ブリッジレポート:(2462)ジェイコムホールディングス vol.29
(2462:東証1部) ジェイコムホールディングス |
|
||||||||
|
企業名 |
ジェイコムホールディングス株式会社 |
||
社長 |
岡本 泰彦 |
||
所在地 |
大阪市北区角田町8番1号 梅田阪急ビルオフィスタワー19階 |
||
決算期 |
5月 末日 |
業種 |
サービス業 |
項目決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 当期純利益 |
2014年5月 | 14,951 | 303 | 374 | 259 |
2013年5月 | 15,196 | 798 | 906 | 599 |
2012年5月 | 17,518 | 914 | 1,044 | 603 |
2011年5月 | 15,905 | 901 | 955 | 489 |
2010年5月 | 13,522 | 789 | 834 | 475 |
2009年5月 | 14,162 | 913 | 953 | 340 |
2008年5月 | 12,404 | 885 | 907 | 489 |
2007年5月 | 9,605 | 812 | 786 | 444 |
2006年5月 | 6,657 | 594 | 552 | 274 |
2005年5月 | 4,684 | 284 | 281 | 152 |
2004年5月 | 3,271 | 142 | 141 | 56 |
2003年5月 | 2,222 | 90 | 88 | 45 |
2002年5月 | 1,616 | 77 | 76 | 40 |
2001年5月 | 1,369 | 73 | 70 | 34 |
株式情報(7/28現在データ) |
|
|
今回のポイント |
|
会社概要 |
グループは、純粋持株会社である同社の他、派遣や業務請負等の総合人材サービスと携帯電話キャリアショップの運営を手掛けるジェイコム(株)、及び事務職を中心とした人材派遣・人材紹介やビジネススクール事業を手掛ける(株)エースタッフ、介護施設運営の(株)サンライズ・ヴィラ他2社の連結子会社5社。及び東証1部上場の持分法適用関連会社サクセスホールディングス(株)とその傘下で認可保育園等の運営を手掛ける(株)サクセスアカデミー。 連結子会社(株)サンライズ・ヴィラは東京都、神奈川県、及び埼玉県で有料老人ホーム21施設(14年6月開設の「サンライズ・ヴィラ春日部」を含む)を展開しており、大半の施設で24時間スタッフが常駐している。13年10月に、投資事業を行う連結子会社が子会社化した。また、(株)サクセスアカデミーは、13年12月末現在、234施設の運営及び受託運営を手掛けている。 【事業セグメント】
事業セグメントは、人材派遣、業務受託、紹介予定・職業紹介等の総合人材サービス事業、介護施設の運営等を手掛ける介護関連サービス事業、及び携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業に分かれ、14/5期の売上構成比は、それぞれ80.4%、15.1%、4.5%。また、総合人材サービス事業は、契約形態別に、派遣契約、業務委託契約(同社から見た場合、業務受託)、及び紹介予定・職業紹介契約に分かれ、セグメント内の売上構成比(14/5期、以下同じ)は、それぞれ75.2%、21.9%、2.9%。一方、業界別では、携帯電話業界79.9%、アパレル業界9.1%、情報通信業界2.7%等。また、地域別では、東日本地区47.4%、西日本地区42.6%、東海地区10.0%。
【強みと成長戦略】
主力の携帯電話業界向け人材サービスにおいては、業界特化により蓄積してきたノウハウ、コミットした販売台数の達成率を含めた豊富な営業実績、更には接客だけでなく在庫管理や人員配置など販売に関する全業務への対応力といったサービス面でのアドバンテージに加え、安定した資本力や東証一部上場企業グループならではのコンプライアンスといった非サービス面での強みを有する。現在、この磐石な事業基盤を背景に第2の柱であるアパレル業界向けが伸びている他、サクセスホールディングス(株)と(株)サンライズ・ヴィラとの人事交流により保育業界や介護業界向けでも成果を挙げている。
【若年層のステップアップを支援】
総合人材サービス事業では、派遣社員等やアルバイトを受け入れる企業側のメリットだけを追求するのではなく、働く側のキャリアアップにも配慮している。具体的には、派遣社員もしくはアルバイトとして採用した社会経験の浅い学生やフリーター等の若年層を、教育やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により勤続年数に応じてステップアップさせ、最終的には希望する職業へ正社員として就職できるよう支援するシステムが構築されている。
|
中期経営計画(15/5期~17/5期) |
(1)数値計画と4つの重点施策
2009年12月の持株会社体制への移行以来、同社は「…planning the Future~人を活かし、未来を創造する~」をグループ理念に掲げ、人生のどの段階においても、人々のワークライフバランスを実現するために必要なサービスを幅広く提供できるよう、業界・業種・職種に捉われず社会に必要とされる事業を創造すべく、M&Aや事業提携に取り組んでいる。この一環として、2009年12月に保育事業を営む(株)サクセスアカデミー(現 サクセス ホールディングス(株))を持分法適用関連会社としてグループに取り込み、保育関連サービスを本格化した。また、2013年10月に介護施設を運営する(株)サンライズ・ヴィラを連結子会社化し介護関連サービス事業に進出。更に2014年4月にはサクセスホールディングス(株)が東京証券取引所市場第一部銘柄に指定される等、この4年半で次の成長段階に必要な基盤固めが進んだ。 同社は次の成長段階に必要な基盤固めが進んだ事を踏まえて、今回、17/5期にかけての向こう3年間の数値計画と計画達成に向けた重点施策を中期経営計画として下記の通りまとめた。 4つの重点施策
・サービス品質の向上
・保育・介護業界向けサービスの拡大 ・グループ会社の管理体制強化 ・事業環境に迅速に対応できるコンプライアンス体制の維持 (2)業界別の取り組み
携帯電話業界向けサービス
他業界での賃金上昇で携帯電話業界を希望する求職者が減少傾向にある。このため同社は、従来からの採用チャネルに加え、既存スタッフからの紹介等も活用して採用増に取り組んでいる他、定着率の向上に向け、コミュニケーションの強化やスタッフが働きやすい環境づくり等、現場力の強化にも取り組んでいる。また、未経験者を企業で必要とされる人材に育成する同社ならではのノウハウを活かした教育により、働く人材の育成にも努めている。14/5期の携帯電話業界向け売上高は前期比24%弱減少したが、適正価格での受注に取り組んだ成果が期末にかけて顕在化してきた。引き続き携帯電話業界の人材需要は旺盛であり、近年の成立が予想される改正派遣法も追い風となる事から、同社は15/5期以降の成長軌道への回帰に自信を持っている。 アパレル業界向けサービス
13年9月1日を効力発生日として、アパレル業界向け人材サービスの(株)アイ・エフ・シーをジェイコム(株)が吸収合併した。(株)アイ・エフ・シーは、住金物産(株)(13年10月1日より日鉄住金物産(株))の100%子会社として、アパレル業界でのデザイナーやパタンナー等の人材紹介実績を積み上げてきた。全国的なネットワークを有し販売力にも優れるジェイコム(株)にアパレル業界向けサービスを一本化する事で競争力の強化とグループ経営の効率化を図っていく考え。人材需要が増えている地方の商業施設等、他のアパレル系人材サービス会社が手薄なエリアでの対応力が強みとなる。14/5期は一部の大口顧客の派遣利用停止が響き前期比9.8%の減収となったものの、10億円を超える売上高を確保した。業界での知名度向上に伴い、取引社数や大口顧客との取引額が増加傾向にあり、一定規模の売上を確保できる体制が整ってきたようだ。大手顧客から店舗での販売業務の一括請負を受注する等、取引内容が多様化している事や、高級ブランド店やコスメ関係からの引き合いが増加している事も昨今の特徴。高級ブランド店やコスメ関係の案件増は、採用や新規開拓に大きなプラス効果をもたらしている。 保育業界向けサービス
モバイル・アパレルに次ぐ第3の柱とするべく育成中である。同社グループにおいては、持分法適用関連会社のサクセスホールディングス(株)が子会社サクセスアカデミー(株)を通して受託保育事業と公的保育事業を手掛けており、連結子会社ジェイコム(株)が保育士紹介・派遣等の人材サービスを提供している。保育業界は、待機児童解消を目指す国の後押しもあり事業環境は良好だが、保育士不足がボトルネックになっている。このため、サクセスホールディングス(株)はジェイコム(株)との連携を強化する事で成長のカギとなる保育士確保につなげたい考え。一方、ジェイコム(株)は、サクセスホールディングス(株)が有する人材採用ノウハウを活かして人材と案件のマッチング力を高め、グループ外企業が運営する保育施設へも保育士紹介・派遣等の人材サービスを拡大させていく考え。現在、ジェイコム(株)は、サクセスホールディングス(株)から人材を招聘して、サクセスホールディングス(株)の採用活動を代行している。 介護業界向けサービス
13年10月4日に連結子会社ACAヘルスケア・再編1号投資事業有限責任組合を通して、介護施設を運営する(株)サンライズ・ヴィラ他1社を連結子会社化した(共に発行済株式総数の87%を取得。一般的には、2社はジェイコムホールディングス(株)の孫会社と認識される)。グループのプロフィットセンターとして育成していく考えで、介護施設運営に加え、人材採用及び教育ノウハウの取得や介護業界での知名度の向上等、介護業界向け人材サービスを提供しているジェイコム(株)とのシナジーも期待されており、人材の確保や入居者向けサービス等、関連サービスへの展開を視野に入れている。スピード感のある事業展開を可能にするため、採用部門へのジェイコム(株)からの出向をはじめ、営業・管理の両面において体制強化を図り早期の収益化を実現したい考え。 介護・保育等の人材不足解消に向けた取り組み -未経験者を育成するジェイコムならではのノウハウの発揮-
介護・保育業界では人材不足がサービス拡充のボトルネックとなっており、社会的な問題として議論もされている。同社は、これまでに蓄積してきた「未経験者を働く人材へと育成する」ノウハウを活かして介護・保育等の人材育成に取り組み、紹介・派遣とのシナジーを高めていく考え。現状の介護・保育業界の求職者は未経験や無資格が大半で戦力化が難しい。このため、自ら運営する資格取得学校の介護職員初任者研修講座等を通じて資格取得から支援していく考えで、バックアップ受講料割引やキャッシュバック等の負担軽減策の導入でエントリーしやすい環境の整備も進んでいる。資格取得後は企業ニーズと求職者の経験を踏まえてマッチングさせる事でスキル不足や経験不足等の課題解決をサポートし、有資格・経験者の育成と囲い込みを図る。更に、こうした育成実績と東証1部の信用力や総合人材サービスの実績によるシナジーを追求する事で、全国展開のネットワークでの希少な人材の確保につなげていく。 また、介護福祉士候補者の受け入れや介護福祉士資格を取得した留学生の就労等も含めて、外国人技能実習制度の対象職種の拡大が検討されており、年末を目途に結論が出される見込みだ(平成26年6月24日発表「日本再興戦略」改定-2014未来への戦略-)。同社は、こうした動きも踏まえて、外国人労働者の活用を視野に、海外での人材確保、就業サポートのための準備を開始した。受け入れた人材については、(株)サンライズ・ヴィラの施設を活用した研修により、来日後早期の戦力化を図る考えだ。 |
2014年5月期決算 |
前期比1.6%の減収、同58.7%の経常減益
売上高は前期比1.6%減の149億51百万円。総合人材サービス事業の売上が120億23百万円と同17.5%減少したものの、期中に連結子会社化した介護関連サービス企業の寄与(売上高22億61百万円)でわずかな売上の減少にとどまった(この他、携帯電話キャリアショップ運営のマルチメディアサービス事業の売上が同6.5%増の6億66百万円)。総合人材サービス事業では、携帯電話販売業界の人材ニーズは強いものの、高度化する端末や多様なサービスに対応できる知識やスキルを有する求職者の減少で人材確保が進まなかった。また、適正価格での受注にこだわった事も減収の一因。 利益面では、総合人材サービス事業の売上が下振れする中、介護関連サービス事業の体制整備に伴う先行投資が負担となり、営業利益が3億03百万円と前期比62.0%減少。持分法投資利益の減少(61百万円→27百万円)や金融費用の増加(0百万円→17百万円)等で営業外損益も悪化した。 尚、13年10月4日に連結子会社ACAヘルスケア・再編1号投資事業有限責任組合が、介護施設を運営する(株)サンライズ・ヴィラ他1社を子会社化した(共に発行済株式総数の87%を取得)。2社の買収は、介護施設の運営会社だけでなく、中期的な人材の確保や入居者向けサービス等、関連サービスへの展開も視野に入れている。 予想との差異
総合人材サービス事業の売上の下振れやM&Aの影響で、売上・利益が期初予想(売上高150億円、営業利益8億円、経常利益9億20百万円、当期純利益6億円)を下回ったものの、総合人材サービス事業において、期末にかけて適正価格での受注に取り組んだ成果が表れ(顧客企業と求職者の双方にメリットのあるマッチングの増加)、売上・利益が4月の修正予想を上回った。
(2)総合人材サービス事業の動向
契約形態別では、人材確保での苦戦と適正価格での受注にこだわった事で業務委託契約が前年同期比47.5%減と落ち込む中、一部キャリアの直雇用化や派遣期間の制限の影響が残った派遣契約も同2.8%減少。一方、保育・介護業界をはじめ、正社員の確保に苦戦する顧客からの需要増で紹介予定・職業紹介契約が同46.3%増加した。業界別では、人材需要が増加した金融、保育、介護、及びその他業界向けコールセンター等が増加したものの、業務委託契約の減少を派遣契約でカバーできなかった携帯電話業界向けが前年同期比23.6%減少。アパレル業界向けサービスも、一部の大口顧客の派遣利用停止が響き同9.8%減少した。 顧客別では、携帯電話関連が前年同期23.6%と落ち込んだ。このうち、携帯キャリア向けは前期に発生した一部キャリアの直雇用化や受託案件の一部終了の影響で同22.9%減少。適正価格での受注にこだわり契約形態を変更した販売代理店向けも減少した。 地域別では、求職者の減少や一部キャリアの直雇用化及び受託案件の一部終了の影響による携帯電話業界向けの減収が響き、全国的に売上が減少した。 *ROE(自己資本利益率)は「売上高当期純利益率(当期純利益÷売上高)」、「総資産回転率(売上高÷総資産)」、「レバレッジ(総資産÷自己資本、自己資本比率の逆数)」の3要素を掛け合わせたものとなる。ROE = 売上高当期純利益率 × 総資産回転率 × レバレッジ
*上記は決算短信及び有価証券報告書のデータを基に算出しているが、算出に際して必要となる総資産及び自己資本は期中平残(前期末残高と当期末残高の平均)を用いている(決算短信及び有価証券報告書に記載されている自己資本比率は期末残高で算出されているため、その逆数と上記のレバレッジは必ずしも一致しない)。 |
2015年5月期業績予想 |
前期比23.7%の増収、同6.9%の経常増益
売上高は前期比23.7%増の185億円。前期より進出した介護関連サービスが通期で寄与することから売上が同107.8%増加する他、総合人材サービスの売上も携帯電話業界やアパレル業界向けが増収に転じ同9.8%の増加が見込まれる。営業利益は同11.9%増の3億40百万円。主力の総合人材サービス事業を中心にした増収効果に加え、既存施設の期中単月黒字化が見込まれる介護関連サービス事業の損益も改善が進む見込み。 (2)15/5期配当は、1株当たり上期末15円、期末15円の年30円を予定
同社は、財務体質の更なる強化と事業への再投資による企業価値の向上を図りつつ、積極的かつタイムリーに利益還元していく事で株主に報いていく考え。この考えの下、連結配当性向35%以上を目標に、上期末配当及び期末配当の年2回の配当を実施している。14/5期は業績予想を下方修正し、当期純利益が前期比56.7%減少したものの、総合人材サービス事業の回復と介護関連サービス事業の収益化に手応えがつかめた事から、期初の発表通り前13/5期と同額の年30円(上期末配当15円を含む)の配当を維持する考え(配当性向106.0%)。15/5期は1株当たり上期末15円、期末15円の年30円を予定している。予想ベースの配当性向は105.8%となるが、主力の携帯電話業界向けサービスにおいて適正価格での受注活動の成果が顕在化する等、業績回復に向けた歩みが着実に進んでいる事から、前期と同額の配当を実施する考え。 |
|
本レポートは情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を意図するものではありません。また、本レポートに記載されている情報及び見解は当社が公表されたデータに基づいて作成したものです。本レポートに掲載された情報は、当社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。当該情報や見解の正確性、完全性もしくは妥当性についても保証するものではなく、また責任を負うものではありません。 本レポートに関する一切の権利は(株)インベストメントブリッジにあり、本レポートの内容等につきましては今後予告無く変更される場合があります。 投資にあたっての決定は、ご自身の判断でなされますようお願い申しあげます。 Copyright(C) 2024 Investment Bridge Co.,Ltd. All Rights Reserved. |