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(4847) 株式会社インテリジェント ウェイブ

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ブリッジレポート:(4847)インテリジェント ウェイブ vol.20

(4847:JASDAQ) インテリジェント ウェイブ 企業HP
山本 祥之 社長
山本 祥之 社長

【ブリッジレポート vol.20】2014年6月期業績レポート
取材概要「決済サービス会社は、競争の激化に伴い単に「決済できる」というだけで顧客を獲得する事が難しくなってきたため、カードの利用履歴データを活・・・」続きは本文をご覧ください。
2014年8月26日掲載
企業基本情報
企業名
株式会社インテリジェント ウェイブ
代表取締役社長
山本 祥之
所在地
東京都中央区新川1-21-2 茅場町タワー
決算期
6月 末日
業種
情報・通信
財務情報
項目決算期 売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2014年6月 6,558 145 183 86
2013年6月 5,870 -677 -587 -349
2012年6月 5,241 131 154 270
2011年6月 4,762 321 341 129
2010年6月 4,956 358 387 211
2009年6月 5,527 228 235 187
2008年6月 6,695 417 403 -5
2007年6月 6,367 389 407 -295
2006年6月 7,137 1,482 1,452 947
2005年6月 5,174 678 688 264
2004年6月 5,257 371 365 156
2003年6月 5,891 1,177 1,161 539
2002年6月 5,505 1,854 1,846 1,003
株式情報(8/13現在データ)
株価 発行済株式数(自己株式を控除) 時価総額 ROE(実) 売買単位
293円 26,340,000株 7,718百万円 1.9% 100株
DPS(予) 配当利回り(予) EPS(予) PER(予) BPS(実) PBR(実)
5.00円 1.7% 9.49円 30.9倍 169.00円 1.7倍
※株価は8/13終値。
 
インテリジェント ウェイブの2014年6月期決算について、ブリッジレポートにてご報告致します。
 
今回のポイント
 
 
会社概要
 
クレジットカードの決済システムに強みを持つソフトウェア開発会社。リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術、システムを止めないためのノンストップ技術、更には高度なセキュリティ技術を技術基盤としており、カード不正利用検知システムや証券関連の情報集配信システムでも豊富な実績を有する他、内部情報漏洩対策システムやユーザーサポートのコスト低減に寄与するナビゲーションツール等も手がける。大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有する筆頭株主。グループは、同社の他、韓国で開発・販売を手掛ける連結子会社INTELLIGENT WAVE KOREA INC.及び持分法適用関連会社(株)ODNソリューションの2社。
 
【事業セグメント】
事業は、主に金融業界の顧客を対象として、ソフトウェア開発を中心にハードウェアやソフトウェアを統合、付加価値をつけたシステムを納入し、保守サービスを行う「金融システムソリューション事業」と、特定の業界、業種の顧客に限らず、情報セキュリティ分野やその他の分野に利用される自社開発パッケージソフトウェアと、他社製(仕入)パッケージソフトウェアを中心に付加価値の高いシステムを納入し、保守サービスを行う「プロダクトソリューション事業」に分かれる。
 
※ 従来、カードビジネスのフロント業務、システムソリューション業務、セキュリティシステム業務、及びその他(新規事業)の4区分で収益の状況を開示していたが、適正に経営上の評価と意思決定を行うために、事業活動と組織体制の実態を考慮して、15/6期より報告セグメントの区分を変更した。
 
 
金融システムソリューション事業
金融業界やシステム開発会社を主な顧客として、ソフトウェア開発を中心としたソリューションを提供している。カテゴリー別の売上構成比は、ソフトウェア開発59%、ハードウェア販売23%、保守13%、パッケージ販売・他5%。
「NET+1」をベースにしたカード決済にかかるフロント業務のシステム開発では、クレジットカード会社が加盟店や信用情報センターと接続するために必要なシステムの開発を手掛けており、銀行(CD/ATM、海外ATM網等の対外系接続システムとの接続)や消費者金融等でも使われている。「NET+1」は付加価値の高い専用ハードと自社開発のパッケージソフトからなり、大手クレジットカード会社向けではシェア70%。
 
また、カードビジネスのフロント業務で培った"リアルタイム処理が可能な高度なネットワーク技術"、"ノンストップ技術"、及ぶ"セキュリティ技術"を活かして、クレジットカード業界、証券業界(オンライン証券会社・機関投資家)、及び大日本印刷のグループ企業等のシステム開発を手掛けている。クレジットカード業界向けでは、クレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」といった同社独自の製品を有し、証券業界向けでは高速情報基盤システム(証券取引所等から提供される市況データや気配値等を素早く社内の各端末に配信するシステム)等で豊富な実績を有する。
 
プロダクトソリューション事業
パッケージ製品を中心にソリューションを提供しており、客層は幅広い。カテゴリー別の売上構成比は、保守50%、パッケージ販売27%、ソフトウェア開発20%、その他3%。
「NET+1」や「ACE Plus」等で培ったネットワーク技術やセキュリティ技術をベースとした情報漏えい対策システム「CWAT(シーワット)」を中心に、米国サイリックスシステム社製の仮想環境下での端末操作管理ツール「VeTracer(ヴィー・トレーサー)」やイスラエルCHECKMARX社製ソースコード解析ツール「CxSuite(シーエックススイート)」といった海外パッケージ、或いは自社開発のナビゲーションツールで、企業ウェブサイトの付加価値を高めると共にユーザーサポートのコスト低減に寄与する「Face(フェイス)コンシェル」等、他社製品(パッケージ)や自社製品によるソリューションの育成に取り組んでいる。
 
 
【沿革】
1984年12月、米国ノンストップコンピュータ・メーカーの日本法人 日本タンデムコンピューターズの社長等を務めた現会長の安達一彦氏が中心となり、コンピュータ機器の輸出入・販売、コンピュータソフトウェアの開発等を目的に設立された。当時のソフト開発会社はメーカーの下請けが多かったが、同社は自主独立を志向しパッケージソフトの開発を目指し、米国製の24時間稼動ノンストップコンピュータ向けパッケージソフトの開発に取り組んだ(24時間稼動ノンストップコンピュータに独自開発のパッケージソフトを組み込んで販売)。当時の日本において、24時間ノンストップでコンピュータが稼動しているのはクレジットカード業界のみであったため、自ずと同業界との関係が深くなったと言う。
 
転機となったのが89年の「NET+1」の開発。価格競争力や短納期といったパッケージソフトの持つ強みに加え、カスタマイズの容易さ等が評価され、大手クレジットカード会社や消費者金融等のノンバンクはもちろん、銀行等でも利用が広がった。「NET+1」の開発により、クレジットカード会社向けのパッケージソフト開発会社として認知され、クレジットカードビジネスの拡大に乗って業容を拡大、2001年6月に株式を店頭登録した(現在はJASDAQに上場)。
 
10年4月には大日本印刷(株)が同社株式の公開買付けを行い、議決権の過半を取得した(現在、大日本印刷(株)が議決権の50.61%を保有)。以後、大日本印刷グループ内での豊富な開発案件の取り込みに加え、大日本印刷(株)との連携による同グループの優良な顧客資産の掘り起こしに取り組んでおり、その成果も順調にあがっている。
 
 
 
2014年6月期決算
 
 
前期比11.7%の増収、経常利益1億83百万円(前期は5億87百万円の損失)
売上高は前期比11.7%増の65億58百万円。プリペイドカード決済関連の開発案件の寄与やカード会社のハードウェア更新需要の取り込みでカードビジネスのフロント業務の売上が同27.4%増と伸びて増収をけん引した。
利益面では、前13/6期に大型案件の不採算化で損失を計上したカードビジネスのフロント業務の損益が約10億円改善した他、売上構成の良化でシステムソリューション業務の利益も増加。案件の取り込みの遅れによるセキュリティシステム業務やその他(新規事業)の損益が悪化したものの、前期は6億77百万円の損失だった営業損益が1億45百万円の利益に転じた。
 
 
 
カードビジネスのフロント業務
売上高40億79百万円(前期比27.4%増)、セグメント利益7億40百万円(前期は2億42百万円の損失)。売上面では、新規顧客からのプリペイドカード決済関連の受注等でソフトウェア開発の売上が21億67 百万円と同22.2%増加した他、カード会社の更新需要の取り込みでハードウェア販売が13億26 百万円と同44.7%増加した。利益面では、継続案件となっていたプロジェクトへの対応で第1四半期に2億33百万円の減益要因が発生したが、通期では不採算額が大幅に減少。第2四半期以降、ソフトウェア開発の収益性が安定した事もあり、損益が大幅に改善した。
 
 
 
システムソリューション業務
売上高19億46百万円(前期比4.8%減)、セグメント利益3億18百万円(同23.3%増)。相対的に利益率の高いソフトウェア開発の売上が13億80 百万円と同16.2%増加したものの、ハードウェア及び仕入パッケージ(他社製ソフトウェア)販売による売上が209 百万円と同54.8%減少した事が響き、売上が減少した。ただ、売上構成の良化と各開発プロジェクトが概ね順調に推移した事で営業利益率が改善した。
 
 
セキュリティシステム業務
売上高4億17 百万円(前期比17.6%減)、セグメント損失48百万円(前期は1億37百万円の利益)。内部情報漏えい対策システム「CWAT(シーワット)」の商談で大型案件の取り込みが進まず売上が損益分岐点に届かなかった。
 
 
 
その他(新規事業)
売上高1億14百万円(前期比3.4%減)、セグメント損失1億51百万円(前期は1億18百万円の損失)。企業のウェブサイトやモバイルサイトの利用者に対するナビゲーションを的確に行い、サイトの付加価値を高めるシステムツール「Face コンシェル(フェイスコンシェル)」が、全日本空輸(株)ウェブサイトの「よくあるご質問」ページに採用され、初の実績として稼働した。ただ、全日本空輸(株)ウェブサイトでの稼働が当初の予定よりも稼働が遅れた事に加え、当初の想定ほどにはその他の商談の取り込みも進まなかった。
 
 
 
 
事業環境が良好なカードビジネスのフロント業務をけん引役に受注高は63億円と前期の58億円を約10%上回った。期末受注残高は20億円強と、不採算となった大型案件への対応に追われた前期末の実績(23億円弱)を下回ったものの、案件の内容は良化している。
 
 
期末総資産は前期末に比べて1億15百万円減の56億39百万円。流動資産では、検収が順調に進んだ事で、たな卸資産が減少する一方、現預金が増加。固定資産では、繰延税金資産が減少する一方、余資運用の投資有価証券が増加した。貸方では、開発が順調に進んだ事で外注費を抑える事ができたため、仕入債務が減少した。自己資本比率は前期末に比べて1.6ポイント改善の78.9%。
 
 
不採算案件の一巡で営業キャッシュ・フローが回復し、5億73百万円のフリー・キャッシュ・フローを確保した。財務キャッシュ・フローがマイナスになったのは、配当金の支払いによる。
 
 
*ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。
 
リーマンショック後の顧客の投資意欲低下による売上の減少で10/6期、11/6期とROEが低下したが、12/6期はクレジットカード業界を中心にした顧客の投資意欲の底打ちと大日本印刷との資本提携効果等で増収に転じ、利益率も改善した。13/6期及び14/6期は不採算案件の影響による損益悪化や低利益率が響いたが、売上の拡大基調は続いており成長軌道への回帰に向けた確かな歩みを感じさせた。15/6期は業績予想に沿った実績を上げる事ができれば、ROEは12/6期並みの水準に回復すると考える。 尚、東証発表の「決算短信集計」によると、東証1部、東証2部、及びマザーズ上場企業の14/3期のROEは、金融を除く全産業8.65%(前期は4.99%)、製造業8.55%(同4.53%)、非製造業8.79%(同5.67%)。
 
 
2015年6月期業績予想
 
 
前期比2.4%の減収、同118.6%の経常増益
売上高は前期比2.4%減の64億円。セキュリティ関連及びFace関連で案件の取り込みが進むプロダクトソリューション事業の売上が増加するものの、ハードウェア販売の減少で金融システムソリューション事業の売上が減少する。
 
営業利益は同162.1%増の3億80百万円。不採算案件の影響がなくなる金融システムソリューション事業の利益率改善が進む他、売上の増加でプロダクトソリューション事業の損失も減少する。
 
配当は1株当たり5円の期末配当を予定している。同社は、株主への利益還元を行う事を経営の最重要目標の一つとして位置付け、経営基盤の強化、積極的な事業展開、更には事業改革及び財務体質の強化を図りながら株主に安定的な利益還元を実施していく考え。
 
(2)セグメント別見通し
 
金融システムソリューション事業
売上高57億円(前期比5.4%減)、セグメント利益12億60百万円(同19.0%増)。売上面では、カード系中心にソフトウェア開発の売上が36億84百万円と同4%弱増加するものの、ハードウェア販売が8億20百万円と同41%弱減少する。利益面では、不採算案件の影響がなくなるため利益率が改善し、セグメント利益が増加する。
 
カード系ビジネスは、システム更新やハードウェアの置き換えに加え、①決済の多様化、②差別化、③外国人観光客の決済の利便性向上、更には④スマホ決済等による利用シーンの多様化等を背景にシステム開発ニーズが旺盛だ。同社は、良好な事業環境を活かして既存事業の拡大を図ると共に、クレジットカード不正利用検知システムで培った技術を応用した送客システムの開発等で新たな需要も取り込んでいく考え。
 
一方、証券系ビジネスでは、デリバティブ取引における運用パフォーマンス監視(高速取引対応のモニタリングシステム)ソリューションの提供を開始する。株式・デリバティブ・為替FX等の取引は、自動発注機能のあるコンピュータがわずかな利ざやで超高速の自動売買を繰り返すハイ・フリークエンシー・トレーディング(HFT)と呼ばれる売買手法が主流となっており、これに伴い、遅延トレーディングによる損失を回避するための運用パフォーマンス監視(超高速取引処理の確実性を確保するためのモニタリング)ニーズが高まっている。同社は、アイルランドのコービル社製(日本では、コービルジャパンが統括)の遅延管理システムを用いた運用パフォーマンス監視ソリューションを展開する事でニーズを取り込んでいく考え。日本でのコービル社製品の販売代理店は5社ほどあるが、ユーザの利用目的に応じて営業領域が決まっており、同社はデリバティブ関連でソリューションを展開していく。
 
プロダクトソリューション事業
売上高7億円(同31.6%増)、セグメント損失1億円(前期は2億円の損失)。ナビゲーションツール「Faceコンシェル」、情報漏えい対策システム「CWAT」、イスラエルCHECKMARX社製ソースコード解析ツール「CxSuite(シーエックススイート)」等で、前期に契約に至らなかった案件の取り込みが進む。これに伴い、自社製パッケージ(98百万円→1億02百万円)、Face関連でのソフトウェア開発(1億06百万円→1億76百万円)、「CxSuite」の寄与による仕入パッケージ販売(82百万円→1億31百万円)等の売上増加が見込まれ、保守も、ほぼ前期並みの売上(2億61百万円)を確保する見込み。
利益面では、上期が1億10百万円の損失となるものの、下期は10百万円の利益を確保できる見込み。
 
 
今後の注目点
決済サービス会社は、競争の激化に伴い単に「決済できる」というだけで顧客を獲得する事が難しくなってきたため、カードの利用履歴データを活用したマーケティングツール機能を付加した決済サービスの提供等に力を入れている(クーポン付与等の「特典」機能を組み合わせた決済サービスの提供)。同社はクレジットカード不正利用検知システム「ACE Plus」を有し、カードの不正利用検知システムの構築で豊富な実績を有するが、この不正検知技術(カード利用時の決済状況をモニタリングして不正を検知する)はカードの利用履歴データの収集にも応用できるため、「決済サービス+アルファ」の動きが広がりを見せる中、注目を集めている。収集したデータを解析して決済サービスとリンクさせれば、決済と同時にカード利用者に合ったクーポンを提供する等のサービスが可能になる(不正検知技術の送客システムへの応用)。カード系ビジネスは、事業環境の良さに加え、独自技術を使った新たなビジネスの芽が育ちつつある。