れが多い一等地(乗降客の多い駅周辺)に絞り込む事と、客付けで同社が強みを持つ小売業等に人気の1階部分に限定する事で、リスクの顕在化確率を極小化している。実際、サブリースを開始してから4年以上が経過したが、解約が発生しても、概ね1カ月程度で次のテナントが決まっていると言う(テナントが解約する場合は、6か月前までに同社に連絡する必要がある)。
 
 
 
13年9月に不動産賃貸を手掛ける(株)まや商会を子会社化した事やサブリース等の順調な拡大で、期末総資産は12億61百万円と前期末に比べて3億32百万円増加した。科目別では、(株)まや商会の子会社化に伴い、有形固定資産や無形固定資産(新たに借地権1億18百万円を計上)が増加した。貸方では純資産の増加に加え、サブリース契約の獲得が順調に進んでいる事を反映して長期預り保証金が増加。この他、業容拡大に伴う運転資金の増加への対応やM&Aで借入金やリース債務がわずかに増加した。自己資本比率は47.3%。
 
 
営業キャッシュ・フローは黒字基調が定着しており、14/6期は業容の拡大による運転資金の増加を利益の増加で吸収して81百万円の営業キャッシュ・フローを確保した。一方、投資キャッシュ・フローのマイナス幅が拡大したのは、本社移転関連の費用や投資有価証券売の取得等が要因。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
14/6期のROEは、特別利益の計上もあり、25.40%と大きく改善した。同社ビジネスの成否を左右するのは人材である。このため、大きな固定資産投資を必要としない一方で、限界利益率が高い。加えて、サブリースの拡大によるファイナンス効果(他人資本である長期預り保証金の獲得)で、業容拡大による資金需要の一部を賄う事ができている。言い換えると、売上の増加が、売上高当期純利益率の改善、総資産回転率の向上、レバレッジの拡大につながり、ROEの向上に反映される。同社のビジネスは、極めて株主資本効率の高いビジネスであり、14/6期は特別利益の計上がなくても、12~13%のROEは達成できたものと考える。
 
 
2015年6月期業績予想
 
 
前期比11.8%の増収、同80.2%の経常増益予想
前期までの契約積み上げ効果でストック収入型ビジネスが順調に拡大する見込み。一方、もう一つの収益の柱である成功報酬型ビジネスについては、賃料水準が弱含みで推移する等、依然として事業環境は厳しいものの、企業の出店意欲に回復の兆しがみられる事から、人員を増強して攻めの姿勢を強める。
もっとも、業績予想は、不確実性を排除し、ストック収入型ビジネスをベースとした。ストック収入型ビジネスをけん引役に売上高が前期比11.8%増加し、増収効果で営業利益率が5.6ポイント改善する見込み。
 
 
今後の注目点
サブリースが順調に拡大している。同社がターゲットとするサブリース物件は一等地にあるだけに、ビルオーナー等からサブリースの同意を得る事自体が難しいが、同社においては、共用部チェック等のきめ細かいサービスや設備トラブル等に対するリーズナブルな価格での迅速対応がビルオーナー等との信頼関係の構築につながり、サブリース物件獲得の原動力となっているようだ。サブリースは長期にわたり安定した収益が期待できるため、中期的な売上や利益の計画が立てやすい。このため、今後、同社の経営は一段と安定性を増していくものと思われる。
尚、同社のマネジメントやトップセールスによる案件の獲得で忙しい日々を送っている清原社長だが、IR活動にも力を入れており、「業績が回復、上昇する中、東京や大阪などで個人投資家の方々を前にIRプレゼンテーションを行うと、ファンの方が着実に増えている事を実感でき大変うれしく思っている」とコメントされている。また、「そうした株主の皆さんの期待に是非応えたいと、業績を可能な限り拡大させるために日々懸命に取り組んでいる」とのコメントも頂いている。是非、ブリッジサロンに参加して、清原社長の人となりに接して頂きたい。